舞台『銀河鉄道英雄伝説 Die Neue These ~第二章 それぞれの星~』大阪公演 2019.06.08ソワレ

全体感想

まず、前シリーズと違うなぁと思ったのが最初から帝国と同盟を同時に描いていること。

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2011年スタートの舞台版は初期の頃は「帝国編」「自由惑星同盟編」と分けられて上演するスタイルでどちらか片方のエピソードのみが展開されていました。帝国編のときには同盟の人物は登場しないし、同盟のときには帝国の人物は登場してこなかったw。その合間に特定人物にスポットを当てる外伝が上演され全体を補う感じ。ようやく本格的に帝国と同盟が一緒に舞台に登場したのは2013年の第三章からでした(ここから本格的に間宮ラインハルトが登場。衝撃の連続だった)

そのため、全く同じ場面が各舞台ごとに何度か登場するというちょっと勿体ない事態になってたんですよね(汗)。「星を見ておいでですか」「あぁ、星は良い」の台詞を何度聞いたことかww。あと、キルヒアイスの……は2回あの現場を観ることになったんだった(汗)。

それを考えると、今回は第一章から両軍を一緒に描いているようなので、同じ場面を違う舞台で繰り返し見る…というようなことは無くなると思われます。
ただ、今のペースで進むとけっこうシリーズ長くしていかないと追いつかないかも(汗)。前作では一気に一つの作品の中で原作2巻分進めてることもあったので。「Die Neue These」は舞台でどこまで描いていこうとしているのだろう。前作は途中で終わってしまったのでできれば今回はさらに先まで進んでほしい。

あと、舞台と映像を融合させた舞台というのは前作を引き継いだ感じだなと思いましたが、前回はほぼCGで作られた映像を使っていたのに対して、今回はアニメーション映像との融合シーンが非常に多かったのが印象的でした。
うまいこと実写の部分とリンクさせていて見応えがあったのですが…個人的には前作のCG映像の方が臨場感があって好きだったかなぁ。アニメ映像だとやっぱりちょっと実写と合わさった演出になると色が違うので少しチグハグに見えることもありました。でも、今回は新作アニメに沿ったスタイルで進める舞台というスタンスだろうから…これからもアニメ映像との融合という感じで進んでいくのかもしれません。

本編は休憩なしの2時間通し公演。アニメ「Die Neue These」に沿った形でストーリーが展開されていたように思いますが、かなりよくまとまっていてテンポもよく、飽きることなく最後まで楽しむことができました。たぶんあと30分やっても大丈夫だったかもと思えるくらいw。

前シリーズはヨリコ・ジュンさんの演出が多かったのですが、ヨリコさんの場合は銀英伝のアウトラインをダイナミックに魅せるという印象が強かった。物語のスピード感がけっこうあって、それが爽快でもありました。
第二章を演出したのは前シリーズで「オーベルシュタイン編」を演出した大岩美智子さん

オベ編は原作にはないオリジナルを描いていたのですが、非常に繊細に人物像を描いていたのが新鮮で本編とは違った味わいがあった。今回の舞台もそのテイストが感じられたように思います。大胆になぞるというよりかは、一つ一つのエピソードを登場人物の心情に合わせて繊細に丁寧に紡いでいく感じ。「銀英伝愛」を公言されている大岩さんならではの作品だったなと思いました。

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物語は、銀英伝を知らない人も第二章からでも内容が分かるように構成されていたと思います。スタートは、帝国側はラインハルトとキルヒアイスがアンネローゼに会いに行く場面、同盟側はヤンが第13艦隊の司令官に任命される場面となっていました。

ラインハルトとキルヒアイスの冒頭のシーンは、子供時代のエピソードも交えて展開されていました。ここは旧作アニメだと第3話あたりに登場してきたはずなので一章で描かれていたのかと思いましたが、今回出てきたということは前回はなかったということなのかな。
ラインハルトがアンネローゼからワインを持ってきてと頼まれ席を立ったあとに、キルヒアイスが子供時代を回想する流れ。回想する中での再現ドラマの中に一度捌けていた永田ラインハルトが子役として出てくる演出は上手いなと思いました。

「ジークフリード…俗な名前だな。でもキルヒアイスという名前は気に入った。今日から僕は君をキルヒアイスと呼ぶことにするよ」

銀英伝のなかでも個人的に好きな場面。このセリフでラインハルトとキルヒアイスの運命が動き出すんですよね。二人の関係の出発点でもあり核になる部分だと思ってる。さらに、キルヒアイスがアンネローゼと出会う大切な場面でもあって。

「ジーク、弟と仲良くしてやってね」

というアンネローゼの台詞がキルヒアイスの運命を決めたと言っても過言ではない。
旧作アニメではキルヒアイスは恥ずかしくなってすぐに立ち去ってしまうけど、今回の舞台では緊張したままでラインハルトをまじえてアンネローゼと立ち話をしてたなww。それもまた可愛かったけど。
でも、アンネローゼは皇帝フリードリヒの目に留まってしまい宮廷へ売られることになってしまった。その時に痛切に感じた「姉さんを取り戻す」が今現在のラインハルト、そしてキルヒアイスの大きな原動力になっています。

一方の同盟領では帝国によって建設されたイゼルローン要塞攻略の話が進んでいる。イゼルローンを攻略することで帝国への回廊が開けて戦局が同盟有利に働く可能性があります。ヤンは戦争そのものを嫌悪していますが、イゼルローンを攻略することで終戦が早まるならという期待から13艦隊を任されこの作戦の指揮を執ることになる。
第13艦隊に呼ばれた面々は個性派揃いですが、個人的にはパトリチェフがかなり目を惹きました。登場した瞬間から、「あ!」って思ったのでw。かなりアニメに寄せたビジュアルでよかった!

ここで注目したのは、薔薇の騎士のシェーンコップ。前シリーズでのシェーンコップもカッコよかったけど、今回の舞台版もかなりのイケメン!!前回は肉体派なイメージが大きかったけど、今回はどちらかというとかなりスタイリッシュ。それに知的で妖しい魅力も兼ね備えててちょっとドキドキしました(笑)。
イゼルローン攻略の大きなカギを握る人物として活躍するんですが、アクションもよかった。他のローゼンリッターたちもデキる男集団って雰囲気が出てて見応えありました。

それにしても、”トールハンマー”の名称が今回出てこなかった気がするけどなんでかな(要塞主砲しか言ってなかった気が…)。あそこはトールハンマーって言ってほしかった。
あと、発射の威力は照明と映像で表現するんですが、これは前シリーズの方が迫力あったかも。トールハンマーは一瞬にして多くの艦隊を消滅させるだけの威力がある砲撃なので、その凄さと恐ろしさをもっと大胆に魅せてほしかったなというのはあります。

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帝国ではラインハルトとキルヒアイスがオーベルシュタインと運命の出会いをする。オーベルシュタインはイゼルローン要塞の司令官であったゼークト大将の配下でしたが、その関係はもともと悪く、最後はゼークトに見切りをつけトールハンマーが発射される直前に脱出し被害をまぬかれました。

その彼が、新しい主君と見定めたのがまだ若いが戦の才能はピカイチだったラインハルト。対面した時に義眼を外す印象的なシーンも今回もきっちり再現w。無表情で何を考えてるのか読み取りづらいオーベルシュタインは最初ラインハルトたちの不信を招きますが、結果的には彼らを”調略”して配下に収まることに成功します。
この時ラインハルトにかけた「光には影が従う」というセリフが非常に印象的なんですよね。その影が後々に重く二人にのしかかることを暗示しているわけで…。前シリーズのときには1作品の中でその顛末まで描いていましたが、今回はそこまでは行きませんでした。

あと、これと前後してカストロプ動乱の場面も挟んでたっけ。超傲慢なカストロプがめちゃめちゃ分かりやすい「悪」として描かれていてwwちょっと笑ってしまった。この人、キレると近くにいる人を殴りまくるという相当厄介なキャラなんですよね。エキセントリックに演じてた若い役者さんがとても面白くてよかった。散りっぷりも見事。

同盟では、ヤンがイゼルローンを攻略の大仕事をやり終えたということで退役しようとしていましたが、シトレ元帥から「できたばかりの13艦隊を放っておくのか」と説得されてしまい結局軍に残る決断をすることに。
シトレはヤンの士官学校時代に校長をしていたこともあって彼に対する理解が深い。二人の会話は地味なシーンだけど信頼関係みたいなものが垣間見えてとても印象的でした。なにより、大力さんのビジュアルがシトレとかなり似ていたのも面白かった!

で、いったんは落ち着いた戦局も、イゼルローンを攻略したことで同盟の強硬派の鼻息が荒くなりこのまま一気に帝国を攻めようという流れになってしまう。そう仕向けたのが、中立であるはずのフェザーん自治領のルビンスキー。今回の舞台ではちょこっとしか出番はありませんが、不吉な雰囲気はぷんぷんしてましたw。
それにしても、今回のルビンスキーも髪の毛があったなww。私はどうしても旧作アニメのスキンヘッドの印象がぬぐえないのでちょっと違和感(笑)。

帝国侵攻を何の策もないのに強く主張して押し通してしまったのがフォーク准将。これがまた超厄介な人物で後々大変な事件を起こすことになるんですが…その片鱗がすごく感じられましたよ。出番は少なかったけど、蛇のようなねちっこさやどこかネジが飛んでイッちゃってる感じで、強烈な印象を残しました。

帝国ではラインハルトに迎撃の命令が下る。彼を妬ましく思う貴族たちはこれを機にラインハルトが痛手を被ることを期待してもいるわけなので、なんとも難しい状況なのですが…彼はそれを承知の上で作戦を立てることになります。
ここでキーになってくるのが、オーベルシュタインの「影」ならではの作戦であり、悲劇の始まりにもつながるんですよね。

同盟は帝国領を簡単に手に入れていきますが、貧しい暮らしをしている民は占拠する同盟軍に対して冷ややかな態度をとる。これがやがて彼らの首を絞めていくことに…。ヤンは状況を見て撤退する判断をしますが、同じころ、ラインハルトが率いる帝国軍が出陣。今後どうなる!?ってところで第二章は幕となりました。

もう少しその先見せて!と思わせるくらい良くまとまった作品になっていたと思います。

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主なキャスト感想

今回は、知っているキャストが3人くらいと極端に少なく…メインキャストのほとんどは初めましてでした。キャストプロフィールを見てみると、『テニスの王子様』出身の役者さんが非常に多い。その後も2.5次元舞台を多く踏んでいるようで…これは私の知らない子ばかりのはずだと思いました。

前シリーズは役者、ミュージシャン、パフォーマーなど様々なジャンルのキャストが集まっていた印象が強かったのですが、今回は舞台で頑張っている若手の役者さんが中心。それだけに、お芝居部分が皆それぞれしっかりしていてとても見やすかったです。まだまだ伸びしろはあるなと可能性を感じさせてくれる人も多くて嬉しくなりました。
2.5次元は私はほとんど観に行かないのですが、嫌いじゃないしむしろ舞台の幅を広げるという意味ではいいことだと思ってる。そこから芝居を頑張ってる良い役者さんもたくさん出てくるだろうし、期待している方が大きいんですよね。

ちなみに、銀英伝の舞台も「2.5」の部類になっているようですが、小説が先に出ていることから個人的にはそこからはちょっと外れてると捉えてます。

永田聖一朗くん(ラインハルト)

銀英伝を舞台化するなかで一番難しいキャスティングがラインハルトだと思います。あのキャラを実写で違和感なく魅せられる役者さんは多くない。前シリーズで間宮祥太朗くんが出現した時には「奇跡だ!」とすら思ったので、その後を継ぐのは大変だろうなと思っていました。
間宮くんに比べると、やっぱりどこかカリスマ性が足りないなとは思ってしまったのですが…凛とした美しさや支配者としての片鱗を見せる表情などはすごく良かったです。別次元の天才といった雰囲気はなかったけど、若者ならではのギラギラした感覚…みたいなものがあって、なかなか新しいラインハルトだなと思いました。今後重ねて演じていくうちに変化も見られそうなので楽しみです。

加藤将くん(キルヒアイス)

ラインハルト役の永田くんと並ぶと加藤くんの体格の良さがすごく際立ってました。原作でもキルヒアイスはラインハルトよりも背が高いことになってるので、そういう意味では前シリーズよりもリアルな主従になってるなという印象(間宮くんは背がそこそこ高かったからねw)
今までのキルヒアイスのイメージとは違ってけっこう立派な体格があったのでボディーガードもできそうかも…なんて思ったりもしたんですがw、ラインハルトを心から慕い忠実に寄り添う姿は涼やかで良かったです。アンネローゼに対する秘めた想いを滲ませるお芝居もよかった。キルヒアイスはこの先大きな運命に巻き込まれる展開になるので、それをどう加藤くんが演じるのかが楽しみになりました。

藤原祐規くん(オーベルシュタイン)

メインキャストのなかで唯一知っていたのが藤原くん。彼は間宮くんがラインハルトとして初めて主演した舞台『初陣』の時にロイエンタールを演じていたんですよね。この時もあまり感情を出さないような妖しい魅力を発揮していたのが印象的だった。
そして今回はオーベルシュタイン。いやぁ~~~、アニメのイメージにかなり沿った役作りですごくリアルに思いました。暗い影をまといながらも怪しいオーラがムンムン漂う佇まいっぷりが最高!それにセリフ回しも実によく研究されていて、まさにオベそのものでした。特にネットリしながらも相手の心理を追いつめていくような話し方がとても印象的だった。次回も期待してます!

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小早川俊輔くん(ヤン)

前シリーズでは銀英伝が好きでたまらないと公言していたミュージシャンの河村隆一さんがヤンを演じていて、予想以上にアニメのヤンに寄せた役作りをしてきたのが驚きだったんですよね。
今回ヤンを演じたのはおそらく旧作アニメを知らない世代の小早川くんだったわけですが、すごい雰囲気が出てて…リアルに目の前にヤンがいる!と思えるほどでした。アニメをなぞった感じではなくて、原作のヤンを体現したらアニメに近づいた…みたいな感じ。ちょっとかったるそうな歩き方や、仲間と語り合う時の力の抜けた表情、怒りを感じた時の心の動き…などなど、すごく繊細に演じてくれていてとても感動しました。この先も大いに期待が持てると思ったのでこのまま頑張ってほしいです。

伊勢大貴くん(アッテンボロー)

旧作アニメでは序盤からヤンの後輩として登場してくるアッテンボロー。実は、当時私は声優の井上和彦さんの大ファンで…井上さんがアッテンボローをやってるからアニメ見てみない?と友達に誘われたのが銀英伝への入り口だったんです(笑)。でも、原作では登場するのは少し後のほうになってて、新作アニメ「Die Neue These」でもまだ登場してきていない。
ということで、今回の舞台ではアニメでは登場してない人物として出ていることから自由に動ける立ち位置として登場していたのが印象的でしたね。戦いには直接関わらせずに手帳に出来事をメモしていて、それを読むことでストーリーテラーの一面も担うみたいな。キャラ的には大きく前に出てくる感じではなかったのですが、伊勢くんは非常に声がよく出ていて明るくちょっとお調子者っぽい雰囲気が憎めなくて面白かった。早くストーリーに本格的に絡んだ芝居も見てみたいです。

大高雄一郎くん(シェーンコップ)

バラの騎士団を束ねるシェーンコップは幼い頃に帝国から同盟に亡命した過去があることから、どこかはぐれ者的なイメージのある人物。ですが、一度信頼を得れば忠実に任務をやり遂げる頼もしさもあるとても魅力的なキャラです。
大高君が演じたシェーンコップはスラっと背が高くてとにかく見た目からカッコいい!!登場した時から目を惹く華やかさがありました。アクションも軽やかだったし、ヤンとの会話も緊張感があって徐々に彼に興味を抱いていく芝居がとても良かった。同盟のなかでもシェーンコップはかなり重要な立ち位置にいるので、今後の活躍も期待したいと思います。

女性陣は今回の舞台では少なかったのですが、そんな中でも皆さん健闘していました。

アンネローゼ役の杉本有美さんは華やかな美人さんという印象。ラインハルトの姉としてのお芝居は可愛くてよかったんですが、ただ、アンネローゼとしてみると…彼女が持つ影の部分が物足りないかなぁと思いました。アンネローゼはどちらかというと心に抱えた暗い部分が美しさを際立ててるといったキャラだと思うので、次はそこの部分を研究してほしいかなぁ。

フレデリカ役の福永マリカさんは明るく一途にヤンに信頼を寄せている感じがよく出ていました。ただ、ちょっと幼すぎるなぁと思う部分もちょいちょいあったかなぁ。知的な女性でもあるので、次はそこの部分も演じてほしいなと思います。

あと、前にもちょこっと書いたけど、フォーク役を演じた谷戸くんが短い出番ながらも鮮烈な印象を残してくれました。次回のさらにイっちゃってる芝居も期待したいところです(出て来るよね?w)

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後述

2011年に最初に第一章として舞台化されたときは、艦隊戦を多くのダンサーたちが表現していました。それが、時が経つにつれて映像技術が発展して…今では実写との融合が不自然なく見られる時代となりました。「舞台の歴史が、また一ページ」って感じです、ほんとに。何だか感慨深いものがあった。

今回の第二章はカーテンコールで最後に降りてきたのがヤン役の小早川くんだったので、物語の核の部分は同盟メインだったのかなと思いました。でも、どちらもいいバランスで描かれていたので偏りなく楽しめたのがよかったです。

x.com

第三章の上演も決定。大阪にも来るそうなので何とか観に行きたいと思います。

大阪公演はたったの2日間3公演のみ。私はその中日を観劇(笑)。この日は帝国選抜キャストと同盟選抜キャストによるトークショーも終演後に行われました。レポートしようと思っていたのですが、メモが見当たらず(汗)今回は断念させていただきます。ごめんなさいっ!!
一番最初に司会のアッテンボロー役・伊勢くんがグリコのポーズして登場して、そのあとトーク参加の皆から「大阪でそれやったらスベるって言ったのに!」とツッコミ入れられまくっていたのは覚えてますww。

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