劇団四季ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』エルサレムver. 2024年3月13日マチネ公演感想

劇団四季ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター ~エルサレムバージョン~』東京公演を観に自由劇場へ行ってきました。

2023年6月~7月に上演された”ジャポネスク版”に続いての”エルサレム版”上演となりましたが、以前公演が行われていた時よりもずいぶんと間が空いたんだなという印象。

JCSの上演は基本的に自由劇場…ということなので、前売り段階から相当厳しいチケット戦線だったかと思います。公演日数はそこそこ取ってあるものの、座席数が少ないですからねぇ(その分見やすいんですが)。私は運よく会員先行抽選に希望日が引っ掛かってくれたので確保することができましたが、残念な結果に終わった方も少なくなかったようで…。
ただ、エルサレムver.は東京公演が終わった後に全国公演を予定しているらしいので(何年ぶりの全国だろう!?)今回諦めざるを得なかった皆さんもジーザス観劇チャンスが大いにあるのではないかと思います。地方公演のホールはけっこう広いですからね。

物販はエルサレムの荒野をイメージしてか黄土色のグッズが多め。900円の缶入りパンはかなり気になったのですが、今回はパンフのみのお買い上げに留めましたw。

以下、超ネタバレを含んだ感想になります。

コンサート版を含んだ過去のJCS観劇感想記事もあるのでよろしければ参考までに。

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2024年3月14日マチネ公演 in 自由劇場(東京・浜松町)

概要とあらすじについては2021年コンサート版観劇時の以下の感想を参照してください。

上演時間は休憩なし約105分(1時間45分)となります。

1幕モノなので本編が始まる前にお手洗いを済ませておくことを強くお勧めします。

主なキャスト

  • ジーザス・クライスト:神永東吾 
  • イスカリオテのユダ:佐久間仁
  • マグダラのマリア:守山ちひろ
  • カヤパ:金本和起
  • アンナス:一和洋輔
  • 司祭1:佐野正幸
  • 司祭2:中橋耕平
  • 司祭3:真田司
  • シモン:大森瑞樹
  • ペテロ:辻雄飛
  • ピラト:田島亨祐
  • ヘロデ王:劉昌明

【男性アンサンブル】

鈴木貴雅、田口暉、桧山憲、香取直矢、森健心、永瀬俊秀、武智正光、松尾篤、瀬下喬弘、愛染洸一、武藤洸次、寺内淳

【女性アンサンブル】

坂井菜穂、光井さや、川田菜々子、林美菜子、辻茜、大石眞由、立川真衣、濵嶋紗穂里、森下薫、志田奈津帆、北中芹佳、鳥越ゆみこ

アンサンブルキャストさんたちの迫力、相変わらずすごかったです。昔からこの作品のアンサンブルで四季デビューするという役者さんが多いという印象があるので(私の推し、飯田洋輔くんのスタートもここからでしたし)、今回観劇した中から将来的にスター級に成長される方も出てくるのではとちょっとワクワクした気持ちで観てました。皆さん、頑張ってください!

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全体感想(キャスト感想含む)

久しぶりにエルサレムverのセット見ましたが、この舞台のエゲつない斜度に改めて驚かされます。荒野に転がってるの”石”もけっこうリアルに作られている。地面がボコボコしてるのでその上にほぼ裸足に近い状態で立って芝居してる役者さんたちは擦り傷が絶えないんじゃないかなと思いました。特にジーザスやユダは後半この上をゴロンゴロン転がりますからね(汗)。役者はやっぱりすごい。

♪序曲♪~♪彼らの心は天国に♪~♪何が起こるのか教え給え♪

冒頭、舞台上に大勢の人がバラバラに横たわっている光景は、やっぱり何度見ても思わず息を飲む。
荒野の向こう側から神々しいジーザスが登場すると、群衆たちが一斉にそちらに引き寄せられていく。この時の彼に向けられた熱狂ぶりが個人的にすごく好き。特にあの狂ったように救いを求める波打つ”手”の動きが見ていてゾクゾクするんですよね。まるで一つの芸術作品を見ているかのような気持ちにさせられます。

ジーザスに吸い寄せられていく人々の様子を見たユダは「行き過ぎは良くないぞ」と必死に忠告するものの、その言葉はジーザスに届かない。
佐久間ユダ、背も高いしイケメンなんですよね。ジーザスの悲惨な未来を予見して訴え続ける姿がなんとも物悲しい。ただ、個人的にはもうワンギア上げてるユダを観たいなぁとも…。すごく声に迫力もあるし切なさも感じるんだけど、少し物足りなさも感じてしまったかな。

弟子たちは「なんの、ざわめきですか?何が、起きるのですか?どうぞ教えてください」とグイグイ質問攻めにするのですが、ジーザスは「なぜ知りたい?」の一点張りで将来のことを決して語ろうとしない。
ジャポ版に引き続きエルサレム版でも神永ジーザス。神永くんは佇まいに只ならぬ”神様”オーラ漂わせてるのが凄いんですよね。何やら得体のしれないパワーを秘めた青年感がムンムン香ってくる。そんななかでも表情に心の葛藤みたいなものがうっすらと滲み出てたのが良いなと思った。最初に見た頃は能面みたいとしか感じられなかったけど(←初期の頃の個人的感想なので悪しからず)、今回は感情が見えやすくなってて好印象でした。

♪今宵安らかに♪

いつも傍にいてジーザスの心の内側に秘めた孤独や苦しみを敏感に感じ取っていたマグダラのマリア。その心を癒そうと”香油”を充てるのですが、それを見たユダはすぐさま「大事な時なのだから女のことなど忘れてほしい」と彼女を痛烈に非難しますが、逆に「罪のない者がいれば石を持て、この人を打て!」と威嚇し返してしまう。
これは聖書にも出てくる一節なのですが、この作品で見るとジーザス、ユダ、マリアの三角関係みたいですごくドラマチックだなぁと感じます。ジーザスとマリアは気持ちが通じ合って両想いだけど、ユダのジーザスへの特別な感情はなかなか届いていないように見える、みたいな。

守山マリア、お初でしたが声がしっかりしていてとても奇麗でした。最近どこかで見たことある女優さんだなと思ったら…『ウィキッド』のネッサローズだった!納得です。将来的に「オペラ座の怪人」のクリスティーヌも行けるかもですね。

♪ジーザスは死すべし♪

ユダヤ教大司教たちはジーザスの存在に大きな脅威を感じて最終的には「排除せねば」という考えに至るわけで。つまりは、ユダが懸念していたことが現実に起こる結果になるんですよね…。この悪巧みシーンを見るたびに、ジーザスはもっとユダの忠告を聞けばよかったのにと思ってしまう(汗)。

金本カヤパ、久しぶりに見たけど低音の響きが安定していて素晴らしかったですね。「オペラ座~』の時に居眠りしてた可愛いフィルマンさんと同一人物とは思えない悪辣っぷりが最高w。一和アンナスは今まで見てきたこの役の中で一番若々しいと思った。顔の皴のメイクがちょっと可愛らしいともw。すごく溌溂としていて難しい高音域も問題なく出せてたのが素晴らしかったです。
佐野さんは司祭1役だったけど、ほとんどソロがないのがもったいないなぁと思ってしまった。でもジーザスへの妬みが表情から滲み出てたのはさすがです。特にニヤリ顔が迫力ありましたね。中橋くんも真田くんも良い声響かせていました。

ちなみに例の被り物、いつもは「夢の国のネズミさん」って見えちゃってたんだけどw、今回は「悪魔界の大王」って感じに見えたかも。

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♪ホサナ♪~♪狂信者シモン♪

この場面では何といっても群衆たちによる恐ろしいほど盲目的なジーザスへの信仰心が見どころだと思います。これまでずっと迫害を受け苦しんできた彼らにとって、たった一つの揺ぎ無い希望の存在がジーザスだったんですよね。彼は群衆の狂ったような期待と愛情を黙って受け止めているけれど、それはあまりにも重たすぎて見ているだけで胸が苦しくなってしまう。

そんな熱狂的な群衆を煽り先頭に立って全力でジーザス愛を叫んでいるのがシモン。超ロックなナンバーをノリノリで歌いまくるこのシーンは何度見ても血が騒ぎます。大森シモン、背がスラリと高くて歴代で見てきた中ではけっこう大柄な印象。たしかジャポネスクの時にはヘロデ王演じてましたから、それとはまったくタイプの違う役で登場したのでちょっと驚いてしまった。スコーンと突き抜ける声が心地よく、ロックナンバーもいい感じに歌いこなしていたと思います。
ただ、個人的にはもっとロックに歌っても良かった気がするなぁとも。最後の「永久の栄光と」のフレーズも上げずにフラットなままの音程で歌っていたのはちょっと残念だった。大森くんなら出せると思うんだよなぁ。

シモンや群衆たちの激熱すぎるラブコールを受けたジーザスでしたが、「お前たちは何が力か、何が栄光か一つも分かっていない」と塩対応的なフレーズを口にしてしまう。これを聞いた群衆たちは波が引くようにジーザスの元から離れていき、何があってもジーザスを信じ抜くという弟子たちだけがその場に残るという演出がとても印象深い。ここはストーリーの潮目が変わる分岐点かもしれません。
神永ジーザスの”誰も自分にこれから起こるであろう過酷な未来を理解してもらえることはできない”といった苦しみが滲み出るような表情が印象深かったです。

♪ジーザスの神殿♪

強欲な商人たちが思い思いに好き勝手な商売をしてる場面。一見するとただの荒野で商売してるようにも思えますが、あそこは実はジーザスが神と対話を重ねていたテリトリーの神殿なんですよね。しかもやってるのはまっとうな商売じゃないですから(金払わずに商品かっぱらう客とかもいるしw)、そりゃそんな光景目の当りにしたらこれまで感情を抑えてきたジーザスだって我を失いキレて追い出したくもなるよなぁと。

神永ジーザスのロックなキレっぷりがこれまで見てきた中で一番「おっ!」となるくらい迫力があったかもしれない。抑えてた感情が一気にブワッと弾ける感じだった。ただ個人的にはそこにもう一つジーザスの中にあるガラスのような繊細さも欲しいなと思ってしまったかも。痛々しいほどの叫び、みたいなのがもうちょっと欲しいんですよね。

だけど、商人たちが散った後に現れる群衆たちにジーザスが「診てください」と囲まれてしまう時の神永ジーザスの表情はとても切なくてよかったです。特に最初に群衆を払い除けてしまった後の「ハッ」と我に返った時の戸惑うような哀しげな目がすごく印象深かった。
他力本願な人々が渦になっていくシーンは本当に圧巻で、まるでジーザスが竜巻に飲まれていくようにも見えて毎回胸が痛むんですよね(涙)。重圧に耐えきれなくなった彼が思わず叫んでしまう「自分で治せ!!」という”本音”の言葉は何度見てもグッときます。

♪今宵やすらかに♪/♪私はイエスが分からない♪

ジーザスが苦悩する姿を間近に見ていたマグダラのマリアは、彼の気持ちにそっと寄り添います。あれは救いになるよなぁと。ジーザスがマリアを大切にする気持ちがすごくよく分かる。多くを語らずそっと寄り添う女性はとても素敵。改めてマリアの魅力に気付いたかも。

守山マリアの♪私はイエスが~♪もとても良い歌声でした。ただあとひと息、歌の中に気持ちの熱い部分を滲ませても良かったかもしれないかなぁ…とも。ちょっと平坦にも思えてしまったので。

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♪裏切り♪~♪最後の晩餐♪

怯えた表情のユダが荒野の彼方からドス黒い渦へと歩みを進めていく場面は視覚的にもとても印象深いです。ここの照明美術がユダの心情を浮き彫りにさせてるように見えて気持ちをざわつかせるんですよね。あの渦の中にハマったらもう抜け出せないよなぁと不安にさせられる。あのシーンを見ながらいつも心の中で”ユダ、引き返せ!”って手に汗握っちゃう私ですw。

佐久間ユダは言葉もハッキリ聞こえるし、不安に押しつぶされ泣きそうな気持もストレートに伝わってきたのがとても良かった。「誰が来たくてくるものか!地獄へ落ちるというな!」というユダのフレーズが切ない。自分がやろうとしてることはジーザスへの裏切り行為でもあるんだけど、その裏には「彼の為を思ってのことだ」という彼なりの正義もあるわけで…。
でも世間の人から見ればそんな事情は知る由もなく、事が成った暁には地獄が待ってることも自覚してる。色んな気持ちがぐちゃぐちゃに入り混じり自分で自分が分からないといった様子の佐久間ユダは悲しかったです。

カヤパやアンナスたちはただジーザスを排除できればいいと思っているのでひたすら冷酷。
でも、一和アンナスが金が入った袋を狙いを定めてるように投げてたのは可愛くて少し笑いましたw。それから、ユダが金の袋を手にしてジーザスの居場所を語ったシーンで後ろにいた佐野司祭の表情がめちゃめちゃ悪い顔しててゾクッときた!

弟子たちが最後の晩餐を囲んでいるシーンでのジーザスとユダの無言の対面は毎回見ても胸が苦しくなります。二人とも何も言葉を交わしませんが、その”何も言えない空気”の中にお互いの気持ちがギュっと凝縮されてて切ないんですよね。
神永ジーザスは「分っていた未来ではあったけれど、なぜそれを現実のものとしてしまったのだ」と言わんばかりの哀しい目をしてるし、佐久間ユダは「あんな裏切り行為本当はしたくなかった」という気持ちが背中から滲み出ていました。

晩餐を囲む弟子たちに向けてジーザスが”未来”を語る場面。その言葉が信じられず弟子はざわつきますが、辻ペテロの動揺っぷりが印象深い。彼はその後追い打ちをかけられるような予言されちゃいますしね。辻くん、ジャポネスクで見た時よりも感情が豊かでとても良かったです。

神永ジーザスと佐久間ユダの本音合戦シーンは大変スリリングでした。特に神永ジーザスがこれまで見てきた中でもかなり感情を表に出すようになっていると思えてかなり好印象。ここの場面は、魂ぶつけ合うように激しくやり合ってほしいと思ってるのでそれに近い二人のやり取りが見れたのは嬉しかったです。

ただ、やっぱりどこかちょっと私が求めてるパッションとは違うなぁとも感じてしまうんですよね(汗)。何かが足りないというか…。熱さはあるんだけど、その奥にあるもうひとつ深いものが見たいっていうのがあって。私の場合、人生最初に見た柳瀬ジーザスのキャラクターがめちゃめちゃ好きだったので、どうしてもそれと同じタイプを求めてしまう…っていうのはあるかもしれません。これはもう好みの問題なので悪しからず。

♪ゲッセマネの園♪~♪逮捕♪

♪ゲッセマネの園♪はものすごく気力と体力を消耗するナンバーだと思います。今回の神永ジーザスの歌いっぷりは特に感情が乗っていて感動的でした。ちょっと声にザラつきがあったのは気になりましたが、過酷な運命を強いる神に向けての揺れ動く率直な想いがひしひしと伝わってきて本当にドラマチックだったと思います。「見てくれ、私の、死にざまーーーー」のロングトーンの伸ばし方も尋常じゃない迫力で圧倒されまくりでした。いったいどれだけ鍛えたらあれだけの息が続くのかと感心しながら見入ってしまった。

ジーザスとユダが最後に対面するシーン。二人の抱擁はお互いの様々な気持ちが入り乱れるなかでもたしかに「愛」を感じる場面で個人的にすごく大好きなのですが、何か今回すごくあっさりに見えてしまったのがちょっと残念だったかも。時間配分?うーん、何か、もう少し”余韻”が欲しいんだよなぁ。短い間にも濃厚なドラマがあるとても重要なシーンのはずなのですが…。神永くんも佐久間くんも熱演してるのに、なんか響いてくるものがなかった。

ジーザスが捕らえられた時にペテロが勇んで「剣を取ろう!!」と叫んで兵士を斬りつける場面。そんな彼に「なぜ戦うのだ?終わりがきたのに。海で魚を取れば暮らしていけるぞ」と制止してしまうジーザス(ペテロは弟子になる前は漁師だったので)。この時の辻ペテロの「なぜそんな冷たいことを!?」と言わんばかりのショックを受けた表情にグッとくるものがありました。
でも、ペテロが裏切りの言葉を”予言”通りに叫んでしまったのを目の当たりにした時の神永ジーザスの表情もめっちゃ悲しかった(涙)。その通りにならなければいいのに、って心の中では念じていただろうに…。あれはホント切ないです。

ちなみに、ペテロに斬りつけられた兵士は顔を押さえて暫く蹲っているのですが、ジーザスが連行されるシーンになると急にケロッと立ち直るんですよねw。中国ドラマ並に回復力早いなと思ってしまった(笑)。

囚われの身となったジーザスに容赦なく石を投げつける群衆たちの場面。前半はあんなに熱烈に「ユダヤの王」と持ち上げて称えまくっていたのに、”罪人”となってしまった途端、掌を返したように罵詈雑言を浴びせまくってしまう。人間の”脆さ”や”愚かさ”といった負の部分を見せつけられてるように感じて心が痛い。いつの世も、こういう現象は変わらず存在する。

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ピラトの元へジーザスが最初に連行されてくる場面。田島ピラト、声に艶があって伸びもありとても見応えがありました。ちなみにピラトが持っているステッキ、実はマイクが仕込まれてるんですよね(クライマックスでジーザスは服を剥がされるのでコードを外してます)。ステッキを差し出すとジーザスが歌い出すのにはそんな裏話があるからでした。なので、このシーン見るたびに”インタビュアー・ピラト”って目で見てしまう邪道な私(笑)。

♪ヘロデ王の歌♪

劉ヘロデは初めましてだったのですが、とても恰幅がよくどっしりしていて「ザ・王様」って感じ。これまではどちらかというと艶っぽい女性的な雰囲気を感じるタイプが多かったのですが、劉さんはどちらかというと「男」らしさが前面に出ているように見えてとても新鮮で面白かったです。

そして相変わらずヘロデガールズの皆さんはスタイル抜群すぎ!!あの体系を維持されてるの、本当に凄いと思う。

♪ユダの自殺♪

自らの裏切り行為によってジーザスを死に追いやってしまった事実を受け止めきれなかったユダは極限まで追い詰められる。「どうして愛したのか?私はあいつが死んでも生きていられるか?」という最後の言葉に胸が締め付けられます。ユダは彼なりに精一杯ジーザスに愛を注いでいたけれど、ジーザスが神格化されていくにつれ、不安や猜疑心に苛まれどのように向き合っていけばいいのか分からなくなってしまったのではないだろうか。

ジーザスに向けたユダの愛情は最終的に歪んだものに変わってしまったけれど、彼の中からその存在を排除することはどうしてもできなかった。というよりも、むしろ愛が深まっていたのかもしれない。きっとジーザスもそんな複雑な弟子の想いを察していたんじゃないかなと…。自らが予言した過酷な未来を受け入れたのも、もしかしたらそんな気持ちがあったからかもしれないとふと思いました。

それにしても、最後のユダの坂ゴロゴロ落ちは何度見ても非常に痛々しい。心の痛みと身体の痛みと、その両方が伝わってくる。あんなゴツゴツした上を素早いローリングで転がり落ちますからねぇ。まさに体力勝負といったところではないかと。

♪鞭打ちの刑♪

ピラトは最初ジーザスを庇おうとしますが、群衆たちの激しい憎悪を肌で感じると鞭打ちを決行させてしまう。田島ピラトはジーザスを「助けてやりたい」という気持ちがすごく伝わってきただけに、群衆の怒りが自らに向くことに恐怖を感じその意思に背いてしまう”弱さ”を露呈させてしまうのが悲しかった。とても人間臭い。

鞭で打たれるたびにジーザスの服の背中が破けていく演出があるのですが、あそこは2段構えで剥がしてるんですよね。アンサンブルさんはあそこで失敗できないからすごく神経使ってると思います。

鞭打ち33回目でピラトが止めに入る場面。何とかして命を救ってやりたいピラトと、「神の御心を変えることなど誰もできないのだ」とその想いに応えようとしないジーザス。二人の間のヒリヒリするようなやり取りはこの作品の大きな見どころの一つだと思います。
ボロボロになっても命乞いひとつしないジーザスを目の当たりにした時の田島ピラト、すごかった!!久しぶりにあのフレーズで鳥肌立ちましたよ!!私が一番観たいと思ったピラト像を見せてくださった。最高でした。

♪スーパースター♪

地獄のユダがソウルガールズを引き連れて十字架を運ぶジーザスを見つめながらロックを歌いまくる場面。四季のミューコンでは必ずと言っていいほど入ってくる超ロックナンバー。目の前で繰り広げられている光景はとてつもなく痛々しく残酷なのに、ユダのイケイケな姿とノリノリな歌いっぷりに心が踊ってしまう”罪な”シーンでもありますw。佐久間ユダがこれまためっちゃカッコイイんですわ。パッと見た時はなんだか「北斗の拳」のケンシロウが立ってるかのようにも見えてしまったw。

ちなみにジーザスが持っているあの十字架はめちゃめちゃ重いらしいです。いつかどこかのトークでジーザス役者さんが「運んでる時に苦しそうな表情してるのはリアル」って語っていたのを思い出します。
そしてさらにハラハラするのが十字架を立てるシーン。あれ、乗ってる方も恐怖だと思うけど立てる方も相当神経使いますよね。厚い信頼関係がなければあの場面は成立しない。シーン的には非常に残酷で胸が痛いんだけど、十字架が無事に固定された瞬間は一番「ほっ」とする瞬間でもあります。

♪磔♪~♪ヨハネ伝第19章11節♪

ジーザスが十字架の上で語る「黙示録」。神永ジーザスの魂こめた神へのメッセージが胸を打ちました。

ラストシーンの照明は本当に息を飲むほど美しいです。後ろの席から見たほうがその素晴らしさをより深く実感できるかもしれません。最後、暗闇の中で十字架を見上げながら崩れ落ちる辻ペテロの背中がとても哀しかった。

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後述

昨年のジャポネスクに続いて観た今回のエルサレムバージョン。どちらもそれぞれ個性的で見応えがありました。ただ、JCS初心者の方はエルサレムを最初に見たほうが分かりやすいかもしれません。

全体的にはとても満足度の高い舞台だったのですが、欲を言うならば、ジャポの時とは違うキャストさんでも見てみたかったかなぁと。全国公演の時に観れるかもしれないけど、四季は間際まで情報くれないのでなかなか前売りに手を出しづらい(苦笑)。

※JCSの舞台におけるネタバレ満載の裏話レポあり〼。

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