劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』京都公演 2023.01.24ソワレ/01.25マチネ

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』を観に京都まで遠征してきました。

最後に『ノートルダム~』を観てから約3年半、再び京都で大好きなこの作品を観れることを本当に嬉しく思います。12月末から4月頭までの期間限定公演だったので、最初に3回チケットを確保しました。ちょうど大阪では『オペラ座の怪人』も絶賛公演中だったため、それに併せて予定を組むといった感じです。

観劇日に当たっていた24日~25日は「10年に一度の大寒波がくる」というニュースが飛び交っていたので、新幹線に乗るまでは正直気が気ではありませんでした。まさかコロナ以外のことで観劇の心配をしなければならなくなるとは思わなかったよ(汗)。”不要不急の外出はしないで”とのお達しが叫ばれていましたが、私にとって観劇は必要不可欠なものであるので前日はもう祈るような気持ち。無事に京都に降り立った時は心底ホッとしました(汗汗)。こういうところが遠征の恐ろしいところなんですよねぇ…。

早めに到着する新幹線で京都入りできて、その頃は晴れ間も覗き寒さも言われているほどではないなと油断をしていたのですが…、観劇前の夕食を摂った後に地上に上がってみたらめっちゃ吹雪いてるではありませんか(汗)。京都タワーもかすむほどの吹雪でビックリ仰天。やはりニュースは間違っていなかった(汗)。

さらに翌日は時折雪がちらつきつつほぼ天気は回復していたのですが、気温が全く上がらず状態で道がほぼアイスバーン状態(汗)。ちょっと気を許したらすっ転びそうな状況だったので、横断歩道を渡るのもけっこう命がけ(苦笑)。JR西日本は壊滅状態だったし…大変な時期の京都に来てしまったなと改めて実感いたしました。そんな中でも無事に観劇できたのは運が良かったと思うしかありません。

物販は今回もかなり充実していた印象。

気になっていたカジモドベアちゃん、お買い上げしちゃいました!サイズもちょうどいい感じだし本当に可愛い!それから新デザインのミニタオルも。♪世界の頂上で♪のワンシーンがデザインされているのが素敵。あとはいつものようにパンフレット(←増える一方なわけだw)。

以下、大いにネタバレを含んだ感想になります。

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』これまでの感想一覧

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2023.01.24ソワレ/01.25マチネ公演 in 京都劇場(京都)

※概要とあらすじなどについては2019年11月06日観劇記事を参照。

上演時間は約2時間40分。内訳は1幕が1時間25分休憩20分2幕が55分となります。

なお、開演後約12分間は客席案内されないとのことですので(演出の都合かと)、なるべく時間に余裕を持って劇場へ向かうことをオススメします。

主なキャスト

  • カジモド:寺元健一郎(24日)、山下泰明(25日)
  • エスメラルダ:松山育恵
  • フロロー:道口瑞之
  • フィーバス: 加藤迪
  • クロパン:髙橋基史

3年前に観たときから随分キャストが入れ替わったなぁと思いました。メインキャストは全員ノートルダムでは初見メンバーで、これまでとはまた違った新鮮味があり充実した観劇となりました。

メイン5人以外のアンサンブルさんたちは一人に付き複数の役を演じています。

フロローの弟ジェアン(他)を演じた貞松響くんはたしか『オペラ座の怪人』のアンサンブル9枠さんで観てたと思うのですが、その時はあまり印象がなくて(ごめんなさい 汗)…。で、今回はちゃんと事前に顔と名前を確かめてから観に行ったのですが…、とてもハンサムさんで『美少年』と呼ばれるのも納得のキャラ。自由奔放で規則も破っちゃうんだけど、ジプシーの彼女のことは本気で好きなんだろうなっていうのが伝わってきてよかったです。他の役でも良い存在感を放っていました。

ジェアンが愛したジプシー女のフロリカ(他)を演じていた岩城あさみさんは、まだ観たことはないんだけど…たしか『オペラ座の怪人』でクリスティーヌ役をやられていたんですよね。とても美しいよく響く凛とした歌声が素晴らしかったです(特にラストシーンは印象深い)。フロリカのキャラはかなり妖艶で、フロローに”女”の顔で迫るシーンとか見ていてドキドキしちゃったw。あれは彼のトラウマになっても仕方ないなと納得w。

フィーバスの副官で友人のフレデリック(他)を演じてた鈴本務くんは、『ロボットインザガーデン』の時とは違う精悍だけど思いやりのある雰囲気がとても素敵でした。過去の感想を見ているとこれまでけっこう鈴本フレデリックを見てたんですが、ちゃんと認識してみたのは今回が初めて(汗)。
特に印象的だったのはフィーバスが奇跡御殿で捕えられてしまう場面。フレデリックはフロローの命令でやむなく彼を捕らえるべく動くわけですが、この時のフィーバスに向けた鈴本フレデリックの戸惑いと動揺を含んだ表情がめちゃめちゃ切なかったです。心ならずも立場が分かれてしまったけれど、最後までフィーバスのことを慕っている気持ちが出ていたのがとても良かった。

2幕の♪エジプトへの逃避♪でソロを歌う聖アフロディージアス(他)を演じていた川原信弘さんは、これまで『美女と野獣』のダルク(←2012年狂ったように推し通いしてる時何度もお会いしましたw)や『オペラ座の怪人』のブケーといったおどろおどろしい役どころwwで観ることが多かったので、今回のような聖人役はとても新鮮でした(そういえば壁抜け男の時も普通の公務員だったけどw)。カジモドを導いていくような深く優しい歌声が印象深かったです。首の落ち方も良かった(←文字にするとホラーですが実際の舞台で見るとけっこう面白いですw)。

それから、女性アンサンブルの中に『アナと雪の女王』でアナを元気いっぱいに演じていた町島智子さんが入っていました。ガーゴイルや町の女性など様々な役を演じていますが、ハリのあるきれいで元気な歌声が劇場によく響いていてどこにいるのかもすぐに認識できました。

あと、クワイヤのなかにかつて『レ・ミゼラブル』などで活躍していた持木悠くんが入っていて。昨年ノートルダムデビューしたというSNS書き込みを見てから注目していたのですが、ついに会うことができました。

ただ、クワイヤ席はけっこう暗いので席が少し離れていたこともあり発見に至らず(汗)。でも、あの場所から持木くんの美声が…と思うとなんだかとても嬉しかったです。

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全体感想

京都劇場はたぶん3年前のノートルダム以来。1階席の少し後ろ寄り中央あたりまではオペラグラスがなくても役者さんの表情が確認できるほど舞台までの距離が近いなと思いました。
また、私は座高が低い方なので段差が薄い前方席よりかは階段の段差ができる中央やや後ろあたりがちょうど見やすい感じだったかも。25日マチネは上手の端っこに近い席でしたが、見切れるところもほとんどなくストレスフリーで堪能することができて良かったです(ちなみに24日ソワレは中央やや前寄りの下手側でちょっと段差が薄かったかも 汗)。

久しぶりに『ノートルダム~』を観たけど…やっぱりこれは衝撃作だなと思いました。なんというか、色々と心に刺さるエピソードが多くて”人間の存在”について自分と重ねて考えるところが多い。もしも私がその立場だったら…とかね。考えれば考えるほど答えを出すのは難しいと感じるし、崇高な理想とシビアな現実を同時に見せられたような気持になって終わった後はすごく消耗するんですけど、その疲れはなぜかとても心地よくもあって。またあの世界観へ戻りたいという気持ちが芽生えるんです。
舞台上部で物語を見つめながら荘厳な歌声を奏でるクワイヤの皆さんの存在もとても大きい。物語そのものに厚みを加えているし、なにより見ているこちらも実際にノートルダム寺院の中に入り込んだような錯覚を起こさせてくれます。心が清められていくような気持ちすら湧き起こってくる。

『ノートルダム~』ではフロローのような聖職者たちが世の中の正義として認められるなか、産まれた時から”外見が醜い”とされているカジモドや根無し草のジプシーとされるエスメラルダやクロパンといった放浪者たちは異端視され虐げられる存在です。生き方や外見が違うというだけで排除してしまうということは現代でも多々起こっていることでもあるので、この作品を観るたびにすごく考えさせられます。

『オペラ座の怪人』のファントムも”外見が醜い”ということで世間の人から異端視され忌み嫌われてきたというベースがある。カジモドも”醜い外見”といった共通点がありますが、ファントムとは真逆の素直で純粋なキャラクターとして描かれている。それはおそらく、フロローの徹底した”管理”の元で暮らすことができていたからじゃないかなと思います。
傍から見ればカジモドにとって不幸な出来事と捉えられるかもしれないけど、憎しみの感情に溢れた外の世界に晒され闇落ちしてしまったファントムのことを考えれば、カジモドは幸せだったのではないかなということを感じずにはいられませんでした。彼に対するフロローの対応はまるっきり間違いだったといえないなと思うのです。
これは私がここ最近『オペラ座~』通いしまくっているが故の思考なのかもしれませんけどねw。

以下、印象に残ったシーンやナンバーについて少し。

♪OLIM♪

深くフードを被った人々が美しい賛美歌のような歌を奏でながら舞台中央から現れる冒頭のシーンからもう鳥肌!!その美しい音色にのっけから泣きそうになります。そして全員揃ったところで一気に音量を上げ見る者を惹きつけていく「Ah」の声がまた素晴らしい!!ノートルダム寺院の中で一緒に祈りの歌を捧げているような気持になります。

この作品の面白いところは、フードを被った人々が物語を語っていくなかで”演じる役”へと変化していくことかなと思います。つまり、この『ノートルダムの鐘』は劇中劇でもあるんですよね。だから客席から見える位置でアンサンブルさんたちが次々と着替え様々なキャラへと変身していく姿になっていくんです。”語り”のなかで展開されていく物語だからこそ、見る者の心に余計強く響くのかもしれないなぁと改めて感じました。

フロローとジェアンの兄弟が登場したところからスタートする物語は、やがて大聖堂の鐘撞堂のカジモド登場へと繋がっていきます。序章から第1章へのドラマの運び方がこれまた実に見事。個人的に一番グッとくるのが、一番最後に登場した”青年”がカジモドへと変身していく場面。
カジモドは背中に大きなコブがあり体が曲がっているという設定なのですが、その役に変身していく過程の中で青年はフロローがジェアンから託された”布にくるまれた赤子だった頃のカジモド”を括りつけるんですよね。それが背中の”コブ”となるわけですが、私はあの瞬間に”青年”の中に”カジモド”が宿ったんだろうなと思ってしまう。ここの演出が本当に素晴らしくて、荘厳な歌声も相まってウルウルッときちゃいますね。

♪陽ざしの中へ♪

フロローはカジモドを人目に触れさせないように鐘撞堂に閉じ込めて養育していますが、彼からすればそれは”善行”であり秩序を以て育てているという絶対的な自負を持っている。食べ物を与える時も礼儀作法を厳しく躾けていますが、基本的には虐待的な印象は薄い(カジモドを管理下に置いているという雰囲気もあるのでそこは悪の匂いを感じるんですけど 苦笑)。
1月6日の”道化の祭り”への憧れを抱くカジモドを諫めるシーンもありますが、フロローはある意味正しいことを諭しているように聞こえるんですよね。カジモドが外へ出たら町の人たちから忌み嫌われる現実が見えているわけで…、そうなることで自らの威信にも傷がつくという思惑もあっただろうけど、カジの為を思えば総体的には外へ出ないよう言いつけたことは悪だったとも思えない。

これ、アニメ映画だけを見るとフロローがすごい陰険で意地悪をしているように感じがちですが(汗)、舞台版では冒頭で若き日の善良だった彼の姿が描かれているので感情移入しやすいのかもしれません。

カジモドはと言えば、フロローに引き取られた時からずっと外に出られない生活を送りいつも上から羨望の眼差しで外の景色を眺めていたので、「1日だけでも外へ出てみたい」という憧れを抱くのはごく自然なことだったと思います。フロローから「来年から道化の祭りは禁止にする」という話を聞いた時のカジモドの哀しそうな顔は見ているこちらも胸が痛んでしまうほど切ない。

そんな彼の背中を押してくれるのが、鐘撞堂にあるガーゴイルたちの存在。彼らはカジモドがずっと一人寂しく暮らしてきた姿を見てきたので「最後の道化の祭りなんだから、勇気を出して思い切って外へ飛び出してみようよ」と応援してくれる。
その声に心が踊りどんどん外の世界への憧れと希望を膨らませたカジモドが胸弾ませ歌う♪陽ざしの中へ♪は涙無くしては聴けません!あんな無邪気な笑顔をみせられたら、客席側のこちらも思わず「飛びだしてみようよ!」と背中を押したい気持ちに駆られてしまいます。『ノートルダム~』の中でも特に好きな場面です。

♪トプシー・ターヴィー♪

正体がばれないようにフードを目深にかぶったカジモドが下界に降りてきた世界は、喧騒に満ちていたものの彼にとってはどれもキラキラと輝くような光景だったんだろうなと思いました。物陰に隠れながらもドキドキワクワクしながら祭りの準備が進んでいく姿に目を奪われている姿はなんだかとても愛しいです。

ここでジプシーの王様と呼ばれるアクの強いwクロパンや、辛い戦場から戻ったばかりで羽を伸ばすためやってきた大聖堂の警備隊長のフィーバス、そして美しい踊り子のジプシーであるエスメラルダが登場。
特に用意された舞台上でエスメラルダが華麗にキレキレのダンスを踊りまくる♪タンバリンのリズム♪は最高にワクワクします!!あれは誰でも目を奪われちゃうよね。そしてここで強烈に彼女に心を惹かれてしまったカジモド、フィーバス、フロローの3人が時が止まった中で「あれは誰だ」と一斉に歌うシーンが出てくる。この場面もとても印象深いです。カジモドとフィーバスは彼女の中に「天使」を見ますが、フロローだけは「悪魔」として捉えているんですよね。彼の中ではジプシーの存在は”排除すべき存在”でしかないので、その彼女に心を揺さぶられたことによって大きく動揺し”悪”であるという認識に至るのがなんだか切ないなぁと。

道化の祭りでは”醜い顔選手権”なるものが開催されていて、その舞台裏に紛れ込んでしまったカジモドを見たエスメラルダは一瞬驚くものの「あなたも出場して王様になりたいと思わない?」と促してしまう。最初は拒絶したものの、「王様」というワードを聞いてやる気になっちゃうカジモドは幼くてなんだかハラハラしてしまいました。彼は外の世界がどれだけ世知辛いものなのか全く想像すらしてませんでしたからね…。
カジモドの顔が晒された瞬間に町の人たちは驚愕のあまり言葉を失いますが、クロパンの機転によって明るい雰囲気になりかかる。このときは”クロパン、グッジョブ!!”って思うんだけど、脇の方でその様子をワナワナしながら見つめていたフロローの目の冷たさが怖かった…。♪トプシー・ターヴィー♪のナンバーは明るくノリノリなナンバーなんですけどね。

でも、祭りがクライマックスになった時に町の人たちはカジモドの姿を嫌悪し激しい虐待行動へと発展してしまう。この場面は観ていて本当に辛いです…。自分たちと違う存在を排除するといった風潮は今も昔も変わらず残っていますからなおさらね…。とにかくこの場面の中の町の人たちが向けるカジモドへの悪意が凄まじくてゾクっとしました。
彼らは普段は”ふつう”に暮らしている一般庶民だと思うんですよね。それが、”共通の排除すべき存在”と認識したものを目にしたとたんに凶暴化するわけで…。人間の恐ろしさを目の当たりにしたような気持になります。

初めて外の世界の残酷さを肌で感じたカジモドは大きなショックを受けてそこから逃げるように大聖堂へ帰っていく。
この時フィーバスはフロローから送るように言われついて行こうとするのですが、激しく動揺しているカジモドはそれを振り払うように去る。たぶん、フィーバスも自分を傷つけるであろう人間として彼の中にインプットされたからじゃないかなと思ってしまいます。フィーバスはそんな感情はないので(むしろ人々の虐待行為を止めようとしてくれてたし)ちょっと気の毒だったかもしれない(汗)。

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♪神よ 弱き者を救いたまえ♪

自分のせいでカジモドを大きく傷つけてしまったという罪悪感に襲われたエスメラルダは、彼の後を追いノートルダム大聖堂の中へ足を踏み入れます。そこで彼女はこれまでに見たこともないような美しく荘厳な光景を目にして息を飲んでしまう。
そんな彼女の元にフロローが近づいてきて「ジプシーは大聖堂に入ることを許されていないはずだ」と咎めるのですが、道化の祭りの時に拾ったエスメラルダの赤いスカーフに直前まで気を取られていたことを必死に隠そうとしてたんですよね(苦笑)。さらにそのあとエスメラルダと会話を重ねていくうちに彼女の聡明さを悟りますます心惹かれてしまう。このあたり、すごい人間的だなと思う。

神について語り合っている途中でミサの時間が訪れてフロローは会話を切り上げざるを得なくなる。ここが一つの彼にとっての岐路だったかなと思わなくもなかったかも。
もしもあの時、ミサの時間が迫っていなくて落ち着いた雰囲気の中会話を続けていたら、フロローとエスメラルダの関係は違っていたものになっていたかもしれないなぁ…なんて。フロローとしては、彼女への興味が募っていく最中にブチッとその時間が途切れてしまいましたから(汗)、それが彼の心に刺激を与えてしまったんじゃないかとも…。

複雑な心境のままフロローが去ってしまった後、エスメラルダは「私は大丈夫だけど、弱い立場の仲間たちに救いを与えてほしい」と祈りを捧げます。特に「人は誰でも神の子」というフレーズが心にジーンと響きます。

祈りを終えたエスメラルダの元へフィーバスがやってくると、彼女は最初彼に対して敵対心を露にする。でもフィーバスとしてはエスメラルダに一目惚れしていたのでナイフ向けられてもド突かれてもメゲずに彼女に近づこうとしますw。このあたりはさすが”色男”と呼ばれるだけあるなと(笑)。
その努力が実りちょっと二人の関係が緩和したところで、こっそりその様子を見ていたカジモドが物音を立ててしまいエスメラルダがそちらへ気を取られてしまった。フィーバスとしてはお気の毒としか言いようがないんだけどww、カジモドの元へ行こうとすることを止めようとする彼に対してエスメラルダが「誰かが心配してあげなきゃ」と言葉を返すシーンは印象深いです。このセリフは1幕後半に違ったシチュエーションでもう一度出てくるんですよね。

♪世界の頂上で♪

突然自分のテリトリーの中へ入ってきたエスメラルダに激しい動揺を隠せないカジモド。エスメラルダは必死にコミュニケーションを取ろうとしますが、カジモドの耳が不自由であることを悟ると手話を交えて丁寧に接するように。これまで見てきてあまり気にしてなかったけど、この場面はけっこう手話を交えての会話がけっこう多いんだなと思いました。それに気づくと、二人の間に優しい時間が流れているように見えてなんだかホッコリするし温かい気持ちになる。

少しずつエスメラルダと交流できるようになったカジモドは次第に喜びの感情が体の中を駆け巡ったように表情豊かになっていきます。そして得意げに鐘撞堂のことを語りながらガーゴイルたちの手を借りて危険な柵の上を歩いて見せたりする。
ここの演出がこれまたとても印象深い。ガーゴイルたちが作り出す柵の向こうにカジモドが見つめてきた景色が見えるような感覚が生まれるんですよね。そこには風も感じる。エスメラルダが「私高いところダメなの」と震えあがる姿がなんだかとてもリアルに見えました。

高所恐怖症のエスメラルダでしたが、無邪気でピュアなカジモドの姿に吸い寄せられるように恐る恐る同じ場所に座る場面はとても感動的。♪世界の頂上で♪のナンバーを聴くと本当に心が震えて涙が出るんですよね。特に、カジモドがガーゴイルたちの声に背中を押され勇気を出してエスメラルダの名前を呼び「二人でいる」と歌うシーンは号泣…!それに対してエスメラルダも手話を交えながら同じフレーズを歌うんですよ…。なんって優しい世界!!ここも本当に大好きなシーンです。

テンションが爆上がりしたカジモドが鐘をガンガン鳴らしてエスメラルダを驚かせていると、その音に驚いたフロローが「こんな時間に何をやっているんだ!!」と怒鳴り込んでくる。そこで一気に空気が変わるのですが、エスメラルダの姿が目に入ったとたんにものすごい動揺して縮こまってしまうフロローはちょっと可愛らしいw。彼女の前で必死に冷静な自分を演出するようカジモドを去らせるところとか、なんかイジらしくすら感じます。

ところが、二人きりになった時にフロローはエスメラルダに”ある提案"を告げてしまうわけで…。それは彼的には親切心から出たものだという意識しかないのですが、エスメラルダは言葉の裏に潜んでいる”真の思惑”を敏感に感じ取り拒絶してしまった。ここのやり取りはものすごくスリリングで観ていて本当に胸が痛くなってしまいます…。あの瞬間にフロローの心がどんどん暗黒へと突き進んでいってしまったような気がする。彼自身が己の”真の気持ち”に気づいていないというのが本当にもう…。

♪酒場の歌♪

カジモドには恐ろしい形相で「エスメラルダのことは決して考えてはいけない」と制したにもかかわらず、フロローは彼女の姿を求めて町を彷徨い歩くことになってしまう。自分の行動が神の教えに背くことだという自覚は持っているのだろうけど、エスメラルダへの激しい欲望が理性を上回り制御できなくなったんだろうなと…。
さらに、酒場にやって来たフィーバスとエスメラルダが情熱的なキスを交わす現場を目の当たりにしてしまうわけで…。この時のフロローの「下品で恥知らずなことなのに、目を逸らすことができない」と歌うシーンがなんだかすごく刺さる。これまで神の元で学び自分自身を厳しく律しながら生きてきたのに、ある一人の女性に心ならずも猛烈に惹きつけられてしまったことで我を失ってしまうとは…。これまで真面目に厳格に生きてきたが故に、なおさら無意識に湧き上がる欲望を止める術を見出すことができないフロローの姿がなんだかとても哀しく思えて仕方なかったな。

奇しくも酒場の名前の由来は「イヴのリンゴ」。つまり”禁断の果実”。アダムとイヴの物語の中で、イヴは蛇(悪魔)の誘惑に負けて食べてはいけないとされていた”リンゴ”を食べてしまい神の怒りをかってしまうという節があります。まさにこれがフロローとリンクしているようで、居たたまれない気持ちにさせられる。

♪天国の光♪♪地獄の炎♪

カジモドはエスメラルダと交流した時の喜びを忘れることができず、鐘撞堂の上から町を眺めながら彼女へのほのかな想いを募らせている。道化の祭りの時にその場にいたほとんどの人間が自分に激しい敵意をぶつけてきた中で、エスメラルダだけは彼を庇い心を寄せてくれた。
カジモドのテリトリーの中に彼女がやって来て一緒に柵の上に座りながら♪世界の頂上で♪を歌っている時、二人の間には確かに共鳴し合うものがあったように見えた。それだけに、彼がエスメラルダに対して絶大な信頼を寄せ「彼女は自分を受け入れてくれるのではないか」という希望を抱くのはとても自然なことだと思います。

下界に見える恋人たちの姿に憧れながら「僕は醜いからそういうことは諦めていたけど、天使が僕に触れてくれたんだ」と歌うシーンは涙なしには聴けません。あの瞬間がカジモドにとって一番幸せな時だったんじゃないかな。そこに見えていたのは希望しかなかったと思う。その後に起こる悲劇を知りながらこの場面を見るとなおさら泣けて仕方ないです…。

一方のフロローは祈りの時間の中で己の中に芽生えたどうしようもない感情と対峙している。最初は神に向かって「私は穢れを知らない男」と語り自らの正当性を歌っているのですが、エスメラルダのことが浮かぶと次第に激しい感情に支配されていき葛藤を繰り返すようになります。
このフロローの独白は傍から聞くと非常に身勝手で憎悪すべき内容なのですが、それと同時にそこまで追い込まれてしまった彼のことを思うと哀れで仕方ない気持ちにさせられてしまうんですよね…。真面目過ぎる性格であまりにも”自分自身こそが正しい存在なのだ”という意識が強すぎたフロローの悲劇。彼にとって、エスメラルダは”禁断の果実”なのだということを思い知らされます。

彼女への抑えきれない感情はやがてフロローの中で破裂しそうなほど膨れ上がり、神に向かって「あのエスメラルダを地獄へ落とすか、私に与えたまえ」と願うようになってしまった。おそらくは「私に与えたまえ」の感情の方が強かったような気がする…。この考えに至ってしまったということは、フロロー自身が悪の思惑に呑み込まれてしまったということだよなぁ。”人間の業”を突きつけられてるようで、ほんと見ていて胸が苦しくなる場面です。

♪エスメラルダ♪

何が何でもエスメラルダを自分のものにしたいという欲望に駆られたフロローはついに王であるルイ11世に直訴し彼女を捕らえる許可をもらう強硬手段に出る(汗)。この暴走がもう本当に狂気でしかなくて恐ろしい…。

ついにエスメラルダの居場所を突き止めるのですが、フィーバスはフロローに従うことに疑問を感じ寝返ってしまう。それに怒り狂ったフロローは彼を罷免するのですが、動じずに「光栄です」と胸を張るフィーバスはとても凛々しくカッコイイです。
ところが、エスメラルダを救出しようとしたフィーバスを見たフロローは激しい嫉妬心に襲われたからか、エスメラルダが落としたナイフを拾ってフィーバスに突き刺してしまう(汗)。その狂気がもう鬼気迫りすぎてて恐ろしい…。人間はどこまで暴走してしまう生き物なのだろうかと背筋が寒くなります。

傷ついたフィーバスを連れてなんとか隠れ家を見つけたエスメラルダ。なぜ自分を庇ったのかと問い詰める彼女にフィーバスは「誰かが心配してあげなければ」と答える。これは前半でエスメラルダがカジモドのことをフィーバスに語った言葉と対になってるのでとても印象深いです。

フロローの号令によって町中にエスメラルダ探索の手が回る。「探し出せ、エスメラルダ!」と騒ぎになるわけですが、この1幕クライマックスのナンバーが本当にドラマチックで鳥肌が立ちまくります!特にラストシーンのカジモドの姿は圧巻!!

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♪エジプトへの逃避♪

エスメラルダを心配しているカジモドの元へ、彼女が傷ついたフィーバスを匿ってほしいとやってくる。最初はそのことに難色を示したカジモドでしたが、エスメラルダの懇願に気持ちが揺らいで隠すことに協力してしまう。そんな彼に感謝したエスメラルダは自分の居場所を示すペンダントと、最後にキスを贈るのです。
これはカジモド、気持ちが舞い上がってしまうのも仕方がない。エスメラルダとしては「友情の証」でそういった行動をしたわけですが、カジとしては思いを募らせている相手にそんなことされたら舞い上がってしまうよねぇ。これでますます彼の恋心が盛り上がることになるので…エスメラルダも罪なことをしたなぁと(苦笑)。

エスメラルダから託されたペンダントの意味を探るカジモドに、聖アフロディージアスが歌いかける場面。彼が語る「エジプトへの逃避」とは、イエスが生まれた後にその命をヘロデ王に狙われたことでマリアとヨセフは幼子を抱えながらユダヤからエジプトへと逃げたエピソードのことを差します。この3人をエジプトで匿った人物が聖アフロディージアス。
この行動と、カジモドがエスメラルダとフィーバスを守ることとリンクさせているというシーン。つまりアフロディージアスはフロローの忠告を無視してでも、自分が正しいと思うこと…エスメラルダたちを助けることをやり遂げなさいと諭していたんですよね。首がガクッと落ちてしまうところはなんだか見ていてゾクっともするけれど(汗)、飄々とした表情で歌う姿はどこか面白くもあります。

暫くすると、フロローがカジモドの元へやってくる。気が付いたフィーバスを慌てて隠すカジモドのやり方はけっこう荒々しくて面白いんだけど、今回見たらあまりそこは激しくいってないかなといった印象でちょっと寂しかったかもw。
フロローはどこかソワソワしているカジモドに違和感を抱きつつも、そこは深く追求せずに「エスメラルダは我々を誘惑する悪で私たちは悪くない」と語ります。まるで自分自身に言い聞かせているというか…本気でエスメラルダは”人の気を惑わす悪魔”と信じてるっぽいところがフロローの恐ろしい一面であり、哀れな一面でもあるなと思いました。

さらにカジモドに対しては「時々お前を息子のように思うよ」と優しく抱きしめる。その気持ちもたぶん本音だったと思うんですよね。それが純粋なものかどうかは置いておいても、カジモドだけがフロローの言葉に忠実だった存在なわけで…彼にとってはそこに愛しさを感じるのもあり得る話だなと感じたかな。

♪奇跡もとめて♪

カジモドはエスメラルダからもらったペンダントを基に彼女の居場所を探し出し助けに行こうとしますが、それに待ったをかけるフィーバス。カジモドが手にするペンダントを見た時にけっこう嫉妬したっぽいよなw。それを取り上げたフィーバスにカジも嫉妬しちゃうわけで、この険悪なムードのまま探しに出る展開はなんだか危なっかしいと思いながら見てしまいますw。

奇跡御殿に辿り着いた二人はクロパンによって捕らえられ有無を言わさず抹殺されてしまいそうになる。これけっこう酷い仕打ちだとも思うんだけど、ジプシーの長であるクロパンとしては生きるために部外者を許すわけにはいかない気持ちになるのも道理だなと。仲間たちを守る義務もあっただろうしね。
寸でのところでエスメラルダが助けに入り、解放されたカジモドとフィーバスは隠れ家がフロローに襲撃される危険があることを告げる。その話を聞いたクロパンは慌てて退散する準備にかかるわけですが、この時に「エスメラルダも連れていく」と言ってくれる。クロパンは彼女に対してこれまでけっこう辛辣な態度を取ってきたけど、ちゃんとジプシー仲間として認めてくれてたんだと感じられるワンシーンでもあって胸が熱くなりました。

フィーバスはエスメラルダと別れ別れになるくらいなら、自分も一緒にジプシーとなってついていくという決意を語ります。カジモドはエスメラルダを守るために自分の元で匿い留まることを提案したけど、フィーバスはエスメラルダと一緒についていくという形で彼女を守ることを決意していた。
カジモドは世間の厳しさを思い知ってしまったこともあってか、醜い自分を恥じて今の場所から動くという選択をする勇気がどうしても出ない…。それに対してたとえ厳しい現実が待っているかもしれないとしても自ら動く意志を選ぶことができるフィーバス。それを思い知った時のカジモドの気持ちを思うともう、居たたまれなくなる(涙)。

目に涙をいっぱいためながら「僕の奇跡はどこに…」と歌い旅に出ようとするエスメラルダとフィーバスの姿を見つめるしかないカジモドに号泣です…。エスメラルダは一緒についていく決断をしてくれたフィーバスの気持ちを受け入れましたからね…。それを目の当たりにしてカジのピュアな恋心が儚く散った姿を見るのは本当に辛いです(涙)。

♪いつか♪

奇跡御殿がフロローの策略によって発見され捉えられてしまうエスメラルダとフィーバス。それに利用されたカジモドは、あの時さらに打ちひしがれただろうなと思うと本当に心が痛みます…。

ここからフロローの狂気がさらに剥き出しになっていく。処刑までの間牢に入れられたエスメラルダに「私のモノになれば助けてやることができる」と迫る場面。彼女を手に入れたいというどうしようもない欲望は歪みに歪み、ついには「愛しているんだ!!」と叫びながら襲い掛かってしまうまでに暴走。
『オペラ座~』のファントムも相当歪んだ愛情をクリスティーヌにぶつけまくるけど、フロローは最終的に手を出す勢いで迫りますから…考えようによってはこちらの方がよほど恐ろしい。その餌食になりそうになったエスメラルダの断末魔のような叫び声があまりにも痛々しくて背筋が凍るような想いになります(震)。

エスメラルダの渾身の拒絶を食らったフロローはいったんは行動を収め、フィーバスを救いたければ自分の言う通りにするよう脅しをかけたうえで彼を一緒の部屋に入れる。フィーバスはエスメラルダと二人きりになると「フロローの言うことを聞いて命だけは助かる行動をするんだ」と説得。でもそれは彼女にとって死ぬよりも辛いことで受け入れることができない。
やがて来る恐ろしい未来に怯えながらも「いつか明るい未来が来ると祈ろう」と祈る二人の姿は涙なしには見れません…。恐怖心に襲われ崩れ落ちそうなエスメラルダをしっかり抱きしめ気丈に振舞っているフィーバスはとても逞しいけど、その心境を思うと本当にやりきれない(涙)。

ここの二人を見ると、ふとミュージカル『アイーダ』が過るんですよね。アイーダとラダメスの極限状態の愛の確認シーンと重なって見えてなおさら苦しくなる。

♪石になろう♪

カジモドは外に出れないように拘束されてしまいますが、エスメラルダに失恋した心の痛みと彼女を救いに行くことができないジレンマとに苦しみ自暴自棄になってしまう。憧れ一度は大きな喜びを感じた外の世界でしたが、結局は彼にとってあまりにも残酷な現実を突きつけらることになりましたから…その絶望感を思うと本当にやりきれない。

エスメラルダを救うよう励まし背中を押そうとするガーゴイルに対して「君たちの言葉に乗せられて一度は夢を抱いたけど結局は地獄を見ただけだった。何も感じない石になれたらどんなに良いだろうか」と激しい言葉で彼らを罵倒する場面は特に辛い。その気持ちは痛いほど理解できてしまう…(涙)。
それに対してガーゴイルたちが「いいよ、カジモド、どうせ私たちは石だものね」と哀し気に歌う場面も辛くて涙が止まりません…。「君は強いと信じていたのに」という彼らの想いは頑なに心を閉じようとするカジモドの耳には届かない。あんなに硬い信頼関係で結ばれていたのに、こうも脆く崩れてしまう様子を見るのはあまりにも切なすぎます(涙)。

翌朝ついにエスメラルダは処刑の時を迎える。フロローは彼女に最後のチャンスを与えようとしましたが、それに対して侮辱的な形の答えを受け逆上。その時の彼の表情はまさに聖職者の服を纏った悪魔のようで恐ろしい。
一方のカジモドは心を閉ざし”石”になろうと感情を押し殺していましたが、エスメラルダの危機を目の当たりにしたときにその決意は砕け散り一心不乱に彼女の元へと駆けつけていきます。彼にとってエスメラルダは恋心云々よりももっと大切で失ってはいけない存在になっていたのだと感じ胸熱くなる場面です。

♪フィナーレ♪

エスメラルダの一件はアニメ映画とは全く違う結末を迎えることになります。以前の感想にも書きましたが、アニメの展開がくると予想しながら見ると受ける衝撃はかなり大きいかもしれません。

今回はその顛末について書くのはちょっと割愛しますが(次回観劇の時には書くかも)、色々と感じることが本当に多い。特にカジモドの「僕が愛した人たちは…云々」のくだりはもう辛すぎて辛すぎて涙が止まりませんでした。あのシーンは何度見ても泣くよなぁ…。

ラストシーンは序章の場面に戻るんですよね。そのうえで一番最初に客席に向かって問いかけた言葉がもう一度出てくる。すべてを見た後にこれを再度聞くと、ものすごく色んなことを考えさせられます。改めてすごい衝撃作品だなと痛感させられました。これだから『ノートルダム~』観劇はやめられない。

主なキャスト感想と後述は次のページにて。

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