ミュージカル『パレード』大阪公演 2021.02.04ソワレ~02.05マチネ

2幕

ガタガタ騒いで

2幕冒頭で、宮川さん演じる2役目のライリーと未来さん演じる2役目のアンジェラが登場します。二人のパワフルでソウルフルな力強い歌声がめちゃめちゃ魅力的なシーンなのですが、歌っている内容はレオ・フランクの一件についての辛辣な皮肉

特に印象深いのが、「黒人は首を吊るされても誰も注目しないのに、白人が吊るされるとなったら注目の的で多くの人が集まってきた」という内容のくだり。黒人に対する差別意識はこの時代、しかも南部は相当根強く息づいていたんだと思いますが、それが当たり前すぎてしまって皆「ふつうのこと」と注目しない恐ろしさを感じました。
そんな背景があるからか、ライリーとアンジェラはレオ・フランクの有罪に関しては羨望にも似た感情があるのかなとも思ったな…。人間として扱われない黒人の自分たちは気にも留められない存在だけど、白人のレオは大きなニュースとして取り上げられ北部からも人が集まってきている現実があった。そりゃ、皮肉も言いたくなるだろうなと。

さらに、レオには北部から多くの再審請求の嘆願書が届いていたという。「味方が現れて良かったな」と歌いますが、そこには皮肉しか込められてなくて”さっさと刑が執行されればいいのに”といった感情すら感じられてしまいました…。レオは冤罪被害者でしかないのに、彼を取り巻く人々は黒人も白人も悪意に満ちているのが哀しい…。

ちなみに、今回黒人を演じるキャストの皆さんは首に黒いネジネジマフラーを巻いています。確か初演ではサカケンさんが肌を黒くしたメイクをしてたと思うんだけど、複数役こなすこともあってかメイクしやすいように工夫したのかもしれませんね。

あなた一人で

刑を言い渡された後もなんとか覆す方法はないか独房でレオは資料を読み漁っています。面会にやって来たルシールも彼のために参考になる資料を届けてくれる。その時は素直にレオも彼女に感謝するのですが、彼女が独断で新聞記者のクレイグに接触したと知ると途端に不機嫌になってしまう。
ルシールはなんとかレオを助けようと必死で動いているのに、レオは何でも自分一人のペースで進めようとしてしまう。その一件でついにルシールはこれまでの溜まりに溜まった彼に対する不満をぶちまけてしまいます。

「私はいつも除け者にされてきた。そんなに一人ですべてやりたいならそうすればいい」

これまでずっと言いたくても言えない気持ちを、こんな切羽詰まった状況の中で告白しなければならなかったルシールが気の毒だと思ったんだけど、このシーンでの彼女はとても気高く見えるのです。レオを責める言葉が並んでいるのに、音楽は流れる川のように美しい…。ルシールの気高さをより高めているかのようにすら思いました。

この時レオは初めて妻の本音を知ることになります。無意識のうちに自分中心の意見を押しつけてしまったり、プライドに雁字搦めになっていた自分をついに自覚した。「私を見て!必ずあなたを家に連れて帰るから」と必死に訴えるルシールの手を憑き物が落ちたかのような表情で握るレオの姿がとても印象的だった。

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素敵なミュージック

同じころ、スレイトン知事の屋敷では彼の知り合いを集めたダンスパーティーの真っ最中でした。冤罪で監獄に入れられているレオの状況と真逆の環境がすぐに出てきたので、なんだか心にざわざわした違和感を感じてしまう。
このダンスで注目なのは、最後のほうに登場する大柄の女性w。仕草とかめっちゃ可愛いので要注目です(雅登くん、ステキww)。

そしてもう一つ注目なのが、ドーシー検事と活動家ワトソンの出会い。ワトソンはドーシーの手腕を高く買っていて自分の新聞にも美辞麗句を並べているらしくそれを誇らしく報告するのですが、ドーシー本人は最初彼を鬱陶しい存在としか感じていません。
ところが、「あなたなら知事になれる」というワトソンの言葉にピクリと反応してしまう。この時はそのまま何も進展なく別れましたが、この言葉がドーシーの新たな野心を掘り起こしてしまったんですよね…。ワトソン、余計なことを…!!って思ってしまう(苦笑)。

そんなダンスパーティーに突然ルシールが押しかけてくる。レオの一件はスレイトンにも重荷となっていることから、何度も彼女から逃げようとしますがルシールは逃さない。そして音楽を強引にやめさせて再調査をしてほしいと懇願。それまで普通の主婦だったとは思えない行動力と信念には非常に心を打たれるものがあります。
あくまでも再調査はしないと言い張るスレイトンに「あなたは馬鹿か臆病者のどちらかなのね!!」と吐き捨てるように叫んで走り去っていくルシールは非常に男前でグッときますね。あんな言われ方したら、そりゃスレイトンも動かざるを得ないんじゃないかなと。彼なりのプライドもあるし、何より裁判についての疑問もなくはなかったようですから…。

そのやり取りの一部始終を目撃していたドーシーは、ローン判事と釣に出掛けがてらレオの裁判のことについて密談をかわしていました。ローンは1幕では冷静な判断を持つ中立者のようにも見えていたのですが、実はけっこうな保守派でレオの判決は絶対であり覆されてはならないという考え方を持っていた様子。彼の裏の顔が見えてくるこのシーンはちょっと不気味です。
ドーシーはスレイトンに再調査には応じないように釘を刺すと約束。そんな彼にローンはさらに「君を知事に推す声がある」とも付け加える。これでますます”知事”という野心に火がついてしまうドーシー(汗)。穏やかで静かなナンバーではありますが、実に不気味でざわざわする場面でもありますね。

まだ終わりじゃない

さらに数日後、ルシールの捨て身の作戦が功を奏しスレイトンは再調査に協力することを約束します。知らせを受けたレオは妻に心から感謝し喜びのあまり、夜中にもかかわらず声高らかに歌い上げる。このナンバーが希望に満ち溢れたドラマチックな楽曲で本当に素晴らしいのです!!ルシールがくれた一筋の光に歓喜するレオの姿は見ていて涙がこぼれますよ…(泣)。

やがてその想いはルシールにも伝染し、二人はまるで共に行動しているかのような一体感に包まれます。この二人のデュエットがこれまた最高にドラマチックで涙なくしては見られない…!!スレイトンもよく決断してくれたと思うよ。

ルシールはレオの指示通りに裁判で証言した人たちをスレイトンと共に訪ね歩く。
メアリーの友人アイオラは友達と一緒にあの人同じ証言を繰り返しますが、追及していくと矛盾点ばかりが見えてくる。そこを衝かれた彼女たちはついに「ドーシーに教えられたとおりに証言しただけだ」と白状しました。雇っていた家事手伝いの黒人・ミリーに至っては、ドーシーに牢獄へ連れて行かれた上に脅迫されたことを告白。ミリーの行為は決して肯定はできないけど、黒人であるがゆえの哀しい身の上を想うと同情の余地があるんですよね…。ルシールもそれを理解し彼女を赦したように見えました…。

次々に発覚していく「嘘だった証言」に、レオとルシールは「まだ終わりじゃない!」と声高らかに歌い上げます。ここ、もう、本当に胸が熱くなる感動ポイントなんですよーー(涙)。これまで暗い気持ちばかり強調されてきたゆえに、ルシールによってもたらされる希望の光が力強く感じられてめちゃめちゃ泣けます…!!

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ブルース:土砂降りの中で

しかし、一番手ごわいのは判決の決め手にもなってしまったジム・コンリーの存在です。これまでルシールを同行させてきたスレイトンも、彼は危険人物だからとそれを止めたくらい(馬鹿か愚か者にならないようにするよっていうスレイトンのセリフがキュートでカッコいい!!)。

コンリーは証言で「レオが事務所でメアリーと”イイこと”してる間の見張りをしていた」と語った故、共犯者として牢獄送りになってました。まぁ、もともと脱獄犯だったしね(苦笑)。この時の労働の歌が超ブルースでなんかめちゃめちゃソウルフル!!歌声の迫力にも圧倒されてしまい、これじゃルシールは来なくて正解だなと思ってしまうレベルなのがすごい。

スレイトンはコンリーに次々と矛盾点を指摘していきます。コンリーはそれを巧いこと誤魔化してさらりとかわしてしまうのですが、このやりとりのなかでスレイトンは彼がうその証言をしたのだと確信を持ちました。
それどころか、スレイトンが帰った後にコンリーはテンション高く当時を振り返って恐ろしいことを歌い出すのです。ここで客席は「真犯人が誰だったのか」悟ることになります…。まぁ、ドーシーから話を持ち掛けられた最初のシーンの時からめちゃめちゃ胡散臭い態度してたから気づきやすいんだけどね(苦笑)。

レオの冤罪を確信したスレイトンは、妻のサリーに自らの覚悟を話したうえで「大統領の妻にしてやれるはずだったかもしれないのにできなくなってしまった」と謝罪します。それに対してサリーは「臆病な大統領の妻になるよりも勇敢な元知事の妻でいるほうがいい」と胸を張る。ダンスパーティーの時にはルシールへの態度からちょっとお高く留まった人とマイナスなイメージがあったのですが、このセリフでひっくり返りましたよww。素敵な奥様じゃないか!!ちなみに彼女のこの発言は、実際にあったそうです。カッコいいですよね。

ところが、レオの刑を減軽し終身刑にする決意をしたと語ったスレイトンへの群衆の反応は想像以上に厳しく過激なものでした…。それでもスレイトンは自らの信念を必死に訴えるのですが、この内容がまるでキリストの物語のようだった。特に「私は無実のユダヤ人の血に染まりたくない」といったくだりの発言は、キリストの無実を信じながらも群衆の熱気が恐ろしくて死刑にするしかなかったピラトと重なるところがあります。レオもユダヤ人ですしね…。

ワトソンは群衆を煽り立てスレイトンの言葉を激しく非難するよう先導。怒りを増幅させた群衆はついには狂気の集団となりスレイトン夫妻を悪人として抹殺しようとするまでになる。このシーンは本当に群集心理の恐ろしさをまざまざと見せられている感じがして背筋が冷たくなりました…。
危険を感じた夫妻はその場から逃げるように立ち去ります。実際にも彼らは命の危険にさらされる事態となったためジョージア州から脱出しなければならなくなったそう。それと入れ替わるように意気揚々と知事の座に躍り出るのがドーシーです。フェイガン夫人を旗頭にしてレオへの憎しみをさらにあおっていく彼の行動には嫌悪感すら覚えたな…。

無駄にした時間

一方、減刑されて終身刑になったレオは秘密裏に違う刑務所へ移送されていて外部の狂気的な騒ぎを知る由もない…。看守も気立てがよく監獄での生活は以前と比べてとても穏やか。そこへルシールがピクニックの用意をしながら面会にやってきます。レオはそんな彼女の新しい服装にも目が留まるようになっていて…それが見ていてすごく嬉しかった。減刑を勝ち取ったことで二人の絆はより深まりやっと本物の夫婦になれたんだなって心が温かくなります。

刑務所長の許可も取ったからとルシールは牢獄のベッドの下にシートを敷いて持ってきた食べ物を並べていく。現実的には牢獄なんだけど、舞台上にはパレードの時に無数に降り注いだカラフルな紙吹雪が敷き詰められているので視覚的には花畑の中にいるように見えるんですよね。二人の穏やかで幸せな時間がより深く伝わってきて感動的です。
で、ここで『パレード』の中で唯一コミカルな場面が出てくる。”ワイロ”のワインを看守に渡すルシールがとにかく可愛らしいのです!!いかにも偶然を装ったお芝居してるんだけど、どことなくぎこちないのがこれまた最高!さらにワインに目がない看守さんもそれに応えるようにコミカルな仕草でそれを受け取るんですよね。この作品の中で唯一笑いが漏れるのがここなので、一番ほっとできる瞬間だったりもします。

そしてレオとルシールはお互いへの愛情を惜しみなく溢れさせながら「これまでの膨大な時間を無駄に過ごしてきてしまった」と歌います。愛し合いながらも余計な感情が邪魔をしたり、言いたいことを飲み込んだりしてギクシャクした夫婦生活を送ってきてしまったことを心から悔いるのですが…もう、ここは…二人の今の気持ちが分かりすぎてしまって号泣に次ぐ号泣(涙)。二人の希望と喜びを示すようなオフホワイトの背景も本当に泣ける!!!
私はこのシーンが本当に大好きで、初演の時から嗚咽に近いほど涙が出てしまうんですよね…。思い出しただけでもウルウルしてしまいます。

状況的にはまだ減刑されただけの厳しいものではあるのですが、その困難を経てレオとルシールは夫婦の絆を取り戻していった。そのドラマが丁寧に紡がれていたので、二人が真の愛情で結ばれるこの場面は涙なくしてはどうしても見られません。数あるミュージカルの中でも5本の指に入るほどの名シーンだと思います。

今回は、この先さらにネタバレに踏み込みます。ラストを知りたくない方は読むのを回避してください。

 

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日が暮れた頃、ルシールは「必ず家に帰れるようにするから」とレオに誓い「また次の日曜日にね」と約束を交わし帰って行きました…。この場面を見るのが本当に辛い…!!!それが今生の別れになってしまうなんて思いもしない二人だからなおさら哀しくて仕方ないのです(涙)。

ルシールと別れたレオは軽装のまま幸せな気持ちで布団に潜り込みますが…その日の夜、複数の男たちに無理やり拉致されてしまう。関わった人物は、メアリーを想っていたフランキー最初にレオを逮捕した警官二人手伝いの男、そしてあの南北戦争の生き残りの老兵です…。レオ本人、というよりも「ユダヤ人」「北部人」といった部類でしか彼を見ていない人たちばかりだというのが恐ろしい…。

レオが拉致された場所はメアリーの生まれ故郷・マリエッタ。フランキーだけはレオ本人に対する憎しみを向けている。彼はレオが真犯人であると信じて疑わないんですよね、そうすることでしか精神的にも耐えられなかったから…。
しかし、警官の一人と手伝いの男はレオが本気で謝罪すれば助けてやってもいいと考えている。彼らは今自分たちが行おうとしている出来事から逃げたい気持ちが強かったんだと思います。

しかし、レオは「もう願い事をするのはやめたんだ」と呟いた後

「ここまで耐えてきたのはやってもいないことを認めることなんかじゃない」

と毅然として言い放つ。この時のレオの確固たる信念と強さに震えた…。そしてその言葉はある男に響いたようで、彼は一言「彼は犯人じゃないんだ」って確信するんですよね…。この時彼がもっと強い人間だったならって思わずにはいられないよ(涙)。

数人が恐怖と畏れのあまり怖気づくなか、スターンズ刑事は強引にレオの首に縄をかける。そして最後に動いたのは、どうしてもレオが真犯人であるという想いから逃れられなかったフランキーだった。「メアリーの為だ!!!」という叫びがあまりにも哀しく響き渡り、見ているこちらはもう息が詰まるように時が止まったような感覚にさせられてしまうのです。
レオはきっとあの瞬間、自分とキリストを重ね合わせていたのかもしれない…。

フィナーレ

全てが終わった後、記者のクレイグは自分の元に届けられていたというレオの遺品である結婚指輪をルシールに届けにやって来る。クレイグは裁判の後からどちらかというとレオたちのほうに気持ちが傾いている節があったので、この役目を担うには相応しい人物かもしれないなと思いました。

このやり取りの最中、後ろのほうでは事件当日のレオとメアリーのやり取りのシーンがもう一度出てくるのです。お給料をもらいに来たメアリーに優しい表情で袋を手渡してやるレオ…。1幕ではその後メアリーがレオに何かを言いかけたところで終わってしまいましたが、2幕ラストではその顛末が描かれています。
給料袋を受け取ったメアリーは帰りかけたところでレオの所に戻ってきて、ある言葉を告げるのです。

「フランクさん、追悼記念日、おめでとう!!」

このセリフが告げられた瞬間、私はもう涙を止めることができませんでした(号泣)。メアリーは明るい笑顔でレオにそう告げたのです。つまり彼女は、レオに対して嫌悪感を抱いてなんかなかった。それだけに、今回の事件があまりにも悲惨で哀しすぎて心が痛くて…堰を切ったように涙があふれて仕方なかったです(泣)。

クレイグはルシールに北部へ引っ越したほうがいいのではと提案しますが、彼女は鋭く毅然とした態度で「私は南部を離れない」と断言する。おそらくそれが、彼女なりの世間に対する復讐なのだと私は思います…。そして、レオの魂と共に南部で生き抜く覚悟をしたのだと。

レオとの優しい時間を想い振り返りながら歌うルシールは必死に涙をこらえ、クレイグから受け取ったレオの遺品の指輪をはめる。でも、その背景で戦没者記念パレードの声が聞こえてくると、溢れ出る哀しみの感情を止めることができませんでした(涙)。それでもポロポロ涙をこぼしながらも懸命に前を見据えて凛と立ち続けるルシールの姿は、誰よりも気高く、そして神々しかったです。
もしかしたらあの時彼女は、心の底から沸き起こるレオを葬った人々への憎しみを必死にこらえていたのかもしれません。”憎しみ”の感情が生み出す悲劇を目の当たりにしたからこそ、自分がその負のサイクルを断ち切るのだと…。あのラストシーンのルシールの姿には色々と考えさせるものがありますね。

ここで物語は終わるのですが、私も含めこの物語を受け止めるまでには時間が必要で…すぐには拍手が起こらないことが多いんですよね。大阪初日もそうでした。でも2日目はすぐに拍手が起こってて、そういう日もあるんだなって新鮮でした。
それでもやっぱりまた思ってしまうのです・・・もう一度この作品に戻りたいと!!すごいミュージカルだなと改めて実感した2日間でした。

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主なキャスト別感想

石丸幹二さん(レオ・フランク役)

再演のレオは初演よりもさらに神経質度が増したかなという印象がありました。北部人であることのプライドを捨てきれないところとか、内面の未熟さも浮き彫りにされたお芝居をしていてよりリアルになったと思います。それだけに、ルシールの想いに気づき彼女と向き合わなければと決意した場面がより感動的にドラマチックに映りました。

歌声もシーンごとに変幻自在に変化させて繊細にレオの内面を表現。このあたり、本当に良し丸さんってすごい役者だなぁと思います。できることなら次の公演の時にもさらに進化したレオ役で私の心を揺さぶってほしいです。

堀内敬子さん(ルシール・フランク役)

堀内さんの歌声の力強さと芯の太さは初演よりもさらに際立っていた印象があります。言葉の一つ一つ、歌声の一つ一つにしっかりとルシールとしての想いが乗っていて真っ直ぐに見る者の心に届き激しく揺さぶってくる。ルシールの場面は私、ほとんど泣きましたからね。本当に素晴らしかった。

何と言っても、堀内さんのセリフの説得力がハンパなかったんですよ!ルシールに託したらきっと何かが変わる、希望が持てるって自然と思えてきてしまう。そしてあのラストシーンの涙を必死にこらえようとしながら前を向こうとする姿が忘れられない。カーテンコールも何度かありましたがずっと涙止まらなかったですものね。ホント、最高すぎるルシールでした。

武田真治さん(ブリット・クレイグ役)

実は初演の時にはあまり印象に残らなかった武田さんのクレイグだったのですが、今回はめちゃめちゃ存在感あったと思います。病み上がりだったにもかかわらず縦横無尽にフットワーク軽く舞台を駆け回り証言を集めていくシーンなんか躍動感凄くて最高でした!

クレイグは最初はレオ事件のことを面白いショーくらいにしか思ってなかったのですが、裁判を傍聴した時を境に事件の本質を見極めようとする姿勢に変わるんですよね。そんな彼の心の微妙な変化を武田さんは実に繊細に表現していたと思います。

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今井清隆さん(トム・ワトソン役)

初演では新納くんが演じていた役だったので、ずいぶん雰囲気が変わったなという印象がありました。新納くんの時にはどこか”妖しい”掴みどころのないファシストのような雰囲気でしたが、今井さんが演じるとどっしりとした揺るぎない男といった雰囲気に変わったように思います。しかも歌声が野太く威圧感もあるので、あの勢いでレオは有罪に違いないとがんがん歌われたら…そりゃ群衆も引っ張られてしまうよなっていうのがすごい納得できてしまいました。

内藤大希くん(フランキー・エップス役)

初演では小野田龍之介くんが演じていて澄み渡る歌声に魅了されたのですが、内藤くんはめちゃめちゃ情熱的にアツアツな歌声で劇場を圧倒していました!冒頭の若い兵士役の歌声からしてもう、私の心にビシバシとシンパシーが伝わってきて…いつの間にか涙が流れたほど感動的だった。っていうか、内藤くんがこんなにも迫力のある歌声を持ってると最初は気づいてなかったのでちょっと驚きました。

レオへの憎しみを青筋立てながら大熱唱するシーンも多かったのですが、痛々しいほどフランキーの哀しみと憎しみの感情が歌声から伝わってきたんですよね。倒れちゃいそうな勢いで歌うシーンも多かったのに、音程に全く狂いがなかったのも本当にすごいと思いました。

坂元健児さん(ジム・コンリー役)

初演の時も圧倒されたんですが、さらにそこからまたパワーアップした感じ!もともとサカケンさんの歌声はパワフルボイスで音程の狂いもなく完璧だという印象が強いのですが、ジム・コンリー役での歌いっぷりはその最高峰のものが見れると思います。もう、圧巻の一言!!あの歌声で開き直られたら、そりゃこっちはもう何も言い返せなくなるよって納得出来ちゃいますよw。

ちなみに、刑事スターンズも演じているのですがこちらも非常な性格のキャラ。歌はないけれども圧倒的な非情さで本当に恐ろしかったです…!

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福井貴一さん(ローン判事役)

藤木孝さん亡き後、ローン判事を引き受けてくださった福井さんには本当に感謝です。初めて登場したシーンを見たときには藤木さんの面影に似てるなとすら思いました。裁判のシーンでは知的でダンディでとにかく渋カッコイイ!!判事としての静かだけど確かな貫禄がシーンを引き締めていたと思います。

対して2幕ではローン判事の保守派ゆえの本音みたいなのが出てくる。1幕の毅然とした姿とは違う後ろ暗い感情が表に出ていてまるで裁判の時とは別人のようだった。このあたりの演じ分けの繊細さがさすがでしたね。

石川禅さん(ヒュー・ドーシー役)

初演の時にはレオの前に立ちふさがる「悪役」の側面を強く感じた禅さん演じるドーシー検事でしたが、再演の今回は少しそれが薄まった印象がありました。レオを有罪とするために裏工作とかやったりしててそのあたりは”悪役”としての顔が強く出てる気がするんだけどw、根底には彼なりの正義があってそれに忠実に従っているといった側面を感じることがちょいちょいありましたね。北部出身のユダヤ人には制裁を加えなければならないというような信念が所々で感じられたかも。それゆえにかえって初演よりも恐ろしさを感じたかもしれません。禅さんはこういったお芝居が本当に非常に巧い!

あと印象的だったのがローン判事と釣をするシーン。魚を釣るときの竿の持ち方や餌の付け方、かかった魚を掴む仕草が実にリアルでびっくり(すべてパントマイムで演じます)。改めて禅さんの演技力の高さを実感した場面でもありました。

そのほかにパレードの見物客役も演じられているのですが、その時はおじいちゃんになっててめちゃめちゃ可愛い(笑)。ドーシーとは真逆のキャラを楽しまれているようでホッコリしましたw。

コロナ禍以来の舞台がこの『パレード』だったとは思えないほど完璧な歌とお芝居を披露してくれた禅さん。大阪まで来てくれて本当に嬉しかった!!

岡本健一さん(スレイトン知事役)

岡本さんは歌唱力の点からいうとほかのキャストに比べてやはり少し弱い印象があるのですが、初演よりもすごく安定している印象が強かったです。ソロナンバーはダンスパーティーの場面で出てくるんだけど、岡本さんのライトでポップな歌いっぷりがすごくマッチしていて良いんですよね!軽やかなステップと共に堪能させてもらいました。

印象深いのはやはりレオの死刑を減軽する決意をした場面ですかね。奥様に「弱気な大統領の妻より勇気ある元知事の妻のほうがいい」と言われた後の「そうなのか!?」の言い方が特によかったです。また、演説台で群衆のヤジに負けないように自分の信念を訴えてたシーンもグッとくるものがありました。

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後述

新型コロナ禍の影響が色濃い状況のなか、客入りはどうしても寂しくなってしまっていたのですが…、それでも私が観劇した大阪初日と2日目はスタンディングオベーションでその日の倍くらいの迫力の拍手音が鳴り響いていました。それほどこの作品が大阪の皆さんの心にもしっかりと届いていたんだろうなと思い、私もとても嬉しくてまた泣いてしまった。舞台上のキャストの皆さんも感無量の表情でした(岡本さんは客席に向かって何度も拍手されていました)。

ストーリーは実話を基にしているということもありとてもシビアな内容が多いのですが、場面ごとにドンピシャな色とりどりの音楽がそれを緩和しているようにも思えます。おそらく私もストレートプレイだったらこの作品は辛すぎて見れない気がする…。あの楽曲があればこそ、この『パレード』という作品を受け止めることができるのです。

コロナが収束してきた頃、安心して観劇できる環境になった頃にまた絶対再演してほしい!っていうか、してください!!本当に多くの人に観てほしい作品なので。

公演は大阪の後、名古屋・富山と続くようです。こんな時代じゃなければ富山大千穐楽に駆けつけたかったくらいだよ(涙)。どうか最後までカンパニーの皆様が元基に駆け抜けることができますように!!また再会できる日を楽しみにしています。

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