場面感想
♪序曲♪~♪彼らの心は天国に♪~♪何が起こるのか教え給え♪
笛の音、三味線の音、そして和太鼓の音。この、のっけからくる和楽器の音が本当にカッコよくて好きです。かなり昔の音源使ってると思うんだけど古さを感じない。
それと同時に大八車によって形成された壁のような”丘”の上から白塗り歌舞伎メイクの民衆たちが次から次へと雪崩を打って駆け下りてくる。98年に初めてJCSを見た時に心臓止まるくらいの衝撃受けたのがこの冒頭だったんですよね。今見ても本当にすごい迫力です!!っていうかあれ、”義経の鵯越”級な坂じゃない!??それをもろともせずに一気に駆け下りてくるキャストさんたち凄すぎ。私だったら足がすくんで上から覗くのも無理(汗)。ちなみに駆け下りた民衆たちを見張って迫害してるのが権力者たち(カヤパ一味)なんですよね。彼らの動きは型通りになっていて、この場面は物語性よりも様式美を感じるといったほうがいいかもしれない。
印象深いのは、苦しむ民衆たちが音に合わせて様々な「カタチ」を創り上げていく場面。よくみるとその一つ一つって、ジーザス(キリスト)が受ける受難の数々なんですよね。この光景を丘の下でユダが泣きそうな気持をこらえながら見つめている。つまり、ユダはジーザスの悲劇をこの時点で予感してしまってる。今回久しぶりにジャポ版を見てこのユダの見てしまった未来図がものすごく心に刺さりました。
この避けられないジーザスの未来が見えてしまったユダ、という目線で♪彼らの心は~♪のナンバーを聴くとものすごく切ない。ジーザスを愛していたユダは何としてもその悲劇を止めたくて彼の思うがままな行動を諫めやめさせようとするんだけど、一向に聞く耳を持ってもらえないわけで…。「ジーザス!!聞いてくれよ、俺の言葉を」と必死に訴える姿はなんだか今まで以上に泣けました。
一方のジーザスも実は自分に起こるであろう悲劇を予感しているのですが、それでも目の前にいる苦しむ人々を放っておくことができない。人を癒す特別な”力”を持っていた彼は、”終わり”の日までできる限り尽くしたいと考えていたのだろうなと。そう考えるとこちらも切ないのです。
だけど、それを予感できない人の方が殆どであって…ジーザスの弟子たちや集まった人たちは♪何が起こるのか教え給え♪と迫ってくる。でもそれを知ったところで悲劇は確実にやって来ることを悟っていたジーザスは「なぜ知りたい?思い煩うな」とひたすら塩対応で返す。彼の心境としては「もう放っておいてくれ」というところだったと思う。”神の子”というあまりにも大きすぎる重荷を背負ってしまったが故の悲劇というか…。ジーザスの心境を考えるとなんだか居たたまれません。
♪今宵安らかに♪
ジーザスの悲愴な心を感じ取っていたマグダラのマリアは、せめて少しの間だけでも心が安らかであってほしいと”香油”を使って彼の体を癒してやります。このナンバーがまた柔らかくて聴き心地良いんですよね。直前までの喧騒とはガラリと雰囲気が変わる。このあたりの音楽構成がロイドウェバー卿すごい。しかもこれ、デビュー作ですから…まさに天才。特に「悩み忘れ心鎮めましょう、思うようにいくでしょう」というリピートがめっちゃめちゃ頭に残ります。
ユダはジーザスが身分が卑しいマリアを側に置いていることを常日頃苦々しい思いで見てきたので、高価な香油を惜しげもなく使う彼女を罵倒してしまう。満足に生活できない民が多いのに高い香油を使いまくるとは何事だ!と言いたくなるユダの気持ちは理解できる。
でもジーザスはマリアが自分の心に寄り添ってくれる唯一の人だと思っているから、彼女を庇いその身を預け続けている。でもその気持ちがユダをさらに追い詰めてしまうことになるのが悲劇なんだよなぁ。知らず知らずジーザスはユダの気持ちを傷つけてるわけで…なんとも切ないすれ違い。
ちなみに”マリア”という名前を聞くとジーザス(イエス)の母とイメージする人もいるかもしれませんが、この物語に出てくる”マグダラのマリア”は全く違う女性です。彼女についての記録はほとんど残っていないそうですが、新約聖書では「罪深き女」として記載されています。娼婦のような生業をしていた彼女がイエスと出会ってから改心して彼に従うようになった、みたいな感じのことがあって。イエスもそんな彼女を愛したと言われているため、弟子たちからは嫉妬の眼差しで見られることが多かったと。
劇中でジーザスが「罪のない者がいれば(彼女を)石を持て!この人を打て!」と叫ぶ場面がありますが、これはヨハネによる福音書の一節から取ったエピソードを入れていると思われます。聖書では、イエスが律法者たちと対立した折に”卑しい罪”を犯した女性が石打の死刑に処せられようとした時「あなたたちの中で一度も罪を犯したと胸を張って言える者がいたならば、その人が最初に石を取りなさい」と言い放ち、誰も何も言えずその場を立ち去ったと書かれています。
学生時代、授業でここのくだりの聖書の話はよく出てきてたので初めて見た時はピンときました(テストにも出てきたしw)。
♪ジーザスは死すべし♪
ジーザスがマリアたちと静かに退場し弟子たちも散り散りになったあと、ダイナミックに大八車が動きものすごい斜度の板ができて、そこに司祭たちがどっしりと立ち下で起こるやり取りを見つめる。ジャポ版見るたびに思うけど、よくあの凄い傾斜を直立不動で立てるなと!!相当筋肉鍛えてないとあそこには乗れないと思いますよ(汗)。改めて役者さんたちの体力に驚愕してしまった。
ユダヤの大司教であるカヤパはアンナスから”ジーザスが民衆の心を掴んで我が物顔でのさばってる”といった報告を受ける。ちなみにこの作品を見るとアンナスがカヤパの手下みたいに見えるんですけどww、実はカヤパはアンナスの”婿”に当たる人物なんですよね。つまり、アンナスはカヤパにとって義理のお父さんってことになります。それを念頭に置きながらこの場面を見るとけっこう面白いw。
エルサレム版では”ミッ●ーマウス”のような被り物をしてるのが特徴的な司祭さんたちですが、ジャポ版ではガッツリ歌舞伎メイクになっていて迫力があります。カヤパ大司教様に至ってはスキンヘッドですからね!それであのメイクでぎろぎろ睨み聞かせるわけですから、見てる方も縮み上がってしまいそうになる。
ジーザスの存在に驚異を感じた彼らの悪だくみ会議により、その先の運命は定まってしまう。ジーザスとしても、自分が民衆から崇められていくほどその立場が追い込まれていくであろうことは予測できてしまっていたのかもしれない。
♪ホサナ♪~♪狂信者シモン♪
カヤパ、アンナス、そして3人の司祭たちと少ない人数しかいなかった直前のシーン。そこからカヤパたちが舞台上手に移動したと同時に、これまた後ろに形成されたものすごい傾斜の丘から民衆たちが「わぁああ~~~~!!!」と歓喜の声を上げながら雪崩のように降りてくる。この落差の演出が本当にびっくりするし圧倒されます。ここはエルサレム版よりも歌舞伎メイクのジャポ版のほうが迫力あるかもしれない。
♪ホサナ♪は民衆たちのボルテージが一気に高まっていくのを感じる躍動感あふれたナンバー。ちなみに「ホサナ」とは”神よ、我々を救ってください”という意味(ちなみに学生時代には”ホザンナ”と習ったので最初は何を差してるか分からなかったw)。
このシーンでは民衆たちはジーザスに心酔し超崇め奉りまくって歌っているのですが、皮肉なのは後半になってもう一度このナンバーが出てきたときには状況が全く逆のものになってしまうということだと思います。このリプライズの使い方が実に心憎い!
民衆たちのジーザスへのテンションが一番頂点に上り詰めた時に前に出てくるのがシモン。彼はローマ支配に抵抗する過激な”熱狂党”のメンバーだった人物と言われていて、ひたすらジーザスに忠誠を尽くすとバリバリのロック音楽に乗せて情熱的に歌いまくります。JCSの中で一番観ていてノリノリになる場面。
シモンは相当過激思想を持った人物だったと言われています。そんな彼がここまで熱くジーザスに心酔した理由としては、民衆を苦しめ続けるローマ帝国を倒す旗頭として立てたいと考えていたからなのかもしれません。
シモンの熱唱に合わせて興奮の頂点に達した群衆たちが壁のような傾斜を上っては降りを繰り返すクライマックスは圧巻!!しかも降りてきた後にみんなそれぞれ歌舞伎ポーズ取るんですよね。でもかなり凄い体力使うからか、ポージングだけで精一杯みたいなキャストさんもチラホラ。そんな中でも数人のツワモノはシャキっと何度もポーズ決めていて…あれは本当に凄いなと思いました。
ちなみにジーザスが荒ぶる民衆たちを見つめる時に乗せられるモノですが、エルサレム版は兵士の槍みたいなやつですが、ジャポ版では太い竹筒になってます。4本の竹筒を組み合わせた上にジーザスが座るわけですが、これ、担いでる兵士が曲に合わせて上下に動くので乗ってる方はバランスとるのかなり大変だと思います(汗)。兵士役の役者さんたちも細心の注意を払いながらだと思うし…、これ、特別な筋力つけないとできないと思うなぁ。本当に役者泣かせな舞台(汗)。
♪ジーザスの神殿♪
ジーザスの祈りの場とされる神殿で民衆たちが荒っぽい商売を始める場面。エルサレム版とジャポ版では売り物の中身が違うのが面白いです。ジャポ版は和物の小道具がたくさん出てくるのですごく”日本”っぽい。和傘差してる人とかもいるのが素敵です。
最初はただの賑やかな商店街、って雰囲気だったのが時間が経つにつれてどんどん熱量が増していき…ついには略奪や強奪といった輩まで現れ大混乱に陥っていく。そんな現場を、自分のテリトリーでやられているのを目撃してしまったジーザスが「まるで盗人の巣じゃないか!!出ていけ!!」と半狂乱になって怒るのも無理はない。
ここのシーンで印象深いのは、ここまでずっと”静”の雰囲気を保ち続けていたジーザスが初めて激しい感情を露にすることですね。あの姿を初めて見た時は”ジーザスも人間だったのか”と思ったっけ。これまで学んできた学校では”神の子・イエスキリスト”としての彼の姿しか学んでこなかったのでとても驚いたし、同時に親近感を覚えたものでした。学生時代にこの演目に出会いたかったと思ったのもあの瞬間だったかもしれません。
一番好きなのは、縋ってきた人々を助けようとしても特殊能力が働かなくなり追い詰められたジーザスが「自分で治せ!!」と本音をぶつけてしまう場面。これ最初に観た時はホント衝撃だった。
♪裏切り♪~♪最後の晩餐♪
空気がピンと張り詰めたような静けさのなか、これからジーザスを裏切る覚悟を以て静々と歩みを進めてくるユダの姿は非常に美しいです。最初の方にも書いたけど、まるで「能・狂言」の舞台を見ているかのよう。ジャポ版の大きな見どころのひとつではないでしょうか。あの雰囲気は日本人にしか出せないかもしれない。
舞台の中央に立った途端に激しい葛藤の渦に呑み込まれてしまうユダの姿は何度見ても切ない。彼はジーザスを愛するが故に、これ以上民衆たちを刺激し祭り上げられやがては破滅していく姿を見たくなかったんですよね。だからカヤパたちに捕えさせることが良い薬になればという思考に辿り着いてしまったんじゃないかなと。
ところが大きな決断を以て密告しに来たものの、「誰が来たくてくるものか!言ってくれるな、地獄へ落ちると!」と錯乱状態に陥ってしまうユダ。自分が今しようとしてる行為がジーザスに大きな災いを起こしてしまうかもしれないという恐怖が潜在意識の中にあったんじゃないかと思うとすごく切ないです…。愛しているが故の行動だけど、それが最悪の方向へ向かうことも予感できるわけで…「誰が来たくてくるものか」と何度も叫んで葛藤してる姿は本当に辛い。
だけどカヤパたちは全く容赦なくて、「お前の戯言はもういいから早くジーザスの居場所を教えろ」と迫りまくり。金は受け取れないと頑なに拒絶するユダに追い込みをかけ、結局それを手に握らせてしまうところがなんとも冷酷です。あそこまで追い詰められてしまったら…もう言ってしまうしかないってなるよなぁ・・・。このあたりの攻防シーンのユダは本当にすごく”人間”臭いなと思いますね。
ユダがカヤパたちに自分の居場所や時間を密告してしまった事を察知したジーザスは、最初はそれを見て見ぬふりをしながら弟子たちと”最後の晩餐”の時間を過ごす。
食卓の席で死を覚悟したジーザス(イエス)が弟子たちに「このパンは私の体、そのワインは私の血潮」と説いたエピソードは有名です。レオナルド・ダヴィンチの絵画でもその様子が描かれているので知っている方も多いのでは。ミサの時も司祭はパンと葡萄酒を口にするし信者の人は司祭からパン(キリストの体)を与えられ口に含むといったくだりがあります。
印象深いのは晩餐の後にジーザスがユダや弟子たちに本音をぶちまける場面。表向きでは静かに教えを説いていた彼が、突然激昂しながらこれから起こるであろう”裏切り”について暴露しまくるのです。ここは本当にJCSの中でも一番好きな場面と言っていいかもしれない。何事にも動じない冷静な男と見られてきた彼が、初めて自らの本当の姿を人の前で晒してしまうわけで…。神の子である前に、人間だったジーザスがそこにはいて…それがものすごく愛しい。
ユダと対峙し激しい言葉ながらも心の奥にしまっていた”本音”を吐き出せたことは、もしかしたらジーザスにとって苦しいけれどホッとする瞬間でもあったのかもしれないなと。
このユダとジーザスの対決はJCSでは一つの大きな節目であり見所の一つだと思います。ユダとしては裏切った自分を責めもせずに「思った通りにここを出ていけばいい」と突き放され心が崩壊してしまう。心から慕っていた相手から見放されたと感じた彼の心の痛みは計り知れません。最後に「私は理解ができない、その手に余ることをしなければこんなにならずに済んだのに」と嘆きながら去っていくシーンは特に辛くて涙が出てしまう…。
一方のジーザスはといえば、一番信頼していた弟子のユダが自分を終末へと導く役割をしてしまうような裏切り行為に走ってしまった事にものすごく心を痛めていて。”天なる父(神)”の導きでそうなる運命になることは察知していたものの、きっかけになった人物がユダだったことは彼にとって大きな衝撃でありショックだったと思います(涙)。ユダから離れ崩れ落ちるように蹲るジーザスの震える姿はあまりにも哀しい…。
♪ゲッセマネの園♪~♪逮捕♪
ジーザスのビッグナンバー♪ゲッセマネの園♪ですが、個人的にはその直前の「みんな、眠るのか…」と寂しげに弟子たちに語り掛けるジーザスの姿が切なくてたまりません…。その問いかけの言葉は彼らの耳には届かなくて眠りについてしまうので、よりジーザスの孤独が色濃く見えてくるんですよね(涙)。
♪ゲッセマネ~♪のナンバーは最初静かに始まるのですが、徐々にジーザスの感情が昂り激しさを増していくのが大きな魅力。はじめのうちは神の導き通りの運命を辿る覚悟はあると歌っているものの、やがて「なぜ自分が死ななければならないのか」という葛藤へと変わっていく。「私はあなたの心が知りたい、私はあなたが見たい、どうして私は死ぬのかそのわけを知りたい!!」と悲痛な叫びをあげるシーンは毎回本当に胸衝かれる想いがします。自分の死の意味についていくら問いかけても”父なる神”は答えてくれない。必死にその声を聴こうとするジーザスの姿は壮絶です。
「見てくれ、私の死にざま!!」と最後に歌った後数秒間静寂が訪れるのですが、以前はここでチラホラ拍手が起こることも多かったけど(曲が終わったと思ってしまいがち)今回は静寂な時間が流れていたのでその後の歌詞へスムーズに集中することができました。
神との対話を終えたジーザスの元にカヤパたちを引き連れたユダがやって来る。ジーザスが囚われの身となる直前、ユダは弾かれたように駆け寄り彼の体を抱きしめキスをする。あれが二人にとって最後の対話の時間だったんじゃないかなと。二人の体が重なり合った時にお互いのお互いを想う気持ちが伝わり合っていたのではないでしょうか。”恋愛”とはまた違う特別な愛情を感じながらも違う方向へ進まなければならなかった二人の運命はとても哀しい。
逮捕の騒ぎを察知した弟子たちは「今こそ闘う時だ」と助けに入ろうとしますが、ジーザスは「なぜ戦うのだ?終わりがきたのに。海で魚を取れば暮らしていけるぞ」と諭す。「魚を取れば」というフレーズを歌ったのは、弟子たちの数人が漁師出身だったことを差しているのではと思われます。
ここでもう一人の裏切り者の弟子がクローズアップ。最初に剣を取ってジーザスのために戦おうと立ち上がったペテロでしたが、ジーザスが連行される時になると怖気づいて「知るもんか、あんな奴!」と赤の他人を装ってっしまう。彼も本当にすごく人間臭い人物ですよね…。こういう人、今でもいると思うし。
ちなみにペテロの裏切りエピソードもけっこう有名です。ジーザス(イエス)が「おまえは鶏が鳴く前に3回私を知らないと告げるだろう」と予言、見事にそれが的中してしまう。最初にこの言葉を聞いた時ペテロは「そんなことは有り得ない」と必死に否定しましたが、結局はその通りになってしまったと…。聖書には、ペテロは鶏が泣いた後に自分のしてしまったことを恥じて号泣したと綴られています。
その後ペテロは改心しキリストの教えを説いて回ったのちに殉教(十字架磔だったらしい)。その彼の墓があるとされているのがバチカンにあるサン・ピエトロ大聖堂だそうです。
囚われの身となったジーザスに対する民衆たちの心変わりはあまりにも残酷です。最初はあんな熱狂的に支持していたのに、力を失い”罪人”となった姿を見た彼らは手のひらを返したように罵り石を投げ迫害する。この時に歌われているのがあの♪ホサナ♪(リプライズ)。この対比が本当に皮肉すぎて毎回胸が痛んでしまいますね。
♪ヘロデ王の歌♪
ヘロデ王のシーンはJCSのなかでかなり異質な感じ。この作品の中で唯一クスッとなるかもしれないのがヘロデ王の存在かもしれません。ジャポ版での彼の装いはとにかく派手なのですが、前回公演あたりから衣装がかなり鮮やかになったなという印象。鮮やかな蒼いパーマのかかった髪型に、ふんどし姿で美尻が眩しい(笑)。真っ白な人力車に乗って現れ、煌びやかなお扇子を開く姿は思わず目を惹きつけられる。
曲調もコミカルでつい口ずさんでしまいたくなるような雰囲気なのも面白い。脇に控える花魁さんたちの反応ははんなりしていてどこかコミカル。派手な和風ヘロデとクールな花魁のコンビネーションが最高です。ちなみにこの花魁役は男性アンサンブルの方が演じてるんですよね。なかなかの美人さんなので女性が演じていると思う方も多いかもしれません。
カヤパに囚われたジーザスは一度地方総督だったピラトの元へ送られますが、何を聞いてもジーザスからは理解不能な言葉しか返ってこないので(「ユダヤの王とあなたが言っている」など)、ユダヤを治めていた王・ヘロデの元へ送ったという事情があります。
結局ヘロデにもまともに応えなかったジーザス。それに苛立ち匙を投げたヘロデはわざと彼に派手な服を着せてピラトの元へ送り返したそうな…。しかも、これをきっかけに緊張状態にあったピラトとヘロデが仲良くなってしまったという黒いエピソードもあったりします(汗)。人間って本当に恐ろしい…。
♪ユダの自殺♪
ユダは痛めつけられまくるジーザスの姿を見るのに耐えきれずカヤパたちに「あれじゃ酷すぎるじゃないか!」と抗議しますが「お前はイスラエルを救ったんだ」と冷たく突き放され完全に孤立無援となってしまう。罪の意識で雁字搦めになったユダの姿はあまりにも哀しいです…。特に呆然としながら「彼はただの男、王様じゃない。どうして愛したのか?」と自問自答する姿は涙なしには見られません。
誰もいなくなったまっさらな板の上で「マイゴッド!!なぜあなたは私を選ばれた!??」と神への怒りをぶつけながらのたうち回るシーンも本当に痛々しい。本当はこんな汚れ役をやりたくなかったユダ。結果的に愛した人を陥れ傷つけてしまった事に彼は耐えられなかったんですよね…。
ゴロゴロ転がりまくった後、すごい斜度の板を駆け上りそのまま向こう側へと「なぜだ!?」と最後まで絶叫しながら姿を消していくシーンはとてもショッキング。
ちなみにエルサレムバージョンだと、砂漠の中央奥の穴に吸い込まれていくという演出なんですよね。私はどちらも好きかな(ちょっと言い方間違ってる気がするけど 汗)。
♪鞭打ちの刑♪
ヘロデにすべてを任せたはずが、また自分のところへジーザスが送り返されてきて困惑するピラト。この作品の中で彼はジーザスに対してかなり興味を持っている様子で、事と次第によっては解放してやりたいとすら思ってるんですよね。
集まった群衆がジーザスへの死刑を求めた時も最初は「この人に罪などない」と反論してる。でも、怒り狂った群衆から石を投げつけられると「だが望むなら鞭で打とう」と彼ら言いなりになりそうになる。このあたりのピラトの葛藤も非常に人間臭い。いざとなるとやはり真実を貫くよりも自分の身を守りたいという行動に走ってしまうという…ね。その気持ちはなんか分かってしまうんですよ。それだけになんだかピラトの気持ちが揺れに揺れまくるこのシーンを見るのは何とも胸が痛む。
この群衆とピラトの対峙シーンで印象的なのが照明です。ジーザス側には白いライトが当たっているのに対し、暴徒となった群衆側には真っ赤なライトが当たっている。クッキリと舞台中央あたりで2色に分かれているので、より色濃く舞台上で起きている出来事の苛烈さが伝わってきます。ここのシーンの照明美術は本当に凄いと思う。
そして鞭打ちの場面、あれは何度見ても本当に痛々しくてパシィっって音が響き渡るたびに自分にも鞭が当たるような感覚になってしまう。しかも途中でジーザスの腫れあがった背中が客席に露になる演出もあるし。ジャポ版では竹筒に縛られ引きずりまくられる白塗りジーザス。そんな彼に恐ろしい形相で石を投げつける群衆。まさに狂気の現場…。ロックな旋律のなかされるがまま状態になってるジーザスの光景は非常にショッキングです。
ちなみになぜ鞭打ちが”39回”だったかというと、それ以上やれば死んでしまうと捉えられていたからなんだとか。死ぬより辛い苦しみを与えるのが目的だったのかと…そう考えるとこの拷問は本当に恐ろしい。
本当はジーザスを「助けてやりたい」とすら思っていたピラトが最後の望みをかけて彼に尋問する場面も非常に印象深い。息も絶え絶えになりながらピラトの裾に縋りつき必死に何かを訴えるジーザスでしたが、それを理解することがどうしてもできないもどかしさがこれでもかというほど伝わってくる。そして群衆たちの「奴を十字架に!!」という狂気の叫びに追い詰められたピラトはついに「お前が望むのなら、死ね!!」と判決を下してしまった。
その直後、ピラトが手を洗うと聖水は真っ赤な血の色に変わっていた。ピラトが自分の犯した罪を自覚したようにも見えるし…、非常に衝撃的な場面だと思います。
♪スーパースター♪
JCSのなかで一番盛り上がるナンバー♪スーパースター♪。ジーザスが満身創痍で自分が磔となる十字架を背負い歩みを進める姿を、地獄に落ちたユダとソウルガールたちが上から冷ややかに見つめながらバリバリのロックを歌い皮肉りまくります。
ジャポ版ではユダとソウルガールを乗せた3台のゴンドラが天井から下りてくる演出になっています。中央にユダ、両脇にソウルガールたち(ちなみにジャポのガールズはスキンヘッド)といった感じ。小さな牢獄が降りてきたようにも見えるのがなんとも面白い。
ここで一番印象深かいのが、ユダが茨の冠を途中で投げ入れる場面。ジャポ版を見たのがもう10年以上前なので記憶が飛んでたんですが、今回初めてそれを見た時に「おぉ!」と心の中で歓声を上げてしまいました。ジーザス(イエス)は磔にされるとき頭に茨の冠を被せられたのですが、それが実は地獄に落ちたユダが着けていたものだったという演出がなんかすごいなぁと。二人の絆はなんだかんだで切っても切れない間柄だったのかもしれないと思ってしまいました。
ちなみにジーザスが運んでる十字架の重さですが…、約30キロあるらしいです(イベントトークの時に聞いた)!!以前ジーザスを演じてた柳瀬大輔さんが「あれは本当に重い」と実感こめて苦笑いしていたのを思い出します(汗)。
♪磔♪~♪ヨハネ伝第19章11節♪
磔のシーンは色んな意味でものすごい見てる方も緊張しますね。手や足に釘を打つ音が痛々しく響き渡る場面も胸がざわつくのですが、それ以上にハラハラするのが十字架を立てるとき。あれは一つのタイミングのミスも許されない。もう毎回祈るような気持で十字架を立てるキャストさんたちに祈り捧げている私です(汗汗)。無事に上がり最後の留めもしっかりと収まったところでようやく息がつけるといった感じ。
ちなみにこの作品には出てきませんが、実際はイエスのほかに2名の罪人が一緒に十字架磔の刑に処せられています。そのうちの一人がイエスに向かって「神の子ならば今この状態から俺たちを救い出すこともできるのではないか?」みたいなことを言って挑発したらしいのですが、もう一人が「俺たちは本当に罪を犯してこうなってるから仕方ないけれど、この方(イエス)は何も悪い事をしていないのだぞ」とそれを諫めたというエピソードがあります。その言葉に感銘を受けたイエスは「あなたはこれから私と一緒に天国の門をくぐるでしょう」と告げたのだとか。
この話は小学校時代に何回も授業で聞かされてきたのでけっこう記憶に残っています。
磔の刑を受け神の迎えがくるまでの時間、ジーザスは大きな苦痛を味わいながらも”父なる神”との対話を続けていました。自分を罵倒する人々やの声に対しては「彼らを許したまえ、彼らは今何をしているのか分かっていないのですから」と許しを乞う。
でも、死を近くに感じたとき彼は「なぜ私を見捨てたもうたのですか?」と苦しい息の中で訴えるんですよね。その言葉が本当に切なくて辛いです。なぜ自分がこのような耐え難い苦しみを受けなければならないのか、理屈で理解しようとはしても心が納得しないという状況がずっと続いていたのでは。そこに一人の青年・ジーザスの姿が見えたような気がしてとても哀しい気持ちになりました。
この間流れてくる激しいピアノの旋律を奏でているのは、今は亡き羽田健太郎さんです。こうして今もJCSのなかで羽田さんの音楽は輝きを放ち躍動しているという事実にグッとくるものがあります。
壮絶な最期を遂げたあと、あたりは張り詰めたような静寂の時間がゆっくりと流れていく。エルサレム版ではジーザスの亡骸の傍にマグダラのマリアや弟子たちが集まってくる演出があるのですが、ジャポネスクでは誰もやってこないので舞台上には十字架の上で事切れたジーザスの姿のみが佇んでいる状態です。やがて日が落ち空に星が光る時間になると…、舞台上には息を飲むような美しい光景がくっきり浮かんでくる演出を見ることができます。この「美」の表現は日本ならではだなと。ここはぜひ見ていただきたい。
主なキャスト別感想
ジーザス・クライスト:神永東吾くん
神永ジーザスは約5年ぶりだったのですが、以前よりも感情面のお芝居が分かりやすくなっていたところがかなり好印象でした。前半ユダに責められまくってる時も、言いたいことたくさんあるんだけどここはグッとこらえる…みたいな苦しさが見えてきたし。ユダと喧嘩別れする場面での感情の乱れも以前より彼の心の痛みが伝わってきてグッとくることが多かったです。
一番「おっ」と思ったのは神殿シーンだったかな。商売する人々を追い出すときの「出ていけ!!」の気迫はものすごいものがあった。こういうのが見たかったんだよ~~!!と心の中のテンションめっちゃ上がりましたね。
歌声に関しても本当に素晴らしいんだけど、これは座った位置によって聴こえ方が違ってくるというのはあるかもしれないのですが…”柔らかさ”が際立ってたなという印象が強かったかな。個人的にはもっとバーーンと圧で押すような勢いがもう少し欲しいと思ってしまうので(特に♪ゲッセマネ♪)ちょっと物足りなさも…正直ありました。たぶんこれは人によって聴こえ方や感じ方が違うはずなので…、その点は悪しからず。
イスカリオテのユダ:佐久間仁くん
佐久間くんは2018年に初登場した時に見ていますが、あの時からの進化が本当に目覚ましくてビックリしました!もう、ユダの中の心の乱れみたいなものが逐一私の心にグサグサ刺さってきてめちゃめちゃ圧倒された。冒頭で愛するジーザスの将来の悲劇を予感してしまった後から、何とかそれを避けたいと必死にジーザスを説得しまくる姿がとても印象深いです。
本当はジーザスを救いたい気持ちが強いユダ。”手に余るような行動”をやめるよう訴え続けてるときなんかもう、今にも泣いてしまいそうな勢いでとても痛々しい。でも二人の気持ちは交わることができなくて、気持ち的に追い詰められたユダは”裏切り”行為へと舵を切ってしまう。ここの説得力がものすごく強かったのも、佐久間くんの熱演あったからこそだと思います。
裏切ってしまった後もジーザスが助かってほしいという気持ちはずっと一貫していて。痛めつけられる彼の姿を見てしまった時の佐久間ユダはこれ以上生きてはいられないだろうなというのを予感させました。それ故「なぜ私を選ばれた!?」と神に恨み言を叫びながら地獄へ落ちていく場面はひたすら切なかったです。
クライマックスの♪スーパースター♪の歌いっぷりはそれまでの鬱憤を晴らす如く皮肉たっぷりなノリノリっぷりがダークでカッコいい。特に茨の冠を下界に投げ入れた時の仕草が最高でした!
マグダラのマリア:江畑晶慧さん
江畑さんは初めてのマリア役ですね。これまでは「ウィキッド」のエルファバや「マンマミーア」のドナといったパワフルな役柄を演じる姿を見ることが多かったので、柔らかく静かな雰囲気のマリア役に決まられたと知った時には少し驚きました。
江畑マリアはジーザスを優しく柔らかく包み込むような想いで見つめていた姿がとても印象的でしたね。あんなに静かな役柄の江畑さんを見たのが初めてだったのでとにかく新鮮でした。♪私はイエスが分からない♪のナンバーもしっとりと柔らかく歌い上げていてよかったです。
ただ、なんとなく物足りなさもあって…。マリアはどちらかというと出番も少ないので個性を見せるのは難しいとは思うのですが、あと一歩何かを感じさせてくれるマリアだったらなお良かったなとは思いました。
シモン:本城裕二さん
本城さんはシモン役を演じてかなり長くなりましたよね。私が初めて本城シモンを見たのが2007年でしたから…もう約16年。この方のシモンはとにかく安心して見ていられる。
一番の見せどころが♪狂信者シモン♪の大ロックナンバーなのですが、ここの旋律が実に難解で上手く声を出し切れない役者さんも少なからず過去いらっしゃいました。でも、本城さんはスコーンと完璧に高音部分もクリアしているし、ずっと激熱なテンションのまま突き抜けていくあの歌い方も最高にカッコイイのです!!特に一番最後の「永久の栄光と~~!!」の上げっぷりが素晴らしいっ!!久しぶりにそれを浴びてもう、快感でございましたw。
アンナス:日浦眞矩さん
日浦さんのアンナスは今回が初めましてです。これまで「エビータ」のマガルディや「オペラ座の怪人」のアンドレなど、どこかちょっと可愛らしさが見え隠れする役柄で観てきましたが、アンナスもめちゃめちゃハマってましたね。カヤパ様の顔色をちょいちょい伺いながら…みたいな雰囲気があったりして面白かったですw。
声質が少し高いというのもマッチした大きな要因かもしれません。というのも、♪ジーザスは死すべし♪のナンバーの時のアンナスのパートがめちゃめちゃハイトーンなところがあって。過去にそこでちょっと声が裏返ったり出づらかったりする俳優さんを何人か見てきて、アンナス役はかなりの難所なんだなと思ったことが何度かあったんです。
ところが日浦さんはその難所を完璧に歌い上げられてて本当に素晴らしかった!「それじゃどうする」とか「バプテスマの」とか気持ちいいくらいに上下動する旋律をクリアされてて心の中で拍手贈ってしまいました。
ペテロ:辻雄飛くん
ペテロ役は劇団四季の中でも新人さんが演じることが多くて、過去にも飯田洋輔くん、達郎くん兄弟が演じてきました。2018年に見た時は五十嵐春くんが演じてましたね。今回は辻くん、初めましてです。
ペテロはソロとしての出番は少ない役ですが、後半に大きな見せ場があって。辻ペテロは若さゆえの未熟さみたいなものがお芝居から滲み出ていたのがとても良かったと思います。特にジーザスから「お前は3度も私を知らないというだろう」と予言された時に「え!??」って思わず声が出るほどビックリしてしまった姿がすごく印象深かった。ジーザス逮捕の時も真っ先に「剣を取ろう!」と勇ましく立ち上がったんだけど、「なぜ戦うのだ」とジーザスに静かに止められるとチンマリしてしまって。すごい若々しいリアルな青年像が見えたのが好印象でした。歌がもう少し安定すればもっと良い役者さんに進化すると思います。
ピラト:山田充人さん
本来であれば村さんが演じられる予定だったと思うのですが、ご事情で出演できなくなられたようで急遽、山田さんがピラト役で入られることになりました。いやぁ…、わたし、その前の週に大阪の「オペラ座の怪人」で山田ピアンジを見たばかりだったのでこの移動には正直ビックリしました(汗)。本当にお疲れ様です!!
山田ピラトは過去に何度かあったようなのですが、私は今回が初めましてです。澄んだ通りのいい声が非常に聴き心地よく、地位の高い凛とした高官といった雰囲気がとてもよく出ていました。特にジーザスを助けたいけれども荒れ狂う群衆たちの声に押されて極刑を言い渡さざるを得なくなる場面での葛藤し苦悩する姿は印象深い。
それからもうひとつ、鞭打ちの場面。数字の数え方が実に小気味よくまるで音楽のリズムのように聞こえてきたのがとてもカッコよかったです。
山田さん、ハードなスケジュールだったと思いますが本当にお疲れ様です。村さんが公演中に元気に復帰されますように。
ヘロデ王:大森瑞樹くん
大森くんは過去にアンサンブルでは見たことがあったのですが、ヘロデ王としては今回が初めてなのでとても楽しみにしていました。
ヘロデ王の見せ場は何と言っても後半のソロナンバー♪ヘロデ王の歌♪シーン(ここしか登場しないけど)です。これまで色々な個性の役者さんたちが演じられてきましたが(市村さんはこの役でデビューしたんですよね)、大森くんも負けてなかった!!っていうか、めっちゃ良かったです。あの独特のジャポ版ならではの奇抜な衣装がビックリするほど似合ってる。スラリとした体形にもフィットしていて、回し姿も様になってる(すごい美尻で驚いたw)。
でも何より一番印象深かったのは歌唱力です。「アナ雪」のパビー役もカッコよかったんだけど特に歌唱で注目したことはなくて(ごめんなさい 汗)。でも、ヘロデ役でのスコーンと鋭く突き抜けるような歌声はとても迫力があり、大いに魅了されまくりました。大森ヘロデから目が離せなかった。これからもどんどん極めていってほしいです。
カヤパ:飯田洋輔くん ※推し語りになるので熱くなる危険性ありw。
出演が難しくなったと思われる高井さんに代わり、急遽大阪から東京のJCSへピンチヒッターとしてキャスティングされた洋輔くん。私は木曜日に大阪オペラ座で見ていたので、土曜日から東京になったと知った時には本当にびっくりしました。で、翌週は私が見る日から「未定」になってて…結果が分かるまでは気が気じゃなくてまともに眠れなかったほどw。まさか大阪の次の週に東京のJCSで洋輔くんに再会することになろうとは夢にも思いませんでした。
JCSといえば…洋輔くんのデビュー作でもあるんですよね。私がまだファンになる前の出来事ですが、キャスト表を見たらアンサンブルに名前がある日があって。知らないうちに目撃していたんだなと後日胸を熱くした思い出がありますw。彼をはっきり認識したのは2007年公演のペテロ役の時かな。この時もほとんど記憶になくて(汗)。おっ!?と注目し始めたのが同じ年の7月にカヤパ役で出演した時だったな。まだ彼のことをほとんど知らない時期で、あとから年齢を知った時にはビックリした思い出が(笑)。そのあと2009年まで洋輔くんカヤパを見て…その後キャスティングされることもなくなったのでJCSは卒業なのかなと思っていました。なので、まさか14年の時を経てここで再会できるとは全くの予想外で劇場に入るまではこれまで以上の妙な緊張感に包まれてしまった私ですw。
最初の登場は冒頭の♪序曲♪で苦しむ民衆たちを蹴落としてる場面。すごい斜度に上げられた板の上からステッキで容赦なく払い落としていくかの如くな動きをしてた洋輔くんカヤパ様がめっちゃツボだったww。っていうか、そこで改めてジャポ版のカヤパがスキンヘッドだったことを思い出した私です(笑)。メイクも歌舞伎調なので、あれは知っている人じゃないと彼だと認識できないかもしれない。
そして一番大きな見せ場の♪ジーザスは死すべし♪の場面。半裸のカヤパ衣装は私にはあれくらいが貫禄が出ていてどっしりとした雰囲気が見えてむしろ良かったと思いました。それよりも驚いたのが、大司教カヤパとしての圧倒的な存在感です。立っているだけで威圧感がびりびりと伝わってきたし、それに加えてあのよく響き渡る低音の歌声がズーーーンと迫ってくるわけで…なんだかそれを目の当たりにしただけで色んな感情が膨れ上がって涙がこみ上げてきて仕方なかった。
07年と09年の時の洋輔くんカヤパは「歌の上手さ」が際立っていた印象があったのですが、あの頃よりも権力者としての凄味や風格が振る舞いから伝わってきたし、歌声も周りを制するようなドシンとした迫力が確実に増していました。その姿に、飯田洋輔という一人の役者の大きな成長が感じ取れて…もうそれだけで感無量(涙)。
それからもう一つ印象深かったのがジーザスの裁判シーンです。この時カヤパはたくさん歌があるわけではないのですが、一節二節歌っただけでその場の人たちを屈服させてしまいそうになる迫力がありました。そして鞭打ちの場面でその様子を椅子に座りながら高みの見物を始めるカヤパの場面、打たれ苦しんでいるジーザスを見つめる「眼」のなんと冷たかったこと!!!セリフは一言もないんですが、あの静かで凄味を含んだ冷徹な目線に背筋がちょっと冷たくなりました。
この繊細な表情の表現はやはり、「オペラ座の怪人」でファントムを演じたからこそだったかもしれないなと思います。あの役は洋輔くんに色々な引き出しを増やしてくれてる気がする。
ジーザスを裏切ってしまったユダを冷たくあしらう場面も、本当に徹底して突き放していて。まるで虫けらを見つめるような冷やかさすら感じさせる表情が歌舞伎の隈取メイクの下から見えたのがとても印象深かった。
洋輔くんのカヤパを、今この時期に私に会わせてくれた神に感謝!!進化した姿を目の当たりにして、改めてファンになって応援し続けてきて良かったなと実感しました。”演じる人物の人生を真っ直ぐ生きる”良い役者さんになったね、洋輔くん。
私が見た次の週には再び「オペラ座の怪人」出演のため大阪へ戻ったようです。高井さん、元気に復帰されたようで本当に良かった。
後述
カーテンコール、5回くらいあったかな。3回目くらいからはスタンディングオベーションとなってかなり盛り上がりました。ジャポネスクバージョンはエルサレム版と違ってカテコで音楽も流れないし、キャスト全員による陽気なダンスがないので(劇中で極悪キャラなカヤパやアンナスたちもニコニコしながら踊ってるのが可愛いんですがw)かなり地味めなのですがw、熱い拍手が続く中役者さんたちも充実した表情を浮かべていたのがとても印象深かったです。
客席最後方の後ろにある関係者席らしき部屋があるのですが(親子観劇室のとなり)、そこに浅利慶太さんの遺影とお花がひっそりと飾られていました。ジャポネスク版は浅利さんのオリジナル作品とも言えるくらい特別な作品だと思うので、あの場所に鎮座されているのでしょう。きっと今回の熱い舞台を見て頬を緩めていらっしゃるのではないかなと思いました(偶にダメ出しもしてるかもしれないけどw)。
JCSはエルサレム版のほうが上演される機会が多いのですが、今回久しぶりに見ることができて本当に良かったです。演出的にもエルサレムより相当神経使うだろうし体力もキツイと思うのでなかなか難しいとは思いますが、個人的に思い入れも強いのでまたぜひ再演してほしいです。
最後に・・・今回大阪の『オペラ座の怪人』公演から急遽こちらに出演となった飯田洋輔くんと山田充人さん、出番は多くないにしても相当な傾斜舞台ですし…体力的にも精神的にもかなり大変だったと思います(カテコちょっと疲労感が見えた気がしたし…)。どうかどうか体調を崩すことがありませんようにと祈るのみです…!