M&Oplaysプロデュース『八犬伝』2013.03.31東京公演千穐楽

先月までシアターコクーンで上演されていた『八犬伝』東京公演が無事に千穐楽を迎えました。

キャストを知った時から某所でチケットを確保してもらっていたのですが、あの当時は"まだ先の話"なんて思っていたのに来てみたらあっという間でした(汗)。
私は結局5回行ったかな。久しぶりにかなりハードリピートしてしまったw。でも、好きな役者がこれだけ勢ぞろいする舞台もそんなにないと思うので今回行けたことはラッキーだったと思います。

これまではちょぃちょぃ空席を見かけましたが、さすがに東京楽ということもありほぼ満席。中2階の当日立見席もたぶん全箇所埋まっていたと思います。ちなみに私は中央からやや後方寄り。これまでの中で一番舞台全体が見渡せるベストポジションでした。
客席からの反応もすこぶる良く、初見のお客さんもかなり来ていたのかコメディっぽいシーンではかなり大きな笑いの反応がありました。それと2幕クライマックス。その転機となるシーンでは皆が「はっ」と息を呑む空気が伝わってきて緊張感もMAX。あぁ、わかるわかるって思っちゃったw。
カーテンコールではいつもより何倍盛りの紙吹雪が出演者に降り注いですごいことに!倫也くんはその中でけっこうはしゃいでて可愛かったな(笑)。

客席がオールスタンディングになる中、戸惑い気味にサダヲさんがご挨拶。しかしながら「僕たちこの後どうすればいいのか全く聞かされてないので…」とオロオロw。シャイなサダヲさんらしいなとついつい笑ってしまった。で、隣にいた田辺さんとかに反応を求めるわけですが、舞台で全力出しきっての大熱演だった田辺さんは未だに放心状態から抜け切れず、汗をぬぐいながら「ありがとうございました」というのがやっと(笑)。田辺さん、あの役柄とのギャップが最後まで激しい方だわww。完全にくまモン好きな田辺さんモードって感じになってたw。

そのあと瀬戸くんに阿部さんが救いの目を向けると、「みなさんがこうして楽しんでくれたことが本当に嬉しく思います」としっかりしたコメントを。ただ瀬戸くんもそれ以上は続かずw、隣にいた倫也くんに「なんか、中村さんが言いたいことがあるらしいです」と振ってます(笑)。突然降られた倫也くんは「えっ…」となりながら、テンション高く「元気ですかっっっ!!」と猪木ばりに会場に叫んでてwwそのあとテレながら「ありがとうございました~」と引っ込んじゃって可愛かった(笑)。というか、瀬戸くんと倫也くんが隣同士で仲良くしてる姿を見られただけでも嬉しくてテンション上がっちゃったw。

そのあともグダグダ自由な感じで締まらずww、出演者でもあり演出家でもある河原雅彦さんが「最後は尾上くんに〆てもらおうよ!」と言いだし、突然振られた尾上くんはビックリww。するとみんなが「あの八犬士名乗りのシーンを再現すればいいじゃん」と次々に提案し出し、「えっ、えっ?」とオロオロする尾上くんを尻目に和太鼓さん2人が気合入れて櫓に登っていっちゃって(笑)完全におぜん立てが整いました。
そして和太鼓が鳴りだし、皆で盛大な手拍子をする中、雰囲気出すために一度舞台袖に引っ込んでから飛び出してくる尾上@現八!ところが、カッコよく最後に「犬飼現八~」と決めポーズをしようとした瞬間、

「どうもありがとうございましたーーー」

ってサダヲさんが叫んで皆わらわらと手を振りながら舞台袖に帰っていきました(笑)。尾上君、普段もこうしたイジられキャラなのねwww。ちょっと気の毒だったけど面白かったよ(笑)。皆の仲の良さが伝わってくるグダグダながらも楽しいカテコでした。

あ、そういえば、4月3日は田辺誠一さんのお誕生日でもあり結婚記念日でもありますね。おめでとうございます!大阪公演でみんなにお祝いされたりしてるのかな^^

主なキャスト

犬塚信乃:阿部サダヲ、犬川荘助:瀬戸康史、犬坂毛野:中村倫也、犬江親兵衛:太賀、犬村大角:近藤公園、犬飼現八:尾上寛之、犬山道節:津田寛治、犬田小文吾:辰巳智秋、浜路:二階堂ふみ、網乾左母二郎・里見義実:増沢望、亀篠・雛衣・伏姫:内田滋、ゝ大法師(金碗大輔):田辺誠一 ほか

以下、ネタバレを含んだ感想です。

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東京公演千穐楽が終わりましたので、いつもボカした感想を書いていた後半部分にも触れようかと思います。かなりのネタバレになりますので(汗)、まだ見ていない方はご注意を。ちなみにこの日は楽ということで、ちょいちょい楽ならではの小ネタも入っててかなり面白かったです(笑)。

信乃が血だらけの自分の家を見て驚愕するシーンからスタート。冒頭の和太鼓の音でテンションを上げた後の幕開けで緊張感に包まれるはずの場面ではあるのですが、サダヲさんがあの軽妙な語り口で緊張感を煽りながらもどこか笑ってしまうというような絶妙の空間を演出。今回の八犬伝はやけに「血」がクローズアップされているのでちょっとホラーっぽいなと思わなくもないのですが(汗)、サダヲさんをはじめとする役者さんたちの個性あふれる会話劇がそれを楽しいエンターテイメントに変えていたんですよね。あの空気を作れることがまずすごいなと思いました。

荘助を演じる瀬戸くん、最初の頃はけっこう固いなと思うことも多かったのですが…、後半に入ってから本当に良い感じに力が抜けて表情にも余裕が出てくるようになりました。信乃に現状報告してる時の荘助は男らしく凛々しくカッコいいです!

信乃が父親の自害にショックを受けた後後追いしようとしたときに今回の事件のきっかけでもある愛犬・キジロウがやってくる。自害しようとしていた信乃はキジロウと共にあの世に行こうと斬り殺してしまいます。あのシーンだけは何度見てもちょっと胸が痛みますね(涙)。会場の雰囲気も軽く悲鳴が起こったりすることが多かったし。そのキジロウの死骸から信乃の玉が出てくるわけです。
同じ光る玉を持っていた荘助に信乃が共に父の遺言でもある村雨を届けに行く使命を果たそうと言うシーンは見応えあります。特に楽では瀬戸くんの「ありがたきお言葉!」の言い方がすごいテンション高くてめちゃめちゃいい感じだった!この流れであのオープニング…、これまで以上にゾクゾクしました。

簸上が浜路に迫るシーン、ここ、今まで見た以上にテンションが高かった皆さん(笑)。特に酒を勧めるシーンで蟇六が直球勝負でと言いだすところ。ここ普段は「よろしくお願いしますっっ」だけだったのに、この日は「ちょっと待ったぁぁぁ!!」から始まりまして(笑)。 あっけにとられる浜路役のふみちゃんに

「なかなか言い出せなかったんですけど…飲み友達から始めてください!よろしくお願いしますっっっ」

と熱血申込みwwww。まさかこう来るとは思わなかったらしく、思わずふみちゃんも吹き出してました(笑)。そのあとの河原さん演じる簸上が「もう一杯だけお願いしまーーす!!」と迫るところもやたら熱血でテンション高くてふみちゃんボロボロw。去り際には付け髭まで引っ剥がして退場する河原@簸上(笑)。いやぁ、リピーターならばあのシーンは笑うよなぁ。その後、やってきた信乃に浜路が必死に迫るシーンにはちゃんとそのテンションになってたふみちゃん、さすがです。

浜路と信乃の間に割って入ってくる左母二郎役の増沢さんはこの日も最高潮に悪モードでめちゃくちゃカッコよかった!!だけど、村雨を自分の刀とすり替える作業がちょっと手間取ってたw。そのあと浜路にギリギリ迫るシーンではこれまで見た中でもかなりのレベルの高い悪っぷりを披露してくれました。左母二郎は道節に襲われて命を落としてしまうわけですが、短い出番の中でも確実に存在感を残して行く増沢さんはやっぱりすごいなと思います。

傷ついた浜路を解放する道節@津田さんがこれまたカッコいい!!津田さんってテレビでは悪役をすることが多いので今回はゝ大法師でも行けたんじゃないかと思わなくもないんですが、妹想いの兄の顔が本当にとても優しくて切ない感じだったのでこういった人物も魅力的だなぁと改めて思いました。浜路を想っている気持がすごく伝わってきたので。

そのあとの荘助@瀬戸くんとの殺陣シーンはなかなかの見応えあり。若々しく動きにキレのある瀬戸君の殺陣はホントに見てて惚れ惚れしますね。道節になかなか歯が立たないんだけど、何度蹴られても殴られても信乃の村雨を取り戻すために必死に食らいついてる姿がいじらしいです。その時の目がものすごくいい!!改めて瀬戸くんの目の魅力にハマる私。

偽物の左母二郎の刀とは知らずに逃げた浜路の代わりにと「村雨」を献上したつもりになる亀篠夫婦のシーン。河原さん、ここでも髭つけてなかったということは…ホントにアクシデントでつかなかったんだろうか(笑)。渡された刀が村雨ではないと分かった瞬間の簸上@河原さんの反応が毎回とても面白かったw。「もう錆びついちゃってるではないか!」の言い方が特に好き(笑)。
それに対して弁解する蟇六@佐藤さんの反応が毎回ユルくて笑えるんですが(たまたま調子悪い、とかw)、この日は「そもそも刀から水が出るなんてありえないんじゃないでしょうか」と開き直り(笑)。これは笑った!このあとバッサリ斬られちゃってお気の毒なんですけどね。
で、亀篠もバッサリやられちゃうわけですが、そこに荘助がやって来ます。斬られた亀篠を見て「お…お…お待ちください!!!」と必死に訴えようとしてる姿がなんとも切羽詰まった感が出ててすごく良かったよ、瀬戸くん!動揺から簸上への憎しみに感情が変わっていく過程が特に印象深かったです。

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そして信乃と現八の屋根の上での決闘シーン。何度見てもこの時の二人は兄弟ゲンカみたいで可愛い!お互いに意地を張りあって熱い屋根の上で剣を交えて、そのあとに二人慌てて戻って「あちぃぃぃ」と悲鳴を上げてたりw。和太鼓の櫓を乗っ取るシーンでは屋根の上に叩き手の二人が降りたときにリアクションしてて面白かったんですが、この日はサダヲさんのダメ出しが入ると、一人の方がもう一度「熱い」とリアクションww。すると「そう、そのくらい!」とOKが出てた(笑)。

二人で和太鼓叩きまくるシーンは鐘の音も入ったりしてまるで歌舞伎のワンシーンを見ているかのような気分にさせられます。ああいう「和」を感じさせる雰囲気いいですね。二人のケンカもまるでお祭りみたい。それにしてもあの屋根に見立てた階段の上でよくぞあれだけの激しい動きができるなと改めて感動してしまった。並々ならぬ運動神経です、サダヲさんも尾上君も!

そしていよいよ客席から毛野が登場。倫也くんのブログによると目の調子があまり良くないらしく心配していたのですが、あの厚化粧は相当肌に負担かかってるだろうなぁと改めて思ってしまった。なかなか落ちなくて大変だったらしいし(汗)。ちなみに毛野に踊ってほしいと懇願してる男衆のなかに増沢さんとか佐藤さんとかも混じってるんですよね。キャラが全く違うので面白いです。その彼らのテンションに合わせてキャッキャはしゃいでる毛野@倫也くんも最高に可愛いのですがw。
毛野の団子屋にやって来た信乃と現八、相変わらず会話が面白いw。ぼーっとして反応がなかった信乃に思わず呼び捨てで呼び止めた現八。すると信乃が思いっきりビンタwww。怒りだす現八に謝りながら、「どうしてそんな引き笑いするのかなぁと思って」とか言ってる信乃@サダヲさんに爆笑です(笑)。一番最初に観たときは尾上君あんな引き笑いしてなかったと思うんですよねw。見るごとにエスカレートしてった気がするwww。

大角のところへ訪れた信乃。この二人の微妙な距離感の会話劇もとても面白かった!多くを語らない大角(角太郎)に昔馴染みだった頃を思い出してほしくて必死に語りかける信乃。この時のサダヲさんのテンションがホントに可愛くて魅力的です。そして、角太郎と木の棒での勝負シーン。ここはもう毎回大角@公園さんの身のこなしの軽さに惚れ惚れさせていただきました!この時の大角は本当に文句なくスマートでカッコいいです!!私はこのシーンで公園さんのファンになりましたよ。「マクロビはいいぞ~」っていう癒し系会話も好きですw。

自分の素性を話す大角のところに離縁したはずの雛衣が現れるシーン。誰とも交わっていないのにお腹だけが大きくなっていると主張する雛衣の健気な必死さがいじらしい。これ、悪徳ババァの亀篠を演じてた内田さんが担当してるからすごいですよね。全くの別人ですから!そのあと現れた魔物に取り憑かれた一角との対決は現八と毛野も加わって迫力あるシーンになっていて毎回息を呑みました。一角さんがもうホラーそのものでしたからw。
自らの腹を斬って身の潔白を証明した雛衣のお腹から光る玉が現れたことで彼も仲間であることが判明。そのあと毛野も自ら光る玉を示し、女のなりをしていながら男であることを告白。ここのシーンでのサダヲさんの反応が毎回実に面白かったwww。一幕のラストは希望を感じさせるすごく良いシーンでドキドキしながら二幕に行くことができましたね。

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二幕冒頭では捕らわれた荘助を信乃たちが助けに入るところから始まります。この時のサダヲさんの軽妙なセリフ回しがまた面白い!仲間を連れて現れて荘助救出…この展開、ヒーローものみたいでワクワクします。客席から登場のゝ大法師と小文吾。小文吾@辰巳くんは毎回「スイーツが…」と語ってて楽は変えてくるかなと思ったんですけど結局変わらずモンドセレクションのスイーツで押し切ってました(笑)。

小文吾が孤児として育てている大八(親兵衛)の言葉で荘助が浜路を手にかけ自分も刀で傷つけ血を提供するシーンはけっこう衝撃的です。近くで見ると浜路も荘助も着物の下に血のりが出るものを仕込ませてるんですよね。意識がもうろうとしながらも蘇った信乃を見て「またそのお姿が拝めるとは…」と最後の力を振り絞り笑顔を向ける荘助の表情がいじらしくて泣けます。逆に信乃を救うためとはいえ浜路を失ってしまった道節の哀しみは深い…。浜路を抱きしめて慟哭する姿も切なくてとても泣けました。このことが、最後まで道節の心に引っかかっていくんですよね…。

そしていよいよ八犬士勢揃い。ゝ大法師から事の成り行きを聞いてそれぞれが使命感に燃えながら自己アピールをしていくシーンは何度見てもカッコいい!勢ぞろいした八犬士に割り込むように転がってくるゝ大法師@田辺さんがこれまたユルい感じで可愛いんですよ(笑)。さらに、決めポーズが終わった後も密かに舞台の端っこの方で自分のアクションに納得がいかなかったのか首かしげながら練習してるしwww。あぁ、田辺さんらしいゆるさが出てて面白いなって毎回あそこは好きでしたね。
八犬士の使命・大義は里見の里で病に臥せっている里見義成を救うこと。彼らの持っている玉を掛ければ義成は復活し里見も安泰だという。その話を聞いて一致団結して里見へ向かうことを誓う八犬士たち。
ここまでは、みんな仲間だと思っていました。しかし…思わぬところに裏切り者が…。

里見に向かうのにいくつかの班に分かれて行くことにしようと提案した毛野。小文吾と二人きりになり彼を口説きだす毛野。このあたりでなんだか雲行きが怪しいなと思い始めたその時、なんと、毛野は小文吾を刺し殺し玉を強奪してしまうのです。その様子を傷を癒していたはずの荘助は見てしまい、親兵衛に自分の持っていた玉を託して姿を消します…。
一番最初にこのシーンを見たとき、ものすごくショックでした。毛野が裏切るなんて…!今まで見てきた八犬伝はみんな仲間だったので本当にものすごい衝撃受けてしまった。毛野はそのあとも先発隊の現八と大角の前に現れ彼らを殺し玉を強奪してしまう…。そして、それを悟られないように命からがら里見の城までやって来て奪った玉を信乃たちの前に出すんです。もう本当に、最初の頃は「なぜ!?どうして!?」という衝撃の連続でした。客席も毎回ハッ…と息を呑む声が聞こえてきて、同じようにショック受けてるのかもしれないなぁと思ってしまいました。

そしてもう一つショッキングだったのがゝ大法師の裏切りです。彼は里見を守るために八犬士を集めたのではなく、里見に呪いをかけた玉梓を復活させて人間を滅ぼしてやろうと目論んでいた。里見を滅亡させることだけではなく、人間を滅亡させようとしていたんです…。
これも最初見たときは本当に大衝撃でした。よもや、あの、ゝ大法師が裏切るなんて思ってもみなかったので…。この人だけは最後の最後まで八犬士を正しい道に導く人だってこれまで見てきた『八犬伝』でそう思ってきたのでショックは大きかったです。なので、1回目に見終った時には呆然としてしまった(汗)。ちなみに、玉梓は浜路の体を借りた姿になっているということで、二階堂ふみちゃんが演じてます。これまたすごい迫力でビックリ!!悪のパワーがハンパないです!!!

さらにビックリするのが、義成は実は親兵衛だったということ。彼がかつて破傷風で苦しんでいた時に見知らぬ男女が殺されてその血を掛けられて復活した過去があった。親兵衛が「破傷風は男女の血を5合ずつかけると治る」と断言していたのはこの記憶があったからです。床に臥せっていたのは義成の父親でもある義実だった…。
親兵衛はゝ大法師の裏切りを察していたので毛野に残りの玉を自分に託してほしいと懇願。全ての玉を揃えた瞬間、親兵衛は毛野の裏切りで斬り殺されてしまいます(涙)。それを目の当たりにした信乃、道節の衝撃はハンパない。

信乃は何が起こっているのか混乱。玉梓の妖力も復活し、すべてが万事休すになったとき…荘助が村雨で玉梓を退治。迷いもなく浜路の顔をした玉梓を斬り捨てた荘助はめちゃめちゃカッコいいのですが、この出来事は道節にとってはかなり衝撃でもあり…。彼にしてみれば荘助に2度妹を殺されたような感覚なんですよね。だから最後まで荘助に対する不信の念が捨てきれない。この点はとても切なかったです(涙)。

玉梓が消滅した時(断末魔をあげて落ちていく玉梓の表情が圧倒的にすごかったふみちゃんに拍手!)、毛野は狂ったようにその名前を叫び絶望します。これがまた切なくて泣けるんです…。
最初は毛野が裏切ったことが信じられなくてショックを受けましたが、回数を重ねて見ていくうちに、毛野がこのような末路を迎えるのはもしかしたら自然な流れだったのかもしれないなと…。父親を殺され幼いころから誰にも頼れず女として育てられてきた毛野。男でありながら女としての生き方しかできなかった苦しみ。自分の存在の曖昧さにずっと苦しんできたんだと思う。八犬士の中で、一番不幸な境遇だったのは毛野かもしれません
だから彼は、人間を憎んだ。こんな生き方を強いた人間を恨み、玉梓のいう獣・畜生の生き方へと傾倒していく。まるで泣き叫ぶかのようにそんな自分の境遇を吐き捨てる毛野が切なくて切なくて本当に泣けました(涙)。倫也くんのセリフに毛野のこれまで生きてきた切なさやら苦しさやらがものすごい込められてた。やはり彼はすごい役者だなぁと改めて思いました

そしてゝ大法師。彼も戦乱の中で生きてきて、玉梓の化身と出会うことで考えを変えてしまった一人。きっと戦がなかったら、里見のために生涯を捧げて生きたのかもしれません。だけど、戦の中で人間に絶望を抱いてしまったゝ大法師こと金碗大輔。獣は自分の必要なものしか殺さないのに、人間は必要以上に人を殺す。だからこの世界を獣・畜生の世の中にすればすべてが丸く収まる。そういう思想にたどり着いてしまった。
言われてみれば、それも一理あるわけです。人間の愚かさを突き付けられているような気持にさせられた。もしかしたら金碗大輔の求めた世界のほうが平和に収まるのかもしれない。大輔も毛野も時代の犠牲者なんですよね…。

だけど、信乃と道節は「人間」で有り続けることにこだわった。そして荘助の持ってきた村雨で大輔を斬り捨てる。この時の田辺さんの悪の表情やら断末魔やら、ホント凄い大熱演で圧倒されました!!久しぶりに田辺さんの悪の表情見たけど、すごい魅力的ですね。くまモンに癒されてる人と同一人物とは思えなかったですw。

戦いの終わりに、信乃は「物が語ってくれたらいいね」と話します。人が言う大義などは本当の物語ではない、戦で壊された物や瓦礫の中にきっと本当の物語はある。それを感じながら、これからも生きていく。「ただし、俺たちには罪がある。そのことだけは忘れないで生きていこう」というセリフをつけることによって、信乃の今後辿るであろうめちゃくちゃな人生にも納得できる気持ちにさせられた気がします。いつもラストシーンは涙してたけど、千穐楽は特にこの最後の信乃の言葉が胸に沁みて泣きました…。

それにしても、サダヲさんと瀬戸くんは汗かきませんねぇ!田辺さんや津田さんや、辰巳くんは滝のような汗が流れていたのにこの二人は汗まみれになってなかったw。
色々衝撃的なことも多かった『八犬伝』でしたが、エンターテイメント作品として5回分、きっちり楽しませてもらいました。

DVD発売中

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