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明治座公演『大地の子』 2026.03.02マチネ

舞台『大地の子』を観に明治座へ行ってきました。明治座を訪れるのは2年前の『西遊記』以来になります(詳しいレポはこちら)。奇しくもあの日が中山美穂さんを拝見する最後になってしまったんですよね…。なんか今でも信じられない。

今回この演目をチョイスした理由は…、飯田洋輔くんが出演するから、です。これまでずっとミュージカル畑で育ってきた洋輔くんがついに”ストレートプレイ”に本格挑戦するとあっては、これはファンとして見逃せませんっ!!

舞台『大地の子』は芳雄くんはじめミュージカルで活躍する役者さんも出演しているので音楽系作品かと思われがちですが、がっつり”ストプレ”なんですよね。そこに洋輔くんが飛び込んだということじたい、ファンとしてはかなり胸熱な出来事です。
ただ、2年前の”朗読劇”ではちょっと悪戦苦闘の痕跡があったので、見る前までちょっとドキドキしていたのはココだけの話…。

今回はサブメインの役柄と聞いていたので幟はないかなぁと思っていたのですが、ちゃんとありました!!

胸熱すぎて思わず激写してきちゃった(笑)。幟のタオルバージョンも販売されていまして、こちらも即購入ww。いい記念になります。

ちなみに幟タオルとクリアファイルは販売所は劇場内ではなく1階エントランスのみ。入口とは違うゾーンに設定されているのでチケットをモギリしてもらう前に購入するといった感じでしたね。私はそれに気づかず先に劇場に入ってしまったので再入場する羽目になってしまいました(汗)。

まず、『大地の子』はバリバリのストレートプレイです。井上くんや洋輔くんといったミュージカルを主戦場としている役者さんも出演していますが、彼らが歌うシーンや音楽劇を匂わせるところは「0」ですのでご注意を。全体的な雰囲気としては、”重厚”、重いです。少し空気がほぐれるシーンは1か所だけ(ここを洋輔くんが担った感じ)。

でも、今の混沌とした時代にこそ見る価値のある、見るべき作品だなというのは強く感じました。原作やドラマを知らなくてももついていけると思います(私も半分以上ないよう忘れてたし 汗)。カンパニーの熱い熱量と確かな力量を存分に体験できる貴重な舞台でした。

以下、まぁまぁネタバレを含んだ感想になります。

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上演概要

原作・脚本・演出

  • 原作:山崎豊子「大地の子」(全4巻・1991年)

漫画版もあり。

  • 脚本:マキノノゾミ(劇団「M.O.P.」主宰)
  • 演出:栗山民也
  • メディア化:NHK土曜ドラマ「大地の子」(1995年放送・全11回)

NHKドラマ版の主なキャスト

松本耕次 ;仲代達矢
陸一心/松本勝男;上川隆也
張玉花/松本あつ子;永井真理子
江月梅;蒋雯麗
袁力本;馮国強
黄書海;薄宏
陸徳志;朱旭

上川隆也さんも公演中にいらっしゃったようですね。それだけでもなんだか胸熱…!

SNSではカンパニーの皆さんがその時の感動を多数投稿されていました。

上演時間(昼公演)

  • 第一幕:約70分(1時間10分)
  • 休憩:30分
  • 第二幕・第三幕:約165分(1時間45分)※二幕と三幕は連続上演
  • 合計:約265分(3時間25分)

幕間は30分ですが、女性お手洗いの行列はかなりエグいです(汗)。列の進みが遅く私の番まで15分以上かかってました…。ご注意を。

公式あらすじ

第二次世界大戦後、中国の大地に取り残された日本人孤児、勝男(井上芳雄)。一緒に取り残された妹・あつ子(奈緒)と離別し、人身売買されたところを、小学校教師の陸徳志(山西惇)に助けられ、「一心」と名付けられる。

子供のいない陸夫妻は愛情をこめて育て、一心もその期待に応えるように差別を受けながらも、優秀な青年に成長していく。ただ、その背後には、文化大革命が暗い影を落とし始めていた。

公式HPより抜粋>

公演スケジュール

明治座公演:2026年2月26日(初日)〜3月17日(千穐楽)

明治座アクセス

都営地下鉄新宿線・浜町駅 すぐ
都営地下鉄浅草線/東京メトロ日比谷線・人形町駅 徒歩7分
東京メトロ半蔵門線・水天宮前駅 徒歩10分

キャスト

  • 陸一心(ルー・イーシン)/松本勝男:井上芳雄
  • 張玉花(チャン・ユーホワ)/あつ子:奈緒
  • 江月梅(チアン・ユエメイ):上白石萌歌
  • 袁力本(ユアン・リーベン):飯田洋輔
  • 黄書海(ホワン・シューハイ):浅野雅博
  • 陸徳志(ルー・トーチー):山西惇
  • 松本耕次:益岡徹

子役:松坂岳樹、本宮在真、藤田緋万里、森 葵

増子倭文江、山﨑薫、山下裕子、みや なおこ、石田圭祐、櫻井章喜、木津誠之、武岡淳一

薄平広樹、岡本敏明、加藤大祐、越塚 学、西原やすあき、咲花莉帆、清水優譲、武市佳久、田嶋佳子、常住富大、角田萌果、内藤裕志、松尾 樹、松村朋子、丸川敬之

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観劇感想/キャスト感想

本編感想

山崎豊子さん作『大地の子』はNHKのドラマで多くの人に物語が知れ渡った印象があります。小説は読んだことがありませんがドラマは見ていました。私が学生の頃はまだ”中国残留孤児”の方の帰国についてのニュースが多く流れていたので、ドラマの内容に色々と考えさせられた記憶があります。
主演した上川隆也さん(当時は演劇集団キャラメルボックスの劇団員)はドラマでの熱演が話題となり一気にブレイクしました。あれから現在に至るまで映像に舞台にと第一線で活躍されていて本当にすごいと思います。

『大地の子』は、戦争によって家族と引き離され、中国に取り残された日本人青年・陸一心(本名・松本勝男)の物語がメインです。彼は心優しき中国人夫婦に引き取られ”中国人”として成長しますが、戦後混乱期のなかで”日本人”としての自分のルーツと向き合い苦悩と葛藤に襲われていく。その姿を通して”戦争”がもたらす様々な悲劇の形やそこから生まれる愛の形がこの作品で描かれています。

戦争の悲劇は、命を奪い合う暴力の応酬が繰り広げられる戦場だけではありません。終わった後も庶民に強いられる犠牲は存在する。彼らの多くは市井に生きる普通の人々ばかりで、その声はあまりにも小さくお偉いさんたちの耳には到底届かない。罪なき者たちの声はやがて時代の波にのまれ消えていく。彼らは特別な人ではない。すぐ近くにいる普通の隣人たちです。

そんな彼らの声を少しでも救い上げ世の中に訴えるために書き上げられたのが、山崎豊子さんによる「大地の子」という作品なのだと改めて思い知らされた気がしました。そこに描かれているエピソードの数々は絵空事ではなく、実際に起こっていた出来事。この作品はよりノンフィクションに近いフィクションを描いている。

奇しくもこの舞台が上演されるタイミングと時同じくして中東情勢悪化による戦争勃発のニュースが駆け巡っていました。罪もない市井に生きる人たちが権力者が始めた身勝手な暴力の犠牲になり続けている。戦争という名の暴力の応酬が収まったとしても、その後にこの「大地の子」で描かれているような悲劇に直面する運命にある人がたくさんいるかもしれない。そう思うと胸が苦しくて…、とても他人事のような気持ちではこの作品と向き合えませんでした。

最後のセリフが告げられ幕が下りカーテンコールが終わっても、気持ちの置き所が難しく何も言葉を発せられないような感覚に陥りました。しばらく感想というものも頭の中で整理ができず…。緊迫した時代に突入したことを肌で感じている今だからこそ、この作品の感想を語ることの難しさを痛感しています。

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あともう1回観る予定なので、今回は全体の大まかな印象や感想のみにとどめたいと思います。

舞台セットはさすが明治座だなと。派手さはありませんが、回り舞台を存分に生かし大型のセットを次々と転換させていていてなかなかダイナミックな光景でした(セット美術は松井るみさん)。

演出として印象的だったのは、一つのシーンが終わり次のシーンになっていてもキャストが舞台上に”フリーズ”して残されていることが多かったことかな。特に回り舞台の速度が遅いので、役者は同じポーズのままずっとフリーズしてその場にあり続ける時間が長い。二幕の洋輔くん出演シーンは特にそれが気になった。初めてのストプレであれは大変だったと思う。

マキノノゾミさんの脚本の内容は非常に濃密で、かなりの長セリフが多いです。でも演技力抜群な役者さんばかりということもあったし、セリフの一つ一つが重く惹きつけるものばかりなので食い入るように集中して聴き入ってしまいました。
ところどころはちょっと歴史に興味がない人には難しいかもと思うところもいくつかあったので、観劇前に文化大革命やその背景について簡単に頭に入れておくとより理解が深まるかもしれません。

劇中の音楽は必要最小限に抑えていた印象が強い。ドラマチックな盛り上げ系のものは一切なく、静かに時代を流れる小川のような感じ。そのなかに不穏な時代を象徴するようなか細い音が何度か出てくる。ほぼ役者さんのお芝居と声だけで構成された舞台。これぞ、ストレートプレイといった感じ。

主人公は陸一心ですが、彼を中心とした物語というよりかは、彼の生きた激動の時代の中で翻弄された人々のドラマを描いた物語といった印象が強かったです。いうなれば、登場する人々みんなの物語といった感じかな。語るのも辛いような過酷な運命に翻弄されながらも、それでも生きた人たちの物語。特に一心のそれぞれの家族のエピソードはどこを切り取ってもあまりにも壮絶で、見ていて何度も胸張り裂けるような心境にさせられました。
特に、一心の妹であるあつ子の運命はあまりにも悲壮で…ドラマでショックを受けたシーンのことが頭によみがえってきて泣きました(涙)。あんなことがもしかしたら今も地球のどこかで起きているかもしれないと思うと、本当に居たたまれません…。その”痛み”に演劇を通し寄り添うことしかできない自分がなんだかとてもやるせなかった。

この作品は決して楽しい物語ではないし、全体的にかなり重いです。生半可な気持ちで観に行くと打ちのめされるような、そんな力のある作品なので気軽にお勧めはできないかもしれない。でも、今現代、不穏な世の中を生きている今だからこそ、より多くの人にこの舞台に登場する人々の”痛み”を感じてほしいとも思います。戦争は”絶対悪”なのだと言い続けられる世であってほしい。

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主なキャスト別感想

陸一心(ルー・イーシン)/松本勝男:井上芳雄くん

芳雄くんの一心は時代の激流に飲み込まれながらも強くたくましく生き抜く姿がとても印象深かったです。不条理な罪を着せられ過酷な環境に身を置きながらも、「生きる」ことを諦めない一心の姿に心揺さぶられるものがありました。

また、中国人として生きる自分に誇りを持ちながらも日本への複雑な感情を滲ませるお芝居もとても良かった。特に妹のあつ子や実の父である耕次と対峙するシーンはどちらも一心の家族への尽きせぬ想いが伝わってきて泣きました(あつ子とのやり取りは涙なくしては見れません…)。

最後の一番大事なセリフ、ドラマを見た当時はまだよく呑み込めなかったけれど…今回の舞台を見て腑に落ちるものがありました。一心は彼が一番辛く苦しい時に傍で寄り添い支えてくれた存在と共にあることを選んだのだなと。その説得力が芳雄君のセリフからひしひしと感じ取ることができました。

張玉花(チャン・ユーホワ)/あつ子:奈緒さん

あつ子はこの舞台では最初から”語り部”のような役割を担っているのですが、そのセリフの吐き出し方や表情は”どこかを壊されてしまった人の哀しみ”が常に滲んでいて全く目を話すことができませんでした。ドラマで見たとき、あまりにも過酷すぎる運命をたどったあつ子に衝撃を受けたのですが、奈緒さんの鬼気迫りながらも繊細なお芝居はそれを凌駕するものすらあったと思います。本当に凄まじかった。

特に兄である一心と再会した後のシーンは圧巻の一言。見ているこちらは呼吸をすることすら躊躇われてしまうような感情に飲み込まれていく感じ。奈緒さんの肉体と声と動きによって、まざまざとあつ子に襲い掛かった悲劇が目の前に浮かんでくるのです。もう胸潰れる想いでそのシーンを見守りましたよ…。奈緒さんは朝ドラで叱咤女優さんですが、本当にすごい女優さんだと思い知らされました。

江月梅(チアン・ユエメイ):上白石萌歌さん

重く辛い場面が多いなか、一心の恋人で妻となる月梅の存在は一筋の清らかな光のようでした。萌歌さんの優しくやわらかな雰囲気と声に何度も救われていく感覚だった。一心が彼女に心を寄せたことの説得力もすごくある。

出番は多いほうではありませんが、常に苦境に立つ一心の傍で凛と立つ姿はどこか頼もしくしっかりとした存在感を放っていたと思います。優しい歌声を披露するシーンもあってそこは癒されましたね。

袁力本(ユアン・リーベン):飯田洋輔くん

ついに洋輔くんのストプレを見る日が来た!!栗山民也さんという重鎮の演出家さんのもとで芝居巧者の役者さんたちに交じりながら演技する姿に胸が熱くなりました。ここで学ぶことはとても多かったと思います。

洋輔くんが演じた袁は中国人で一心の友という立場でありながらも、彼に疑いをかけなければならない複雑な立場にある人物。一心が本気で中国人として生きる覚悟があるのかを詰問するシーンでは、彼を信じたい気持ちを滲ませながらも愛国心をどこか疑ってしまっているかのような複雑な表情を見せていたお芝居がとても良かった。”一心とお守り”シーンは特に見ていて心が痛かった…。

第二幕では、この舞台で唯一ともいえる柔らかく笑いが起こるシーンに登場。想いを寄せる子の前でオタオタしてなかなか気持ちを打ち明けられない袁がとても愛らしく、洋輔くんの人柄がにじみ出てるなと微笑ましく思いました。そんなホッとできる唯一のシーンを任されたなんて、すごいなとも。

全体的な出番はこのくらいで少ないのですが、洋輔くんらしい凛とした姿は十分堪能できました。セリフ回しも不安が杞憂に終わったし、何より芝居を楽しんでる感も伝わってきたのが嬉しかった(内容は重いけどね)。あと、すごく声が良い!!いや、劇団時代からわかってたけど、ストプレでの洋輔くんの声ってまるで上質な歌声を聞いてるかのような心地よさがあったんですよ。すごく新鮮だった。

黄書海(ホワン・シューハイ):浅野雅博さん

浅野さんがえんじられた黄は一幕のクライマックスで一心に多大な影響を与える人物。飄々としながらも、日本への想いを滲ませながら彼に言葉を伝えていくシーンがとても印象深かったです。最初は心を開かなかった一心が、黄の歌をきっかけにして望郷の念を取り戻していくかのようなシーンもグッとくるものがありました。

陸徳志(ルー・トーチー):山西惇さん

山西さんが演じた徳志はまさに”慈愛”の塊のようで・・・登場するシーンはほぼ泣きながら見てました(涙)。ドラマ版で演じられた朱旭さんを彷彿とさせるような、本当に分け隔てなく愛情を注げる温かいお父さん。奥さんは少しドライな面もあった分、さらに徳志の優しさが見ていて沁みましたね。

ドラマ版で大感動した少年一心と初めて心からわかりあった場面(舞台ではすごい後半に出てきてビックリした)。あれなどはまさにそれの再現といった感じ。そして罪人から解放された一心を駅まで迎えに来て抱きしめるシーンも涙なくしては見られなかった!!!もう本当に魂レベルで泣ける素晴らしいお芝居でした。これから山西さん見たら徳志を思い出して涙ぐんじゃうかも…。

松本耕次:益岡徹さん

耕次は一心とあつ子の実の父親で、戦後の混乱期に散り散りとなって以来家族の生死すら分からなかったという立場にある人物です。益岡さんは知り合いの来訪を受けたときにその状況を淡々と語るのですが、セリフの端々には常に家族への尽きせぬやるせない感情があふれているのが伝わってきてすごく泣けました…。感情的になりすぎず、でもどこかで生きているのではと信じる気持ちを捨てきれないといった感情を繊細に演じられていたと思います。

耕次は戦後の混乱期に家族と離れてしまったことも悔やんでいるんですよね。でもそうしたくてもできなかった。これも戦争が引き起こした大きな悲劇の一つです。日本に残りながら、落ち着いた暮らしを手に入れても常に別れた家族への想いが消えない父を益岡さんのお芝居からひしひしと感じました。それゆえ、あのラストシーンはとてもとても切なかったです(涙)。

後述

三幕物の舞台で音楽もほぼない舞台ではありますが、非常に見応えがある素晴らしい作品だったと思います。今の時代に見たからこそ思います。過去の悲劇に目を背けず学ばなければいけないのだと。

公演後半にもう1回目に焼き付けてこようと思います。

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