ミュージカル『アナスタシア』東京公演 2023年9月24日ソワレ・25日マチネ

休憩時間の舞台上の幕は開演前と一見すると変わらないのですが…

よく見ると背景に降っていた雪が映っていないんですよね。つまり、2幕からは雪が降っていないパリに舞台が変わるという暗示的な意味合いがあるんじゃないかなと。こんな風にちゃんと物語とリンクしてる良いなぁと。

無事に到着したアーニャたちが解放感からパリの人たちと一緒に弾けまくって歌い踊る♪Paris Holds the Key(パリは鍵を握っている)♪は思わず体を一緒に動かしてしまいたくなるほど楽しいナンバーです。特にセンターで張り切って踊るヴラドがめっちゃ可愛い(禅さん的には「聞いてないぞ!?」な心境だったそうですがwww)。
アニメ版にもこの場面は登場しますが、タイミングが違うんですよね。アーニャがパリでリリーと面会し”アナスタシア”の審査を受けた後、パリの町へ買い物に繰り出すって感じになってる。この時点でディミトリはアーニャが本物のアナスタシアだと確信し(脱出エピソードをアーニャが語ったことではっきりする)、彼女との別れを予感しながら複雑な心境でこのナンバーを歌っています。

ミュージカル版のディミトリは幼い頃宮殿に出入りしてたという設定が無くなっているので、2幕頭の時点ではまだアーニャの正体が”アナスタシア”であるという確信は持ててない感じ(7割以上は察してる雰囲気だったけど)。
このパリの町のシーンで背景映像に”ムーランルージュ”が出てくる。つい先日ミュージカル『ムーランルージュ』を観に行ったのですが、あの時、風車やCanCanの光景に見覚えがあるなぁとおぼろげながら思ったんですよね。今回ついに、最初に見たのはアニメ映画『アナスタシア』のワンシーンだったことをやっと思い出しましたww。

マリア皇太后はロシア革命により家族を一気に失ったことですっかり老け込んで偏屈なおばあさんになってしまい、リリーにも厳しく接しています。アニメ版に出てくる皇太后も不愛想な雰囲気になって再登場しますが、ミュージカル版ほど当たりが強くなかったかなという印象。
皇太后が歌うナンバー♪Close the Door(扉を閉ざして)♪は新曲になります(ここから先はたぶん全部新曲)。アナスタシアと過ごした日々に想いを馳せながら「もう会えることはないのだ」と絶望する姿がとても切なくて胸が痛みました。

ちなみにアニメ版のリリーはちょっとふっくらした印象だったのに対し、ミュージカル版のリリーはとてもスリムな女優さんが演じていたので最初見た時は「誰!??」と思ってしまいました(笑)。

一仕事終えたリリーがストレス発散にやって来たクラブのシーンでのナンバー♪Land of Yesterday(過去の国)♪は迫力満点。皇太后の前ではチンマリしていた彼女でしたが、そこから解放されると全く別の顔が現れる。酒を飲み集まったロシア亡命者たちと歌い踊る姿は痛快で、一つの大きなショーを見ているような感覚でしたね。皇太后の前にいるときと全く違う弾けまくったリリーさんにはビックリですよ(アニメ版のリリーさんは体は大きいのにチョコマカしてて可愛い雰囲気だったのでw)。
歌とダンスが最高潮になったタイミングでいつの間にかその輪の中に合流していたヴラドが登場(笑)。さりげな~く紛れ込んで一緒に踊ってる時のヴラドさんのニンマリ顔が最高だったw。

ヴラドとリリーが恋仲だったという設定はアニメ版と同じですが、ミュージカル版のほうがめちゃめちゃ大人な雰囲気でこれも驚きましたねw。可愛くイチャイチャしてたアニメの光景が印象に残っていたので、大人のセクスィーな魅力をアピールしまくるリリーにヴラドがメロメロになって熱いキスを浴びせていく場面は「ひょえ!??」とビビってしまったwww。なんか見てはいけないものを見てしまったかのような背徳感すら…(笑)。
それから、アニメでは再会した後可愛い感じでいちゃついてた雰囲気だった二人だったのがミュージカル版ではリリーのツンデレがかなりパンチが効いた感じになってたのも印象的でしたね。しかも、再会前までの関係が実は「不毛」だったのも驚いたww。アニメの二人からは全く想像つかないw。いやぁもう、ミュージカル版のヴラドとリリーの場面は色々と驚きの連続でしたわww。

ひとしきりイチャイチャが終わったところで、ようやくヴラドが「皇太后に合わせたい人がいるから仲介してほしい」という頼みごとをすることになります。アニメ版ではヴラドがアーニャをリリーに紹介するため連れてきた設定になっているので、このあたりの描写もだいぶ違いますね。

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アーニャが悪夢にうなされる場面。アニメでは、パリに向かう船の中でラスプーチンの呪いにかかったアーニャが父であるニコライ二世や家族たちとの楽しい夢を見ているうちに嵐の海に引きずり込まれそうになるといった描写でした。寸でのところを異変に気付いたディミトリに救われ、二人の関係が一歩前進するといった感じが好きだった。
ミュージカル版ではすでにパリ入りしてるアーニャが「自分自身が何者か」まだ確信が持てないなかで家族が登場する夢にうなされるといったシーンになっている。ここではアーニャの心の不安定さが浮き彫りになる印象として描かれてるなといった印象でした。

思わず助けを呼んでしまったアーニャの元に駆けつけるディミトリ。自分自身が何者かという問いに近づくにつれ恐怖を覚え震えるアーニャを優しく受け止めてやる姿が本当に素敵。「僕は君がアナスタシアであってほしいと思う」と語り徐々に彼女に希望を持たせてやる。アニメ版のディミトリもカッコよくて好きだけど、ミュージカル版は繊細にアーニャに心を寄せていく青年として描かれているのでその優しさが余計胸に沁みました。
アーニャを元気づけるためにディミトリが大切な思い出話を語る♪In a Crowd of Thousand(幾千万の群衆の中)♪は二人の心が一気に近づくナンバー。幼い頃に偶然出会ったパレードで馬車に乗るアナスタシアを見たディミトリはその姿に心惹かれお辞儀をしたことがあると語る。このくだりに繋がる一言を1幕でちょこっと彼が語っていたのを思い出して「そうだったのか」とグッとくるものがありましたね。このエピソードを聞いたアーニャはそれに導かれるようにかつて馬車から見かけた男の子がお辞儀をしてくれた記憶がよみがえるわけで…、ここのくだりがめちゃめちゃドラマチックでした。

アニメではディミトリが先に”アーニャ=アナスタシア”と気づいていましたが、ミュージカルでは二人同時に”アーニャ=アナスタシア”だと確信しています。こうすることで二人の心の距離がぐっと近づいたように感じるわけですが、ディミトリはそれと同時に”別れ”が近いことも悟ってしまうのがなんとも哀しいです。庶民の自分がプリンセスであるアナスタシアと釣り合うわけがないと悟っちゃうんですよね(涙)。
二人の関係をこれまで見守ってきたヴラドが複雑な心中をそっと歌う♪Meant to Be♪も切なかった…。特に「これまで完璧な計画だと思っていたけれど、二人のロマンスのことを忘れてしまった」と嘆く場面はウルウルッときてしまった(涙)。ちなみに、アニメ版でこのシーンが登場するのはパリへ向かう船の上でアーニャとディミトリがダンスの練習をする場面を見た時になります。ミュージカルではパリに向かう前に二人はダンスの練習してるので時間差がけっこうあるなと思いました。

いよいよアーニャを皇太后に面会させるのをバレエ観劇の後に選んだという展開はアニメと同じ。ただ、ミュージカル版ではバレエシーンをかなりガッツリと魅せてくる演出になっていました(♪Quartet at the Ballet♪)。
いやぁ、もう、本当に素晴らしいものを見せていただきました!!!「白鳥の湖」のシーンを踊るダンサー役の皆さんが魅力的すぎて…!!海外のクリエイターさんが初演演出をつけたときに「日本のものが一番素晴らしい」と称賛したとのことですが、その言葉通りの圧巻のバレエシーン。これはぜひとも多くの方に見ていただきたい。本格的で美しいバレエに客席からも万雷の拍手が送られていました。

このバレエと被せてアーニャ、ディミトリ、グレブ、皇太后がそれぞれの心情を歌うといったミュージカルオリジナルの展開も感動的だったなぁ。チャイコフスキーの古典バレエ「白鳥の湖」とミュージカル音楽がこんなにも見事に融合するとは…!!チャイコフスキーもビックリだと思うよ。

バレエが終わりいよいよアーニャが皇太后と対面する時がやって来る。アニメではバレエが終わった時点でアーニャは皇太后に会えなかった設定になっていますが、ミュージカルではちゃんと会える時間が設けられていました。ただその場面は舞台上では描かれてなくて、彼女の様子が気になって落ち着かないディミトリとヴラドの様子に焦点が当たっていたのが面白いなと思いました。
ヴラドは緊張がピークに達して逃亡ww。一人残されたディミトリ。そんな彼が不安に押しつぶされそうになりながら揺れる思いを歌い上げるナンバーが♪Everything to Win(すべてを勝ち取るために)♪がこれまた切なかった…。アナスタシアが自分自身をようやく見つけ出せたことに悦びを感じつつ、自分と結ばれる未来はないのだということも分かってるというのがなんとも残酷だよなぁと。

そんな胸の痛みに苦悩する中、皇太后に冷たくあしらわれたアーニャが帰ってきて「お金のために渡しを利用したのね」と罵倒されてしまうディミトリが哀しい…。
アーニャがショックのあまり泣きながら走り去ってしまった後、ディミトリは決死の覚悟で皇太后に「彼女は本物のアナスタシアだ」と訴える。無視しようとした皇太后のドレスの裾を踏みつけて引き留めるディミトリはちょっと可愛くて面白かったw。最初は敬った口調だったものの、聴く耳を持とうとしない彼女の態度に苛立ち最後には「あんた」だの「ばあさん」だの失礼極まりない呼び方で非難するシーンはちょっとドキドキしてしまった(汗)。時と場合によっては首をはねられてもおかしくない言動だと思ったのでね(汗汗)。だけど、それだけディミトリがアーニャの本当の姿を分かってほしいと真剣に訴えているわけで…その熱く真っ直ぐな想いにはグッとくるものがありました。

アニメの中ではディミトリが皇太后の車を強引に乗っ取って乱暴な運転をしながら「彼女は本物のアナスタシアなんだ」と訴えるシーンになってます。これはこれでハラハラする行動です(汗)。頑なにそれを拒否する皇太后を説得するためにディミトリはオルゴールを差し出します。この展開もミュージカルとかなり違うところではありますね(1幕の時点でアーニャはディミトリからオルゴールを受け取ってるので)。
オルゴールを見せられた皇太后はそこでようやくアーニャともう一度会う決心を固める。ミュージカルにはその描写がないので、ディミトリの必死の説得が彼女を動かしたという形になってる。それ故、ディミトリが決死の想いで説得する場面は舞台ではかなり重要になってくるなと思いました。

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もう一度アーニャと対面した皇太后は最初は頑なな態度を崩さず、彼女をアナスタシアだと認めようとしていませんでした。アニメ版よりもミュージカル版のほうがアーニャのことを拒絶する姿勢が強いなといった印象。
そんな彼女の気持ちを変えるキーアイテムになるのが”オルゴール”なのですが、アニメではそれを動かす鍵をアーニャが持っていたことが決定打になってます。対してミュージカルでは、アーニャ自身の手に既にオルゴールがあって裏のネジを2回回すと開く仕組みに早々と気づいてる。このオルゴールの動かし方をアーニャが皇太后に見せた時にようやく信じてもらえるという展開になってました。オルゴールの鍵が登場しなかったのはちょっと寂しいかなと思いましたが、これはこれでとても感動的だったのでよかったかも。

これまでアニメとミュージカルがけっこう描写が違ったなと思うシーンがありましたが、そのなかでもちょっと残念に思ったのがディミトリが皇太后からの報奨金を辞退する場面が”台詞”のみでしか表現されていなかったことですかね。ここは舞台でもちょっと見てみたかった。
それから、アーニャが”アナスタシア”として着飾り社交界へ向かう途中でぎくしゃくした関係のままになっていたディミトリと鉢合わせしてしまうシーンもミュージカルではカットされてたのが残念です。どう振舞っていいのか分からずツンケンした態度を取ってしまったアーニャに対し、ディミトリが悲しそうな顔で「妃殿下、夢が叶いお慶び申し上げます」と頭を下げるディミトリがめちゃめちゃ切ないんですよ~。これを舞台版でも見てみたかった。

アナスタシアと再会できたことですっかり人間が丸くなった皇太后w。ディミトリが報奨金を受け取らなかったことを告げ、アーニャに彼への想いを気づかせるべく後押しする場面はアニメとだいたい同じ。
一人になった彼女が歌う♪Everything to Win(リプライズ)♪はとても感動的だった。ディミトリがアーニャとの別れを悟りながらも彼女への想いを捨てられない気持ちを歌ったナンバーのリプライズを歌うっていうのが良いですよね。ディミトリの苦悩が報われたように思えたので。

アニメでは社交界の場へ出ていこうか悩むアーニャがラスプーチンの仕掛けた罠にはまってピンチに陥ってしまうという場面がクライマックスに出てきます。ここがすごくディズニーっぽい演出だったんですよね。
ミュージカル版ではラスプーチンがいないので悪と戦うみたいな展開にはならないのですが、その代わりグレブが彼女の前に最後の壁として大きく立ちはだかることになります。ただ、彼は決して”悪”ではないわけで…。それどころかむしろ時代に翻弄された犠牲者でもあるのでアーニャと対峙する場面は見ていてものすごく心が痛みました。

アーニャが何者であっても消せという上官命令に従い彼女の前に立ちはだかったグレブ。冷静に任務を遂行することだけに集中しようとしたものの、凛とした表情で死をも恐れない彼女の姿を目の当たりにして心が激しく乱されてしまう。アーニャの前でどうしようもなく混乱しやがて狂気に囚われていく様はあまりにも哀しい。亡き父の正義を証明しようともがく気持ちがリアルに伝わってきて本当に切なかった。
ただ、苦しみ抜いた先の展開が思っていたものと違ってビックリ(汗)。「えっ!?あ…、そうか、よかった・・・んだよね?」みたいな。その結末もありなんだなと。ちょっと虚を突かれた感覚になってしまった。

♪Finale♪はアニメ版では船の上でダンスをするアーニャとディミトリの幸せな場面で〆られていましたが、ミュージカル版では新たな旅の始まりを予感させる雰囲気になっていたのが印象的です。

終演後の幕を見ると…あることに気が付きます。休憩中の時までは浮かんでいた「ANASTASIA」の文字が消えているのです。舞台を最後まで見終わるとこの意味が胸に迫ってきますね。これを見て初めて『アナスタシア』の物語が完結したんだとも思えるし、それと同時にここから始まるんだという希望も感じられます。最後の最後まで本当に素敵な作品でした。

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主なキャスト感想

アーニャ: 木下晴香さん

Wキャストの葵わかなちゃんが休演ということになり連投出演となった晴香ちゃん。2日目は少し声に揺れを感じることもありましたが、それも気にならないくらい明るく溌溂とした素敵なアーニャを熱演してくれました!”はるーにゃ”はお転婆な女の子っていうよりかは「男前」なカッコいい爽やかさが印象的。ディミトリとケンカしながらも徐々に彼の優しさに気づき、心を開いて優しい女の子らしい表情を見せるようになっていくお芝居もとても良かったです。

特に印象に残ったのはやはり1幕ラストに歌うビッグナンバー♪過去への旅♪。自分自身が見つかるかもしれないといった希望と喜びが目一杯感じられて、思わず涙がこぼれました。あの歌いっぷりはホント凄かったです。

ディミトリ:相葉裕樹くん(24日ソワレ)

相葉くん、本当に見るごとに歌唱力も芝居力も力強くなっててスゴイなぁと感動してしまう。ディミトリ役は彼の雰囲気にぴったりですね。登場したときからキラッキラした存在感が眩しくて思わず惹き寄せられてしまった。アーニャに対しての表情もコロコロ変わるし、彼女と接していくうちに恋愛感情と現実の狭間とで揺れ動く心の表現も繊細で見ごたえがありました。個人的に圧倒されたのは♪幾千万の群衆の中♪のシーンかな。素晴らしい歌唱力で鳥肌が来ちゃったよ!

グレブ(24日ソワレ)/ディミトリ(25日マチネ):海宝直人くん

今回全くタイプの違う二役を演じている海宝くん。いやぁ…、なんかもう、言葉が出てこないくらい異次元級のスゴイものを見せてもらいました。運良く2日の間に両方のキャラを見ることができたのは幸運だった。彼は一体どこまで伸びていくのだろうか。

グレブは勤務中はもう本当に表情一つ変わらないくらい冷徹で静かな青い炎を燃やし続けているような恐ろしさがあるのですが、アーニャと対するときは一転して”チャーミング”な青年の顔を見せる。特に怯える彼女を見ておどけて見せる場面はめちゃめちゃ可愛くて「さっきまで冷酷だった人と同一人物なのか!?」と目を疑ったほどの変わりっぷり。アーニャに会ってるときと勤務に徹している時のメリハリの付け方がくっきり分かれていたのが非常に印象的でしたね。
どのシーンも凄かったんだけど特に突き刺さったのは最後にアーニャと対峙した場面。このときの海宝グレブの芝居はほんっっっとに衝撃的でした。

その翌日にディミトリの海宝くんを見たのですが…あまりの別人っぷりにただただ驚愕。登場したときのあのキラキラした少年のような瞳と屈託のないニカッとした笑顔がとにかく眩しくて一気に魅了されてしまった。前日まで苦悩と葛藤に満ちていた人物を演じていたのが信じられないくらい明るく真っ直ぐなキャラクターで。よく短い間にこれだけ約を切り替えて演じられるなとビックリ。
歌声の伸びも神がかってた!!グレブのソロのときも割れんばかりの拍手が沸き起こっていたけど、ディミトリのソロのときも本当にすごくて。特に♪俺のペテルブルク♪は鳥肌級の歌いっぷりでショーストップ状態になったほどでした。海宝くんのディマはこの日が最初で最後だったんですが、本当に良いものを魅せてくれて…感謝の一言ですね。

24日にグレブの悲しい姿を見てから25日のお茶目で可愛い(目をつぶる仕草が最高に萌えた)ディミトリを見たので”最終的にハッピーに慣れてよかった”と安堵してしまった私ですw。

グレブ: 田代万里生くん(25日マチネ)

ここ数年、ダークなキャラクターも魅力的にハマる演技が光る万里生くん。今回のグレブ役も楽しみにしていました。前日に見た海宝グレブはどちらかというと”静”のタイプに思えたのですが、万里生グレブは圧が強い熱血タイプだったのがとても印象深かったです。見る前まではクールな感じで来るのかと思っていたので、のっけから激熱な雰囲気にちょっと驚いてしまった。反対分子に対しては容赦なく排除に動くって感じ。

アーニャに対してはやはり一目惚れでドギマギしてしまうんだけど、あまり動揺した姿を見せずに直球で勝負していく雰囲気だったのが面白かった。連行されてきた彼女を見た瞬間の反応も熱血プロポーズ的で、そんなところがちょっと微笑ましいなと。

ただ、この公演中に急遽別の舞台に出演したりと超多忙だったことが影響してか、いつものまっすぐ響く美しい歌声が影を潜めてしまっていたのは心配になりました。万里生くんの声が割れてるの初めて見たよ…。この直後に休演ということになってしまい本当に残念でしたが、また元気に復活して素晴らしい歌声を響かせてほしいと思います。

ヴラド:石川禅さん(24日ソワレ)

97年のアニメ映画でディミトリの声を担当していた禅さんが時を経てその相棒だったヴラドを演じることになるなんて…なんかこれだけでもう感無量でした。最初に登場したシーンの時は「またアナスタシアの作品で禅さんに会えた」という感動でちょっと泣いてしまいましたよ。

禅さんのヴラドは天真爛漫で笑顔がとっても魅力的。そして何より包容力と温かみのある雰囲気が最高です。アーニャに少しずつ心惹かれていくディミトリを間近で見て思いやる姿はすごく泣ける。ある時は兄のように、ある時は父のようにそっと寄り添っていく感じが素敵でとても癒されました。
ビックリしたのが2幕のダンス。けっこう激しくシャキシャキ動く振付けになっているんですが、禅さんヴラド、満面の笑顔でめっちゃ軽やかなステップを踏んでて思わず心の中で「おぉっ!!」と感嘆の声を上げてしまった。何でもこの役のために8キロのウォーキングと300回の腹筋を欠かしていないのだとか。もうベテランと呼べる立場なのにその努力が本当に素晴らしいと思います。

ヴラド:大澄賢也さん(25日マチネ)

スタイリッシュな印象が強い賢也さんがどのようなヴラドを演じるのかとても楽しみにしていました。大きな愛で包み込む父親のような禅さんヴラドに対し、陽気で明るくオシャレな雰囲気でディミトリに寄り添い続けるお兄さんのような雰囲気だったのがとても良かった。
愛するリリーに対してはスマートに愛を囁くセクスィーさが全身から漂ってましたねw。隠し切れないあの色気って感じ。私が見た時は堀内さんリリーとのコンビだったのでコミカルで可愛い二人に見えたのですが、マルシアさんや朝海さんとのコンビだったらかなり大人向けな場面に見えちゃうかも!?

それからやっぱり立ち姿がとても美しい。元々ダンサーさんということもあって一つ一つの動きにメリハリがあり2幕冒頭のシーンは見応え充分でカッコ良かったです。

リリー:マルシアさん(24日ソワレ)

マルシアリリーはとにかくセクスィーで全てにおいて攻めの姿勢を感じました。キャラ的にはコミカル要素満載なんだけど、その中にもどことなく危険な棘が潜んでるといった雰囲気。ヴラドに対してのツンデレっぷりがかなり強烈だったのが面白かったw。
皇太后に対してはひたすら忠誠を誓うといった感じ。どんなムチャブリをされてもきっちりお仕事こなすデキる女子的なキャラだったので、そこからのハメの外し方が大胆不敵で圧倒されてしまいました(笑)。

リリー:堀内敬子さん(25日マチネ)

堀内さんのリリーは皇太后の前ではとてもしおらしい雰囲気だったのが、仕事が終わった後は思いっきり羽目を外して大胆不敵になってしまう二面性がクッキリしてたのが面白かったですね。それに何といっても、可愛らしい!!どんなにセクシーに振舞ってもちょいちょいコミカルな表情が顔を出してしまうといった感じが最高だったし見ていてとても楽しかった。
皇太后に対してはマルシアさんに比べてちょっとソフトな印象だったかな。家族を失った悲しみに押しつぶされそうな彼女にそっと寄り添うような優しさが垣間見えたのが印象的。

マリア皇太后:麻実れいさん

 一番最初のシーンで麻実さんのマリア皇太后を見た時、あまりにもアニメのキャラクターと似ていたのでビックリ。目の感じや顔にできた皴などから高貴なオーラまで本当にイメージ通りでした。
哀しい過去に囚われなかなか心開けなかった皇太后がアーニャをアナスタシアだと確信した時のお芝居は胸打たれるものがありました。
ただ、歌い方にちょっとクセがあるのは気になったかな。麻実さんを拝見したのが久しぶりだったのでそう感じてしまったのかもしれません(私の中では未だに『蜘蛛女のキス』の迫力のオーロラ役が残ってる)。

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後述

複数回分のチケットを購入して待ちわびていたにも関わらず1公演も観れないまま終わってしまった4年前。以来ずっと悔しい思いを引きずっていたのでようやく見ることができた喜びは本当に一入でした。

97年のアニメ映画の楽曲がほぼ使われていたことも嬉しかったし(ラスプーチン以外はたぶん網羅してたのでは)、あの当時ディミトリの声と歌を演じていた禅さんが再び『アナスタシア』の世界に戻ってきてくれたことも嬉しかった。
ライトに楽しめる雰囲気だったアニメとは違い、時代背景や複雑な人間の感情にスポットライトを当てたミュージカル版。今の世界情勢と重ね合わせてみてしまう部分も多く、色々と考えさせられる作品だったように思います。

体調不良の役者さんが多くなってきたのが気がかりで心配ですが、そこをカンパニー全体で助け合いカバーしあって公演を続けてくださっていることには本当に感謝。せっかく4年ぶりのリベンジ公演が実現しているので、最後までどうか止まることなく幕が開いてほしいなと祈るばかり。

次回は大阪公演観劇を予定。個人的にかなりバタバタとなる中での遠征になる可能性が高いのですが(汗)また元気なカンパニーの皆さんに会えることを楽しみに待ちたいと思います(ブログ書く時間があるかちょっと不安 汗)。

これまでのミュージカル『アナスタシア』感想一覧

24日ソワレ公演後にアフタートークショーがありました。レポは次の記事で紹介します。

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