【映画】オペラ座の怪人(4Kデジタルリマスター)舞台との比較感想

Masquerade

展開としては舞台と映画と変わっているところはあまりありませんが、魅せ方がかなり違います。舞台版では衣装など色がとてもカラフルで華やかな仮面舞踏会といった様相。映画では色合い的には少し落ち着いていますが、スペースが広いので様々な動きを楽しむことができます。
一人ソロでキレキレなダンスを披露されてる方もいるし(プロのバレエダンサーの方)、東洋を意識したような扇子を使った演出(当時すごく日本っぽい雰囲気だなと思ったものでした)もあったりして視覚的にとても面白かった。

半年ぶりにファントムが現れるシーンは、舞台版の方がオドロオドロしいです。骸骨マスクしるので表情は見えない。かろうじて口元だけがチラホラ見える程度なのでホラーちっくな香りがしますw。
それに対して映画版は顔の上半分だけしかマスクをしていないのでGerryファントムの表情もしっかり伝わってきます。参加客を脅してる時の歌い方とかめっちゃセクスィーでカッコいい!
ただ、ドン・ファンの勝利の楽譜の扱いは舞台版の方がスマート。ちゃんと支配人の手元に入るように投げてる(たまに落としちゃう役者さんもいますがw)。映画版では下の方に乱雑に投げつけてるので初めて見た時はビックリしました(汗)。

カルロッタやピアンジたちに嫌味を言って回る場面は映画では♪マスカレード♪の延長線上のシーンとして出てきましたが、舞台ではその後の支配人室で展開されますしファントムは「手紙の声」のみの出演ということになっています。

クリスティーヌを見つけたファントムが少しずつ近寄っていく場面は舞台よりも映画の方がロマンチックに描かれています。舞台だとズンズン近づいて指輪の付いたネックレスをはぎ取るんですが(汗)、映画ではファントムとクリスティーヌの魂が近づいていくような描写がされていてかなりグッときます。二人の気持ちが重なりそうになったところで指輪を奪うっていうのがなんとも切ないんですよね。ここは映画の方が好きかも。

それを目撃したラウルとファントムが”鏡の部屋”でバチバチになる場面は舞台では登場しません。そこに助け舟として突然現れるマダム・ジリーの神出鬼没さがツボw。でもここからラウルがマダム・ジリーにファントムのことを聞きだすという流れは巧いなと思います。
舞台版でもマダム・ジリーはファントムの過去について語るシーンがありますが、駆け足で概要しか喋っていませんし、怖がって途中で逃げてしまうほど。ところが映画版ではかなり詳しく過去の映像も交えてファントムの過去が語られています。そのことによって、”ファントム=人間”という印象が見る人に深く印象付けられたような気がしました。

ちなみに、この場面の後に本編ではカットされてしまったファントムの新曲♪learn to be lonely♪が入ることになっていたそうです。このシーンは豪華版ディスクの特典に収録されています。一人黄昏て歌うGerryファントムがめっちゃ切なくて泣けた。

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Wishing You Were Somehow Here Again

舞台版ではマスカレードの後に支配人室でのやりとりが出てきますが、映画版では支配人室そのものが出てこないので(笑)そこの部分がバラけて他のエピソードに溶け込んでるといった感じです。

舞台ではラウルからファントムの要求(「ドンファンの勝利」に出演すること)を呑むのを拒絶したクリスティーヌが、稽古場のイザコザもあったりして助けを求めるように父の墓地へ行く展開になってます。
映画版ではラウルから強引に役を演じてほしいと懇願されるといった場面もないし、ドンファン稽古シーンもありません。寝室で寝ていたクリスティーヌが彼女を守るために外で待機しながら寝落ちしたラウルの隙を突いて墓場に向かう展開になります。ラウル寝落ちすんなよー!っていつも心の中でツッコミいれちゃう(笑)。

また舞台ではいつの間にか「墓場」に到着ってことになっていますが、映画ではお金で買収した御者に馬車で連れて行ってもらうという展開。ところがこの御者が実は直前で入れ替わっているというシーンがあって。このあたりも辻褄合わせとして巧いなと思いました。
クリスティーヌがいないことに気づいたラウルが馬に飛び乗って追いかけるシーンは音楽も含めてめちゃめちゃカッコイイです。鞍のない馬にあれだけ華麗に飛び乗ったパトリックさんの身体能力、ほんとすごいと思った。

ちなみに、クリスティーヌが父親を想いながら歌う♪Wishing You Were Somehow Here Again♪ですが、この当時の舞台版は「どうぞ与えて、力を」というフレーズを1度しか歌ってなかったんですよね。映画版では2回歌っていてそこに盛り上がりがきてとてもドラマチックだなと思ったものでした。そこから数年後くらいにリニューアルされて舞台でも最後2回歌う形になりました。

クリスティーヌが歌い終わった後にファントムの声が聞こえてくる展開は同じ。舞台では十字架の中からファントムが姿を現す演出になっているのですが、とてもスマートで美しいです。映画では最初歌声しか聞こえてこなくて、ラウルが現れた瞬間にめっちゃ殺気立ったファントムが墓場の後ろから飛び出してきます。

ラウルとファントムの闘いについて。舞台だと距離があってファントムは火の玉飛ばすだけですが、映画ではサーベルでの接近戦がかなり時間を割いてスリリングに描かれています。クリスティーヌを巡る二人のバトルの激しさは映画の方が臨場感が伝わってきますね。舞台はスリルよりも繊細な心の動きを見せるといった感じ。
このシーンの時のファントムとラウルがめっちゃカッコイイんですが、冷静に考えてみると…地下暮らしが長いファントムはいつこんな鍛錬を積んでいたのだろうかと思うところもありますw。

このシーンの裏話、最後クリスティーヌはラウルと一緒に馬に乗って去るのですが…吹替なしでエミー・ロッサムさんが挑んだんですよね。落馬とかもあったりして大変だったらしいですが、見事乗りこなしたのはすごいと思います。それにしても、ラウル役のパトリック・ウィルソンさんの体幹ほんとすごいわ。

墓場から戻ったラウルがファントムを仕留める策を支配人’sに語る場面、舞台では♪マスカレード♪のあとの支配人室のシーンで出てきますが、映画ではこの後半に挟んできてます。舞台版ではこの話にカルロッタやピアンジもかなり食いついていますが、映画だと二人とも”空気”みたいになっちゃってますね(苦笑)。

また、「ドンファンの勝利」への出演を怯えるクリスティーヌをラウルが慰める場面。この描写が舞台版とかなり雰囲気が違います。これも支配人室で展開されてたことのひとつですが、舞台版だとラウルはかなり強硬にクリスティーヌを説得していて彼女がさらに怯えて逃げてしまう顛末になってる。でも映画版ではもうすでに「ドンファン~」公演直前のタイミングになっていて、出演を怖がるクリスティーヌをラウルが優しく「僕に任せて」と抱き寄せて励ましています。この違いが面白い。

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The Point Of No Return

2004年に日本で初めてこの映画が封切られた時、「PG12」規制(小学生以下は大人と一緒に見てねってやつ)つけられてたんですよね。その大きな原因と言われているのが、この場面だったのではないかという話をきいたことがありました(汗)。ちなみに、リマスター版として公開された今回は規制なしでの上映になっています。

舞台版よりもけっこう”艶っぽい”演出にはなっていましたが(監督もそこは意識して撮影したようでした)、個人的には別に子供が見ても大丈夫だと思うけど…とは当時思いました。まぁ、大人にならないとこのシーンの意味を理解するというのはちょっと難しいかもしれませんが。

舞台版では「ドン・ファンの勝利」の物語の世界観(セットとか)が忠実に劇中劇に再現されてる印象が強いのですが、映画版ではかなり抽象的なイメージで描いていて。ライティングは燃え盛る炎色で真っ赤だし、後ろにはフラメンコ風のダンサーが超セクスィーなダンスしてるし。まるでファントムの心の中を具現化したような世界観が広がっているのが面白いと思います。

ファントムの扮装も全然違いますね。舞台版ではクリスティーヌと向き合うまで顔が見えないよう全身を黒いマントで覆う格好になっていますが、映画版では目元のマスク以外はほぼ隠すことなくファントムの姿で登場。あれを見て違和感から声を上げるお客さんがいないっていうのがすごいw(ピアンジが出てくるはずなのに違う人物出てるの晒してる状態なのでね)。

ファントムとクリスティーヌが劇中劇でありながらも直で感情を通わせているようなシーンとして描かれている映画版。二人の心の繋がりがリアルに伝わってきて見ていて圧倒されます。それを目の当たりにしてしまっているラウルが涙目になってしまう場面は切ない。自分に入り込める余地はないのかといったような敗北感からくるショックが駆け巡ってるように見えて…、あれは彼に同情してしまう。舞台版ではそんなラウルの様子を見ることができないので、なおさら印象深かったです。

また、ファントムのマスクを剥がした時のクリスティーヌの表情が舞台版と少し違います。舞台ではファントムの行動に対し憤りを覚えたかのような表現をするクリスティーヌが多いのですが、映画で演じたエミー・ロッサムさんは目を潤ませながら慈愛に満ちた表情で素顔のファントムを見つめるんですよね。これがめちゃめちゃグッときます。
ただ、ファントムの素顔メイクは舞台版の方がかなり”醜い”雰囲気。映画版はあまり卑下するほど外見からは”醜さ”がない。Gerryがカッコ良すぎるというのもあるけれどw、それよりもファントムの内面性にスポットライトを当てたい意図があってあのようなメイクにしたのかなと思いました。

そして、シャンデリアがここで”きます”!!舞台では1幕ラストであの場面になりますが、映画では後半のこのタイミングが一番ベスト。あのシャンデリア、ぶら下がってるシーンのものは本物のスワロフスキーが使用されていて目の玉飛び出しそうなお値段だったと伺っています(汗)。たださすがに、迫力のあのシーンはガラスだったそう。そりゃそうだw。

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Down Once More / Track Down This Murderer

マダム・ジリーがラウルを地下室の途中まで案内する場面は舞台と映画、ほぼ同じです。が、一人になった後のラウルの展開は映画の方がめちゃめちゃスリリングです。

舞台では自ら地下水に飛び込んでるラウルですが、映画では階段降りてたら穴に落ちて地下水にドボン。しかもさらに彼を追い詰めるような罠が待ち受けてて…あれは見てるこちらが溺れそうになるレベルでハラハラします(汗)。あそこはいつも、映画『タイタニック』でジャックが水の中で扉を開ける鍵をギリギリのタイミングで拾い上げるシーンを思い出しちゃう(汗汗)。

攫ってきたクリスティーヌにファントムが詰め寄る場面は映画と舞台であまり変わりないのですが、映画公開当時の四季の舞台版は二人のやり取りの感情の激しさが今一歩足りないと思うことがあって。それだけに、Gerryが演じた形振り構わずクリスティーヌに激しい思いの丈をぶつけるファントム像に大きな衝撃を受けました。ファントムの”痛み”がリアルすぎるほど胸に迫ってきて、一緒に苦しくなって涙が止まらなかった。
その後四季の舞台もブラッシュアップを繰り返し、今ではファントムの感情の繊細さと激しさがリアルに伝わってくる演出に変わったなぁと思います。

ラウルの首にロープをかける展開は同じですが、舞台では1本のロープで締め上げているのに対し映画ではめっちゃ巻かれて固定されて締め上げられてる(汗)。このあたり、映画での表現はすごいなと思いました。ほんとにラウル絞殺されちゃいそうって思ってしまうスリル感が…!

この後の展開は舞台と映画とほぼ同じ。肝のところはネタバレになりすぎるのでここでは割愛しますが、どちらもめっちゃ泣けます。個人的には、映画の方が「ラブネバ―ダイ」に繋がりそうだなという予感があったかな。ファントムの感情の描き方は、2021年以降の舞台演出のほうが繊細かもしれません。

舞台はファントムの顛末で終わりますが、映画にはその続きとして再び老ラウルのシーンが出てきます。これも映画版ならではの大きな見どころ。あれを以て、本当の意味で「オペラ座の怪人」の幕が下りたと感じらるとても素敵なラストシーンだと思います。

今回約20年ぶりに映画館で「オペラ座の怪人」を見ましたが、あの当時と色褪せない真新しさがあったし、改めて映画館で見るべき作品だなと感じました。

字幕について

余談です。

2005年の映画公開当時に「オペラ座の怪人」ファンの間で大きな物議を醸していたのが、戸田奈津子さんによる一部字幕表現問題でした(苦笑)。今回のリマスター版も戸田さん訳で上映されましたが…、ところどころやっぱり「!?」と思う箇所ありましたねw。

個人的には「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」をそのまま文字に乗せてる部分がすごい違和感あって。四季と同じでなくてもいいけど、もそっと他に日本語的な言葉の充て方あるんじゃないかと今でも思ってしまう(苦笑)。
あと、クライマックスでファントムがクリスティーヌに憤りをぶつける場面とか。なんかやたら「肉体」的なことをアピールしまくってる訳で(苦笑)。単語を見ればそうなんだけど、そこまで直接的な言葉でぶつけるのってどうよ!?みたいな(苦笑)。

それでも、初期に比べればかなり改善されたんですよね。公開直後、ファンがあの字幕にビビッて署名運動までして一部訂正されるってことがありましたので(私は加わってなかったんですが)。直って良かった2カ所は以下の通り。

「Passion-Play」:受難劇(直される前は”情熱のプレイ”だった 汗汗)

「you are not alone」:あなたは独りではない(直される前は”私もあなたに惹かれていた” 汗汗)

劇団四季でラストのクライマックスを「女の心」と歌っていた時以来の衝撃だったことを思い出します(苦笑)。

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映画版ディスク

上映終了後のDVDも発売初日に購入(当時はまだDVDが主流だった)、特典映像がめっちゃ豪華でしたねぇ。アンドリュー・ロイドウェバーも参加して映画製作スタッフ全員が順番に「オペラ座の怪人」の歌を歌い継いでく企画がめっちゃツボ(笑)。本編ではカットされたナンバーの場面も収録されているのでお得感満載でした。

※2024年現在GAGA公式サイトで期間限定ではありますが豪華版ディスクが再販されています。

特典映像が付いていない廉価版はDVDならアマゾンで販売されてます(メーカーの生産は終わっているため中古業者からの買取ですが、新品のものもあるようです←2024年7月現在)。

ジェラルド・バトラー (出演), エイミー・ロッサム (出演), ジョエル・シューマッカー (監督) 形式 DVD

ちなみに…、当時あまりにも映画が好きすぎた私はなんと…日本発売モノのみならずドイツ、イタリア、スペイン版吹替CDも直輸入で購入ww。CDプレーヤーとパソコンを全部駆使して4か国語同時に流して聴き比べなんていうすごいことを家でやってたのもいい思い出www。
さらにはファントムマスクがおまけにつくという誘惑に駆られドイツ版DVDも輸入してます(←再生するためのデッキも買った 笑)。

ドイツ版DVDと一緒に来た”マスク”ですが、一度つけてみたところ…欧米人向けに作られたからか鼻の部分が全く合わずめちゃめちゃ苦しかったので(汗)今は我が家の展示品となっておりますwww。

最後に…

映画公開当時のリアルで激熱すぎる私の書いた比較感想が、消えることなくネット上を彷徨っております(笑)。編集もろくにできてない細かい文字の羅列で恐縮ですが(汗)、今回の記事よりも濃厚に書いてるので、興味がありましたら…。

2005年当時の劇団四季の舞台版と比較してるものなので悪しからず(今のとはけっこう雰囲気違います)。

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