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ミュージカル『ミス・サイゴン』 2017.01.13

2017年最初の観劇はミュージカル『ミス・サイゴン』となりました。

まだ舞台観劇にハマっていない頃の学生時代に初演を観て以来、上演ごとに足を運んでいる作品です。ストーリー的には決して明るくハッピーエンドなものではないのですが、心のズシンとくる人間ドラマや、そして何より力強く美しい音楽がとても素晴らしく何度も観たくなってしまうんですよね。個人的にあまり重いテーマのものは苦手意識があるんですけど、この作品は特別です。
2016年度の公演は終了してしまいましたが、また数年後に再演してくれると思うのでぜひ多くの人に観てほしいなと思います。

以下、ネタバレを含んだ観劇感想になります。

 

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2017.01.13マチネ公演 in 梅田芸術劇場(大阪)

主なキャスト

  • エンジニア : ダイアモンド☆ユカイ
  • キム :  笹本玲奈
  • クリス : 上野哲也
  • ジョン : 上原理生
  • エレン : 三森千愛
  • トゥイ : 神田恭兵
  • ジジ : 中野加奈子

ミスサイゴン大阪0113マチネ

全体感想

マチネは比較的お客さんが少なかったのでちょっとビックリ(汗)でしたが、個人的にはもう胸いっぱいの気持ちが広がってかなり泣きましたよ。キャストの皆さんも力が入った熱演でびりびり感情が伝わってくるような、本当に素晴らしい公演でした。カーテンコールでスタンディングが起こらなかったのが唯一残念。本当なら立ちたい気持ちがあったけど、率先して立つ勇気がなかったので(苦笑)座ったまま盛大な拍手を送ってきました。でもほんと、すごく良かったです!!

もう何度も観てきている作品ですが、数年前に演出ががらりと変わってそれと共に歌詞の訳もだいぶ変化しました。演出が変わる前のサイゴンは「ザ・ミュージカル」って雰囲気でしたが、新演出になってからはミュージカルなんだけどなんだかストレートプレイを観たようなずっしり感を感じるようになりましたね。より歌詞がリアルになって、人間ドラマが浮き上がるような感じ。セットも全体的にコンパクトになって人力で動かす事が多くなりました。

ここからは少しだけ個人的難点を。

セットに関して一つ残念に思うのが…キムとクリスが初めて愛を確かめ合う大事なシーンが上手(舞台向かって右手)側に集中してしまっていること。あれ、座る場所によっては見えませんからね…(苦笑)。そのあたりは不親切な演出だなと今でも思ってます。

歌詞がリアルになったという点では、物語の空気感がより濃密に伝わるようになっていいのですが…ただ、これ以上いじってほしくないなと思う場面もちょいちょい(汗)。
そのひとつが、冒頭「ドリームランド」での乱痴気騒ぎシーンです。前回公演でもけっこう攻めてる歌詞だなぁと見ていてタジタジになったんですがw、今回さらにリアルになってまして・・・え~と、これ、未成年には見せづらいんじゃ・・・と思うことしばしば(苦笑)。当時の退廃した雰囲気をよりストレートに伝えたいという心意気は分かるんですけど、多くの人に見られる大作ミュージカルという点では、正直、あれ以上濃くしてほしくないです。あそこまでリアルに歌わなくても観る方は伝わりますから…。むしろ薄めて元に戻してほしいとすら思っちゃう(苦笑)。
サイゴン陥落の時のビザ発給シーンでのあの新しい演出もどうよ?と思わなくもなかったぞ。言わんとすることは分かるけど、このミュージカルでそこまでリアルに見せなくてもいいんじゃない?みたいな。そう思ったの私だけかな??「アメリカンドリーム」での美女の衣装も最初観たときビックリしたんだけどw、まぁ、そこは慣れということでしょうか(汗)。

私が感じる違和感はこのくらい。それを超越するくらいこの作品の持つ力はとても強いです。

キムとクリスの愛情のシーンを観るといつも本当に切ない気持ちになるんですが、今回さらにそれを強く感じましたね。「ウェディング」シーンにそれが顕著に出ている。キムはクリスと結婚する気持ちがものすごく強いのに対して、クリスは現実逃避する過程で出会った自分を癒してくれる愛しい存在としてキムを見ている。なので彼女が「結婚式の歌」と言った時に一瞬「え!?」と戸惑いの表情みせてしまうんですよね。愛情の深さと重さは同じのはずなんだけど、認識が違うみたいな…。これが後の悲劇につながるのでとても切ないです。
どんな苦境にあってもクリスを一筋に信じ切っていたキムが衝撃の事実を知るシーンは見ているこちらも胸が苦しい…。傍から見ると一見クリスはとてもひどい男に思えるんだけど、でもベトナム戦争の地獄を見てきたという背景があると思うと責める気持ちにもなれないわけで。今回二人の愛の軌跡の物語を見て、改めて戦争がもたらす大きな悲劇について考えさせられてしまいました。
ちなみに、「ウエディング」のシーンでクリスは以前周囲に促されて靴を脱いでいたと思うんですけど、今回見たら自ら早い段階で脱いでましたね。前の公演からだったかな(ちょっと失念…)。タイミング的に早くに脱いだ方が後々やりやすいというのもあったのかもw。

愛の軌跡の物語で私がもう一つこの作品の中で注目しているのがトゥイとキムの関係です。トゥイの矢印は婚約を交わす前からたぶんずっとキムに向いていたと思うんだけど、キムはそれを良しと思ってなくて…そこにきて彼女はクリスとの愛に一直線の状況になってしまうわけで。もうこの、トゥイの哀しき一方通行の恋が切なくてたまりません!
このマチネ公演では、神田くんが私が望んでいたトゥイ像をついに魅せてくれてまして…もう、めちゃめちゃ泣きました(涙)。神田トゥイに関してはキャスト感想のところでもう少し述べたいと思います。

主なキャスト別感想

ダイアモンド☆ユカイさん(エンジニア)

ユカイさんがミュージカルに…しかも、サイゴンでエンジニアに決まったと聞いたときはかなりビックリしました。ユカイさんとミュージカルの接点が見えなかったもので(笑)。なので最初はどうしても不安の方が大きかったですね。ほんとにミュージカルやりたいって思ってたのかなみたいな疑心暗鬼もあったので、正直(すみません 汗)。

ところが、蓋を開けて見たらびっくりしました!エンジニアという役柄に見事にはまっていたんですよね~。これは嬉しい驚き。実は前の年に東京帝劇で1回だけユカイさんのエンジニアを観て「けっこう好きかも!」と感動したのですが、大阪ではそれ以上に”エンジニア”として舞台の上でお芝居して生きていることを感じ…個人的にとても嬉しかったです。

ユカイさんのエンジニアは小ズルくて悪っぽくそれでいてめちゃめちゃ上昇意識だけは高いヤツ的雰囲気がハマっていたんですが、それ以上に私がいいなと思ったのが、キムとの関係です。ユカイ@エンジニアはいつも小刀を持ってるような鋭さがあるキャラなんですけど、逃避行をキムとしていく中で彼女に対して少し情が移ってしまうみたいな変化が見られるんですよ。バンコクシーンではキムのお兄さん的雰囲気をすごく感じて…さとしさん以来だったかなぁ、エンジニアに「兄」な部分を覚えたのは。初めてキムを連れてきた時にナイフで服の端っこを切っていた人物からは明らかに変化してた。それ故に、ラストシーンでの色んな彼の絶望感がすごく説得力を持って伝わってきたように思いました。
「アメリカンドリーム」はエンジニア役の見せどころでもあるのですが、大阪公演ではサラニノリノリで動きにも余裕があってとても面白く楽しんでみることができました。それ以外のシーンでも壁にぶつかるみたいなアドリブもあったりで、あぁ、ユカイさん、ミュージカルのお芝居楽しんでるなって感じて。「はい、ホーチミン♪」のシーンでは多少スベった感もありましたが(特にロックンロールと叫ぶのには賛否両論あったらしいですけど私は良いと思いました)w、個人的にはとても好きなエンジニアでした。次の再演でもぜひ見てみたいです。

笹本玲奈さん(キム)

もう長いことキム役を演じているだけあってキャラクターに深みがありますね。最初の頃はがむしゃらさが前面に出ていた玲奈さんのキムでしたが、今回は女性らしさというか…キムの持っている優しい柔らかさみたいなのが感じられたのがとても印象的でした。
それを強く感じたのがトゥイに対するお芝居です。基本的にキムはトゥイとの婚約を最初から拒絶しているんですが、今回見た玲奈キムは彼女に迫るトゥイに対して一言一言すごく丁寧に諭すように歌っていたし、必死に自分の気持ちをわかってもらえるように訴えていました。ここの芝居がとにかく泣けましたね(涙)。

タムへの愛情は演じるごとにとても深く、それと同時にタムを通じてクリスをひたすら愛している気持ちも痛いほど伝わってきました。玲奈さんのキムはもう本当にクリスに心酔しきっていて、彼がいない人生はあり得ないというのがビリビリ伝わるんです。それ故に、真実を知った時の「胸ふさがれ、息ができない」という歌詞がものすごく生きている。見ているこちらも苦しくてたまらなくなって涙しちゃうみたいな…。

最高に素晴らしいキムを演じてくれてありがとう。それから、結婚おめでとう!玲奈さんには幸せになってほしいな。

上野哲也くん(クリス)

上野くんのクリスはイケメンという感じではないんだけど(ごめんなさい 汗)、泥臭くて人間らしさが前面に出ているので好感が持てます。アメリカ兵というよりかは見た目もあるかもしれないけどどこかアジアちっくなクリスと思ってしまうのですが(笑)、ベトナム戦争で気持ちを病んでしまった芝居はすごく良かったと思います。そんなクリスだからこそ、あの短いひと時にピュアなキムに惹かれてしまったというのも説得力があるんですよね。

後半のクリスはエレンとのこともあり苦悩の連続。やるせなさを涙ながらに告白するシーンは思わず惹きこまれます。ただもう少し苦悩だけではない訴える力みたいなものも出てほしかったかも…という気はしましたね。

上原理生くん(ジョン)

上原くんのジョンはもう、とにかく1幕と2幕の差がものすごく激しい(笑)。ミスサイゴンが新しい演出になって一番キャラクター的にキャラ設定が変わったのはジョンではないかと思ってるんですがw、上原くんの芝居は特にそれを感じさせてくれます。
というのも、1幕のジョンの弾けっぷりがすごいんですよ(笑)。歌声にも重みと迫力があるからかもしれませんが、ドリームランドでのシーンで一番テンションが高く吹っ切れてるw。新演出になってからジョンがジジを獲得することになったこともあってか、かなりのゲ○男に描かれていて…これ、後半大丈夫なんだろうかと余計な心配をしてしまうほど(汗)。とにかくあの冒頭の熱い吹っ切れ具合が笑っちゃうほど迫力ありましたw。

それが、2幕ではベトナムに残された子供を救おうと活動するわけですからね~。ジョンの変化のドラマは新演出になってからさらに知りたいと思ってしまう(汗)。「ブイドイ」は熱さを秘めながらも一言一言すごく大事に客席に向かって演説で訴えるように歌っていたのがとても印象的でした。
が、クリスとエレンの決断を非難するシーンは…1幕のはっちゃけっぷりが浮かんでしまって、心の中で「お前が言うなよ」ってツッコミ入れちゃった(笑)。そんな上原ジョン、嫌いじゃないですけどねw。

三森千愛さん(エレン)

見た目は今まで見てきたエレンと比べると少しふっくらしている印象でしたが、彼女の苦悩がリアルに伝わってくるとても切ないお芝居でとても印象深かったです。
エレンの見どころは新演出から加わった新曲「メイビー」。キムが真実を知ってショックを受けたのを目の当たりにして歌われるナンバーなのですが、最初の頃聴いたときは曲調も歌詞もどこか物語から浮いているようでちょっと違和感あったんです。でも、今回三森エレンでこのナンバーを聞いて、彼女の気持ちが色々ストーンと腑に落ちた気がしたんですよね。葛藤するエレンの心の動揺が伝わってきてとても切なかった…。

クリスとも正面からじっくり向き合って必死に受け止めようとするエレンでとても好感が持てました。キムの悲劇が浮き彫りになりがちな作品ですが、エレンも犠牲者の一人なんだよなって改めて思いました。

神田恭兵くん(トゥイ)

トゥイ役は2004年~2014年まで約10年間演じていた泉見洋平くんがとにかく素晴らしくて…彼のトゥイ役を観るために何度劇場に足を運んだか分からないくらい大好きでした。トゥイというキャラクターの印象がとにかく彼の芝居を観てガラッと変わったんですよね。正直なところサイゴンは洋平君のトゥイ見たさに通っていたといっても過言ではなかったんです(笑)。

その彼がトゥイ役を卒業して…違うキャストで何回か見たのですがあまりに洋平くんのトゥイが好きすぎたせいかいまいちピンとこないことが多かった(汗)。
しかし、今回久しぶりに神田くんが演じるトゥイを見て…洋平トゥイに感じた衝撃と同じような感動を得ることができたんです!!正直、神田くんがこんな私好みのトゥイを演じてくれるようになっていたとは思わなかったので本当に嬉しい驚きでした。洋平くんとダブルキャストでやっていたころよりも、見ていてキューーーンとくるような表情を何度も魅せてくれて…何度泣かされたか分かりません。こんなことなら神田くんのトゥイ回をもう1回追加しておけばよかったと思ったほど。

神田トゥイはもう真っ直ぐにキムのことが大好きなんですが、何度も拒絶する彼女に「なんでわかってくれないんだっ」ってそれはもう切ない表情連発してくる(涙)。一番ぐぉっと来たのが部下たちにキムとエンジニアをいたぶらせるシーン。暴行を受けるキムの悲鳴を神田トゥイは後ろを向きながら涙を必死にこらえながら耐えまくってて…「本当はこんなことしたいんじゃないのに」っていう素直な感情が痛いほど分かってしまい見ていて涙が止まりませんでした(泣)。
それだけにねぇ…あの、タムとの一連のシーンはもう…トゥイの絶望感が痛いほど分かってしまって思い出しただけでも涙が出ますよ…。なんていうか、彼のトゥイは感情が素直に表に出てくるキャラになっていたのでなおさら泣けました。

こんなトゥイを待ってたんだよ~~!!次回上演されるときはもっと見てみたいと思わせるトゥイでした。神田くん、ありがとう!

中野加奈子さん(ジジ)

新演出になってからよりキャラが濃く描かれているうちの一人でもあるジジ。ジジの活躍はほぼ1幕のドリームランドなのですが、彼女はGI(アメリカ兵)と懇意になってアメリカへ渡り夢のある安定した生活を渇望している。その想いがより強く描かれるようになりました。ジジの相手をするのがジョンに変わったことでさらにキャラが浮き出ている気がします。

中野さんのジジは逞しさの中に気持ちの脆さみたいな部分も感じられて、ジョンに裏切られた後の怒りの中に虚しさや悲しみを秘めていた表情がとても印象的でした。「ウェディング」シーンでも幸せそうなキムを見てどこか世捨て人みたいな表情してましたし。ジジの哀しさみたいな部分が強く感じられてとても新鮮でよかったです。

2017.01.13ソワレ公演 in 梅田芸術劇場(大阪)

主なキャスト

  • エンジニア : 市村正親
  • キム :  キム・スハ
  • クリス : 上野哲也
  • ジョン : パク・ソンファン
  • エレン : 知念里奈
  • トゥイ : 藤岡正明
  • ジジ : 池谷祐子

ミスサイゴン大阪0113ソワレ

全体感想

遠征での観劇なので1日に2本観るという強行スケジュールでした(いわゆる、マチソワw)が、大好きな作品なのでソワレもかなり集中して観ることができました。
キャスティングも上手い具合にマチネと入れ替わっていて(クリス以外)…東京で小野田君のクリスも見ていたので短期間でほぼ全キャスト制覇となりました。通いができない環境なのでなかなかダブルやトリプルのキャストを全部見ることができなくなってしまったのですが、今回はラッキーでした。駒田さんのエンジニア再演を観れなかったことだけがちょっと心残りです…。

ソワレは市村さんのエンジニアということでお客さんの数が明らかに多かったですね。トイレに並ぶ列にそれが顕著に表れてました(笑)。ユカイさんのエンジニアもすごく良かったんですけど、やはり市村エンジニアラスト公演って銘打ってましたからこちらに集中するのは仕方ないのかなと思ったり…。
そうそう、後から気づいたのですがアンサンブルでイヴォンヌ役の木南清香さんが出演されてたんですね~。女優の木南晴夏さんのお姉さんで昨年ヨシヒコで姉妹共演しててちょっとした話題になってました。サイゴンに出演されているの気づきませんでした(汗)。

ソワレ公演は市村さんの圧巻の芝居効果もあってかものすごく盛り上がってスタンディングオベーションとなり何度も幕が開きました。確かに市村さんはすごかったんですが、全体として個人的に感動できたのはマチネの方だったのでちょっと心中複雑だったりして(苦笑)。一人の役者が素晴らしくても他との相性がこちらと合わないとなかなか納得できる舞台ってことにならないのが観劇の複雑なところでもあり面白いところでもあります。

サイゴンの演出に関して、変わったなと思った点についてマチネに付け加え。
「ブイドイ」のナンバーの時、以前は歌が盛り上がってくる途中から映像が流れていたのですが、今回見たら最初からブイドイの映像が流れていました。前回公演からだったのかな?あまり覚えていないけど…。個人的には途中から流したほうが効果的だったかな~と思ったりもしますが…。
それから、「ナイトメア」シーンでのヘリコプター。東京で見たときは演出が変わる前と同じヘリが上から降りてきていたのですが、大阪で見たら映像になってました(汗)。あのヘリコプターはやはり帝劇だけでしか飛ばせないのか…。まぁ、演出変わる前からずいぶんとトラブルもあったので東京で見たときはけっこうドキドキもしたんですが(ヘリトラブルで芝居が止まることも多かった時代があったもので 苦笑)やはり本物が出てくると臨場感あったんですよねぇ。映像もすごく良くできているのでいいのですが、なまじ東京を見てしまったのでちょっとフクザツな気持ちにならなくもなかったです。

ちなみに座席はなぜか、マチネに座った場所のすぐ隣でした(笑)。長い間観劇してますがこんなこと初めてw。個人的には逆側からも見てみたかったですけどね。

主なキャスト別感想

市村正親さん(エンジニア)

初演のエンジニアを観ているだけに、あぁ、これでもう市村さんサイゴンを卒業してしまうんだなぁというちょっとセンチな気持ちで見てしまいました。サイゴンは装置の関係などもあって初演が終わってから再演されるまでにずいぶん時間がかかったのですが、間を置いていても市村さんのエンジニアはいつも強烈な存在感を放っていました。
前回公演の時は病気が発覚してしまい出演するはずだった公演を観ることができませんでしたので(たしか筧さんが急きょ代役を務められたんですよね)本当に今回久しぶりの市村エンジニアとの対面でした。

本当にねぇ…あの年齢を感じさせないエンジニアのパワフルな魅力はなんなんでしょうか。もう市村さんの中に「エンジニア」という人物が沁みこんでました。市村さんが演じるとただの小ズルこしい男ではなくてそこにユーモアも感じられるので憎めないんですよねぇ。
バンコクシーンでの冒頭でお客さんとちょっとしたキャッチボールするシーンもあるんですが、市村エンジニアが「まだアメリカ行けてないの」って言うと客席もワッと盛り上がったりしてて、ああいう空気出せるのは市村さんしかいないなぁって改めて思ってしまった。「♪はい、ホーチミン♪」のフレーズの後にどのエンジニアもアドリブ入れてくるんですが、そこのシーンでも笑いをきっちり取れてるのは市村さんだけかなぁ。他のエンジニアさんはだいたいスベることが多いんで(笑)。こういう風に、エンジニアという役を演じつつも客席の気持ちをしっかり乗せられる市村さんは本当にすごい役者だと実感しました。

圧巻は「アメリカンドリーム」でしょう。年齢を感じさせないあの軽やかなステップにはエンジニアの唯一のともいえる純粋なアメリカへの羨望がこれでもかってほど感じられます。なんか今回もうこれで最後なんかなぁと思いながら見たんで、ちょっと泣けてしまいました(涙)。
キムの顛末を見届けた後の崩れ落ち方の芝居もすごく深くて…。エンジニアの色んな想いを全て打ち砕かれてしまったんだなって見ていて納得できるもので見ていてずしりと来ました。

市村エンジニアはやはり偉大でした!!長い間エンジニア役、本当にお疲れ様でした!!素晴らしい感動をありがとうございました!

キム・スハさん(キム)

本来は昆夏美さんのキムのはずだったのですが、体調不良になってしまったためにキム役は笹本さんとキムさんとでカバーする日程に急きょ変わりまして。ソワレはキムさんで観ることになりました。

最近は海外の役者さんが日本のミュージカルに進出してくる機会が増えましたが、日本語がちょっと怪しかったりで違和感を持つことがどうしても出てくる場合があるんですよね。でもキムさんはかなりスムーズな日本語だったと思います。それにほぼ歌のミュージカルなのでそのあたりでも救われていたかなと。
見た目はこれまで見てきたキム役のなかで一番リアリティがあったかもしれません。日本人は慣れした顔つきというのがここで生きていたように思います。キムが慣れない場所で懸命に生きる姿みたいな部分も演じてるキムさんの環境ともちょっと重なって見えたりして、そういった雰囲気が出ていたのはとてもよかったです。

ただ、感情のお芝居という点で言うと…個人的には合わなかったなというのが正直な感想です(汗)。歌はとても上手いのでその部分では全く違和感ないのですが、なんだろう、韓国の役者さんってミュージカルとかではあまり感情のお芝居を前面に出さないことが多いのかな?それか私がキムさんにそういう風に感じてしまっただけかもしれないんですけど…、なんか、他のキャストさんとの芝居の空気とかみ合っていないように思えてしまったんですよね。
歌の迫力はあるのに、なぜか時折すごく淡々としているように見えてしまって…人形みたいだなと思うことも正直ありました。それ故に、クリスへの愛も予想外に淡泊に思えちゃって(汗)、クリスの方がキムに対して愛情の比重が重いように見えてしまったw。そういう見え方も新鮮っていえばそうなんでしょうけど、私はその逆パターンのほうがグッとくることが多いのでどうしても違和感を覚えてしまいそれが最後まで抜けませんでした。

「ナイトメア」のシーンも、なんか緊迫感が足りない気がしたんですよねぇ…。彼女のキムはクリスが居なくても生きていけるんじゃないかなって思えてしまったくらいで(苦笑)。
うーーん、好みの問題だと思うんですが私はちょっとキムさんのお芝居は苦手でした。ごめんなさい。

パク・ソンファンさん(ジョン)

マチネの上原くんが超パワフルなジョンだったのに対し、ソワレのパクさんのジョンはどちらかというとソフトで軽やかなイメージがありました。上原くんがパワフル過ぎたのかもしれませんが(笑)。

「ドリームランド」での登場もテンションは高いんだけどその中にもどこかスマートさが感じられて、あぁ、このジョンは女性にモテモテだっただろうなと思わせる何かがありましたねw。軽やかに遊んでる男みたいなイメージでちょっとかっこよくも見えたりして。
その点ではちょっと軍人っぽくはなかったかも。骨太さがあまり感じなかったので…。でもそれはそれで個性があって嫌いではありません。

すごく良かったなぁと思ったのが「ブイドイ」。最初の軽やかなイメージから一転、最初からすごい力が入っているのが感じられて、途中からは動く範囲も広くなりまさに大熱弁!!訴える力がとても強いんだなぁと見ていてとても感動的でした。

知念里奈さん(エレン)

知念さんは長いことキム役を演じていたので、時々エレンの中にキムがチラチラ見えてしまうこともあるのですが(笑)、東京で一度見ていたこともあってか大阪ではあまりキムの影を感じることがなかったかなw。

どちらかというと知念さんのキムはちょっと苦手意識があったのですが、エレン役はすごくすんなり見れた気がします。個人的にはエレンを演じてる知念さんの方がしっくりきたかなぁ。たぶんアメリカ人女性的な雰囲気をちょっと感じるからかもしれない。
「メイビー」の歌もすごく良かったんですが、三森さんに比べるとちょっとキツめだったかな~。自分は身を引いてもいいって歌詞も出てくるんですけど、知念さんが歌うと強い女の言葉のように聞こえてちょっと怖かった(汗)。丸みのある三森エレンの方が個人的には好みだったかもしれません。

藤岡正明くん(トゥイ)

藤岡くんは新演出になる前は長いことクリスを演じていたんですよね。圧倒的な歌唱力とどこかキュンとさせる藤岡くんのクリスが大好きでした。そんな彼が今回新たにトゥイ役として再びサイゴンに帰ってきてくれて・・・藤岡くんのトゥイ、すごく合いそう!!とめっちゃ楽しみにしていました。

一度東京公演で藤岡トゥイを見てきたのですが、その時はまだ始まってからあまり間がなかったこともあってかちょっと抑え目なお芝居で…歌はすごくパワフルなのにちょっと私が求めていたトゥイと違うかもという気持ちになりました。
それ以来の大阪公演での藤岡トゥイだったわけですが、東京で見た時よりもトゥイの「キムが大好き」って気持ちが前面に出てきていてとても良くなっていました。「ウェディング」に乱入した時にキムに駆け寄るとき、すごく優しい眼差しで彼女を見つめていて思わずどきりとしてしまったほど。あぁ、トゥイも純粋にキムを愛しているんだよなって気持ちが伝わってきました。その直後クリスを見た後の豹変の芝居はさすがでしたね!あの一瞬で狂犬みたいな表情になるのはすごいと思います。

「クークープリンセス」からの一連のキムとトゥイのやり取り。意外にも藤岡トゥイは思っていたほど感情を表に出さずに押し殺すタイプなんだなって思いました。特にキムが暴行されているのを後ろで聞いているシーンではジッと目を閉じて感情を抑え込んでいる表情してて、このあたりが神田くんと違うなと思ったり。
ただ、タムを見せられた後の絶望と恐怖と失望の入り混じった壊れ具合の芝居は狂気に満ちていて圧倒されました。こういうところは藤岡くん、さすがだなぁと思いましたね。その狂気の想いは2幕の亡霊にも表れててw、いやぁ・・・歴代の観てきた亡霊トゥイの中で一番怖い表情に感じましたよ、あれはww。目をひん剥いてて、メイクもゾンビそのもの!めっちゃ力入ってるなと少しクスっと来てしまった(笑)。

池谷祐子さん(ジジ)

池谷さんももうかなり長いことこのジジ役を演じているので、役が体に染みついているなぁと感じますね。池谷さんのジジはアメリカへの執念がすごくて、ジョンに拒絶された時の反応がすごく激しい。生きることに必死になっている逞しさのようなものも感じます。
あと、サイゴン陥落のシーンで一瞬キムとすれ違う場面があるのですが、その時一瞬目を合わせてハッと振り向く表情がとても印象的でした。

ちなみに、ジジ役はアメリカンドリームのシーンでキャデラックに乗って現れる美女も演じるのですが、池谷さん、めっちゃセクシーで見ていてドキドキしてしまいました(衣装も含めてねw)

後述

今回の『ミス・サイゴン』は東京遠征した時と合わせると3回観ることができましたが、やはりまだまだ観ていきたい作品です。なるべく早く再演してくれることを望んでいます。その時はもうあまり歌詞は過激方向にイジらないでほしいんですけどね(汗)。

『Miss Saigon』JAPAN2016 Official Trailer

過去の観劇感想

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