ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』東京公演 2009.08.31マチネ

台風が関東をかすめている天候の中(汗)、ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』を観にシアタークリエまで行って来ました。

この日は主演の武田真治さんと岡田浩暉さんの千秋楽ということで、客席はかなりリピーターの方が多かったように思うのですが・・・実は私はこれが初観劇でした(笑)。

というのも、ブラッドブラザーズ(以下BB)に岡田さんが出演すると知ってはいたにもかかわらずTDVに現を抜かしていたためにこの作品についてノーチェック状態でして、9月になっても岡田ペアが見られると勝手に思い込んでしまったんです。
それが、調べてみたら8月いっぱいだと知ってビックリ仰天!岡田ペアだけは何が何でも観たいっ!と思っていたのでなんとか行けそうな日を探っていたところ・・・唯一空いていたのが、この、岡田・武田ペアの千秋楽日だったんです(汗)。危ないところだった~~。こんなことなら、無理してでも8月中にもう1本BB入れておくべきだった。

千秋楽ということで終演後には武田さんが舞台挨拶

そのときに、今回公演初日間近というところでケガをしてしまったために降板したレイザーラモンHGこと住谷さんについての話がありました。彼のおかげで稽古の密度が非常に濃く絆を深めることができたと感謝の気持ちを熱く語ってた武田さん。一時退院して下手最後方に松葉杖をつきながらもやってきてくれた住田さんに拍手を送って欲しいという一幕がありました。

私は武田さんのこの話があるまで、正直、住谷さんのことに関してはものすごく失望した気持ちが強かったんです。稽古中のケガならまだしも、本番が近づいたときに怪我の危険性が高いイベントに出るってどういうことなのかと。そこで怪我して入院してって・・・舞台を軽くみられていたような感じで正直、気の毒というよりも無責任な人だと思っていました。所属事務所にも問題があったと思います。

ただ、今回武田さんの稽古中エピソード話を聞いて・・・許せる気持ちにちょっと傾いたかな。住谷さんの舞台にかける想いは本物で熱かったんだということは分かったので。武田さんに促されて客席がいっせいに住谷さんに向かって拍手をしたとき、彼は痛い足を押してその場で立ち上がりながら深々と頭を下げていました。座ったあと、涙を一生懸命ぬぐっていた姿も印象的だった。本当に温かい仲間たちに囲まれてたんだな・・・って思うと私もちょっとウルウルっときました。
もしまた舞台に挑戦する気持ちがあるんだとしたら、今回のようなことは絶対にしないでほしいと思います。

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武田さんはそのほかにもBBが今後も日本でスタンダードな作品になって欲しいと熱く語ってました。そのときには半ズボンはいたり足を広げたりやる気満々みたいな話をしてて「自分の代表作にしたい」とキッパリ!客席からは拍手喝采。エリザの前まではミュージカル苦手と言ってた武田さんが、ここまでミュージカル作品に熱い想いを抱いてくれたことはすごく嬉しいですね。

武田さんの挨拶のあと、「色んな僕を引き出してくれた岡田さんにも一言ご挨拶を」と岡田さんにコメントを振ってまして・・・武田さんの挨拶に聞き惚れてたであろう岡田さんが「えぇ!?」と困惑してしまう一幕も(笑)。いやはや、あの時の岡田さんのオロオロっぷりは可愛かった!でも、作品におけるメッセージ性などについてやっぱり熱く語っててまた演じていきたいというようなことを熱く語ってました。

この二人のメッセージを聞きながらTSUKASAさんが号泣してて、その肩を同じく涙ぐみながら下村さんが抱いていたのがとても感動的でした。
最後は武田さんの仕切りで皆でバーっと出てきたりしてすごく楽しそうでした。なんか、岡田さんよりも武田さんのほうが年下なのに彼のほうがお兄ちゃんって雰囲気でした(笑)。

主なキャスト

ミッキー:武田真治、エディ:岡田浩暉、ミセス・ジョンストン:TSUKASA、ミセス・ライオンズ:久世星佳、ミスター・ライオンズ:金澤博、サミー:伊藤明賢、リンダ:鈴木亜美、ナレーター:下村尊則

以下、ネタバレ含んだ感想になります。

 

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私が初めてこの作品のことを知ったのは観劇にはまってから間もない95年頃。柴田恭兵さんのミッキー太川陽介さんのエディ、そして川﨑麻世さんのナレーターだったときかな。初めて買った「月刊ミュージカル」で特集されていたのを読んで"柴田さんってミュージカルやるんだ"とビックリした思い出があるのでよく覚えています(笑)。

でも、そのときは内容を読んでなくて・・・知ったのは最後に二人の双子に悲劇が起こるってことだけ。それ以来、ジャニーズで上演されたときもスルーしてしまったし・・・全体のストーリーを知らないまま今日まで来てしまいました。そんなわけで、全く真っ白に近い状態での観劇になりました(他の感想も読まないようにしてたので 笑)。

子沢山で生活苦になってしまったシングルマザーのジョンストン夫人が、子供ができなくて悩んでいたライオンズ夫人に生まれてくる双子の一人を差し出す約束をしてしまうところからストーリーが始まります。時が経ち、成長した双子は親の目論見にも関わらず出会い、惹かれていく。お互いに双子だと知らないミッキーとエディはブラッドブラザーズの誓いを立て熱い友情で結ばれるのですが、ライオンズ夫人はそのことが息子・エディを奪われるような強迫観念に駆られていき、二人は引き離されてしまう。

しかし、偶然にもまた同じ地域に住むことになったふたつの家族。時が経ってもますます友情を深めていくエディとミッキー。ところが、不況の時代を迎えてから風向きが変わり、ミッキーは次第にすさんでしまいエディと距離を置くことに。裕福な生活をしているエディと、仕事を失いどん底なミッキー。この環境の差が最後の悲劇へと繋がっていく。

まず「おおっ」と思ったのが舞台セット。上手には裕福なエディの家、下手には貧しいミッキーの家があるんですが、この間はすごい八百屋舞台になってました。つまり、エディの家はのほうにあってミッキーの家は坂の下にあるって感じ。四季の『ジーザス』ほどとまでは行きませんが(笑)、それでもかなりの傾斜になってて、その上を走り回っている役者さんたちは本当に大変だなぁと思いました(カーテンコールの挨拶で岡田さんもコメントしてました 笑)。

ちなみにオケピはエディの家の下・・・つまり上手舞台袖付近にあって、時折オケの人たちが登場人物に衣装や小道具を受け渡したりする役割をしていて面白かったです。特にナレーターの下村さんとの連携が多かったかな。

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演出は『タイタニック』を担当していたグレンさん。武田さん曰く、「血の通った演出」をしてもらったということでしたが・・・本当にリアルな人物像でして物語の中に引き込まれてしまった。彼女の演出は最初役者は戸惑う人が多いと聞いているのですが、それが結実したときには本当に素晴らしいキャラクターが出来上がるんだなぁと思います。どの人物も、確実に、そこで「生きてる」って感じがすごくするので。

それからテンポも非常によかったです。場面転換とかもスムーズですし、集中力を切らすことなく舞台を見入ることができました。クライマックスでは客席もフルに活用していたし、光の使い方もとても上手かった。

個人的にナンバーに関しては1回ではあまり耳に残るものはなかったかな。なのでCD購入はしなかったんですけど(笑)、2回目に観ると味が出てくるかもしれません。ただ、ラストのナンバーはとても感動的でウルウルっときました。役者さんたちの熱唱が素晴らしかったです。

今回は初めて見たストーリーだったので細かいところまで味わうとまでは行かなかったのですが、それでもいろんなことを感じました。身分の差を越えて義兄弟の契りを交わすほど仲のよかったミッキーとエディが、成長していくなかで色んな環境に置かれる中で次第に距離が離れてしまう展開は見ていてとても切なかったです(涙)。

一番身につまされるのはやはり不況が原因で二人の間に決定的な亀裂が走ってしまうこと。
これって、今の日本・・・というか世界の情勢と似ているなぁと思ってしまった。不況で仕事を失い犯罪に加担してクスリに手を染め転落していくミッキーの姿は、今の病んでいる世界と似ているなぁなんて思ったり・・・。限られた裕福な世界でしか生きてこなかったエディはそんなミッキーをなかなか受け止められなくて・・・彼には全く悪気はないしミッキーが大好きという気持ちは変わってないわけで・・・それもなんだかとても切ない。

ラスト、ミッキーは母親からエディと双子であるということを聞かされますが、そのときの彼の失望感・絶望感は観ていてとても痛々しかったです。「なぜ自分をライオンズ家に渡してくれなかったんだ」というセリフはあまりにも重く辛い。その言葉と同時にエディに向け銃を発射してしまい、ミッキーもその直後に警官隊に射殺されてしまう。これはホント、ショッキングでした(涙)。

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キャストについて少々。

衝撃的だったのが7歳児を演じていた武田@ミッキーと岡田@エディ!アダルトチームな彼らですが(笑)、私には二人が完全に7歳の少年に見えましたよ!!

武田さん演じるミッキーは強気でヤンチャ。貧しさの中でもたくましく生き抜いていくギラギラしたものを持ってる少年。岡田さん演じるエディは裕福な家庭で育てられたので世間知らずのお坊ちゃま。ヘタレですぐに凹んじゃうんだけど、ミッキーに対する愛情は海より深い感じ。お二人とも、本当に素晴らしい表現力でビックリしました。まさかここまで子供に化けられるとは(笑)。

この日は武田・岡田ペアの千秋楽ということで二人ともテンションがとても高かったようです。私は初めての観劇だったのですが、子供時代のはじけっぷりのシーンとかで客席がかなりウケてたので・・・おそらくかなりMAX状態だったんだなと(笑)。ツバを飛ばすシーンとかは岡田さんの仕草に武田さんや亜美ちゃんが思わず素で吹き出してしまうといったハプニングも(笑)。

さらに2幕、14歳に成長した思春期のミッキーとエディがピ○ク映画を観てテンション上げてるシーンがあるんですが、このときの岡田エディの弾けっぷりは初めて見た私にも伝わってきたくらいMAX状態(笑)。その芝居を受け止める武田さんは岡田さんのあまりのMAXっぷりに素で笑いが止まらなくなり上手くセリフが言えなくなるといったハプニングもありました(笑)。いやはや、面白いもん見せてもらった。

でも、笑いのシーン以外のシリアスな芝居は二人とも迫真の演技で素晴らしかった。岡田エディがリンダへの恋心を切々と歌い上げるナンバーはホンットに切なくて思わずウルウル・・・。
武田ミッキーはクスリから逃れられないジレンマと戦っている姿がとてもリアルで痛々しく、クライマックスで狂気に陥ってしまうシーンは本当に哀しかった。銃口をミッキーに向けられながらも友達として向かい合おうとしているエディ、そんなエディを前にふと我に返りエディを愛していた記憶が戻るミッキー・・・のシーンは涙が溢れました。

二人の芝居が本当に素晴らしくて・・・あぁ、やはり8月にもう1回観ておくべきだったなぁと後悔してます。武田さん、岡田さん、お疲れ様でした。

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ミッキーの母親を演じたTSUKASAさん、エディの母親を演じた久世さんも素晴らしかったです。それぞれ息子に対する愛情がとても深くて・・・それゆえに争ってしまうシーンは緊迫感があってドキドキしました。肝っ玉母ちゃん的なTSUKASAさんの温かさ、息子を手放したくない一心から精神を病んでしまう久世さんの狂気、この対比がとても興味深かったですね。

意外だったのが鈴木亜美ちゃん。彼女はどちらかというとアイドル系というイメージがすごくあって、このミュージカルの中でどんな存在感をみせるのか正直不安のほうが大きかったんですが(汗)、なかなかよかったです。ちゃんとBBの世界に馴染んでたし頑張っているのが伝わってきました。可愛かったし、歌声も思ったほど悪くなかったので、次回作とかも見てみたいなと思いました。

住谷さんの代役として短い稽古のなかでも頑張られたと思われるサミー役の伊藤さんもすごくよかった!あのワルっぷりがすごくワイルドで怖くもあり・・・ミッキーを悪の道に誘い込んでしまうシーンもリアルで見ごたえがありました。今後注目していきたい俳優さんです。

そして四季を退団してから初めての外部ミュージカル出演となる下村さん!久しぶりにあの独特の存在感、歌声を聴けて嬉しかった。なんか、四季にいたときとは違った開放感みたいなものを感じたなぁ。伸び伸びと演じてる感じ。こうしてまた舞台復帰してくれて・・・本当によかった。

今度は藤岡・田代ペアを観劇予定なので、そのときに色々とまた感じることは出てくると思います。

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