はじめに
「レ・ミゼラブル」という名前を聞いたことはあっても、具体的にどんな物語か知らないという方もいらっしゃるかもしれません。この作品は、フランス革命の時代(1815年~1833年)を背景に、ジャン・バルジャンやジャベール、コゼットなど、個性豊かなキャラクターたちが織りなす壮大な物語です。
原作はヴィクトル・ユゴーによる同名長編小説(1862年著)ですが、約3時間強のミュージカルとなったことでギュッと凝縮された濃厚なドラマとしてより多くの人から親しまれる作品となりました。原作とミュージカルは相違点も多いので、個人的には、事前に原作を読むよりも観劇後に原作を読んだ方が比較できたりして楽しめるのではないかなと思います。
以下の記事では、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の物語の簡単な紹介や、注目してほしい楽曲、シーン、ストーリー上の豆知識などを紹介しています。
私の過去のレミゼ観劇レポートも別ブログにあるのでよかったら参考にしてみてください。
ミュージカル「レ・ミゼラブル」の簡単なあらすじ
「レ・ミゼラブル」は、世界中で長く愛されている有名なミュージカルで、世界4大ミュージカルのひとつと言われています。
世界4大ミュージカルって、どの作品のことを差すの?
「レ・ミゼラブル」「オペラ座の怪人」「キャッツ」「ミス・サイゴン」です。どれも超大作だから舞台にハマったら一度は見てほしいな。
でも、話の流れをつかむのが少し難しいと感じる人もいるかもしれません。ということで、ミュージカル「レ・ミゼラブル」のストーリーを簡単にまとめてみました。勝手なツッコミ会話も合わせてお楽しみください。
<主な登場人物の相関図>
1幕 プロローグ(1815年)
主人公のジャン・バルジャンは、パンを盗んで19年間も刑務所に入れられていた囚人でした。ところが、せっかく仮釈放されても世間に出たら冷たくあしらわれ続けてしまい・・・とうとうブチ切れて逮捕寸前の大ピンチに。そんな彼の窮地を救ったのが、偶然通りかかったミリエル司教でした。
バルジャンは司教に感謝しますが、その舌の根が乾かぬ間にとんでもないことをしでかしてしまいます。ところが、それさえも沼より深い慈悲心で受け止めてくれたミリエル司教。その寛大な心に触れたことでついにバルジャンは生まれ変わることを決意、彼の新たな人生が始まります。
そんなバルジャンが本気で改心する場面は序盤の大きな見どころのひとつ。
バルジャンが司教様と遭遇してなかったら転落人生まっしぐらだっただろうね(汗)
1幕 ファンティーヌとの出会い(1823年)
ファンティーヌはとある事情でシングルマザーとなってしまいます。幼い娘コゼットをテナルディエ夫妻に預け養育費を稼ぐため必死に働いていましたが、厳しい現実に直面し続け身を落としていきます。そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは・・・
生まれ変わり意外な職業についていたジャン・バルジャン(この頃彼は”マドレーヌ”という偽名を使ってました)でした。
しかし、懸命な看病の甲斐なくファンティーヌは天国へ。彼女の最後の願いを聞き入れたジャン・バルジャンはコゼットの居場所を突き止め、悪徳宿泊業を営むテナルディエ夫妻から彼女を引き取り育てることになります。
バルジャンはファンティーヌへのある”罪悪感”もあって、なんとしても彼女を救いたいと思ったんじゃないかなと。
ファンティーヌがテナルディエ夫妻に娘を預けてしまったのも不幸の始まりだった気がするよ…(汗)。見抜けなかったんだろうねぇ…
あと、仮出所したまま戻ってこないバルジャンを追いかけてるジャベールが登場するのも大きな見どころのひとつ。
二人の執念がぶつかり合う対決とかめっちゃ迫力ありそう(震)
1幕 革命に沸くなか生まれた運命の恋(1832年)
パリでは貧しい人々や革命を志す学生たちが集まっていました。その中には、学生のアンジョルラスとマリウス(二人は親友)、悪事を働くテナルディエ夫妻(コゼット虐●してた奴ら)とその娘エポニーヌもいました。バルジャンは美しく成長したコゼットと共にに混とんとするパリの町に入ると、貧しい人たちに施しを行います。
その最中、マリウスはコゼットにビビッと一目惚れ(少女漫画ちっくな演出がツボ)。革命の気合いよりも一瞬だけすれ違ったコゼットへの恋心の炎が燃え上がってしまい、リーダーのアンジョルラスは呆れ仲間たちからは冷やかされる始末。
ずっとマリウスを一途に片想いし続けてきたエポニーヌは激しいショックを受けますが(しかも彼が恋した相手がかつての…だったからなおさら)、彼の関心を惹きたい一心で恋の橋渡しを引き受けてしまいます。鈍感なマリウスはコゼットのことしか頭になく、エポニーヌの恋心に全く気付いていませんでした。
一方のバルジャンはジャベールが同じ町にいることを知ってしまい、彼から逃れるためにコゼットを連れて違う土地へ移る決意を固めました。マリウスと心通わせテンションが上がっていたコゼットは寝耳に水なバルジャンの決断に激しく動揺。
それでも”父”への愛情が勝り(コゼットは幼い記憶が飛んでおりバルジャンを父だと信じています)マリウスを想いながら身支度を整えるのでした。マリウスはコゼットとの別れを悲しみながらもアンジョルラスに促され革命への気運を取り戻します。それぞれの思惑が絡み合い新しい世界を目指す人々のドラマが加速していくのです。
1832年パリの場面は濃厚なドラマが次々と展開されていくので大いに見応えあり。
マリウスのコゼットに対する恋心の加速っぷりがけっこうすごい(笑)
ジャベールがバルジャンを絶対捕まえてやると誓う場面も見所のひとつ。
ジャベールは少年ガブローシュやエポニーヌから「ドジな警官」認識されちゃってるけど(笑)、そんな不器用で武骨なところも魅力なんだよな。
2幕 6月暴動のゆくえ
革命のリーダー・アンジョルラスが指揮するもとで、マリウスたち学生はバリケードを築き革命に立ち向かいます。そんな彼らの中に身分を偽り仲間の振りをしたジャベールがまんまと潜入に成功(学生たちはジャベの顔をよく知らなかったらしい)。
一方、エポニーヌはマリウスへの愛を諦めきれずにいました。なんとか振り向いてほしくて思い切った行動を取りますが全く気付いてもらえず、逆にコゼットへの愛をしたためた手紙を届けてほしいと頼まれてしまいショックを受けました(それでも危険を冒して手紙を届けてしまうのがいじらしくて泣ける)。そんなエポニーヌはこの直後に悲劇的な運命を辿ることになります。
エポニーヌのトコトン報われない恋心は、哀しいけど目が離せません。
マリウス、恋愛初心者だったからかエポニーヌの気持ちにギリギリまで気づかないんだよねぇ…。ツラ(涙)。
エポニーヌから受け取ったコゼットへの手紙を彼女に渡さずに読んでしまうバルジャン(これあかんやつ)。その文面を読んでコゼットの想い人が革命に参戦していることを知ったバルジャンは、慌ててバリケードに向かいます。
なんとか学生たちに認められたバルジャンは、正体がバレて囚われの身になっていたジャベールと遭遇。ジャベールはバルジャンとの再会に屈辱を感じ威嚇しますが、バルジャンは彼の予想とはまるで違う行動を取ることに。この出来事がジャベールの心を激しく混乱させてしまいます。
舞台だと感動的に表現されてるけど、自分宛てじゃない手紙を勝手に読んでそのままにしちゃうバルジャン、けっこうヤバイと思ってる(笑)
あと、ジャベールの正体がバレるシーンは冷静に考えるとけっこうオマヌケでちょっと面白い(笑)。
学生たちははじめは善戦していましたが、やがて夜が明けると劣勢に陥り孤立する中で悲惨な運命に身を投じていきました。この戦闘中にバルジャンは肩を負傷しますが、バリケードで見つけたマリウスの窮地を目の当たりにすると、彼の救出のために命懸けの行動を起こします。
その最中、執念でバルジャンを追っていたジャベールと鉢合わせ。ところが、バルジャンの迫力に根負けし自分でも理解できないことをしてしまい彼の精神は崩壊、混乱したまま悲劇的な運命を辿ります。
6月暴動の場面はこのミュージカルの中でもひときわ大きな見どころ。
メイン以外のキャラクターにもすごく感情移入できるシーンだよね。
2幕 悲しみから生まれた希望とバルジャンの真実
マリウスは戦いで散っていったアンジョルラスや仲間たちのことが忘れられず、深い悲しみに沈んでいました。しかし、コゼットの献身的な看護と愛によって次第に心が癒されていきます。
バルジャンは、愛し合う二人の姿を見てある大きな決断をしました。
初演から1999年頃まではバルジャンがマリウスに歌う歌詞に「愛する息子よ」というフレーズがあって、そこでいつも泣かされてたんだよなぁ…。
残してほしかったよね…
今でもあそこから繋がる一連の歌詞が丸ごとカットされたことが納得いかないんだよ!
その後、マリウスとコゼットは多くの人々に祝福されながら結婚式を挙げますが、そこにテナルディエ夫妻が現れひと悶着起こります。エピローグに向かって、バルジャン、コゼット、マリウスの心の交流が繊細に描かれていきます。バルジャンが最後に辿り着いた場所とは…。様々な深い『愛』が詰まったラストシーンをお見逃しなく。
主な登場キャラクターの紹介
「レ・ミゼラブル」はよく全員が主役の群像劇と呼ばれてきました。メインキャラからアンサンブルキャラまで、個性あふれるサブキャラクターたちが物語に深みを与えているからです。彼ら一人ひとりに物語があり、その存在がストーリーをさらに豊かにしています。
ここでは主に、物語の中心となるキャラクターたちをわかりやすくご紹介します。
※説明文にはネタバレも含まれています。
ジャン・バルジャン
パンを盗んで19年間も牢屋に入れられていた元囚人。仮出所後に新しい世界への夢を膨らませますが世間の風は氷河のように冷たく、それに耐えきれなくなったことで悪事を働いてしまいます。ところが、心優しい司教と出会い、その人の親切に感動し本気で自分を変えようと決意。過去の罪を悔い改め、他の人を助けるために新しい人生を歩み始めます。
のちにファンティーヌの娘コゼットを我が子のように育て上げ、彼女の幸せのため命を懸けた戦いにも挑むことに。生まれ変わってからは愛のために生き抜いた骨太なキャラクター。
ジャベール
法律を何よりも大切にする警官で、仮出獄許可証を破って逃げたジャン・バルジャンをネチっこい執念で追いかけ続けます。「法律こそ正しい」という強い信念を持っていますが、バルジャンと何度も接するうちに自らの正義感に揺らぎが生じ、やがて崩壊していきます。
ジャベールは度々バルジャンと対立しますが、決して悪役ではありません。自らの信念と使命に愚直なまでまっすぐ向き合い続けた生真面目すぎるキャラクターとして描かれていることが注目ポイント。
ファンティーヌ
ファンティーヌは、娘のコゼットを守るために自分のすべてを犠牲にした悲しい女性です。かつて情熱的に恋した相手がいましたが、子供を宿した頃には捨てられてしまうといった哀しい過去を背負っています。
貧しさや周りの人々の冷たい態度に苦しめられ続け、堕ちるところまで堕ちてしまいます。しかし、最後の最後でジャン・バルジャンによって魂を救われ、愛娘であるコゼットを彼に託すことへと繋がっていきます。
コゼット
コゼットは辛く不幸な幼少期を過ごしていましたが、ジャン・バルジャンに助けられたことで穏やかで幸せな人生を手に入れます。しかし、バルジャンが彼女の過去を語ろうとしなかったためモヤモヤした日々を過ごしていました。そんな折、訪れたパリでマリウスと運命的な恋に落ちます。
彼女は物語の中で、愛と希望を象徴する存在です。『レ・ミゼラブル』のポスターや書籍などで見られる少女のイラストは幼い頃のコゼット(大元はユゴーの原作の挿絵を担当した画家エミール・バヤールによる木版画)。
エポニーヌ
エポニーヌはテナルディエ夫妻の娘で幼い頃は蝶よ花よと可愛がられて育てられており、使用人同然の扱いを受けていたコゼットを見下していました。ところが、両親の事業が頓挫し貧乏生活へまっしぐら。苦しい生活を余儀なくされました。
彼女はマリウスを深く愛していましたが、その想いはどうあがいても伝わらず究極の片想いに苦しみます。それでも彼のために命を懸けて尽くし、やがて悲劇へと向かうことに…。
マリウス・ポンメルシー
マリウスは、貧乏学生でありながらもアンジョルラスら友人たちと世の中を変えるための革命に突き進む青年でした。ところが、コゼットと出会い運命的な恋をしたことで心は大きく揺れ動きます。革命と恋愛の間で悩む中、彼は大きく成長していきます。
1幕はコゼットへの恋愛モードが中心ですが、2幕は6月革命に身を投じて戦う姿が中心となって展開されていきます。エポニーヌからのLOVEアピールには最後まで気づくことができず彼女を”妹”のようにしか見れないまま(苦笑)。
テナルディエ夫妻
テナルディエ夫妻は、他人の気持ちを全く理解しようとせず自分たちの利益だけを考える悪者として描かれています。ファンティーヌからお金を巻き上げたり、彼女から預かったコゼットを召使のように扱ったり、革命の混乱を利用して詐欺を働こうとしたり、とにかくやること成すことヤバいことだらけ。夫婦の力関係的には、どちらかというと夫が妻の尻の下に敷かれてる感は否めませんが(笑)、お互い我が強く終始ギラついた夫婦といった印象が強い。
ちなみに原作では、テナルディエが1815年のワーテルローの戦いの終結(ナポレオンが敗北した戦争)時に、倒れた兵士から金品を盗んでいたという描写があります(汗)。
混沌とした世界を何が何でも生き抜いてやるといった逞しさを感じさせるキャラクターでもあり、色々と考えさせられます。ミュージカルのなかではどちらかというとコメディ担当といった役回りが多く、最後まで楽しませてくれます。
2024年~2025年公演のテナルディエ夫人:森 公美子/樹里咲穂/谷口ゆうな
アンジョルラス
アンジョルラスは、自由を求めて戦う若者たちの絶対的なリーダーです。彼はフランス革命の象徴でもあり、自らが掲げた理想を実現させるためマリウスや仲間たちと一緒にバリケードで最後まで勇敢に戦い抜きます。
革命を成功させるために熱く熱く周囲を盛り上げるアンジョルラスですが、非常に仲間想いな一面を持っているため多くの学生たちから慕われていました。バリケードシーン後半の彼の行動は涙無しには見れません。
代表的な楽曲の紹介・注目ポイント
「レ・ミゼラブル」は、ほぼ100%歌で構成されたミュージカルです。心に残る名曲の数々を挙げればキリがありませんが(汗)、ここでは特に代表的な楽曲をピックアップし解説します。
※説明文にはネタバレも含まれています。
♪独白♪
ジャン・バルジャンが自分の人生を振り返り、深い葛藤を語る重要なソロナンバー。ミリエル司教と出会い、赦しを得た後に歌われます。
19年間の囚人生活や釈放後の世間の冷たさに触れたことで心が荒んでしまったバルジャン。しかし司教の優しさに触れ、自らの罪と真摯に向き合い新しく生まれ変わる決意を固めるのです。
息も止まりそうなほど圧倒的なバルジャンの歌唱っぷりに要注目。
♪夢やぶれて♪
ミュージカル「レ・ミゼラブル」の中でも特に有名で感動的なナンバーです。
かつてスーザン・ボイルさんが熱唱した動画が大きな話題を呼んだよね
コゼットの養育費のため工場で働いていたファンティーヌが、あるきっかけで突然解雇されて追い出されたあと自らの苦しい境遇を振り返りながら歌うソロ。
若い頃に抱いていた希望や愛が、現実の厳しさによって打ち砕かれてしまった悲しみが胸に迫るナンバーです。
♪宿屋の主人の歌♪
テナルディエ夫妻が歌う、コミカルで皮肉まみれのナンバーです。夫妻は、宿屋を経営している詐欺師で、お客さんからお金や物を騙し取って生活しています。
やってくるお客たちはみんな悉くテナルディエの口車に乗せられ騙されていきますが、彼らは気づくことなく陽気に楽しく歌い踊ります。このシーンではテナルディエ夫妻のセコすぎる”悪事”の数々が登場。しかしながら、曲のテンポは明るくシリアスな雰囲気を一時的に和らげる役割を持っているのでけっこう人気があります。
ここには書けないようなフレーズや仕草も出てくるのでご注意をw
♪スターズ♪
長期にわたって執念でバルジャンを追いかけ続けるジャベールが星空を見ながら決意を歌う名曲です。
星がいつも決まった場所に輝いているように、彼も「正義」を守り続けなければならないと誓うといった内容。ジャベールにとって法は”絶対”であり、それを破る者はどんなことがあっても許さないという強い決意が込められています。
超ドヤ顔で歌いきったジャベールの後に登場するガブローシュの反応も要チェックw。
♪心は愛に溢れて♪
コゼットとマリウスがそれぞれの思いの丈を歌うナンバーです。
マリウスは一目惚れしたコゼットのことで頭がいっぱいになり革命の会議にも集中できません。そんな彼を見かねたエポニーヌが、コゼットの居場所を突き止め彼を連れていきます。
振り向いてほしいからとはいえ、マリウスの恋を応援するような行動をとってしまうエポニーヌが切なすぎ…
再会したマリウスとコゼットは最初戸惑いながらも、徐々に恋心を打ち明け急速に距離を縮めていくことになります。エポニーヌは自分の行動を呪いながらも、ますますマリウスに自分の気持ちを伝えづらくなってしまうんですよね。
♪民衆の歌♪
この作品の中で最も有名と言っても過言ではない名曲。コンサートやテレビなどでよく歌われているので、聴いたことがある方も多いと思います。
レミゼという作品を象徴するナンバー。
フランス革命を目指す若者たちが自由のために立ち上がるシーン、そしてラストシーンに登場。彼らが「自由と平等」を求めて団結し、命をかけて戦う決意が歌詞の中に込められています。社会の不公平に立ち向かおうとする民衆の強い思いが表現されており、彼らの熱い情熱が観る者の心を揺さぶります。
♪ワン・デイ・モア♪
一幕クライマックス、登場人物たちがそれぞれの思いを抱えながら運命の翌日を迎える直前に歌う大合唱ナンバー。バルジャン、ジャベール、マリウス、コゼット、アンジョルラス、など、多くの登場人物たちが自らの気持ちを歌い、やがてそれが一つに重なっていく光景は鳥肌が立つほど美しく感動的です。
初めてレミゼを観た当時(1997年)一番心震えたのが♪ワンデイモア♪。このナンバーにベタ惚れしたことでその後のリピート観劇が始まったのを思い出すw。
明日、何が起こるのか、それぞれが不安や期待を抱きながら「明日は」というフレーズを繰り返します。マリウスはコゼットへの愛を、アンジョルラスは革命への決意を、バルジャンはコゼットを守る覚悟を。最後には全員の感情が一つになり、翌日に向かって大きな動きが始まる瞬間を描いています。
♪オン・マイ・オウン♪
エポニーヌがマリウスに託されたコゼット宛ての手紙を届けた帰り道に歌われるナンバー。この楽曲も非常に有名で、レミゼを代表する一曲と言っても過言ではありません。
日本初演でエポニーヌを演じた島田歌穂さんが世界ベストキャストとして選ばれ、エリザベス女王の前で歌を披露したというエピソードは有名!
マリウスに究極の片想いをしていたエポニーヌは、暗い夜道を歩きながら彼への決して届かない愛と孤独を一人で歌い上げます。彼女の心の痛みが歌詞とメロディーを通して伝わり、多くの人の心に訴えかけてくるのです。
♪彼を帰して♪
マリウスからコゼットに宛てた手紙をこっそり読んでしまったバルジャンは、彼を助けるために学生たちのバリケードに参加。そこで眠りにつくマリウスを発見し「コゼットの愛する人が無事家に帰れますように」と神に祈るシーンで歌われます。
男性のミュージカル俳優さんがコンサートでこのナンバーを歌う人の率、けっこう高い気がする。
バルジャンの”親心”としての愛情が色濃く反映された感動的なナンバー。このシーンで涙腺が崩壊する人はけっこう多いと思います。
♪ジャベールの自殺♪
ジャベールが自分の信念と向き合い、深く悩んだ末に命を絶つシーンで歌われるナンバー。
ジャベールは、法律を絶対に守ることこそが”絶対正義”だと信じ続けてきました。ところが、バルジャンの彼に対する行動を受けて、自分の信念がグラグラに揺らいでしまいます。そして心の葛藤が収まらないなかで「自らを消すしかない」決断へと舵を切りました。
自分の信念を貫くことができなくなった絶望を歌うジャベールの哀しさは多くの人の心を揺さぶります。
ジャベールの精神と共に容姿も崩れていこのシーン、哀しいけどセクシーで見応えあるよ
♪カフェ・ソング♪
マリウスが戦いで命を散らしていった仲間たちを思い出しながら歌う切ないナンバー。かつて一緒にカフェで未来の夢を語り合った仲間たちが、今はもういないことを深く嘆きながら歌います。彼は自分だけが生き残ったことに対しての罪悪感や悲しみといった大きなトラウマを抱えてしまうことに。
歌の後半の演出が特にグッとくるので是非ご注目を。
カフェで仲間たちと座った席が今は空っぽで、彼らの声も聞こえなくなってしまったという寂しさが歌詞に表れています。
観劇前に知っておきたい魅力ポイント
- 魅力ポイント①:生演奏の音楽がすごい!
ミュージカル「レ・ミゼラブル」は、ほぼ100%歌のみで物語が進んでいきます。オーケストラが生で演奏するので音楽が劇場中に響き渡ります。ファンティーヌが歌う「夢破れて」や、革命を歌う「民衆の歌」のシーンは、劇場で生の演奏を聴くと、心にずっしりと響いてくる感動が味わえます。
- 魅力ポイント②:役者さんたちの本気の演技と歌声に圧倒!
厳しいオーディションを勝ち抜いて選ばれた役者さんたちの歌やお芝居は本当に圧巻の一言です。さらに、メインのみならずアンサンブルキャストの皆さんのレベルも非常に高く、毎回それぞれの役柄にファンがつくことでも知られています。過去には、レミゼに出演したことをきっかけにステップアップして、様々な作品でメインの役柄を掴む役者さんもたくさんいらっしゃいました。
また、レミゼの大きな特徴の一つにジャン・バルジャンとジャベール役以外の配役の役者さんが一人で複数の人物を演じ分けるというのがあります。よーく注意してみてみると、メインのキャラとはまるで違う姿でアンサンブルさんのなかに紛れ込んでいたりするので、どの場面も隅々まで見逃せません(笑)。こういった宝探し的な楽しみができるのもこの作品の大きな魅力だと思います。
- 魅力ポイント③:豪華な演出とリアルな舞台美術
ミュージカル「レ・ミゼラブル」は初演以来何度か変更を重ね景色も変わってきましたが、いつの時代も19世紀フランスの街並みがリアルに再現された舞台セットは素晴らしく、非常に見応えがあると思います。観ているだけでその時代にタイムスリップしたかのような気分になれます。
ただ、個人的にはバリケードのセットが少し簡略化されてしまったのは残念だなと思ってます(汗)。初演の頃は本当にすごい迫力だったので。
また、物語に合わせた照明美術も大きな見どころのひとつ。暗い場面では、登場人物たちの気持ちを映し出すように光が抑えられ、感動的な場面では優しい光が舞台全体を包み込みます。レミゼは照明の使い方が他の作品と比べて特に繊細で、2階席からしか楽しめない場面も多々あります。こうした視覚的な演出は劇場で観るからこその楽しみの一つではないかと。
ちょっとした豆知識
Q. 「レ・ミゼラブル」の意味とは?
日本語に直訳すると「あぁ、無情」という意味になります。作品としては、19世紀パリの厳しい貧困状態にあえいでいた状況から「社会の底辺にいる人々」「極貧状態に苦しむ人々」という意味も込められているのだそうです。そんな大逆境のなかでも必死にもがき希望を見出そうと逞しく生きる人々がこの作品では描かれています。
Q. ジャン・バルジャンはパンを盗んだだけなのになぜ19年も牢獄に押し込められていたのか?
複数回の脱走未遂を起こしたことで刑期がグングン伸びてしまったからです(苦笑)。脱走しようとしなければ懲役5年程度で済んだ。
4回も脱獄未遂起こさなければ…とも思うけど、それだけ獄暮らしが辛かったのでしょう。
ちなみに、ミュージカルでは「妹の子供が貧困によりお腹を空かせていたからパンを盗んだ」ということになっていますが、原作では「姉(故人)の子供」という設定になっています。バルジャンは父親代わりに亡くなったお姉さんの子供の面倒を見ていました。
Q.なぜファンティーヌは悪徳宿屋のテナルディエ夫妻に大切な一人娘コゼットを預けてしまったのか?
シングルマザーで仕事もなく苦労していたファンティーヌは、故郷に帰った時に偶然テナルディエの経営する宿で幸せそうな女の子(エポニーヌ)の姿を目撃してしまった経緯があります。ここにコゼットを預ければきっと大切に扱ってもらえると判断したのが間違いの元でした(汗)。
よりにもよって…としか言いようがない
恋した男にも簡単に裏切られてしまうくらいでしたから、人を見る目が備わっていなかったともいえるのではないかなと…。
Q. ジャン・バルジャンはどうやって市長として成功したのか?
ミュージカルでは再出発を誓ってからすぐに生まれ変わった身綺麗になったバルジャンが登場するので「だれ!?」と戸惑う方も多いかもしれません(笑)。彼は再出発を誓った後(原作では司教の優しさに触れたあと小さな罪を犯していて、その時自分を呪い本気で改心するという設定があります)、わずかな元手で始めた事業が大当たりし財産を得ることになりました。
この資金を困っている人たちのために投資していったことで、町の人から信頼を得ることになりました。ミュージカルに出てくる工場もこの過程で彼が設立したものになります。やがて彼は周囲から推しに推される形で市長を引き受けました。
ミュージカルで描かれないバルジャンの成功エピソードがすごい
ちなみに、生活するのに必ず必要とされていた”許可証”がないバルジャンが見知らぬ土地で「マドレーヌ」という偽名でやっていくことができたのは、火事に巻き込まれた子供たちを救出したことがきっかけだったことになっています。子供たちの親が憲兵隊長の息子だったため、許可証の調査を免れることができたらしい。運が味方したということでしょう。
Q. ファンティーヌが娼婦に身を落としてしまう理由は?
工場をクビになり働き口を失ったファンティーヌは、身を削ってお金を稼ぐようになります。髪の毛を売る場面はミュージカルにも出てきますが、その後さらに自分の前歯を2本抜いて売ることまでしています。以前はミュージカルにも出てきたのですが、短縮されてからカットされてなくなってしまいました。
ついに売るものが無くなってしまったと観念したファンティーヌは、藁をもすがる想いで娼婦に身を落としていくのです。
ファンティーヌへの試練がキツすぎやしませんか!?
最後の最後にバルジャンと和解し穏やかな時間を過ごせたのがせめてもの救い…。
Q. ジャン・バルジャンの囚人番号について
ジャン・バルジャンの囚人番号は海外では「24601」と設定されていますが、日本では「24653」に変更されています。なぜかというと…、最後の下2桁の読み方が原因なのです。
”0=オー、1=ワン”。
これを日本語でそのまま歌うと語呂的にもしっくりきません。そこで英語読みと近い発音の数字が選ばれたという経緯があります。
”5=ゴー、3=サン”ということだね。
まさに苦肉の策でこのように変更されました。
Q. エポニーヌはなぜコゼットの家を知っていたのか?
ミュージカルではエポニーヌがいとも簡単にコゼットの家を探し当てたように描かれてますが、原作によれば、テナルディエの手下の悪党の手助けをしている最中に偶然知ったとされています。
余談ですが、ミュージカル版ではとても清い関係を築いていたコゼットとマリウスですが、実は彼女の居場所を知った後マリウスは毎晩通いまくって愛の言葉を垂れ流しまくってます(笑)。
ス●ーカーに間違われてもおかしくないレベル(汗)
当時予習のつもりで原作を読んだ時ドン引きした思い出がww。ミュージカルではめっちゃ爽やかな関係で描かれていてビックリしました(笑)。
Q. ラ・マルク将軍とはどんな人?
ミュージカルでは名前しか登場しない(しかも亡くなった後)ラ・マルク将軍。本名ジャン・マクシミリアン・ラマルクは実在するフランス人です。
ラ・マルクはナポレオンの元で活躍した将軍で、「自由」「博愛」「平等」を理想として掲げ戦った人物。弱い立場の人たちに心を寄せていたことから、多くの民衆に愛されていました。貧困にあえぐ人々を目の当たりにした彼は、その現状を打破しようと社会的な改革を目指していたためかなり人気があったと言われています。
正義の味方、みたいな存在かな。
しかしながら・・・ラ・マルクは、1832年6月1日にコレラに感染し61歳で病死。このことがミュージカルでも描かれる”六月暴動”のきっかけと言われています。
Q. 六月暴動とは
『レ・ミゼラブル』はフランス革命期のお話ですが、1789年にマリー・アントワネットやルイ16世が処刑された事件(ベルばらで描かれてる時代)ではなく、1815年のナポレオン失脚した時代から1832年の”六月暴動”が起きた時代を中心に描いています。
1830年の七月革命(贅沢なことばかりやってたシャルル10世が追放された事件)後ルイ・フィリップが国王として即位しますが、この頃にコレラが大流行し多くの人が命を落としてしまいます。ところが、ルイ・フィリップはまともな政策を打ち出すことができず、民衆の暮らしは悪化の一途をたどるばかり…。
1832年6月5日。貧困層の味方をしてくれたラ・マルク将軍の葬列に多くの民衆が加わり、やがて大群衆へと膨れ上がります。それを鎮圧するため政府軍が出撃し、抗議する民衆との間で激しい戦闘状態へ。民衆は町の通路のあちこちにバリケードが築き激しく抵抗しましたが、戦力が勝る政府軍に翌6月6日に完全鎮圧されてしまいました。
ちなみに、原作者のヴィクトル・ユゴーは公園で戯曲を執筆中に暴動と遭遇してしまい、かなり危険な目に遭ったという逸話が残っています(公園が封鎖されそこから脱出したもののすぐに家に帰れなかったらしい 汗)。
ユゴーさん、めちゃめちゃ怖かっただろうね。後に執筆した小説「レ・ミゼラブル」に六月暴動を基にしたエピソードを入れたくなる気持ち分かる…。
観劇にあたっての疑問と回答
- 「レ・ミゼラブル」は原作を読まなくても理解できますか?
原作とは違う点もけっこう多いので、事前に読まなくても十分楽しめる内容だと思います(むしろ読まないほうがいいかも)。ただ、予習をしなくても理解しやすい構成になっていますが、一度しか見れない予定の方は事前にあらすじを軽く知っておいた方が最初からより深く楽しめるかもしれません。特に登場人物が多いので、彼らの関係を把握しておくとストーリーの理解が深まります。この記事でもあらすじを簡単に説明しているのでよろしければチェックしてみてください。
原作は、ミュージカルを観た後に比べながら読むと違った味わいが出るのではと思います。
- ミュージカルでの歌詞は難しいですか?
「レ・ミゼラブル」は全編ほぼ歌のみの作品ですが、分かりやすいワードが多いので老若男女問わず理解しやすいのではないかと思います。仮に少しわかりづらい場面があったとしても、舞台の動きや俳優たちの表情や音楽の流れが助けてくれるので、感情やシーンの意味が自然と伝わるはず。歌詞全てを理解しようとせず、全体の雰囲気を楽しむ心意気で鑑賞すると良いと思います。
- レ・ミゼラブルの上演時間はどれくらいですか?
上演時間は演出の都合にもよりますが、だいたい毎公演約3時間から3時間10分程です。1幕と2幕の間には休憩時間も含まれているので、リラックスしながら観劇できます。長いと感じる方もいるかもしれませんが、物語に惹きこまれればあっという間に感じるはず。
- 子どもでも楽しめますか?
もちろん子どもさんも楽しめる作品ですし、実際親子で劇場に訪れている方もたくさん見てきました。ただ、内容が少し重かったり”大人”なシーンやフレーズも多少出てくるので(汗)、小学校高学年以上のお子さんからのほうが理解しやすいかもしれません。
- 公演中に迷惑をかけないためのマナーはありますか?
本編が始まったら静かに観劇することが大切です。スマートフォンの電源は切りましょう。また、写真撮影や録音は法律により禁止されています。
最近観劇マナーが厳しいという声を耳にすることがありますが、大切なのは周囲への思いやりです。自分がされて嫌なことは他人にはしないというのが鉄則。
参考メディア
「レ・ミゼラブル」に関連する参考メディアはたくさん世に出ています。その中のいくつかを挙げてみました。
書籍
原作小説『レ・ミゼラブル』(ヴィクトル・ユゴー著)
ミュージカルの基となったヴィクトル・ユゴーの長編小説。ジャン・バルジャンの贖罪やフランス革命を背景に、社会的な問題や人間ドラマを描いた壮大な物語です。
「レ・ミゼラブル」百六景
原作を理解するのに役立つ一冊。ミュージカルで描かれている世界を知るのにも最適な書籍と評判です。電子書籍で発売中(紙版は中古が多い)。
レ・ミゼラブル (ポプラ世界名作童話 23)
この書籍は、子ども向けに「レ・ミゼラブル」を簡略化したものです。コゼットやジャン・バルジャンの物語がわかりやすく描かれており、子どもでも楽しみながら「レ・ミゼラブル」の世界に触れることができます。
映像
ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』(2012年映画版)
ヒュー・ジャックマン、アン・ハサウェイ、ラッセル・クロウなどが出演するミュージカル映画版。劇場版に近い演出で、音楽とともに感動の物語が再現されています。
『レ・ミゼラブル』(1998年映画版)
リーアム・ニーソンがジャン・バルジャンを演じた映画。ミュージカルとは違い、原作により近い演出が特徴です。
コンサート映像
『レ・ミゼラブル 25周年記念コンサート』
2010年に行われた25周年記念コンサートの映像。豪華なキャストによるパフォーマンスが堪能できる特別な一夜を収録しています。日本でも人気の高い、ラミン・カリムルーさんがアンジョルラス役として出演しています。
レ・ミゼラブル ザ・オールスター・ステージ・コンサート
2019年にロンドンのギールグッド劇場で上演されたこのコンサートは、マイケル・ボール、アルフィー・ボー、キャリー・ホープ・フレッチャー、マット・ルーカスなどの豪華キャストが出演したことで話題になりました。ディスク版は、ステージの臨場感や感動を自宅で楽しむことができるアイテムです
まとめ
ミュージカル『レ・ミゼラブル』は、登場人物たちの人生の葛藤や成長が描かれ、壮大なストーリーと感動的な音楽で多くの人々に愛されています。このブログを通して、物語の魅力や登場人物の背景、注目すべきポイントをお伝えできていれば嬉しいです。これから観劇される方には、素晴らしい音楽と心揺さぶるドラマを存分に楽しんでいただき、忘れられないひとときを過ごしていただければと思います。