ミュージカル『ジキル&ハイド』大阪公演 2023.04.22マチネ -石丸幹二さん最終日-

全体感想・キャスト感想<2幕>

♪事件、事件~レクイエム~♪

ベイジングストーク大司教が暗殺された後もハイドの理事会メンバーへの復讐は続く。人々は連続●人事件に恐怖しまくるわけですが、キョウヤさんの新聞売りの高音が毎回本当に素晴らしかったですね。重厚でスリリングなアンサンブルの歌のなかであの迫力の歌声が際立つことでさらに緊迫感を与えていたと思います。
ちなみに、1幕ラストで派手な最期を迎えた宮川さんですが…2幕冒頭から一般市民として元気に復活されています。上手側で歌い踊りベイジングストークのニュースに恐れおののいてる姿を見るとなんかちょっと面白かったりしてw。アンサンブルに入っても宮川さんの迫力の歌声はよく響く。

連続●人事件の中で個人的に一番注目してしまうのが川口サベージ伯爵。自分の隣にいた人たちが次々にハイドの餌食になっていくわけですが、この時の腰を抜かしてビビる姿が毎回ツボでした。なんか可愛らしさもあって好き。
鹿賀さんがジキハイやってた頃はサベージ伯爵は心臓発作で召されるといった感じだったんですが、石丸さんに代わって新演出になってからはしっかりと毒牙にかかるようになりました。壁に頭突っ込んだだけであれだけの悲惨な状況になるっていうのがけっこうゾクっとするんですけどね(汗)。

ジキル博士と会えない時間が増えたエマは心配のあまり研究室を訪ねてしまう。そこで再会した婚約者は以前とは別人のようにやつれ、追い詰められ混乱した変わり果てた姿になっていた。そんな彼の姿を目の当たりにした彼女は大きな不安に襲われながらも、気丈にジキルを信じ続けようとするわけですが…桜井エマは少しだけ積極的に行き過ぎてちょっとイラっとしたかなぁ。個人的にはもう少し柔らかい雰囲気のほうが好みかなぁ。
でも、ジキルを想いながら歌う♪あれは夢♪ は彼に対する気持ちがひしひしと伝わってきてとても良かったです。ほんと、玲香ちゃん歌が進化したなぁと。

その後、ジキルから不可解な手紙を受け取っていたアターソンが研究室に血相を変えて飛び込んでくる。でもこの時ジキルは自分の状況を親友にも打ち明けることができないわけで…そんな姿見るとホントもどかしくなる。でもアターソンは納得できなくても最後にはジキルの言葉通りにすることを了承してくれるんだから、本当に良い奴だよなぁと思います。石丸ジキルと石井アターソン、ちょうど年齢的にも釣り合う感じなのがすごくいいですよね。
アターソンが去った後に「なぜハイドが出てきてしまうのだ」と苦悩する石丸ジキルの姿が切ない(♪狂気♪ )。ハイドの人格が自分の中にあることを認めたくないけど受け入れざるを得ないといった複雑な心境が手に取るように伝わってくる…。

♪その目に♪

ジキルが自らの中にある”善と悪”に気づき苦悩しているとは露知らぬルーシーとエマ。二人はそれぞれの場所で彼への想いを募らせているわけですが、エマが裕福な家庭の中で父親の隣に座りながら歌っているのに対し、ルーシーは娼婦宿”どん底”の暗さの中で支配者であるスパイダーの影におびえながら歌ってるんですよね…。この対比が本当にめちゃめちゃ切ない。
私はエマよりもルーシーの方に感情移入してボロ泣きしてしまうかなぁ。ジキルはエマにとっては婚約者だけど、ルーシーはどんなに恋愛感情を募らせてもその想いが叶わない相手で…。それでも初めて自分に優しくしてくれた彼への気持ちが募る一方。それは彼女にとってのささやかで唯一の喜びでもあって…。なんかもう全てが切なくて愛しかったです、玲奈ちゃんルーシー(涙)。

♪罪な遊戯♪

ふと我に返ったルーシーは自らの現実を見つめながら絶望感に打ちひしがれる(♪あたしは誰♪) 。ジキルの前に立てる資格はないんだというように自分を責めている姿が本当にやりきれない(涙)。

そんな彼女の前に突然現れるハイド。一瞬ジキルかと想い笑顔を浮かべながらもやって来たのがハイドと知るや否や表情がこわばってしまうルーシー。それを見てハイドは険しい表情で迫るわけですが…あれは彼の嫉妬心みたいなものなのかなぁと。自分で自分に嫉妬してる状態なのかもと思うとなんだか非常に複雑な気持ちになってしまいます。ルーシーという女性に心惹かれたこともまた彼の中の一部ですからねぇ…。

ハイドがジキルから分離した人物だとは露知らぬルーシーは恐れおののきますが、彼に迫られてもなぜか強く拒絶することができず、逆に受け入れていってしまう。♪罪な~♪のシーンは毎回背徳感たっぷりでドキドキハラハラしながら見入ってしまうのですが、今回はこれまで以上に妖艶な雰囲気に見えてしまってさらに心拍数上がってしまった。特に笹本ルーシーが何とも言えない表情で石丸ハイドを拒めずにただ受け入れてしまっている場面は印象深かったです。「悪い事と知りながらも信じるだけ」という歌詞が特に胸に響いたなぁ。
さらに石丸ハイドのルーシーへの迫りっぷりがめちゃめちゃ猟奇的で不気味すぎた(←褒めてますw)。あの舌遣いとかビックリしたよ(汗汗)。

ジキルから頼まれた薬を届けに研究室へやって来たアターソンの前に”ハイド”が出現する。鬼気迫る表情でアターソンから銃口を向けられたハイドは、自らの意思で”ジキル”へと変身する。まさかあの邪悪な人物と親友とが同一人物だったとは夢にも思わなかったであろうアターソンは腰を抜かすほど驚いただろうねぇ(汗)。っていうか、目の前で起こったことをすぐに信じろという方が無理。でもこの場面、アターソンが引き金を引く前に”ジキル”に戻れてよかったとホッとしてしまう(←そしたら物語そこで終わっちゃうけど 汗)。
この時のハイドからジキルへの変身っぷりも石丸さん見事。そこに至るまでの流れの芝居、ハイドとジキルとの演じ分けが本当に自然でリアルだった。

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♪新しい生活♪

ジキルから「ハイドになった自分がルーシーを殺してしまうかもしれない」という切羽詰まった告白を受けたアターソンは急いで彼女の元へ駆けつけ、「今すぐにここを立ち去るんだ」と何度も忠告する。でも、ルーシーとしてはなぜアターソンがそんなことを突然言ってくるか理解できなくてあまり深刻に捉えてないんですよね…。この場面を見るといつも、アターソンが最後までサポートしてくれていたら…と思ってしまう(涙)。

アターソンから託されたジキルからの手紙をワクワクしながら読み進めていくルーシーの健気さがまた泣けます…。そこにはジキルの彼女への嘘偽りのない誠実な思いやりの言葉で溢れてて、さらに感激しちゃうんだよねぇ(涙)。特に最後の「あなたにはあなたの相応しい生活があるはずです」という文面を読むシーンは何度見ても涙が溢れてしまう…。自分の将来のことにまで想いを巡らせてくれたジキルの優しい気持ちが骨の髄まで伝わり感謝と喜びに満ち溢れながらルーシーが歌う♪新しい~♪は涙なしには見れないです、本当に。思い出しても涙ぐんでしまうほど心が震える。
ルーシーが一番欲しかった言葉をジキルは与えてくれた。彼にとっては何気ない言葉かもしれないけど、彼女にとっては人生を変えるきっかけに値するくらいの言葉だったわけで…。彼女の気持ちに想いを馳せれば馳せるほど愛しくて切なくて涙が止まりませんでした(泣)。

でも、その幸せはハイドの突然の出現によって突然終わりを迎えてしまう。ジキルからのルーシー宛ての手紙を見つけ嫉妬にも似た怒りを覚えるハイド。クシャクシャにされた手紙を必死に拾い自分の胸の中に収めようとするルーシー。その姿がさらにハイドを刺激することになろうとは…。
あまりにも残酷なルーシーの最期は本当に哀しくて哀しくて仕方ないです(涙)。事切れた彼女の呆然とした瞳にはいったい何が映っていたのだろうかと思いながら涙する私です。

♪対決♪

ハイドは残酷にもルーシーに手をかけた直後にその光景をジキルに見せつける。その光景に激しいショックを受けたジキルは新しい薬で何とかハイドを自分の中から抹殺しようともがき続ける。

ルーシーが事切れてる部屋でジキルとハイド、二つの人格が激しくぶつかり合う♪対決♪。ここは役柄的に一番パワーを使うところだと思うのですが、石丸さんは見事に二つの人格を演じ分け鬼気迫る熱演を披露。驚いたのは、そこに必死さが見えなかったことです(良い意味で)。
精神的にも肉体的にもかなりハードな場面なのですが、石丸ジキハイは激しくやり合うなかでもどこか余韻を感じさせたんですよね。それゆえに非常に二つの人格が分かりやすい。ジキルはジキルの激しさを、ハイドはハイドの凶暴さを、あの限られた時間の中できっちりと演じ見る者に的確に伝えてた。これは本当に驚くべきことだと思います。改めて石丸幹二という役者の凄さを目の当たりにした気がしました。

♪結婚式♪

様々な試練を経て迎えたジキルとエマの結婚式。会場にはもう理事会メンバーの姿はダンヴァースとストライド以外いませんが、演じていた役者さんたちは一般客としてにこやかに参加していますw。宮川さんと川口さんはすぐ分かるw。

相変わらずストライドはエマへの未練たらたら状態で酒におぼれているわけですが、石井アターソンは基本的にそんな彼にあまり構ってる印象はなかったかなww(上川くんはめっちゃストライドなだめてたけどね)。

エマと幸せな結婚式を迎えるはずだったジキルでしたが、会場に現れてしばらくすると体調に明らかな異変が現れる。事情を知っているアターソンは慌てて駆け寄りジキルを離れた場所に連れ出そうとしましたが時すでに遅し…。
このあと、アターソンが気を失った隙にハイドが凶行に走るのですが…この最良の日に標的にした二人こそがジキルが一番怒りと憎しみを覚えた相手という事になるのかなと。まず最初に手をかけたのがストライド。演じてる畠中さんの死に際の芝居は相変わらず非常にスリリングで上手いです。

そのあとすぐにハイドはエマの首に手をかける。この場面、3月にトークショーで栗原さんが言ってたことを思い出しながら見たらものすごく腑に落ちるものがありました。
ハイドはエマの首を絞めながらもその視線はダンヴァース卿に向いてるんですよね。これは彼に対する復讐でもあるのです。つまり、ハイドはダンヴァースが一番苦しむ手段(最愛の娘を傷つけること)を熟知していたがためにあの行動に出たのだなと。理事会メンバーの中では唯一ジキルの研究に理解を示そうとしてくれていたダンヴァースでしたが、最後まで味方してくれることはなかった(棄権したし)。それをおそらく裏切り行為と捉えジキルの中で知らず知らずのうちに恨みの感情が募っていったのかもしれません…。

エマの首に手をかけていた時の石丸ハイド、獣のような激しい形相で睨みつけていて本当に背筋がゾクッとしました。そしてその視線を感じた時の栗原ダンヴァース卿が泣きそうになりながら必死に娘を助けに行こうとしつつ足が前に進まない姿も切なくて悲しかったです(涙)。

エマは首を締め上げられながらも必死に「あなたが私を傷つけられるはずがない」と”ハイド”に語り掛ける。”ジキル”が心から愛した人の言葉は”ハイド”に少しずつダメージを与えていく。そしてアターソンが一発の銃弾をジキルの足に向けて撃ち込んだことで”ジキル”の人格が現れることに。
この時点でジキルは自分には”死”しか選択肢が残されていないことを悟ったんだろうな…。「楽にしてくれ」とアターソンに懇願するジキルの姿はあまりにも哀しかった(涙)。

ラストシーン、エマが鋭い視線で周囲を見渡した時(彼女はジキルを殺したのはアターソンだけではなくその場にいる全員だという想いを込めてる)…彼女の膝の上の石丸ジキルはとても穏やかな表情だった。”死”でしか安らぎを得られなかったジキル博士の末路はあまりにも切ない…。

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石丸幹二さんのジキル&ハイドについて

一番最初に石丸さんが『ハリー・ポッター』上演真っただ中に『ジキル&ハイド』公演が決まったと聞いた時には本当にびっくりしました。ハリポタ公演はこれまで数回足を運んでいますが(→レポ参照)、石丸さんが演じるハリー役は主役だし肉体的にも精神的にもかなり負担の大きい役だという印象が強いんです。そんな最中にあの心身共に疲弊するであろうジキハイを演じるなんて…(しかも東京のほかに名古屋、山形、大阪がある旅公演)、よもや生き急いでいるのではなかろうかと心配になる気持ちの方が大きかった(汗汗)。

この事情については、ハリー役のオーディションの結果時期が大きな要因だったということらしく(コロナ禍でなかなか合否が分からなかったらしい)、もともと決まっていたジキハイのラスト公演と重なったようで(苦笑)。とりあえず石丸さんが自分で無理やりねじ込んだんじゃないことにはホッとしましたが、それにしても、ハリーとジキハイの2足の草鞋を同時期に履くというのは相当な覚悟がないとできないことだったと思います。さらにそれ以外にもメディアのお仕事まで入ってたわけですから…常人だったら不可能に近いですよ、この状況は。

そしてついに迎えたジキハイ石丸さん最後の日、病気もけがもなく旅公演も含めて見事にやり遂げられました。もはや神業といいますか…感無量と言いますか…、ただただすごかったとしかもう言葉が見当たりません(語彙が追いつかん)。

 石丸幹二さん、ジキル&ハイド公演完走、本当に本当にお疲れ様でした!!!!

ジキハイ楽を迎えた翌日のマチネでは元気にハリー役をこなされていらっしゃったようで、そのバイタリティにもホント驚かされました。

 7月には石丸さん楽のハリポタ遠征に行く予定ですので、それまでどうか怪我や病気なく乗り切られますように。

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後述

カーテンコールは2度目の時からスタンディングオベーションとなり大いに盛り上がりました。その後石丸さんが「どうぞお座りください」と穏やかな笑顔で客席を促して、千穐楽を迎えた心境についてのコメントがありました。あんな激しい役を演じてきた後とは思えないほどの爽やかさで、そのことに本当に驚いたよ(汗)。

ジキハイの作品については「足掛け12年演じ続けてきましたが、不朽の名作だと思います」と語られていた石丸さん。思えば玲奈ちゃんも2012年からの参加だったよなぁと思い出しました(最初はエマ役でしたけどね)。今回で大千穐楽だと宣言していた石丸さん、「今回で最後の変身ができてとてもホッとしています」と正直な気持ちを打ち明けていらっしゃいました。

「まだまだこの先も新しいメンバーがバトンを受け継いで走り続けてくれると思う」と作品への想いを熱く語っていて「僕はもう柿澤くんに次のバトンを渡しました」と晴れやかな笑顔で告げられていましたが、もう石丸さんのジキハイが本当に見られなくなるんだなぁと思うとちょっと寂しくなってしまいました。
最後に「これからも末永くこの作品を愛してください」とジキハイへの想いを声高らかに宣言して挨拶を終えられました。

この直後に玲奈ちゃんが突然舞台袖に走り去っていったのでどうしたのかな?と思ったら、石丸さんに渡す花束を抱えて戻ってくる一幕がありました。嬉しそうにそれを受け取られ晴れ晴れとした表情をされていたのがとても印象深かったです。
この後何度かカーテンコールが続いて、挨拶後に出てきたときには栗原さんが衣装の上にカンパニーTシャツを着て登場!!そこに描かれてる石丸さんのことを何度も指で指し示しながら盛り上げていたのがとても印象的でした。栗さん、こういうところ本当に抜かりない。

あのTシャツ、ホントカッコよかったよなぁ~。非売品だったのが残念!

最後の最後に舞台袖へ去る直前「またどこかでお会いしましょう」とにこやかに挨拶してた石丸さん。本当にあんな激しい役を生き切った後とは思えないほどの清々しい爽やかさでビックリしました。

今回で石丸さんは本当に最後という事でしたが、他の長く続けてきたキャストの皆さんはどうするのかな。次回からは柿澤くんが中心となり続けていくと思うので全体的に若返った顔ぶれになっていくのかもしれないなとも思います。畠中さんは長い間ストライド役を演じてきていますが、年齢的に見てもしかしたら今回が最後かもしれないな、とも。宮川さんや川口さんたちはまだ行けそうですけどね。

何はともあれ、今後もミュージカル『ジキル&ハイド』を応援していきたいと思います!カッキー、頑張って!!

石丸さんのジキハイは3シーズン全て観ることができました(2016年の感想はこちら)。本当に本当に最高でした!!

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