ミュージカル『マリー・アントワネット』大阪公演 19.01.11~12

主なキャスト別感想

花總まりさん・笹本玲奈さん(マリー・アントワネット)

花總さんはもう、出てきた瞬間から・・・「王妃様!!」と崇めたくなるようなオーラがすごくてさすがだなぁと思いました。柔らかく美しい笑顔、立ち居振る舞い方、プライドが高いところなど…王妃としての要素を全て兼ね備えた感があって圧倒されましたね。高貴な役を演じることが多い花總さんらしい存在感だったと思います。

2幕では王妃としてのプライドを砕かれ、「母」としての部分と「女」としての部分が浮き彫りになっていくのですが、その部分もとても繊細に演じられていたと思います。大切なものを次々に奪われ絶望して泣き叫ぶシーンは特に痛みがストレートに伝わってきてグッとくることが多かったです。

玲奈ちゃんは初演ではマルグリットを演じていたので、高貴なお姫様をどうやって演じるのかとても興味がありました。登場した時に感じたのは「うわぁ、可愛い!」の一言!花總さんが美しいと感じたのに対し、玲奈ちゃんは本当に可愛かった。特に笑顔が印象的で、世間知らずなお嬢様ならではの無垢さみたいな部分が感じられたんですよね。幼さが残る雰囲気が出ていたのが特徴的だったかな。

ただ、歌うと迫力の地声部分が随所に出てきて「王妃」というにはちょっと違和感あるなぁとも思ってしまいました(汗)。裏声はきれいなんだけど、感情が高ぶった時の歌いっぷりはアントワネット…よりもマルグリットに近い訴え系みたいなものを感じてしまった。その点は「キャラ違いだったのかなぁ」と思ったかも。

ただ、2幕で追い詰められていくシーンのお芝居は真に迫っていてとても良かった。実生活でもお母さんになったことで、子供たちに対する母性も感じられ、息子を奪われて泣き崩れるシーンは思わずもらい泣きしました。

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昆夏美さん・ソニンさん(マルグリット・アルノー)

昆ちゃんは登場した時から目のギラギラ感がホントすごい迫力でした!!極貧生活の中で、贅沢三昧な生活をしている上流貴族に対する怒りを沸々と燃えたぎらせてきたっていう過程が雰囲気から滲み出てて、ゾクッとさせられることが多かったです。彼女は目が印象的な女優さんなので、なおさらそう感じたのかもしれません。

アントワネットに対する憎しみの感情をガーっと爆発させていて、マルグリットの心も病んでいっているんじゃないかとすら思うほど。そこまで怒りと憎しみのパワーを爆発させている昆ちゃん見るのは初めてだったのでなかなかに新鮮でしたね。

それゆえ、2幕後半になって徐々に気持ちがアントワネットに揺らいでしまったことに戸惑う様子がとてもリアルでした。民衆の残虐性とアントワネットの儚さに触れた時に彼女の中で湧き起ってしまった感情の変化が分かりやすく表現されていて、グッとくることが多かったですね。

ソニンさんは配役されると知った時から「マルグリットにピッタリのキャスティング」だと思いましたw。下から這い上がろうとする強力なバネみたいなキャラを演じたらピカイチだと感じていたので、見る前からなんとなく雰囲気は想像できちゃったところはあって。
ただ、そのことで逆に「あまりに激しすぎる感情を見せられたらちょっと引いてしまうかもなぁ」といった懸念の気持ちも正直ありました。前日に観た昆ちゃんのマルグリットがかなり攻撃的だったのでなおさら(汗)。

ところが、ふたを開けてみれば、ソニンさんのマルグリットは激しさを持ちながらも心のどこかにいつも「迷い」みたいなものがちらついている…ちょっと予想と違うキャラだったんですよね。想像していたよりも激しく突っ走る感がなくて、逆に繊細な印象を持ったんです。ここは何だかとても新鮮に思いました。

なので、2幕後半でアントワネットに気持ちが揺らいでいくシーンは昆ちゃんとは違ってどこか自然の流れ…みたいな印象がありました。ソニンさんの演じるキャラでそういう感情になるとは思わなかったので意外でした。
とはいえ、革命の時に力の限り体いっぱいで歌う姿はさすがの迫力でしたけどね。時々「1789」のソレーヌとキャラが被るかもって思うこともありましたがw。

古川雄大くん(フェルセン伯爵)

今回の再演版でもう一つ変わったと思ったのが、フェルセンの存在感です。初演では添え物的な印象が強かったんですが、再演版では冒頭でアントワネットとの出会いを振り返り物語がスタートするというような形になっています。

アントワネットの処刑を知ったフェルセンがアントワネットとの日々を振り返ることで、彼の回想物語としての意味合いも出ていたんですよね。なので、彼の役割が初演の時よりもずっと大きくなっていました。

古川くんはもともと美しい顔立ちで立ち姿もきれいだし、キラキラした存在感はフェルセン伯爵にドンピシャ!だったのですが、それ以上によかったと思ったのが歌声がものすごくしっかりしていたことです。「モーツァルト!」でヴォルフガングを演じたことがきっと彼にとって大きなプラスになったんじゃないのかな。各ナンバーごとにフェルセンの心境がリアルにしっかりと反映されていてすごい説得力がありました。

万里生くんのフェルセンも見てみたかったけど、古川フェルセンを2回も見れたのはお得だったかもしれませんw。万里生くんはDVDで見ようと思います。

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原田優一くん・佐藤隆紀さん(ルイ16世)

今回の配役の中で一番意外だなって最初思ったのが原田くんのルイ16世です。レミゼではマリウスやアンジョだったり、サイゴンではクリスだったりと・・・どちらかというとイケメン王子系の役を演じるイメージが大きかったので、アントワネットからすると癒しの存在の意味合いが大きいルイ16世の印象がなかったんですよね。

実際に見てみたら…これがめちゃめちゃハマっててちょっとビックリしました。顔の感じもちょっとふっくらしてたのは役作りであのようにしたのかな?ちょっと丸い顔の笑顔がすごい癒し系で見ているだけで優しい気持ちになれる感じ。まさにこの作品の中のルイ16世のイメージにピッタリでした。

チラリと見える若さの部分と、アントワネットへの穏やかで深い愛情が後半かなり色濃く出ていて♪もしも鍛冶屋なら♪のナンバーは、初演で唯一と言っていいほど好きだった禅さんの雰囲気と被って感動的でした。原田くんの意外な一面が見れたことがすごく嬉しかったです。

佐藤くんシュガーくんと呼ばせていただきますが)のルイ16世は雰囲気的にも絶対ハマるだろうなと思ってました。何といっても魅力なのは、あの会場を包み込むような深くて温かい伸びのある歌声です。♪もしも鍛冶屋なら♪をシュガーくんで聞いたら絶対感動する!という確信のようなものがありました。

予想通り、雰囲気的にはもうピッタリで。おっとりとした優しい笑顔が本当に可愛くて見ているだけで癒されちゃう!!アントワネットに対しても、ちょっとオドオドしながらも大きな心で受け止めて包み込む包容力があって…あんな人が傍に居たら幸せだろうなと思える説得力がすごかったです。

♪もしも鍛冶屋なら♪は想像していた以上に素晴らしかった!!シュガーくんの歌声は本当に聞いていて癒されるし、気持ちが温かくなって泣きそうになっちゃいますね。捕らわれの身になった時のシーンで歌われたところなんかは思わずウルウルしてしまいました。

吉原光夫さん(オルレアン公)

初演ではオルレアン公は高嶋政宏さんが演じていて話題になったんですよね。なにせ、「エリザベート」で高嶋さんが演じていたルキーニが殺そうと狙っていた相手というのがオルレアンだったのでw。当時、高嶋さんも「まさか自分が殺そうとしていた相手を演じることになるとは」って苦笑いしていた記憶がありますw。
が、作品の中でのオルレアンの印象っていうのがいまひとつなくて(苦笑)。なんか黒い存在だったかなぁくらいしか記憶にないんですよね。

それが再演では、アントワネットの前に立ちふさがる「大きな敵」としての立ち位置が明確になっていたので非常に分かりやすかったです。アントワネットにとっては「敵」でも、最初のうちはマルグリットにとっては大きな「味方」として描かれているが特徴。

この一見すると両極端なキャラクターを、吉原さんは上手い具合に立体化させて存在感を大きく魅せてくれました。1幕ではどちらかというとマルグリットにとっての協力者として民衆の味方みたいに描かれているんですが、裏では王位を奪い取るといった大きな野望を抱えている黒幕キャラ。内に秘めた野望を隠しつつ周囲を煽っていく、みたいな芝居が本当に上手かったし魅力的でした。

2幕の後半は紳士的な部分を表で見せながらも仕上げとばかりに牙をむいてくるシーンがあって。そこは見ていて本当にゾクっとさせられることが多かったです。それに、歌でストーリーを支配していく力もすごかった!まさに圧巻の存在感だったと思います。
それなのに、カテコになると茶目っ気な部分がチラチラww。特にマルグリット役の昆ちゃんやソニンさんとはかなり懇意にしてるように見えて微笑ましかったなw。

駒田一さん・彩吹真央さん(レオナール・ローズ)

レオナールとローズは自分たちの商売を潤わせるために、王妃をたきつけていたところがあるような小悪党的なキャラクター。レミゼでいえば、テナルディエ夫妻とちょっと被るところがあるようにも思いました。初演にも出てきていたはずなんだけどほとんど印象がなくて(苦笑)、今回の再演でやっと存在感が見えたって感じでしたね。

駒田さんのあのズル賢い芝居がめちゃめちゃ役に合ってて面白かったw。特にマルグリットをアントワネットに仕立ててほしいとオルレアンから頼まれたときのシーン。最初は「こんな汚い娘を!?」みたいに全然乗り気じゃなかったのに、お金を積まれたらコロッと態度が変わっちゃうww。このあたりのコミカルな芝居はさすが駒田さんだなぁと思いました。

彩吹さんも守銭奴的なキャラを熱演されててw、駒田さんといいコンビでした。

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坂元健児さん(エベール)

エベールは初演では記憶にないのでたぶん新キャラだったのかな。今回出てこなかったボーマルシェの役割を半分引き継いだ形になっていました。

サカケンさんは最近こういったアクの強いキャラクターを演じることが増えましたよねぇ。それ故、登場した時から「こいつは単なる協力者じゃないな」的な雰囲気をすぐに感じてしまうw。つまりはどこか胡散臭い、裏に野心を持ったキャラっていうのがめっちゃハマるなってことで。

彩乃かなみさん(ランバル侯爵夫人)

ランバル夫人は常にアントワネットの傍に居た数少ない理解者の一人。アントワネットとフェルセンとの逢瀬も温かく見守る、姉のようでもあり母親のようでもある存在でした。

彩乃さんはいつもアントワネットを温かい眼差しで見守るランバル夫人をとても丁寧に演じていたと思います。それ故、2幕の悲劇はシーン的にとてもショックでした…。このフランス革命の一番大きな被害者って、ランバル夫人だったかもしれないですよね。

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後述

改めて動画見てみると、衣装もセットも本当に豪華だったなと。久しぶりに大型ミュージカルを見た!って感じでしたね。オケピもステージ前に構えるオーソドックス型で、張り切って指揮棒を振るう塩田さんの後姿を久しぶりに楽しめたのもよかったですw。

そうそう、初演ではアントワネットの髪型は横に広がったスタイルだったはずですが、今回は上に伸びた感じになってましたなw。その方が個人的には美しさが際立っていて良かったと思いました。

2018年版の「マリー・アントワネット」は映像化が決まっています。

MバージョンとAバージョンが発売されるようですね。

予想していたよりもけっこう好感触だったので、劇場で予約してきてしまいましたw。ちょうど「1789」と時代が同じということもあるので、サイドストーリーのような感じで楽しめるかなと思って購入。届くのが楽しみです。

次に再演されたときは・・・やはりもう一度観に行くかもしれません。

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