ミュージカル『アナスタシア』大阪公演 2023年10月30日マチネ

ミュージカル『アナスタシア』を観に大阪遠征してきました。

約1年間住んだ山口県から引っ越した直後に大阪入りしての観劇。このチケット確保したときにはこんな事態になるとは夢にも思っていなかったわけで(苦笑)。それでも海宝グレブの最後の勇姿をもう一度見たいという一心で劇場に足を運んできました(海宝グレブはこの日が最終日)。

また、ディミトリ役の内海くん、リリー役の堀内さん、リトルアーニャ役の紬ちゃんも大千穐楽を迎えることになっていて。「アナスタシア」前々楽ではありましたが、見届けることができたのは本当に良かったです(3年半前に観れなかった悔しさもあったので感慨も一入だった…!)。

ちなみに、この日は学生さんの団体がいくつか入っていたようでロビーが非常ににぎやかでした。大楽寸前の時期だったのでちょっと驚いたのですが(汗)この中の数人だけでも観劇に興味を持ってくれる子が出てくれたらいいなと思いました。

以下かなりのネタバレを含んだ感想になります。

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2023年10月30日マチネ公演 in梅田芸術劇場メインホール(大阪・梅田)

概要とあらすじについては東京公演時の記事を参照。

上演時間は約2時間40分(休憩時間含む)

内訳は、1幕75分(1時間15分)、休憩25分、2幕70分(1時間10分)となります。

キャスト

  • アーニャ: 葵わかな
  • ディミトリ:内海啓貴
  • グレブ:海宝直人
  • ヴラド:大澄賢也
  • リリー:堀内敬子
  • マリア皇太后:麻実れい
  • リトルアナスタシア:戸張柚

<アンサンブル>

五十嵐耕司・伊坂文月・井上花菜・工藤 彩・熊澤沙穂・小島亜莉沙・酒井 大・杉浦奎介・渡久地真理子・西岡憲吾・武藤 寛・村井成仁・山中美奈・山本晴美

<スウィング>

草場有輝・篠崎未伶雅

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全体感想・キャスト感想

3年半前のリベンジの想いも強かったので東京と大阪合わせて5公演確保していたのですが、すべて観に行くことができました。ここ最近の中では回数多く観劇したこともあってか愛着も深まったし、作品への理解や感慨深さみたいなものも大きかったです。これで見納めになってしまうのかと思うとやっぱり寂しいですね(涙)。

♪Once Upon a December(遠い12月)♪

マリア皇太后(ナナ)とリトルアナスタシアのやり取りが可愛らしくて毎回癒やされていました。それから個人的には皇太后と皇后の間に”嫁と姑”問題を思わせる場面があったのも印象的だった。舞台上では殆ど描かれていない二人の関係でしたが、息子のニコライ二世は二人の間に挟まれて結構苦労したのでは(苦笑)。
子供から少女に変わるところの時代の移り変わり演出もよかった(少女から17歳の少女へと変貌するとき)。ここの場面のアナスタシアの笑い声がやけに印象に残ってる。

ちなみに、フラッシュ効果を使った演出で描かれてる”皇帝一家の家族写真”場面は実際に残ってる写真が参考にされているそうです。この舞台を見てから”ニコライ一家”の歴史について少し調べたのですが、彼らの末路を思うと平和そうな家族の表情がなんだかとてもつらくて…。

♪A Rumor in St. Petersburg(ペテルブルクの噂)♪

ロシア革命で皇帝一家に悲劇が襲ってから10年後、ボリシェビキの青年グレブが声高に理想国家を築いていこうと呼びかける場面。このとき誇らしげに町の名前が「レニングラード」と変わったことを説いてたので、史実的にはレーニンが亡くなった後くらいの時期でしょうね。
グレブは熱狂的に自らが信じる国造りについて訴えてるけど、庶民たちはそれを冷ややかに受け流しているのがなんとも切なかったなぁ…。

内海くんのディミトリは厳しい境遇の中でも生きるためになんでもやって来た感がすごく出ていたのが良かった。アナスタシアの噂話を聞いた瞬間「ニヤリ」と悪巧みしたような笑みを浮かべてたの可愛かったなぁ。

それからやっぱりアーニャとグレブが出会う場面も忘れがたい。海宝グレブ、アーニャに手を差し伸べた瞬間にボリシェビキの副官ではない、本来の年相応な青年らしい素顔をふと垣間見せるんですよ。アーニャに避けられてしまった時は暗い表情を見せるんだけど「ありがとう」と言ってもらえた時に彼の心の中の気づかない部分が動き出したのを感じました。「私は毎日ここにいる」と叫んだときの胸の高まりがリアルに伝わってきて思わず感情移入してしまう。

♪In My Dreams(夢の中で)♪

ディミトリとヴラドの元を訪れたアーニャが必死にパリへ行きたいと訴える場面。最初はバカにしたような表情をしてるディミトリが個人的にかなりツボw。内海ディミトリは本当に鬱陶しそうな顔しててちょっと吹いちゃったよww。

だけどそんな彼らの前でアーニャは自分が何者なのかを知るためにパリへ行きたいと訴え歌う。わかなアーニャは歌声がとても柔らかくて可愛らしい印象がありますが、自分の心の中の不安や焦燥感がすごく伝わってきたのがとても良かったと思います。

そんな彼女の様子を見て大澄ヴラドが懐から本物の”アナスタシア”の小さな肖像を取り出しアーニャと見比べてディミトリに目で合図を送ってる場面も個人的にツボ。あのときの二人のアイコンタクトがドラマを動かしていくんだと思うとワクワクします。

♪Learn to Do It(やればできるさ)♪

最初の方のアーニャとディミトリはもう本当にヤンヤヤンヤ揉め合っててw。わかなアーニャと内海ディミトリのじゃれ合いっぷりがなんか最高に可愛くてキュンときましたわ(笑)。反発しあってるんだけどなんかどこか放っておけないみたいな雰囲気が特に良い。

これまではアーニャとディミトリのダンス場面はアニメ映画のほうが印象的に描いてるなと思っていたのですが、今回見たら”二人の関係”がまさにここから動き出したのかもといった確信みたいな想いが込み上げてきた。はじまりの予感的なやつ。
個人的には、内海ディミトリが「1,2,3」と必死にダンスを踊ってるときの表情と、ヴラドが目を話した隙を狙ってディミトリの足を蹴飛ばすわかなアーニャがめっちゃ可愛くて萌えたww。大澄ヴラドはアーニャにメロメロで「かーわーいいーー」とデレちゃうしでw色々と最高。そんな雰囲気の中で3人が心ひとつに楽しくポルカを踊る場面は見ているこちらも心が踊ります。

あと、黒板がディミトリの顎に直撃する場面。ここは東京公演の時に禅さんが「注目ポイント」と熱弁を振るっていたのを聞いて以来いつもチェックして見てるんですがw、内海くんと賢也さんの息は実にピッタリでしたよ。特に内海くんの顎にゴチンとなった瞬間の表情がめっちゃリアルで本当に痛そうに見えたのが凄いなと思った(表情はめっちゃ可愛かったけどねw)。

♪The Neva Flows(ネヴァ河の流れ)♪

グレブがディミトリたちの企みに感づいてアーニャを呼び出す場面。最初彼女の顔を見る前はすごく高圧的な態度を取っていたのに、「同志!」と振り返った瞬間思わずたじろいでしまうグレブがとても愛らしい。彼女と話をするために人払いするときもちょっとバツが悪そうにしてるのがたまらないんだよねぇ、海宝グレブ。

自己紹介する場面でも、海宝グレブはアーニャの前で一生懸命でとてもいじらしい。彼女の気を惹こうと「私には意外とユーモアのセンスもあるんだよ」とピョコッと飛んで見せるのとかホント可愛らしくて。冷酷な副官の自分を押し隠そうと必死。想いを寄せた女の子の前で自分を理解してほしいとアピールする姿は等身大の普通の青年そのものです。鎧の下に隠れた彼の真実が垣間見えたような気がして、なんだかグッときてしまう。

アーニャから「別の誰かになりたいと思うことは悪いことなの?」と尋ねられたグレブが父親のことを歌う場面。ニコライ二世一家の悲劇に大きく関わっていた父のことが今の冷徹な副官としての彼を形成しているのだなと改めて思い知らされた気がしました。海宝グレブは当時の体験を淡々と振り返りながらもどこか興奮しているようにも見えたかも。特に「銃声の後の静寂」と語ったときの目を閉じた表情はゾクッとするほど美しかった。

グレブは「父は過去を悔いて命を経ったと母親から聞いたけれどそれは違う」と強く語る。敬愛していた父が間違ったことをするはずはないという想いが強い彼ですが、今回海宝グレブを見たとき…、実は父の死について複雑な想いもずっと感じきているのではないだろうかとも思った。それを必死に打ち消してるような痛々しさを感じてしまい胸が痛みました(涙)。
連行されていくロマノフ家の子どもたちも目撃してしまっているグレブ…。あの事件に父親が関わっていたことは大きなトラウマになったはず…。その中にいたアナスタシアの瞳が頭から離れないというのもすごく運命的なドラマを感じます。

アーニャはグレブと「流れるネヴァ河、また春が来る」と声を合わせて歌うけれど「ロマノフは死に絶えた」の部分だけは言葉に詰まるんですよね。彼女の中ではそれがなぜかはこの時点では分からないけれど、過去の記憶は確実に頭の中に蘇ってきているんじゃないかなと思いながら見てました。

もう一つ印象深かったのは、アーニャを解放する場面。最初は”友達”として優しく忠告するんだけど、その直後に”副官”の顔で彼女の腕を荒々しく掴み厳しく忠告する。彼の二面性が見えるシーンですが、海宝くんはこの場面を実に繊細に演じていました。
ほのかに思いを寄せる女の子に”優しい自分”をアピールしたい気持ちと、悪の道から救い出さねばという”政府側の人間”としての使命感とが混在している感じ。彼女に少し荒々しく接してしまった後にハッとしたように自分の手を見つめてる海宝グレブがとても印象深かったし切なかった。

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♪My Petersburg(俺のペテルブルク)♪

酔っ払いに絡まれた後、ディミトリがアーニャに自らの過去を語る場面。内海ディミトリは最初は「誰も育ててくれた人はいない」と辛い過去を吹き飛ばすように明るい表情を浮かべてて。生き抜くために泥臭く突き進んできた逞しさが言葉の節々からすごく伝わってきたのがとても良い。

特にこの日は内海くんの楽ということもあってか前回見た時以上に熱のこもった歌いっぷりで。「でも俺はこの町が好きなんだ」と美しい景色の前で生き生きと駆け出す内海ディミトリの姿を見たらなんだかものすごく込み上げてきちゃって…気がついたらボロ泣きしてしまった(涙)。辛い思いもたくさんしたけど、根本には今自分がいる場所が好きだというまっすぐな熱い素直な気持ちがこれでもかってくらい胸に響いてきて本当に感動的でした。
歌い終わった後、客席からの拍手が鳴り止まずショーストップのような雰囲気になったのもすごく胸熱だった。内海くんディミトリの想いはしっかり客席に届いていたんだと思えて嬉しかったしなおさら感極まってしまった。

”アナスタシア”の復習をする中で「子犬」についての質問をした時に彼女が怯えてしまう場面、これ、実際にアナスタシアがかわいがって飼っていた犬のエピソードが絡んでるんですよね。あの悲劇の時、彼女と一緒に天に召されたそうで…その史実を想うと「怖い」と過去の記憶に怯えるアーニャの気持ちがとても痛々しく感じてしまいます。
そんな彼女に持っていた”オルゴール”を手渡すディミトリ。彼には開けなかったオルゴールをいとも簡単に開けてしまったアーニャ。そのオルゴールと同じような光景が彼女を囲む幻想的な演出がとても美しかった。特にロマノフ時代の男性たちがアーニャを持ち上げて回転させる場面はオルゴールの世界観とリンクしててとても印象深い。

ディミトリの素直で真っ直ぐな人柄に触れたアーニャが隠し持っていたダイヤを渡す場面も好き。「今まであなたのこと本当に信じてなかった」と思わず本音を漏らすのがいいんですよね。彼女の気持ちが一歩前に進んだ気がして見てるこちらも嬉しくなる。
目を閉じてと言われたときの内海ディミトリ、手で顔を隠し目を閉じるんですよ。これが本当にめっちゃ可愛くて激萌えw。

♪Stay, I Pray You(惜別の祈り)♪

アーニャたちがロシアを脱出するため駅で落ち合う場面。ここでイポリトフ伯爵とすれ違うのですが、彼にはどこか”死”の匂いが漂っていて…見ているだけで胸が傷んでしまいます。このナンバー、前半はアカペラで歌われるのですが武藤さんを始めとするキャストの皆さんの歌声が本当に美しくて毎回魅了されまくっておりました。荘厳で美しいメロディーのなかに故郷ロシアへの想いが切々と込められていて本当に泣けます(涙)。
皆自分の命を守るためにパリに向けて決死の脱出を試みる人たちなのですが、祖国への愛は失うことはないわけで。国家に抹殺されてしまう運命が待っていると知りながらパリへ向かおうとしてる伯爵も同じ気持ちだったのだろうと想うと心が痛かった…。

♪We’ll Go from There-新たなる旅立ち-♪

直前までとても深刻で哀しい空気が漂っていたのに、列車に乗り込んだ後はなんだかとても楽しいナンバーが流れてきて。『アナスタシア』はこういった緩急つけた場面の転換が非常に多くその度に心が動きまくって本当に忙しいw。でも、それがこの作品の大きな魅力でもあるんですよね。

アーニャ、ディミトリ、ヴラドがこれから先の展開に思いを馳せながらそれぞれのパートを歌うシーンは視覚的にも聴覚的にもすごくワクワクします。また列車の外に流れる風景のプロジェクションマッピングがメチャメチャ美しくて、一緒に旅をしているような気持ちになってしまう。

ロシアの役人が追いかけてきたと知って3人一緒に列車から飛び降りる場面、ここ、映画だと雪の上に着地できるから良いけど春の気配がする舞台版ではどうなったのだろうといつもハラハラしてしまう(汗)。架空のストーリーなので3人共無傷状態で次のシーンに出てきますが(賢也さんの動きはやっぱりどこかシャキシャキ元気だったw)、現実的には命があることのほうが奇跡だよなぁと(汗汗)。

♪Still(それでもまだ)♪

上官からパリへ向かったアーニャたちを追跡し、見つけ次第「本物だろうと偽物だろうと」始末しろと命じられてしまうグレブ…。ここでの彼の葛藤は見ていて毎回本当に胸が痛みました(涙)。

理想の国家実現のために、父親の息子であることを証明するために任務を忠実に遂行するだけだと頭ではわかっていながらも、どうしてもアーニャへの特別な感情を抑えきれないグレブはとても人間臭い。「俺ならば彼女を守ってやることができるのになぜ拒むのだ」と葛藤するときの海宝グレブの苦悩に満ちた歌声に胸が締め付けられてしまう(涙)。もし父親のことがなかったら、彼には別の人生があったはず。本当は心優しくユーモラスな一面も持った普通の青年の顔があるのに、それが顔を出さないように必死に感情を抑え込もうとしてるようで…切ないったらないですよ、ホント(涙)。

「彼女は俺を騙しているのに、それでもまだ…今も…」

このフレーズの歌い上げが海宝グレブ、めっちゃドラマチックで激しく熱くて…涙なしには聴けませんでした(泣)。ほんと、海宝くん、すごい役者になったなぁと。

♪Journey to the Past(過去への旅)♪

”もうほとんどパリ”の場所までたどり着いた3人の場面。興奮したディミトリとヴラドがパリが見える丘に駆け出していって「アーニャーー!!」と呼びかけるシーンは前回のトークショーのことがめっちゃよぎりましたw。客席からは見えないけど、アーニャには舞台袖で興奮しながら彼女を呼ぶ二人の笑顔があるんだなと想うと本当に微笑ましくて。ほっこりした気持ちになる…っていうか、なぜかブワッと込み上げてきていつもより早くに号泣モード入っちゃったよ(涙)。

わかなアーニャ、歌声は柔らかく前に押し出すような力強さはちょっと弱いんですが、それでもパリで見つかるかもしれない新たな自分を想像して胸躍る気持ちはこれでもかというほど伝わってきます。彼女の心のなかに描いてる風景が見えてくるような感じ。そう思ったら自然にボロボロ涙零れてきちゃって…最後までやっぱり号泣してしまうのでした。
映画版では序盤に登場するこの名曲を1幕ラストに持ってくる舞台版、本当に最高です!!!

休憩時間に入った後の幕には2幕の予感を漂わせてか雪が降っていません。こういう細かい演出も好き。

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♪Paris Holds the Key(パリは鍵を握っている)♪

2幕からアーニャ、ディミトリ、ヴラドの扮装がとても華やかで綺羅びやか。新しい予感に満ちた雰囲気が最高です。ここでパリ市民も加わるのですが、特に独特の足運びのダンスが特徴的な”チャールストンダンス”が素晴らしい!!ダンサーの賢也さんの長い脚から繰り出される動きはキレキレで実にかっこいい。それから、隊列を乱さずにヴラドを中心としてみんながぐるぐると回りながら動いていく振り付けもとても印象的でした。

そんな楽しい雰囲気の中でふとディミトリがアーニャとの未来を予感して寂しげな表情を浮かべるシーンが切ない。特に内海くんはアーニャとダンスできなかった後にちょっと捨てられた子犬のような雰囲気になってて…それだけでなんか見てるこちらも泣きたくなっちゃったよ。内海ディミトリは彼女への恋心に気づくタイミングがどちらかというと早い方かなって感じたんですよね。ヴラドに「お前は失恋してしまうんだな」と指摘された時も否定しながらも辛そうな顔してるし。それだけに、届かない気持ちにモヤってしまう場面はウルっときちゃう。
自分の気持ちを見ないようにした後ディミトリは再び明るい表情になるのですが、二人と別れてホテルに先に戻ると駆け出していくときの内海くんの嬉しそうな顔がめっちゃ可愛かった!

場面変わってリリーが届いた手紙をマリア皇太后に披露する場面。このときの堀内さんと麻実さんとのやり取りがとてもコミカルで最高でした!

リリーの読み上げる手紙の内容にいちいち突っかかる皇太后。麻実さんの台詞回しは独特ではあるんだけど、堀内さんがとてもいいテンポで受けてるのですごく楽しい場面になっていたと思います。何と言っても堀内リリーの表情の反応が漫画チックなのが実に可愛らしいw。ちょっと顔を歪ませて苦い顔した時の可愛らしさは歳を重ねられても本当に変わらないの、堀内さん、本当に凄いことだと思う。劇団四季時代から純粋な少女的な役を多く演じていたことも大きいのかもしれない。

皇太后がアナスタシアとの思い出を振り返りながら涙す♪Close the Door(扉を閉ざして)♪は切なかったなぁ。特にリトルアナスタシアが窓の外でその様子をじっと見つめてるのが印象深い。皇太后が楽しかった思い出を愛しそうに語るときは笑みを称えているのに、現実に立ち返り悲嘆に暮れるとリトルアナスタシアも悲しそうな表情になってそっとその場を離れていく…。このときの紬ちゃんのお芝居がとても切なかった。彼女は将来さらに素敵な女優さんになるんじゃないかな。

♪Land of Yesterday(過去の国)♪/♪The Countess And The Common Man(貴族とただの男)♪

パリにたどり着いたグレブがかつてのロシア貴族たちが集う「ネヴァクラブ」の入口で馬鹿にされる場面も印象深い。彼がなぜ父の背中を追いボリシェビキの一員となったのかがよく分かるシーンだと思います。贅の限りを尽くし庶民のことを見下していたような彼らのことをとても苦々しく感じていたのではないかと。ロマノフ王朝が滅びた後も、未だ過去の栄光に縋り退廃に浸ろうとする彼らの姿は、アーニャへの気持ちの間で揺れるグレブの迷いを振り払うには十分だったような気がします。「彼らの残飯など食べるものか」と吐き捨てるセリフも印象深かった。

とはいうものの、ネヴァクラブでの元貴族の皆さんたちの歌とダンスはものすごい迫力だった!!それを引っ張っていたのが、仕事を離れ解放感から男前な荒々しさを全面に出しながらもどこか可愛らしくコミカルな魅力満載で弾けまくっていた堀内リリーだったと思います。ほんとパワフルで、見ているだけでも元気になる。アンサンブルさんたちのダンスもほんとそれに負けじと熱い雰囲気で圧倒されっぱなしでした。堀内さんもこの日が楽だったので気合の入り方もワンランク上げてたような気がする。

大澄ヴラドとの再会場面も楽しかったなぁ。表向きでは彼を遠ざけるような態度をとるんだけど、周りに人がいないのを確認するとついついポロリと「ほんとは好き」って気持ちが漏れてきちゃう感じがめっちゃ可愛かったよ、堀内リリー!個人的には、ヴラドに構ってほしくて胸に挟んでいたスカーフをわざと落とす場面が超ツボww。あのときの「あ!」って反応が最高!!
そんな彼女の気持ちをビシビシ感じていたであろう大澄ヴラド、思わせぶりな態度をしてくるリリーへのキスシーンがすごい濃厚でちょい18○的(笑)。今回のチューもめっちゃ激アツで、それが終わった直後の堀内リリーの口紅が乱れまくってたよww。

そんな二人のバカップルなお熱い現場をこっそり目撃していたグレブww。状況を考えるとなんだかちょっと面白いんだけど(あれは出て行きづらいよなぁと同情するw)、彼からしてみたらなおさらブルジョワ階級にすがろうとする輩への憎しみが募る出来事だったわけで。「あんな連中に彼女が染まらないよう自分が助けなければ」という思いを強くしてしまう気持ちも痛いほどわかってしまう(ここの歌の旋律が「過去の国」なのが印象深い)。

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♪In a Crowd of Thousand(幾千万の群衆の中)♪

ニコライ一家の夢に苦しむアーニャのもとにディミトリが駆けつける場面。ここも前回のトークが蘇り、思わず内海くんの逞しい二の腕にいつも以上に注目してしまった(←先にホテルに帰ったディミトリは腕立て伏せをやりまくってるという設定らしいのでww)。

知らない貴族たちが毎晩夢に出てきて「自分たちを思い出せ」と迫ってくるなんて、そりゃ誰だって怯えてしまうよなぁと。アーニャの場合はあまりにも家族との別れが戦慄ものだったがゆえに深いトラウマになって頭に残ってるんだろうな…。
そんな彼女に寄り添って、かつて少年時代にパレードで見た「少女」のエピソードを語る。このときの内海ディミトリの歌声がとにかく優しくて温かくて泣けたよーー(涙)。アーニャへの思いやりと愛に溢れてた。

そんな彼の心遣いにやがて癒やされていったアーニャ。わかなちゃんが無防備にディミトリに向ける笑顔がこれまた温かくて可愛らしくてウルウルしまくってしまった(涙)。
そして、このパレードエピソードの時に不意に彼女の記憶が鮮明に蘇ってくる。ディミトリとアーニャとの意外な接点のドラマがグッと来ますね。単に話をしている中で彼女が覚醒したのではなく、ディミトリとの感情の積み重ねの上で記憶を取り戻したのだと感じられるのがすごくドラマチック。この物語の大きな見どころだと思います。

でも、ディミトリはアーニャへキスをしようとした瞬間に”現実”を思い出し自ら身を引いてしまう。「皇女様」と跪いて頭を下げるときの内海ディミトリが下唇を噛み締めて感情を押し殺してたのめっちゃ泣けた(涙)。

バレエ鑑賞の日、ロビーで着飾ったアーニャにドキリとしてしまうディミトリ。そんな彼を見て目で「早く」とアーニャは自分のそばに来るよう促すのですが、わかなちゃんはちょっと不安そうな表情で彼を呼んでいたのがとても印象深かったです。彼女の中でディミトリは信頼の置ける大きな存在になっていたんだなと想うとなんだかこみ上げるものがありました。

仲睦まじく会場入りする二人の背中を見つめながらヴラドが歌う♪Meant to Be(ヴラドの後悔)♪も泣けます…。ディミトリを茶化すようなことばかり表向きではしてきた彼ですが、彼の幸せが訪れないかもしれないと本音を歌うときは兄を想う弟のよう…。賢也さんのふと見せた真面目な表情にグッと来ました。

♪Quartet at the Ballet(バレエの四重唱)♪

「白鳥の湖」と♪Once Upon a December(遠い12月)♪リプライズとの音楽の融合がとにかく美しい。本格的なバレエダンサーさんたちの踊りと、アーニャ、皇太后、ディミトリ、グレブのそれぞれの心情を語る歌は本当にドラマチックで感動的でした。このシーンを見られただけでもチケット代金払った甲斐があると思ったものです。

♪Everything to Win(すべてを勝ち取るために)♪

アーニャが皇太后と面談に臨んでいる間、ソワソワしながら待っているディミトリとヴラド。最初は余裕そうに見えたヴラドが「やっぱり耐えられない」と極度の緊張に襲われ逃亡してしまう場面は何度見てもクスッと笑ってしまいますw。大澄ヴラドの去り方、スマートなんだけど可愛らしくて萌え。

「心配するなんてガラじゃないのに」と不安な気持ちを抑えきれないディミトリのシーンも好きだったなぁ。強がりながらもアーニャがどうなってしまうのか気になって仕方がないんだよね。内海ディミトリは感情表現がとても豊かで思わず惹きつけられてしまう。

アーニャには本当の家族を見つけてほしいと想う一方で、子供の頃にパレードを見た時に通じ合ったことが再び起こってほしいと本音も隠せないディミトリ。もしかしたら両方手に入れられるんじゃないかと一瞬希望を抱いてしまう。その時はっきりと「オレの心はこんなにも彼女を求めていたんだ」と恋心を悟るんですよね…。内海ディミトリ、心の底からアーニャを求めてる気持ちがヒシヒシと伝わってきてすごく心揺さぶられました(涙)。

「すべてを勝ち取れたとしても、ただ一つ失ってしまうものが…」

アーニャに家族と再会する喜びを味わってほしい。だけどそれが成し遂げられるということは彼女との別れを意味しているわけで…。「失ってしまうものが」と現実を突きつけられ絶望が襲ってきたときの内海ディミトリの哀しそうな表情がもう本当に泣けて泣けて仕方なかったです(涙)。

皇太后にまともに対面してもらえず大きなショックを受け怒りをぶつけてきたアーニャの姿を目の当たりにした瞬間、ディミトリは自分の幸せを諦める決意を固めたんだなと思いました。自分の恋心よりも、愛する人の本当の幸せが何よりも大切だと気がついたんだよね…。内海くんがこのときのディミトリの気持ちをとても繊細かつわかりやすく演じてくれていてすごく胸打たれるものがありました。

皇太后と遭遇したディミトリが必死にアーニャの気持ちを訴える場面は特に泣けたなぁ。アーニャの幸せだけを考えて、その一心で感情をぶつけていく内海ディミトリの熱さ…最高だったよ(涙)。

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ディミトリの熱意あふれる懇願に心動かされた皇太后はアーニャと対面する決意をする。最初は全く気持ちが通い合わない二人の会話に、毎回見る方はハラハラしまくりでした(汗)。親しくしていた側近はと質問された時、即座に「あなたはみんなクビにしてたからいなかった」と答えるアーニャの場面はちょっとクスッとなったけどw。「これはひっかけ問題よ」と少し動揺しながらも強がる麻実皇太后が面白かった。

なかなか”アナスタシア”と信じようとしない皇太后の態度にアーニャの心も次第に疲弊していって…。「あなたは誰ですか?」と逆に聞き返してしまった彼女に「失われていた思い出に浸り現実を忘れたおばあさんよ」と答える皇太后の言葉が重く響いてきました…。無惨に大切な人たちを一気に失ってしまったことへのショックから立ち直れず、アナスタシア生還の噂にすがろうとするも現れるのは偽物ばかりで打ちひしがれてしまったその気持ちを思うと本当に居た堪れない(涙)。
だけど、失われた人たちのことを語る中で「夫の嫁」の名前は出てこなかったのも印象的だったな。やはり関係は良くなかったのかと心がチクリとした。

アーニャは必死に「ナナと会った最後の日」について語る。その話を聞いて気持ちが大きく動いた皇太后は、”オルゴール”を見た瞬間についにアーニャが”アナスタシア”であることを確信。ようやく気持ちが通い合った二人が熱い抱擁を交わす場面はとても感動的でした。
でもそのやり取りをそっと影から見守っていたディミトリの姿を見ると切なさが込み上げてきてしまう(涙)。「これでいいんだ」っていう安堵の気持ちと「愛する人との別れ」を確信するつらい気持ちとが混在しているような表情で…思い出すだけでも涙が(泣)。あの時のディミトリの複雑な心境を想うと居た堪れなかった…。

♪The Press Conference(記者会見)♪

アナスタシア生還の噂を聞きつけた記者がリリーとヴラドのもとに殺到する場面はコミカルで面白かった。特にまだハッキリと肯定してはいけないことを知らないヴラドがシレッとしながら「皇女様は質問にお答えになる」と告げてしまった瞬間、堀内リリーがビビって「まだ言っちゃだめだから!!」と指でペケしまくってたのがめっちゃ可愛いw。

ヴラドとリリー、凸凹コンビに見えるけど実は息がぴったりでラブラブなんだよね。だからリリーは結局ヴラドの失態も「仕方ないなぁ」と許してしまうw。そんな二人の関係が楽しくて最高でした。

♪Still(リプライズ)♪/♪The Neva Flows(リプライズ)♪

皇太后がアーニャに「ディミトリは報奨金を受け取らなかった」と優しく告げて彼女の背中を押す場面。皇太后は”アナスタシア”が生きていたという事実、それだけでもう心が満たされたんだなと思います。そしてアーニャもついに自分のディミトリへの恋心を自覚。とても幸せな予感が一気に漂うわけですが、まだ一人、心の解決が果たせない人物がいて。

グレブはアーニャを”アナスタシア”本人なのかもしれないと予感しながらも、一緒に帰って彼女を守りたいという気持ちを捨てきれない。そんな切なる気持ちをどうしても受け入れることができず拒絶するアーニャを目の当たりにした瞬間、グレブは「歴史がキミを望むと思うのか」と厳しく問いかけてしまう。ここの二人の攻防は本当に息が詰まるような緊張感がすごい。

だけどここはどうしても海宝グレブに感情移入しながら見てしまう。アーニャが”アナスタシア”だった場合、グレブは父が残した”使命”を自分が代わりに果たし終わらせなければと思っている。でも銃口を向けその引き金に手をかけた瞬間、封印しようとしても湧き起こってくる”アーニャ”への想いをどうしても排除することができない。
”任務”と”情愛”との間でもがき苦しむ海宝グレブの姿は心臓が締め付けられるような痛みを伴っているように見えて本当に居た堪れない(涙)。

凛と立ちはだかるアナスタシアの前で涙を流しながら激しく相対する2つの気持ちに葛藤し崩壊していく海宝グレブ、本当に壮絶だった…。多分今まで見た中で一番激しく感情を爆発させてたと思う。あがいて、もがいて、心が張り裂けんばかりに苦悩した海宝グレブがアナスタシアの足元で「私にはできない…」と声を絞り出しながら呻き崩れ落ちる姿は涙なくしては見れなかった(号泣)。嗚咽を漏らしながら”父と同じ行動”を取ることができなかった自分に打ちひしがれている海宝くんの壮絶な感情表現、すごかった…。

でも、あの時もしかしたら様々に入り乱れる感情の中で彼は本当の意味で父のことを受け入れることができたのかもしれないなとも思いました。ロシア革命の後自ら命を断った父のその後の苦悩や葛藤を悟ることができたのではないだろうかと。グレブはずっと「革命の英雄である父親」の存在に縛られて生きてきたけれど、これを境に彼の心のなかでなにかが変わるかもしれない。そんな希望も見えた気がしました。
この日の海宝グレブはアナスタシアの差し出された手を取り立ち上がった時もずっと涙が止まらない様子だった。以前はグイと拭って表情を立て直してたけど、今回はどうしても止められないといった感じで…それがまたさらに見る者の心を打ちました(泣)。

♪Finale(フィナーレ)♪

アーニャを諦め立ち去ろうとしていたディミトリ。だけどまだ去り難くてその場から動けなかったんだろうなと想うと切なかった。そんな彼の前に駆け込んできたアナスタシアは”アーニャ”として自らの想いを唇を合わせることで伝える。
最初はびっくりして目を見開いていた内海ディミトリが次第に彼女の気持ちを受け止めて感極まった様子でキスに応える場面がとても感動的でした(涙)。

「アナスタシアは幻だった」

それぞれが新たな一歩を踏み出していくラストはとても爽やかで温かい。その環の中にグレブも入っていたのが個人的に嬉しかったです。

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後述(カーテンコール)

一度目のカーテンコールが終わった後、幕の向こうからカンパニーの皆さんの歓喜の声がリアルに聞こえてきたのが凄い胸熱でした。この日で大楽を迎える内海くん、堀内さん、グレブ役での海宝くんを称えてのことだったと思います。

二度目のカーテンコールで大楽を迎えた3人からの挨拶がありました。

堀内敬子さん

最初から涙ぐんでいて見ているこちらも思わずもらい泣き。「カンパニーのことが愛しくて終わるのが本当に寂しい」とコメントされてたのもグッときちゃったな…。それから「東京公演のときは色々あったけれど大阪までたどり着くことができて本当に良かった」と。また遠方から観劇に来たお客さんのことや来れないけど想いを寄せてくれたファンへのメッセージもあったのがとても感動的でした。堀内さん、見てくれる方の気持ちもちゃんと汲んでてくださったの、ほんと嬉しかったよ(涙)。

また、今回オーディションを受けたきっかけが麻実れいさんが出演すると知ったからだというのは初耳でしたね。それを初めて聞いたと思われる麻実さんが少し照れくさそうに「あらやだわ」みたいなリアクションを堀内さんに向けてやってたのが可愛らしくて思わず笑ってしまった。憧れの女優さんと共演できた喜びでいっぱいだと感慨深そうに語っていたのがとても印象的でした。
最後はカンパニーに向けて「皆さん、最後までがんばってください」と熱いエールを送っていらっしゃいました。

海宝直人くん

「同志の皆様、ありがとうございました」と挨拶しつつ、スタンディングしていた客席を見てちょっと恐縮しながら「どうぞお座りください」と。こういうところ、すごく慣れてるなぁと感心。

ミュージカル『アナスタシア』を初めて観たのはドイツ公演だったそうです。その時に「この作品を日本で上演したら絶対に受け入れてもらえるのではないか」という熱い思いが込み上げてきたのだそう。その気持、とてもよくわかるなぁと。
でも、その日は大雨でタクシーも拾えず「自分でもその後の記憶がなくどうやってホテルに辿り着いたのか覚えていません」という衝撃発言がww。海宝くん、ほんとよく無事だったな(汗)。

ここまでグレブを演じることができたことを本当に嬉しく想うと微笑んでいた海宝くん。あと1回ディミトリ役として頑張るので応援よろしくお願いしますと決意を語って〆ていました。

内海啓貴くん

内海くんは最初に挨拶をしたときから感無量の様子でした。「カンパニーみんなで支え合いながらここまでこれたことを本当に嬉しく想うし、奇跡のようにも感じます」とコメント。この時ちょっと胸いっぱいといった感じでちょっと涙ぐんでたかもしれないな。この日の内海ディミトリ、本当にめちゃめちゃ熱くて何度も心打たれたもの。

この作品のエネルギーに何度も背中を押されたとウルウルしながら語っていた内海くん。『アナスタシア』愛に溢れてた。「観てくれた皆さんの心のなかでもこの作品が少しでも力になってくれたら、思い出して元気になってもらえれば幸せです」というコメントがとても印象的でした。

それから、マイクでの挨拶はなかったのですが子役の戸張柚ちゃんもこの日が千秋楽。マイクで挨拶している3人の言葉を聞きながらずっと涙を流していた姿に心打たれ思わずもらい泣きしてしまいました(涙)。彼女にとっても、離れがたいカンパニーの皆様だったのだろうなと思うと胸が熱くなります。

本当に素敵なカーテンコールでした!!

3年半前、観れずに悔しい思いをした『アナスタシア』だったけど、ようやく今年リベンジ観劇を果たすことができました。途中カンパニーの皆さんの数人が離脱するということもありましたが、一度も公演を止めることなく最後まで上演できたことは本当に内海くんが言ってたように”奇跡”だったような気がします。確保していた全公演見れたことに感謝。

とても素敵な、素晴らしい作品だったので、また数年後に再演お願いします!!カンパニーの皆様、本当にお疲れ様でした。またお会いできますように。

これまでのミュージカル『アナスタシア』感想一覧

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