ミュージカル『カム・フロム・アウェイ』東京貸切公演 2024年3月20日マチネ感想

日生劇場60周年記念公演のミュージカル『COME FROM AWAY ~カム フロム アウェイ~』を観に行ってきました。

本来は1回限りにするはずだったのですが、”ステージ会員限定貸切公演”というホリプロさんの「誘い文句の罠」に見事ハマりww、本来行く日だった1週間前にフライング観劇ということになりました(笑)。ちょっとお値段張るのでギリギリまで悩んだのですが、作品の前評判がとても良かったのと「1回きりだと後悔するかも」という漠然とした”勘”が過って…気が付いたら購入ボタン押してたw。

決断した時には1階席の良席はほとんど残っていない状況だったので(そりゃそうだ)、今回は2階席を選択。日生劇場の天井には2万枚もの”アコヤ貝”が貼り付けられているのですが、天井と距離が近い2階席から眺めるとなかなかの圧巻な景色ですよ。やっぱり日生劇場の建築デザインはすごい。

2階席は久しぶりに座ったのですが(15年ぶりくらい!?)S席ゾーンは意外と見やすく、オペラグラス無しでも目を凝らせば裸眼で役者さんの表情が読み取れるくらいでした。
それからシーンごとのフォーメーションの巧みさを堪能できたことも良かったです。特にこの作品は12人の役者が100人を演じるというすごいことをやってのけていてとにかく動きが多い。2階席からだと奥行きまでしっかり見えたので、コロコロと入れ替わる場面の理解がしやすかったように思いました。

特別公演ということで入場する時に特典ステッカー特典ポケットティッシュが全員に配られました。

良い記念になります。

グッズも色々な種類があって物販コーナーが賑わっていました。私はパンフレット、クリアファイル、舞台写真、そして「能登半島地震チャリティ」ステッカーを購入(少しでもお役に立てれば…)。

ちなみに、キャストのアクリルスタンドとパーカーは3月いっぱいまでの受注生産性ということでネット購入のみの扱いになっていました。

以下ネタバレを含んだ感想になります。

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2024年3月20日マチネ貸切公演 in 日生劇場(東京・日比谷)

概要(原案・上演時間など)とあらすじ

今なお記憶に残る2001年にアメリカで起きた忌まわしい9.11テロ事件。あの日、大きな悲劇の一方である小さな”奇跡”が生まれていました。このミュージカルは、あの日に起きたもう一つの実話がモチーフになっています。

事件の影響でアメリカ入りができなくなった38機の飛行機。そこに乗り合わせていた約7000人の乗客や乗組員たちは緊急避難としてカナダ最東端のニューファンドランド島にあるガンダー国際空港に降り立ちました。その州に暮らしていたわずか1万人前後の人々は予想もつかない出来事に困惑しながらも、5日間、訪問者に精いっぱいのもてなしを施したといいます。

2011年に住民と乗客・乗員がガンダーで久しぶりの再会を果たした折、カナダ人のアイリーン・サンコフとデイビット・ヘイン夫妻が取材を敢行。この時の実話エピソードを盛り込んだミュージカルが『カム・フロム・アウェイ(Come From Away)』です。取材した夫妻は脚本と作詞作曲も担当しています。

2017年にブロードウェイで上演が始まり大きな話題を呼び、約3年のロングランを達成。第71回トニー賞では7部門にノミネートされミュージカル演出賞を受賞しました。受賞者のクリストファー・アシュリーさんは今回の日本版演出も担当されています。
トニー賞のほかにも、ローレンス・オリヴィエ賞やニューヨークタイムズの批評家賞など数々の栄誉ある演劇賞に輝きました。

初演:アメリカ(2017年2月・ブロードウェイ)
日本初演:ホリプロ(2024年3月・日生劇場)
脚本・歌詞・音楽:アイリーン・サンコフ / デイビット・ヘイン
演出:クリストファー・アシュリー

日本公演は東京を皮切りに(3月)、4月に大阪愛知福岡、5月に熊本群馬でそれぞれ上演されます。比較的多くの地区へのツアーが決まっているようなので、ぜひたくさんの方に劇場へ足を運んでいただきたいと思います。

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あらすじ

9月11日

あの日、世界が停止した。

9月12日

ある小さな町で起きた奇跡の物語。

この物語は私たちに、世界に希望を与えた。

2001年9月11日、ニューヨークで同時多発テロ事件の発生。アメリカの領空が急遽閉鎖された。目的地を失った38機の飛行機と7,000人の乗客・乗員たち。行き場のない38機の飛行機は、カナダのニューファンドランド島のガンダー国際空港に降り立つ。

カナダの小さな町。わずか1万人の人口は一夜にして約2倍となった。人種も出身も様々な人々はこの地でどんな5日間を過ごし、飛びたつのか―

<公式ページより引用>

上演時間

約1時間40分(カーテンコールの時間は除く)。

休憩なしの100分間なので、事前にお手洗いを済ませておくことを強くお勧めします。

キャスト(五十音順)

  • 安蘭けい:ダイアン&その他
  • 石川禅:ニック&その他
  • 浦井健治:ケビンT&その他
  • 加藤和樹:ボブ&その他
  • 咲妃みゆ:ジャニス&その他
  • シルビア・グラブ:ボニー&その他/ビバリー&その他カバー
  • 田代万里生:ケビンJ&その他
  • 橋本さとし:クロード&その他
  • 濱田めぐみ:ビバリー&その他
  • 森公美子:ハンナ&その他
  • 柚希礼音:ビューラ&その他
  • 吉原光夫:オズ&その他

<スタンバイ>

上條駿、栗山絵美、湊陽奈、安福毅

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全体感想

2001年、全世界が震撼し心に大きな傷を深く刻んだいわゆる9.11事件。あの当時のショックは時を経た今でも忘れることはできません。あのニュースが駆け巡った日から暫くはまともに眠れなかったし、未だに事件関連のドキュメント番組を見る勇気がない。

しかし、このミュージカルはあの悲劇を直接描いたものではありません。もしそうだとしたら、たとえ推しが出ていても観に行かなかった。作品を紹介する時に「9.11事件」の文言が必ず入ってくるので連想してしまう方もいるかもしれませんが・・・

これは、あの事件の影響で予定通りにアメリカへ入国することができなかった人々と彼らを受け入れた人々の交流を描いた物語です。

凄惨な事件があった裏側で、戸惑い混乱しながらも血の通った交流をしていた人たちがいた。その実話については911からしばらく経った後になんとなく聞いたことはありましたが、詳しくは知りませんでした。今回のミュージカルでは、その当時の様々なエピソードが描かれていて非常に興味深かったです。
進路変更を余儀なくされた飛行機に乗り合わせた乗客や乗務員の動揺や焦り、急遽見たこともないような大勢の人たちを受け入れなければならなくなった受け入れ先の島の人々の混乱。短い時間の中でその当事者たちが”予想もしなかったこと”に翻弄されながらも、模索を重ねながら次第に心を通わせていくドラマは大変見応えがありました。エピソードを見て気づかされたこともたくさんありました。

ストーリー展開の印象としては、”派手さ”みたいなものは感じられませんでした。ガツンと大きく心を揺さぶるといった場面はなかったように思います。流れゆく時の中に人々の感情を素直に、ストレートに溶け込ませてるっていう感覚(分かりづらい表現ですみません 汗)。日常の中に紛れ込んだ”非日常”に翻弄されながらも、次第に心を通わせ合っていく人々の心情がとても自然でリアルに感じられました。

今回この作品を見るにあたって、ストーリーの軽い内容以外の情報は殆ど目にしないようにしてきました。早い段階からSNSなどにお稽古の動画なども流れてきて気にはなってたんですけど(汗)新鮮な感動を得たい気持ちがあったので敢えて我慢。前知識がほとんどないままの観劇となりましたが、個人的にはすごく分かりやすい物語だったなと思いました。
登場人物が多いので(キャスト12人が何役もこなします)場面転換やセリフ量もたくさんあるのですが、混乱することはなかったです。

内容についてのもう少し詳しい感想は、1週間後にもう一度観劇する予定なのでその時に記したいと思います。

セットは極めてシンプル。舞台を囲むように立てられた数本の「木々」と、イスとテーブルのみ。ちなみに、向かって右後ろにある”半分折れた2本の木”は、911の犠牲になったツインタワー(世界貿易センタービル)を象徴しているのだそうです…。このミュージカルでは詳細に表現されていない”事件”ですが、それを想起させるものがさりげなく静かに佇んでいるんですよね…。この物語はあの悲劇が導いたもう一つの世界なんだと訴えているようにも見えます。

ミュージカルナンバーは比較的多いのですが、”ビッグナンバー”的なものは殆どありません。OPとクライマックスに全キャストで歌う♪Welcome to the Rock♪と女性パイロットのビバリーが歌う♪Me and the Sky♪は非常に印象深かったのですが、クローズアップされてる歌的なものは全体的にとても少ない。
どちらかというと、その場所を生きる人々の様々な感情が”歌”という形で放出されてる感じだったかな。なので、1回観ただけで頭に濃く残るようなナンバーというのはない印象が強いです。終わった後にナンバー数が多いにもかかわらず「意外と歌が少なかったかも」なんて思ってしまったほどなので。

楽器は殆どのミュージカルではめったにお目にかかれないような独特のものが多く登場し、面白い音色がたくさん聞けました。特に演奏者も出演者と交じってテンション上げ上げで盛り上がる♪Screech In(ラム酒を飲め)♪はとても面白かったです(←タラにチューするとかww)。

そして特筆したいのが、12人のキャストの皆さんについてです。全員がプリンシパル経験者というミュージカル界のトップランナーが勢揃い。これはもう、お金かかっても仕方ないなと納得するしかないメンツ。よくぞ実力と人気を備えた皆さんを集められたなと驚いたほどでした。

今回のミュージカルでは12人が約100人のキャラクターをこなさなければならないのですが、皆さん、本当にきっちりと演じ分けられていた。一人で10役近くをこなしているにも拘らず、スピーディーに入れ替わるシーンに見合ったキャラクターを着実に演じられていて見ていて混乱することが一度もありませんでした。
しかも、シーンの切り替えはイスとテーブルを動かすことのみで表現されるのですがこれらを動かしているのも12名の皆さんなんですよ。縦横無尽にセットも動かしながら着実に数多くの人物を演じ分けるって…、これはもう神業以外の何物でもないよ!!

出演者の皆さんがスター性を持つ実力者だというのは分かっていましたが、『カム・フロム・アウェイ』はおそらく持っている物以上のことを要求された作品だったのではないかなと想像します。公演約1か月前には通し稽古が行われたということも話題になっていましたが(通常はお稽古期間が1ヶ月という作品が多いので)、それだけ綿密に時間をかけて創り上げていかないとあの舞台は完成できなかったかもしれないなと納得。
舞台の主役を張れるほどの歌とお芝居の実績と実力を備えた12人のメンバーだったからこそ実現できた作品だったと思います。日本ミュージカル界のスター達の凄さを目の当たりにできたというだけでも観に行った甲斐がありました。是非多くの方にあの衝撃を目撃していただきたい。

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後述

カーテンコールは早い段階からスタンディングオベーションが起こり、割れんばかりの拍手で劇場が包まれていました。ヒューヒュー声もあちこちから聞こえてきて最後まで盛り上がっていましたね。いやもう、あれは立って拍手せずにはいられない衝動に駆られますよ。

ところどころ笑いどころもあるし、ライトな気持ちで観れるシーンは意外と多かったので、最初は涙するような展開はないかもしれないな…なんて油断しながら見ていましたw。が、中盤から後半にかけては滂沱の涙に溺れることに(泣)。あんなに泣くなんて予想外でした。

表現しづらいんですが、心が震えて涙が内側からこみ上げてくるっていう感覚じゃなかったんですよね。そういう気持ちが動く前に、もっと心の深い部分が敏感に反応していつの間にかとめどなく涙がこぼれ落ちていたって感じ。なんだか心の隙間を見透かされたような、そんな感覚もあったのかもしれない。

昨今の世知辛い世の中、あの物語で描かれている”寄り添う優しさ”に触れたいと思う人は少なくないと思います。『カム・フロム・アウェイ』は心のどこかに抱えた寂しさをさりげなく癒してくれるような、そんな作品なのかもしれません。

公演後に行われたアフタートーク感想は次の記事にて。

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