舞台『奇人たちの晩餐会』東京公演 2022.06.08 ソワレ

6月に開幕した舞台『奇人たちの晩餐会』東京公演を観に行ってきました。

この公演は東京を皮切りに7月まで全国公演を行うことが決まっています。大阪のピロティホールが距離的には一番近かったのですが、ちょうどその時期に違う演目で遠征する予定があって行けそうになかったため、今回の東京遠征のスケジュールに組み込むことにしました。

この作品を見たいと思った理由は、片岡愛之助さんと戸次重幸さんの共演があるということ。この二人が演じるコメディ劇が面白くないわけがない!!久しぶりに愛之助さんの現代劇舞台も見たかったこともあり(後援会歴約16年w)チケットを購入。なかなか見やすい席で観劇することができました。

世田谷パブリックシアターに訪れるのは何年ぶりになるだろうか!?というほど久しぶり。最後に見た演目を思い出せないほどこの劇場にずっと来ていなかったなぁと改めて…(汗)。
パブリックシアターは客席が舞台を丸く囲んだような設計になっているので、基本的にどこに座っても舞台全体が見やすいという利点があると思います。それに、中型劇場なので客席との距離も意外と近い印象です。

ちなみにこの日は愛之助さんの奥様(藤原紀香さん)が観劇にいらっしゃっていました(中央ブロック最後列でご観劇)。白いお着物がよくお似合いで、もうすっかり”歌舞伎役者の妻”としてのオーラが漂っていましたね。終演後もご贔屓筋の方に挨拶したりとご自分の役目を真摯にこなされていて、愛之助さん…すてきな奥さんと巡り会えてよかったねって思いました。

物販はパンフレットのみ。1500円とかなり良心的なお値段でありながらも、内容も結構充実しているので買って損はないと思います。

以下、ネタバレを含んだ感想になります。

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2022.06.08ソワレ  in 世田谷パブリックシアター(東京・三軒茶屋)

キャスト

  • フランソワ:片岡愛之助
  • ピエール:戸次重幸
  • クリスティーヌ:水夏希
  • ルブラン:原田優一
  • マルレーヌ:野口かおる
  • シュヴァル:坂田聡
  • アルシャンボー:大森博史

あらすじ・概要

原作は、フランスの脚本家・フランシス・ヴェベールが1993年に発表した同名のコメディ舞台劇です。最初の頃はハリウッドの映画界で執筆活動を行っていたようでしたが、その後フランスに帰還。このときに書いたのが『奇人たち〜』だったそうで、約3年間のロングランを達成したほどの大ヒット作になりました。

1998年にはヴェベール自らが監督と脚本を手掛けて映画化し、フランスの名誉ある映画賞をいくつも受賞。ついには2010年にアメリカ版(原作のリメイク)が公開となりここでも大成功を収めました。

ジャック・ヴィルレ (出演), フランシス・ユステール (出演), フランシス・ヴェベール (監督, 原著)

日本での1999年に『おバカさんの夕食会』というタイトルで初演(2年後に再演)。また、2012年には加藤健一事務所が『バカのカベ』というタイトルで上演、再演しました。

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簡単なあらすじは以下の通り。

パリに住む編集者のピエール(戸次重幸)にはひそかな趣味があった。それは毎週水曜、友人とディナーを取ること。しかし、そのディナーが変わっている。主催者たちはそれぞれとっておきの馬鹿ゲストを同伴。その中からキング・オブ・馬鹿を決めるという非常に悪趣味な裏テーマがあった。これこそ“奇人たちの晩餐会”である。

今回ピエールが選んだゲストは官庁に勤めるフランソワ(片岡愛之助)という男。彼はマッチ棒を30万本以上使って巨大な模型を作る変人であった。

ところがピエールに次々と災難がおこる。晩餐会の直前に強烈なギックリ腰に。さらにピエールの妻・クリスティーヌが去ってしまう。彼の悪趣味についていけなくなった為である。止むを得ず、ディナーをキャンセルしようとするがその前にフランソワがアパートに現れる。

フランソワの出現により、ピエールは人生最大の危機をむかえることに――。

<公式HPより引用>

上演時間は2時間15分(内訳は1幕85分、2幕50分、休憩15分)です。

2022年版の演出を手掛けるのは山田和也さん。本来であれば2020年頃に企画が立ち上がりもう少し早く上演できるはずだったのが新型コロナ禍の煽りを受けて無期限延期状態になっていたそうです。今回はそれを経ての満を持しての上演実現ということに。
東京公演後は、大阪・長野・愛知・福岡を巡ります。

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全体感想

全体感想結論から言うと…本当にめちゃめちゃ面白かったので、ぜひとも多くの方に劇場に足を運んでいただきたい!

本公演前の記者会見でも触れられていたようですが、息もつかせぬ会話のキャッチボールが続く抱腹絶倒の作品です。何の前知識もなく見に行きましたが、3分に1回くらいは「ぷぷっ」と吹き出してたと思うww。それが、時間が立つに連れて色んな人が絡んでくると「ぶははっ」と笑いが声になって出てくる状態へww。海外物のコメディでありながら日本人の私達が見ても「あぁ、こういうシチュエーションわかるなぁ」と共感して笑えてしまう。

登場人物は全部で7人ですが、7割くらいは愛之助さん演じるフランソワとシゲさん演じるピエールの二人芝居のような感じでした。

セットの入れ替えはありません(1幕と2幕では内装が色んな意味でかなり変わりますがw)。タイトルには”晩餐会”とありますが、ドラマが展開されるのはシゲさん演じるピエールの高級そうなお部屋の中だけです。つまり晩餐会での出来事を描くのではなく、”話の種の中に晩餐会が出てくる”といった感じ。
ただ、ラストシーンではこの”晩餐会”についての話題がとてつもなく心に刺さるような切ない展開を迎えることになります。それがこの戯曲の最大の魅力でもあるなと思いました。

ピエールは毎週水曜日にめちゃめちゃ趣味の悪い晩餐会に参加するのを誰よりも楽しみにしている。これぞ!という間抜けな人物を選出したうえで同伴し(選出された人はなぜ自分が招待されているのか知らされていない)、その中でも一番”バカ”な人物を内々で決めて楽しむというもの。
ピエールはいつもその晩餐会の中でトップを獲得しているようで、今回も自信を持って選出した人を連れて行くはずだった。

いやぁ、これ、ほんっとに悪趣味極まりない(汗)。自分より劣ると判断した人間を当人が知らないままおびき出して蔑むわけですからねぇ。困難を楽しみに生きてるなんて、クズ人間としか思えない。
だけど現実問題、こういう会合って実際にも行われてる節があるのではないかとふと思ってしまい…あながちファンタジーな話ではないのかもしれないとも感じてしまった(汗汗)。

ところが、そんな彼に天罰とも言えるべき出来事が次々と襲いかかる。その最初に訪れたのが「ぎっくり腰」ww。私も一度やったことあるけど、あの痛みは本当に舞台上で表現されていたものそのものです。(←実際にシゲさん、稽古前にぎっくりになったらしい)。

なんとかアルシャンボー医師に来てもらって晩餐会へ行けるよう処置してもらおうとするピエールでしたが、結局はそれが叶わず。断腸の思いでこの日の参加を断念する連絡を入れますが、妻のクリスティーヌは人を蔑むことにしか楽しみを見いだせないような夫に失望し家を出ていってしまいます。
この場面見ながら、そりゃそうだよなぁと思いきり共感。「一緒にいてほしい」という奥さんの気持ちよりも他人をバカにすることのほうが大事と思うような夫とは一緒にいられんわな。

それにしても、奥さんの名前が”クリスティーヌ”とはww。つい先日まで劇団四季の『オペラ座の怪人』を観まくっていた私の脳裏には、どうしたってあちらのキャラクターが頭に浮かんでしまって困りました(笑)。
今回クリスティーヌを演じている水さんもめちゃめちゃスタイルいい美人のお姉さまなのでなおさら『オペラ座〜』の歌姫・クリスティーヌが過る(元宝塚のトップさんだしね)ww。でもキャラクターはぜんぜん違うけどねw。

ここまで文章で書くと、かなり辛辣な嫌な内容としか伝わらないかもしれませんが(汗汗)、実際に舞台で見るとめちゃめちゃ笑えるんですよね。ピエールの痛がり方とか、家に呼ぶ予定のフランソワの留守番電話音声とか(最後に何故か”ニャロメ”というフレーズを入れたのは愛之助さんだからこそのアイディアだったんでしょうかww。ほぼ同世代なので思わず吹いたww)。
あと、クールだけどどこかおかしみを感じさせるアルシャンボー先生とピエールの会話のやり取りもクスリとさせられることの連続です。

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そしていよいよ満を持して愛之助さん演じるフランソワがピエールの家にやってくる。彼はピエールが選出した”最高傑作の同伴者”ですが、本人は当然そのことを全く知らない。
ギックリ腰が悪化して晩餐会へ行くことを断念したピエールでしたが、ろくに面識のなかったフランソワがどれだけの”バカ”なのか確かめるために彼を家に招き話をしてみることにするわけです。いや、もう、ほんっと最悪なヤツだよ〜〜!!

フランソワはピエールの魂胆など微塵も感じてなくて、晩餐会に招待してくれたことに感謝すらしている。ピエールがギックリ腰になって行くことができなくなったとわかったあとも、本気で彼の体調を気にしてくれるほどのお人好し。そんなフランソワが気の毒なんだけど…めちゃめちゃ可愛らしくてねぇ。

ところが、最初はフランソワののほほんっぷりをバカにして面白がっていたピエールに思いがけない災難が降り掛かってくる。その大きな要因が、フランソワが非常に好奇心旺盛で一つの趣味に没頭する人物だったということでした。

個人的には、マッチ棒アートに情熱を傾けているという設定がめちゃめちゃ面白かった!!あれはもう、趣味というレベルを超えてるよwww!!!
今の時代だったら、あれをSNSなどに投稿して有名人になれてたかもしれないのに〜〜。っていうか、税の仕事よりもそっちの芸術の仕事のほうが向いてるんじゃない!?とすらwww。お金取れるレベルよ!?みたいな。

フランソワはピエールに自分の趣味のマッチ棒アートの写真を見てもらいたくて必死にプレゼンを始めるのですが、ピエールは全く興味を持つことができない。ついには堪りかねて体よく家から追い出そうとするのですが、出て行きかけては戻り話し始めるといった具合(笑)。そうなってくると、どんどんピエールのほうが精神的に追い詰められていってしまう。

この場面、私にはフランソワの気持ちが痛いほど分かってめっちゃ共感してしまった。
自分が情熱を傾けているものや大好きでたまらないことって、なんとか他人に分かってもらいたいという気持ちが働いてしまうんですよね。フランソワが必死になってマッチ棒アートについての共感を得たくて前のめりになって説明する気持ちすごく理解できてなんだかいじらしく感じてしまいました。まぁ、その度が過ぎると逆にウザがられるだけなんですけどね(苦笑)。

更に彼を悩ませたのが、フランソワが極度のお節介焼きだったということ。本気でピエールのギックリ腰を心配して自分の知っている先生を紹介しようとプレゼンしまくりww。でもピエールにとっては余計なお世話でしかなくて、苛立ちばかりが募っていくことに。
だけど…度は行き過ぎてるかもしれないけど(それがこの戯曲の最高に面白いところでもあるのですが)、基本的にフランソワってものすごく優しい男性なんですよね。愛之助さんが演じていると尚更それを強く感じられてなんだか癒やされちゃうw。

ところが、そんなドタバタしてるさなかにクリスティーヌから「離婚したいからさようなら」という痛烈な内容の連絡が入ってくる。ここからピエールの悲劇(観てる方としては喜劇と思えちゃうんですがww)が一気に加速。

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絶望するピエールを見かねたフランソワは、自分も離婚歴があることからなんとか彼の役に立ちたいと頼まれもしないのに奮闘を始めるww。これがトラブルを大きくするきっかけにもなっていて、ピエールにはお気の毒でしかないんだけどフランソワのドジっ子っぷりがも面白くて面白くてたまらない(笑)。

特に電話のくだりは最高です。ちょうどこの戯曲が書かれた時代は固定電話が主流で携帯電話は普及していない。たぶん携帯が普及したあとだったらこの作品は生まれていないかもしれません。
固定電話は電話線に繋がっている状況なのでちょっとでもその場所を離れると、ギックリ腰が重症なピエールにはそれを取りにいけるだけの余力がない。そこで仕方なくフランソワに電話をかけてもらうように頼まざるを得なくなるのですが…、やることなすこと失敗続きで事態は思わぬトラブルを呼び寄せてしまうww。

腰の激痛を診てもらうため(フランソワがベッドに抱えて連れて行こうとしたときに転んでしまってピエールの腰を悪化させるという展開www)医者に連絡してほしいと頼んだら、電話帳の場所を間違えて一番電話をしてほしくなかった相手・過去の女のマルレーヌにかけてしまう。
このマルレーヌはピエールが一刻も早く縁を切りたいと思っている女性だったので、フランソワがそうとは知らずに正直に現状を話してしまったことに大きく動揺(笑)。フランソワ、電話の相手がピエールのだと信じてしまって(マルレーヌが勝手に兄と呼んでるらしいw)奥さんが家を出たことまで話しちゃうんだよねぇ(笑)。そうなると、後釜狙いでマルレーヌが突撃してくることは目に見えているわけでww、必死の形相で電話を奪い取り「妻とはうまくやってるから来なくていい」と嘘で誤魔化すことに。

さらにピエールにとって腰の痛みよりも深刻なのが奥さんのクリスティーヌに去られかかってること。彼女の行きそうな場所を推理して、フランソワに一芝居打ってもらい連絡を取ろうと画策する。この目星つけたところっていうのが、奥さんのかつての恋人かつピエールの親友でもあるル・ブラン。事もあろうか、ピエールは親友の恋人を略奪したという過去が(汗)。
フランソワは得意顔になって他人になりすまして芝居を打つのですが、芝居に夢中になりすぎて肝心のクリスティーヌの居場所を聞き忘れちゃうっていうドジっ子っぷりを発揮(笑)。ますます大混乱に陥るピエールwwに、ルブランはすべてお見通しと言わんばかりに「奥さんについて聞きたいことがあるんだったら直接言え」と告げる。

このドタバタに疲弊したピエールは自室で休息を取ることにする。ところが、彼がいないその時に限って奥さんのクリスティーヌが戻ってきてしまうw。ここでまたしても大きな悲劇(喜劇)発生!!
その場にいて対応したフランソワは、クリスティーヌの姿かたちを全く知らなかった。折り悪くピエールは「もしもマルレーヌが訪ねてきたら追い払ってほしい」と注文をつけていたわけで…これがもう、トラブルの元になってたわけwww。つまり、フランソワはクリスティーヌを「厄介な女・マルレーヌ」として対応し追い払ってしまうわけです(笑)。この展開は予想できはしたもののやっぱり爆笑してしまいましたねww。フランソワが素直すぎる(笑)。

そんな事態になっているとは夢にも思わないピエールは、フランソワが体よくマルレーヌを追い出せたことが今ひとつ信じられないww。このやり取り聞いてるだけで、いかに”マルレーヌ”という女性のクセが強すぎるのかが伝わってきちゃって”フランソワ、やらかしたな”的な笑いがじわじわとこみ上げてきてしまいました(笑)。

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1幕も後半に入ってくると、登場人物が増えてきます。まず最初にやってくるのが、妻の居場所を聞くためにフランソワが芝居を打って電話した相手・ルブラン。彼はピーエルに恋人を奪われた過去があるにもかかわらず「お前の気持ちわかる」とか言って同情してくれるんですよね。普通は顔も見たくない相手と思ってもおかしくないのに、何って心が広い奴なんだと思っちゃったよw。

で、結局ルブランのところにはクリスティーヌがいないことが分かってガックリするピエール。ところが、フランソワは自分の同僚で友達のシュヴァルならば彼女がいるかもしれない場所の住所を知っているはずだと告げてくる。
これを聞いたピエールはフランソワに対する態度をコロッと軟化w。だけど本人がその変化について深刻に捉えていないどころか、頼りにされてると思い込んで喜んじゃうところがまた面白い(笑)。ルブランもピエールのためにフランソワのご機嫌取り始めちゃうし、何か見ててちょっと気の毒とすら思えてきちゃったよ(ま、フランソワ本人はドヤ顔しまくってるので良いんですがww)。

さっそくシュヴァルにクリスティーヌを囲っているかもしれない男の連絡先を聞き出すべく電話をしてもらおうとするわけですが、フランソワは「ハーフタイムまで待ったほうがいいですよ」とアドバイスする。ちょうどこのタイミングはサッカーの(リヨンvsマルセイユ)試合を放送中で、シュヴァルは試合中に電話をすると機嫌を損ねる可能性が高いというw。あぁ、その気持ちは分かる(笑)。
で、ハーフタイムまでフランソワが一人で別室でテレビ観戦することになるわけですが、完全にこれまでのことを忘れて大声を上げまくって超盛り上がってるwww。完全に任務のこと吹っ飛んでるなと分かるレベル(笑)。可愛すぎるぞ、愛之助さんのフランソワ!!

ピエールはルブランとフランソワの”おバカ”っぷりを隣の部屋で笑っているわけですが、その直後に再び彼に大きな悲劇…という名の喜劇が襲い掛かる。フランソワが勘違いして電話をしてしまった相手のマルレーヌが突撃してきたのです。
いやぁ、彼女のぶっ飛びっぷりは想像をはるかに超えたものでしたわ(笑)。突然異常なテンションでピエールに抱きついたかと思うと、狂ったようにキスをしまくってくる。…っていうか、あれはキスというよりも”喰ってる”って感じだったな(笑)。それを呆然とした表情のピエールがただ受け止めるしかない状況になっていて、そのカオスな状態がもうおかしくてたまらなくて思わず声に出して笑っちゃったよwww。

この時初めてピエールはフランソワが追い出した相手がクリスティーヌだったと悟るわけでww、怒り心頭。この事実を知ったフランソワは顔面蒼白となり、ルブランは腹がよじれるほど爆笑している(笑)。マルレーヌは自分が求められていないことを知って半狂乱で部屋を飛び出していくというカオスっぷりww。

フランソワは自分のミスを取り戻そうと、サッカーの試合がハーフタイムになったタイミングで友人のシュヴァルに電話します。ここのやり取りがまた面白くてww。
一番笑ったのは、シュヴァルが要件を飲むための条件としてフランソワにあることを強要する場面。フランソワにとっては屈辱でしかないんですが、ピエールの妻を追い出したという負い目(しかもピエールの女性遍歴までバラしちゃうしw)から言わざるを得なくなっちゃう。電話の脇でピーエルとルブランが「早く言え!!」と催促しまくってて、フランソワが絞り出すようにその言葉を絶叫ww。あの光景にはほんと爆笑させられてしまった(笑)。

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そんなドタバタから2幕へ突入するわけですが、とある事情により部屋の様子が一変しています(笑)。幕が開いて真っ先にそれが目に入ってくるので2幕冒頭から思わず吹き出してしまうという仕掛けが面白いww。

妻がいるかもしれない住所の資料を持ってきてくれることになったシュヴァルをもてなすため、ピエールは止む無くワインを出すことにするのですが、事情により高いものは出せない(ピエールの家には高級ものしかない)。そこで思い付きで”あるもの”を混ぜて安酒に見せかけようとするんですが、このやり取りがまた面白かったww。絶対美味しくないと確信したにもかかわらず「むしろ美味しくなってる!?」と驚愕するピエールが最高(試してみたくなっちゃう 笑)。
だけど、調子に乗ってさらに追加投入しちゃって結局飲めない味になっちゃうというねw。これを試飲させられたフランソワ、哀れ(笑)。

そしていよいよシュヴァルがピエールの家にやってくる。フランソワとサッカー談議に花が咲きそうになるのをピエールが必死にブロックして住所を聞き出そうとするシーンがまた滑稽で面白いw。
で、ついに目的の住所を聞くことに成功するわけですが・・・、シュヴァルはちょいちょい職業病を発症しピエールたちを冷や冷やさせることに。フランソワは自分の友達が腕利きであることを誇りに思っているのでそこの部分はあまりフォローしてくれない(というか、気づいてないw)。

この後色んなスッタモンダがあってフランソワがクリスティーヌの居場所かもしれない場所に電話をかける羽目になるのですが…、今度はシュヴァルにとんでもない悲劇が降りかかってしまうことに。いやぁ~~、あの展開は予想してなかった~~。もう、お気の毒としか言えないんですが・・・でもやっぱり申し訳ないけど笑っちゃったよww。

この一件でシュヴァルはピエールに”とある事情”の疑惑を抱きながらも呆然自失状態で退却せざるを得ないことに。ピエールは妻が”無事”だったことに安堵したからかルブランと一緒にシュヴァルの悲劇を笑うわけですが、こういうところの性根の悪さは治ってないなぁと苦笑いするしかなかった。
フランソワは自分の友達が”悲劇”に見舞われたのを目の当たりにして本気で同情してる。こういうお人好しなところが本当に可愛らしい。

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ところが笑っていたのも束の間、シュヴァルが意気消沈して家路についたのと入れ替わるように再びマルレーヌがピエールの家に泥酔状態で突撃してくる。彼女はこれまでの恨みつらみを酒の力も借りてぶちまけまくるのですが、この様子はもうエキセントリックそのものでww。

でも、マルレーヌは興奮状態が覚めてくるとピエールに対して「あなたは意地悪ね」と冷たく言い放ちます。ちょっとお付き合いするには相当の心の広さがないと無理かなと思えるようなキャラの女性だけどw、彼女には彼女なりの悲しみがあったんですよね。
その気持ちに寄り添おうとしてくれたのはフランソワだった。もうホント、どこまで優しいんだよ~~!!よもや、フランソワとマルレーヌに絆が生まれてしまう展開になるのでは!?とちょっとドキっとしちゃったよw。さらにお人好しだなと思ったのが、「ピエールは良い人なんですよ」と本気で説得してた場面。自分がバカにされていることなど微塵も思ってないが故の言葉で…なんだか切なくなっちゃう。

ところが、マルレーヌはピエールの人となりをこれまで見てきたが故に彼が「良い人」とは思えない様子。フランソワがあまりにも良い人すぎたことも居たたまれなくなったのか、”奇人たちの晩餐会”の催しのことを話してしまいます。
ピエールのこれまでの自分への言動は「ユーモア」と受け止めてきたフランソワ。しかし、ついに、この時初めて彼の中で”疑念”が生まれてしまうことになります…。

この展開になるまでは大笑いの連続だったのに、フランソワが”奇人たちの晩餐会”のことを悟ってしまった後、一気にシリアスモードへと転換する。だけど、それはスリリングなサスペンスではなくて温かい心がジンワリするようなエピソードなんですよね。もうねぇ、ほんと、ピエールが出会ったのがフランソワで本当に良かったよって思っちゃった。クライマックスのフランソワの言動や行動には思わず涙腺が緩んで涙が零れてしまったほど。あんなに大笑いさせられてたのが嘘みたい。

だけど、ラストシーンはやっぱり可笑しくて。でもそれまでとは違った温かみも感じられてホッコリする。この顛末はぜひ舞台で見届けてほしい。物語の構成が本当に素晴らしく、最後までたくさん楽しませてもらいました。

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主なキャスト感想

片岡愛之助さん(フランソワ役)

当て書きされたんじゃないかと思うほど、愛之助さんにハマっていましたね。フランソワはこだわりが強すぎる上に空気が読めない人物という設定ですが、お人好しで困っている人がいると放っておけないタイプ。変わり者なんだけど人間的には本当に穏やかで優しくて、何よりも可愛らしい。ここがめっちゃ愛之助さんのキャラと被って見えて仕方なかったです。

空気が読めず不器用でドジばかり踏んでしまいますが、それすらも本当に愛らしい。サッカーのチーム愛のことで親友と言い争いをしてしまう熱さも微笑ましかったし、もう、どこのシーンを見ても癒されどころ満載

ピエールとの噛み合わない会話や空気の読めないドジっこぷりもすごく可愛くて面白かったけど、一番印象に残ったのはクライマックスからラストシーンにかけてのテイストが変わる場面でしたね。初めて自分の立ち位置を知ったフランソワがとった行動、そして言葉。これがすごく優しさに満ちていて泣ける…。そのセリフの柔らかさと熱さが本当に素晴らしかった。あれは愛之助さんだったからこそ引き出せるものだと思います。

この作品を観て愛之助さんにハマる人もいらっしゃるのでは?。とにかく魅力満載です。ファンの方にはぜひ見ていただきたい。

戸次重幸さん(ピエール役)

久しぶりにシゲさんの舞台を見たけど(NACSの「悪童」以来かも)、やっぱり映えますよね。躍動感がすごい!!めちゃめちゃ生き生きしていらっしゃいました。

ファンの間では”ミスター残念”というネーミングをつけられているシゲさんですが、演じたピエールがまさにそれです(笑)。のっけから”ぎっくり腰”に見舞われて痛みで動けないという悲劇に見舞われ、バカにしようと呼んだフランソワの予想を超えた行動に振り回された挙句に奥さんからも愛想をつかされるっていうねww。
ぎっくり腰の芝居がとにかくリアルすぎて、あの姿勢でかなりの長時間芝居していたこともあり「本番中にギックリしてしまわないか」と本気で心配になるほどw。シゲさん、稽古に入る前に実際にやっちゃってたらしいから余計臨場感あったのかも。

ピエールは人間性を見ると本当に酷いクズ男なのですが、シゲさんが演じるとそこに可笑しみが加わって嫌味がないんですよね。フランソワのドジっぷりに振り回されてる時に苦悩する姿なんてちょっとキュンとくるほど可愛らしいww。個人的には頭を抱えて「怒りに耐えてる」仕草がめっちゃツボでした(笑)。
クライマックスで、ピエールにはそれまでの報いが全て自分に返ってくるような事態になる。でも、フランソワの優しさに触れて初めてギスギスした部分が剥がれるような瞬間があった。この時の繊細なお芝居がとても感動的でウルッときました。

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水夏希さん(クリスティーヌ役)は、出番こそ多くありませんがピエールが惚れ込んでる奧さんという説得力がめちゃめちゃあったと思います。あんなにスタイル抜群で理知的な美人さんだったら、そりゃ手放したくないよね、みたいな。この作品は個性的なキャラが多い印象が強いですが、クリスティーヌだけは”まとも”な人物といった雰囲気でした。観客と一番近い立場の人だったかも。

原田優一くん(ルブラン役)はこれまでミュージカルでしか観たことがなかったので、とても新鮮でした。思ってた以上にストレートプレイの雰囲気に馴染んでいて”俳優さん”オーラがめっちゃあった。ピエールがフランソワとトラブルになるたびにルブランが爆笑するんですけど、この時の笑い方がめっちゃ面白くて見ているこちらもつられて笑ってしまったw。「あぁ、こんな笑い方する人いるよなぁ」って感じww。

野口かおるさん(マルレーヌ役)は、間違いなくこの作品の中の強烈なスパイスになっていました。あの怪演は一度見たら忘れられないレベル(笑)。出番は多くありませんが、突き抜けるところまでいっちゃった的なエキセントリックな存在感はすごかったですね。だけど、去り際はそれまでとは違う雰囲気で、このあたりの演じ方のメリハリも面白かったです。

坂田聡さん(シュヴァル役)は、2幕から登場する税の査察官というお堅い職業のキャラをユーモアたっぷりに演じていらっしゃって親しみがわきました。愛之助さん演じるフランソワとサッカー談議する時にはちょっと”おネェ”っぽい雰囲気も出してきてめっちゃ可愛いw。そんな彼が思いもよらぬ悲劇に見舞われるシーンはもうお気の毒でしかなかったですよ~~。呆然自失となったあの表情がとても印象的でした(思わず笑っちゃうほどw)。

大森博史さん(アルシャンボー役)は1幕の最初のシーンのみの登場でしたが、冷静沈着なようで実は何を考えているのか分からないミステリーっぽさを醸し出していたキャラがとても印象的でした。優秀なお医者さんのはずなのに、ほとんど治療らしい治療しないで帰っちゃいますしねw。

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後述

いったいいつどこでセリフを覚えたのだろう!?というくらい膨大な量の会話(特にほぼ出ずっぱりの愛之助さん演じるフランソワのセリフ量がハンパない!)が展開されていくのですが、体感的にはあっという間にクライマックスがきたという感じ。 笑って笑って、クライマックスにホロッときて、最後は温かい笑いに包まれて。とにかく感情がよく動くとても面白い作品だと思います。

個人的には、愛之助さんとシゲさんの共演がめちゃめちゃ嬉しかったなあ。息が本当にピッタリで、どの台詞も魅力的だし間の取り方も最高。あの芝居を生で見れたことは本当に贅沢な出来事だった。

前知識がなくても楽しめる笑い多めの作品なので、是非多くの方に劇場へ足を運んでほしいなと思います。叶うならば同じメンバーで再演してほしい!

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