2年ぶりに再演された『モーツァルト!』を観に行ってきました。個人的に好きな作品なので本当は2回くらい行きたかったのですが、予定が立て込んでしまったので今回限りということに。2年前の最後に行ったときはちょうど通算200回記念公演だったのですが、あの時は別のことで大きく凹んでいたためにほとんど記憶に残ってない(苦笑)。そのときのブログ記事を読んで「あー、そうだったよなぁ」と感慨に耽ってしまった・・・。
1回きりの観劇ということなのでヴォルフガングのキャストは中川君にこだわりました。井上君もダメではないんですが、一度声がひっくり返ったり苦しそうだったりした時があって手に汗握ったことがあったので(汗)、選ぶとするとやっぱり歌の安定感が抜群の中川君になっちゃうんですよね。そんな中川ヴォルフですが、以前と比べてずいぶんと変化があってとても面白かったしちょっとビックリしてしまいました。
主な出演者
ヴォルフガング・モーツァルト:中川晃教、コンスタンツェ:hiro、ナンネール:高橋由美子、ヴァルトシュテッテン男爵夫人:涼風真世、コロレド大司教:山口祐一郎、レオポルト:市村正親、セシリア・ウェーバー:阿知波悟美、アルコ伯爵 :武岡淳一、エマヌエル・シカネーダー:吉野圭吾 ほか
以下、ネタバレを含んだキャスト別の感想になります。
まず舞台全体の感想ですが、実はなんとなくちょっと失速気味・・・というかお疲れモードかな?っていう空気を感じてしまいました。以前はもうすこし舞台全体からビリビリとパワーが送り出されているような雰囲気があったんですが、今回はなんとなく落ち着いてしまった舞台だったような…。それだけがちょっと残念でした。
が、ひとつひとつのエピソードは深みを増していたように思います。特に『家族』の物語として見るとものすごく切ないし泣けてきます。ヴォルフとレオポルトは愛しながらも反発してしまう親子。自由に羽を伸ばしたい息子とその暴走を止めたい父親・・・二人は最後まで理解しあうことができないわけで・・・その二人の葛藤が今回特に色濃く表現されていて印象に残りました。
ナンバーも相変わらず素晴らしい!バラード系の音楽はどちらかというと「エリザ」のほうが好きなのですが、そのほかのアップテンポな曲やクライマックスのドラマチックなナンバー(『僕こそ音楽』と『影を逃れて』は特に名曲中の名曲だと思う!)は「M!」のほうが好きなんですよ。この音楽が聴けるから『モーツァルト!』が再演されれば必ず観に行くっていうのはあるかもしれません。
キャストについて。
中川晃教くん
最初にも少し書きましたけどちょっとビックリしました。今まではどちらかというと荒削りながらもしっかりと歌っているヴォルフって印象だったのですが、今回はなんだか「歌」ではなく「演技」に比重が置かれているような感じだったんです。『僕こそ音楽』のナンバーの歌い方もずいぶんと変わっていました。それから“ヤンチャ”度が良い意味でますますパワーアップしてます(笑)。ちりとて風に言うならば・・・「底抜けに」弾けてます、前半の中川ヴォルフ(笑)。すごいキャラが立ってて分かりやすいんですよね。
そのすごい弾けっぷりがあるからこそ、後半部分に入ってくるヴォルフの苦悩がものすごく浮き立ってきていて以前よりも切なくなりました。触ればすぐ壊れてしまうような繊細さ、危うさ、脆さ・・・それらが中川くんの演技からイヤというほど伝わってくるんです。とても感動的でした。ここに至るまでに色々と作品をこなして進化していたアッキー、その成長が見れて嬉しかったです。
hiroちゃん
今回もまた新しいコンスタンツェ誕生ですね。演じているのは元スピードで活躍していたhiroちゃん。正直舞台経験のない彼女がコンスを演じ切れるのか不安があったのですが・・・うーーん、やっぱり微妙だった。
特に1幕がダメでした。姿いでたちはすごく可愛くていいんだけど、セリフに抑揚がないしナンバーもなんとか譜面通りにこなしているっていう印象で見ていて痛々しくさえ感じてしまったんです(苦笑)。まぁ、前回の木村佳乃さんもかなり微妙だったんですが・・・前半部分のhiroさんは私的にはそれに匹敵するくらいだったかも(苦笑)。
これは2幕のビックナンバー「ダンスはやめられない」がどうなることかと心配していたのですが・・・それに関してはどういうわけか大丈夫だった(笑)。まだ動きにたどたどしさはあるものの1幕よりも歌声がだいぶ安定していてあまり心配せずに聞くことができてホッとしてしまいました。これが歌えたからキャスティングされたんだろうか(毒)。でも、やっぱり演技はまだまだ平坦だったので頑張ってほしいです。今までのコンスを見てきて個人的に一番しっくりきたのはやっぱり松たか子だったかなぁ。
高橋由美子さん
舞台デビューの時から見ていますが、本当に舞台女優さんになられたよなぁ・・・。ナンネールの優しさと孤独の表現も上手いし、何より歌声が安定しているのがいいです。ヴォルフとじゃれあってるときの姉さんがすごく可愛い!
市村正親さん
厳格な父親を熱演!やっぱりこの方上手いと思います。ずーっと重い演技しているのですがヴォルフの額をデコピンしたあと「イテテテ」と手をぶらぶらさせるアドリブしたり(笑)、借金の額を見て「うわぁ・・・」と呟いたり、ところどころで観客にホッと息を抜かせるというのも市村さんらしい。一番感動したのはやっぱりヴォルフと対峙するシーンかなぁ。ウィーンへ飛び出そうとする息子を何としても止めようとする苦悩や2幕の最後の対峙で浮かれる息子に厳しい言葉を浴びせてしまうときの苦悩の表現は本当に見事。ものすごく切なかったです。
涼風真世さん
伯爵夫人役では初めて見たのですが、なんとも落ち着いて妙に貫禄のある雰囲気でした。華やかさというよりも「しっとり」した感じ。歌声は安定していてとてもきれいでした。ただ、あまり印象に残るといった感じではなかったかな?嫌いではなかったんですけどね。
山口祐一郎さん
久しぶりに拝見しましたが、コロラド役はやっぱりこの方しかいない!と思うほどハマリ役だと思います。祐一郎さんの演技って個人的にはあまり好みではないのですが、コロラドだけはすごい合ってると思うんですよ(笑)。
見所はやっぱり「用足し」シーン(笑)。初演から比べるとずいぶん動きがオーバーワークとなっておりますww。今回見たのが一番派手でした(笑)。もう馬車の中でとてもじゃないけど我慢できないっていうのがすごい伝わってくる!で、ものすごい髪振り乱して馬車から降りた時に呟いた一言が「さっき行ったばかりなのに・・・」でした(笑)。年を重ねるごとに御手洗いが近くなっている模様。もう思わず吹き出しちゃいましたよ!祐一郎さんのこういうアドリブ、私は大好きですw。もちろん、他のシーンでの歌唱については言うまでもなく素晴らしかったですよ。
吉野圭吾さん
吉野さんのシカネーダーも初演から比べるとものすごく弾けてますね。「チョッピリオツムニ、ちょっぴりハートに」のナンバーでは客席から早い時期に拍手が沸き起こっていたし、中川君のテンションもかなり高かったのでだいぶ吉野さん的にもノリノリだったんじゃないでしょうか。相変わらずセリフがちょっと聞き取りづらい部分があるのですが、それでも素晴らしいエンターテイメントを魅せてくださいました。最近こういう弾けてる吉野さんを多く見かける気がするなぁ(ヴァンパイアはもっとすごかったけど 笑)。
カーテンコールでは緞帳がしまったあとに中川くんとアマデの子が一緒に出てきて、二人で抱き合ってたりじゃれあってたりですごい可愛かったです。舞台では反発しあってるだけに貴重なツーショット見させていただきました(笑)。
またいつか再演したとき、さらに進化した中川ヴォルフに会いに行きたいと思います。