ミュージカル『フランケンシュタイン』 2017.02.04

韓国発のミュージカル『フランケンシュタイン』を観に大阪梅田芸術劇場へ行ってきました。

このミュージカルは主演の二人がダブルキャストになっていたので、ミュージカル好きな私としては両バージョン観るべく最初は3公演押えていました(笑)。が、諸々事情が変わって2公演を手放すこととなり、結果的に1公演のみの観劇となってしまいました。
関西公演は関東と違って上演期間が異様に短いことが多く、色んなキャストを見たくても連続で日程を組まないとすぐに終わってしまうので…そのあたりの調整が難しいんですよね。まぁ、来てくれるだけでもありがたいのですが(と言いつつ、私の場合は結局遠征になりますがw)

色々感想を聞いたり読んだりして見ると、実に評判がよくおそらく再演もされるのではないかと思われる作品なのですが・・・私個人としてはそこまで絶賛するまでには及ばずでして、やはり複数回観ないとハマるまでには至らなかったかなと思わなくもありません。
かといって、もう一度見たいかと言われると微妙だったりで(汗)、実に複雑な感情となってしまったのが正直なところでした。

以下、ネタバレを含んだ感想です。

 

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2017.02.04マチネ公演 in 梅田芸術劇場(大阪)

主なキャスト

  • ビクター・フランケンシュタイン/ジャック:柿澤勇人
  • アンリ/怪物:小西遼生
  • ジュリア/カトリーヌ:音月桂
  • エレン/エヴァ:濱田めぐみ
  • ルンゲ/イゴール:鈴木壮麻
  • ステファン/フェルナンド:相島一之

全体感想

フランケンシュタインと聞くと、顔に傷のある四角い顔をしたキャラを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実はフランケンシュタインは博士の名前であって・・・顔に傷のあるあのキャラは博士が創りだした「怪物」なんですよね。
このミュージカルは、主人公であるビクター・フランケンシュタインがいかにして「怪物」を創造してしまったのか…その悲劇にスポットを当てて描いていました。古い原作はあるようですが、名前と大まかな骨格以外はほぼオリジナルだそうです。

ストーリーの流れを簡単に。

死者をよみがえらせる研究に没頭していたビクター・フランケンシュタイン博士(柿澤くん)は、ある日戦場で敵兵の治療をしようとして処刑されそうになっていた軍医のアンリ(小西くん)を助けることに。
始めはビクターの研究に疑問を抱き反発を感じていたアンリでしたが、彼の熱い理想論を聞いて心を動かされその研究の助手になることを決意。変わり者として周囲の冷たい目に常に晒され孤独の中で生きてきたビクターは、やがてアンリに心を開き二人は熱い友情の絆で結ばれていく。
ところがそんなある日、ビクターは研究絡みで殺人事件を起こしてしまう。彼を助けたい一心のアンリはビクターの身代わりとなって逮捕され処刑されてしまった。そのことに激しいショックを受けたビクターは、アンリの首を持ち帰り彼を生き返らせようと研究に没頭する。やがて再生に成功したものの、そこに蘇ったのはアンリの記憶を失った恐ろしい「怪物」(小西くん2役目)だった…。
執事のルンゲ(壮麻さん)を惨殺し研究室を飛び出し外の世界で地獄の体験を味わった怪物は、3年後にビクターの前に現れ彼への憎しみを募らせ復讐を開始していく。

まず最初に全体を見て感じたのが、ちょっと『ジキル&ハイド』の雰囲気と似ているなということでした。変わり者の研究者が誰にも認められず孤独に生きているという設定はなんだかジキル博士と重なるものがあるなぁと。あと結果的に悲劇で終わるところなんかもそうかな。ゴシックホラーが下地にあるという点でも既視感があったのかもしれません。
まぁ、基本的にはストーリーはだいぶ違う方向でしたが。

特徴的だったのが、1幕と2幕で雰囲気ががらりと変わるところです。メインキャストはみんな主役も含めて一人二役を演じているのですが、これが全くの正反対キャラなので1幕と2幕がまるで別物のように思えてしまうシーンが多々ありました。

1幕は主にビクターとアンリの友情物語に重点が置かれていて、ビクターの孤独な心を大人の寛大な心で受け止めていくアンリの関係がとてもよかったです。
特に最後の別れのシーンはとても印象的でした。自分の過ちを、アンリが壮絶な覚悟をしつつもすべてを受け止めて背負ってくれたと知ったビクターが子供のように泣きじゃくるんですけど、もうそれが見ていて思わずもらい泣きしそうになるほど切なかったです。子供のような幼さで泣く柿澤ビクターを安心させるかのように大人の包容力でしっかりと抱きしめる小西アンリのシーンは本当に感動的でした。というか、ここが一番の感動ポイントでしたね。

2幕は怪物が辿った地獄の体験が描かれているのですが、ここに登場するのが2役目のメインキャストたち。同一人物味を感じさせるのは「怪物」くらいで(実際、アンリの体を使っているという設定なので)、ビクターはじめ他のキャストは全くの別人・・・しかも、心が卑しかったり真っ黒だったりするキャラだらけ(笑)。
一番激しく変化したのが、ビクターとエレンですかね。麗しく繊細な姉弟だった1幕の二人が、2幕では怪物をモノ以下の存在としていたぶりまくる超ダークなコンビになっててビックリしました。特に濱田さんが演じた2幕のエヴァはものすごい悪女でww、1幕の彼女の聖母のような優しさは微塵もありませんでしたよ!なんか見ていて混乱(汗)。この二人だけじゃなくて他の二役のメインキャストさんも相当真っ黒な人物たちだったんで…頭を切り替えるのがなんかうまくいかなくて…。同じ人が演じてると1幕の人物と何かしら関係があったりリンクする部分があるのではってどうしても思ってしまうので、その答えを探している間に狂乱の世界が終わってしまったみたいな感覚がありました(苦笑)。

そんな頭が混乱したなかでビクターと怪物の物語にシフトしていったので・・・うまく最後の悲劇を受け止めて見ることができなかった気がします。
でもこれ、ビクターは哀れな研究者だったかもしれないけど・・・怪物創ったのはこの人なんだからあの仕打ちはけっこう酷いよなぁって思っちゃったかも。アンリ再生に失敗した結果の怪物ということですが、最後の闘いのシーンはケダモノと対峙するような雰囲気だったからなぁ。なんか、惨いって思ってしまって・・・ラストシーンもあまり感情移入できなかった気がします。
ビクターは怪物に何を見ていたのか…その部分をもう少し描いてほしかった気がする。闇の闘技場のシーンがけっこう長かったので、個人的にはそこはもう少し削ってビクターと怪物、そしてアンリといった構図をもっと見せてほしかったなというのが正直な感想です。

韓国産のミュージカルはこれを含めて3作品くらい見てきましたが、けっこう激情型で押し切るものが多いですよね。曲もガンガン攻めてくる感じだし、ストーリーにしても観る者の心を抉ってくるような展開が多いかなと。2幕の闘技場シーンはまさに人間のドス黒さをこれでもかと見せつけられているようで…ちょっと見ていて疲れてしまった(汗)。なんかホント、見ていて心が削られていくような感覚だったんですよ。そこにちょっと苦手意識があるので…うーん、それもあって乗りきれなかったかなぁ。
あと1幕にしてもストーリー展開がちょっとなとこがちょいちょいあったかな。一番違和感感じたのが居酒屋のシーン。ここはアドリブもあってけっこう笑いを取ってる楽しい場面だったのですが、その直後に突然「アンリが逮捕」という衝撃ニュースシーンになって…正直見ていて「!??って感じでした(苦笑)。結果ありきで疑問に思ってると解説が始まる、みたいなw。全く違うテイストのドラマをああいう繋げ方するのは個人的に不親切だなと思うし好きではありませんでした。

うーーん、これ、2回目に見たら違う感想が出てきたかもしれないんだけど・・・もう一度見たいかと言われれば微妙だし・・・。今回はあまりいい感想になりませんでしたね。すみません。

主なキャスト別感想

柿澤勇人くん(ビクター/ジャック)

カッキーのビクターはどこか幼さの残る少年みたいな部分があって、繊細で少し危なっかしいキャラが見ていて色々と萌えました。いつも愛情に飢えていながらもそれを掴むことができない哀しさみたいな部分が見え隠れしていて、そんな芝居もすごく切なくてよかったと思います。特に泣き顔が印象的でしたねぇ…。アンリにすがって泣くシーンは見ているこちらも思わずもらい泣きしそうになっちゃいましたよ。
逆に2幕のジャックは考えが読めない怖さを漂わせていて見ていてゾクっとさせられました。エヴァとは対等な関係といった雰囲気で、ケタケタ笑いながら平気でいたぶる芝居は人間の奥に潜んでいる悪の部分を存分に感じさせる迫力があったと思います。このジャックのシーンはアドリブもけっこう頑張っててww、大阪公演ということもあり時折大阪弁を駆使したり誰かのモノマネしたり大忙しww。相島さんとのシーンの時はあまりに大阪弁のくだりのアドリブがグダグダになりすぎて、濱田さんから「長い!早く先いってよ~」と生ダメ出しが入ったほどでした。多少スベッてた感はありましたが、必死感は伝わってきたよ、カッキーw。

小西遼生くん(アンリ/怪物)

オープニングでいきなり小西くんの怪物が誕生するシーンが入るのですが…いやぁ、なんか、すごいリアルというか…モダンバレエの怪しい動きみたいな?声の出し方とか骨が外れたような動きとか、あれが本当に小西くんか!?と思ったほど背筋が寒くなるような不気味さがあってビックリしました。ダブルキャストの加藤くんもそうだったと思うけど、あれだけで相当体力消耗すると思いますよ。すごいチャレンジな役柄だったんだなぁって思いました。
小西くんのアンリはどこか高貴さが漂っていて落ち着きがあり、どちらかというと幼さの残るかっきービクターを包み込むような大人の余裕みたいな印象でした。キリっとした顔立ちはやっぱり舞台映えしますよね、小西くん。いつも危なっかしいビクターを傍で見守るように見つめている芝居とかほんと素敵だった。処刑台に向かうシーンは、色々な感情を全て受け止めたという覚悟と静けさみたいな部分が同居していて、見ているこちらはなんかその悟ったような表情が切なくて哀しくて胸が痛かったです
そして2幕再びの怪物。なんか、あそこまでさらけ出した芝居してる小西くんを観るのが初めてだったので、最初はちょっと戸惑いを感じてしまって…。それくらい凄味があって圧倒されました。いやぁ、小西くん、またさらにミュージカル役者として一段上に登ったなと思いましたね。歌唱の点では他キャストに比べると少し落ちるんですけど、それ以上のものは魅せてもらえたと思います。

音月桂さん(ジュリア/カトリーヌ)

音月さんは宝塚で男役をされていたとは思えないほど、女性らしさが出ていて可愛らしいですよね。ジュリアの時の白いドレスがとても似合っていましたし、ビクターを一途に想う繊細さも芝居の中に現れていて印象的でした。
でもどちらかというと2幕のカトリーヌの方が印象深かったかも。最初は虐げられた者同士ということで怪物と心を通わすのですが、自らの保身のために怪物の気持ちを大きく裏切ってしまうシーンは人間の弱さがストレートに出ていて…見ているこちらも心が抉られるような気持ちにさせられました。怪物のあのカトリーヌに向けた哀しげな瞳がさらに辛くてねぇ…。音月さんはこの人間の弱さを体現したかのようなカトリーヌの汚れた部分を実にリアルに演じられていたと思います。ジュリアとは全くの別人でこれもビックリでしたね。

濱田めぐみさん(エレン/エヴァ)

いやぁ~、濱田さんがあんな聖母のような女性の役がこんなにハマるなんて新たな驚きでした!弟のビクターを心から愛し、まるで母親のように深い愛情で包み込むエレン姉さんはこの作品の中の大きな良心でした。常に弟が心配で、その人生を弟のために生きているといっても過言ではないほど温かく優しい姉。ビクターはこのお姉さんがいたから孤独に感じた人生を生きてこれたんだろうなって思いましたよ。そんなエレンが辿る末路があまりにも哀れでねぇ…なんでそんな運命にってすごく胸が痛かった徹底的に抑えて優しく温かい部分だけを強調して演じられた濱田さんはあまり見たことがなかったのでとても新鮮でした。
その分、2幕のエヴァ役で弾けたんですかね(笑)。それぞれ1幕とは全く違う人物を演じていますが、一番対極にある人物に思えたのがこのエヴァだったと思いますよ。抑えていた前半を吹き飛ばすような迫力ボイスで人間的に真っ黒な姉さんをそれはそれは楽しそうに歌って演じてましたw。あぁ、これがあるから濱田さんはこの役に抜擢されたんだろうなと思いましたね

鈴木壮麻さん(ルンゲ/イゴール)

壮麻さんが演じたビクターの執事・ルンゲは重いテーマのこの作品の中では唯一の癒しどころといった役でした。ちょいちょい笑いのシーンが入ってくるのですが、そのほとんどにルンゲが絡んでたので(笑)。真面目でビクターお坊ちゃま一筋に生きてるルンゲですが、真面目すぎるがゆえにどこか空回りしちゃったりしてて、なんか見ていてホッとできる人物でしたね。
一番面白かったのが居酒屋シーン。ここでのルンゲさんは道化のようで面白いんですが、そんな彼にかっきービクターがチュッチュしてあげててwww。で、メロメロになったルンゲさんに追い打ちのようにアンリもチュっってしてあげててwww。あれって毎回やってたんですかね?かなりウケてた。あまりのメロメロっぷりが面白くて私も思わず吹いてしまいましたよ。そんなシーンの直後にアンリ逮捕事件が突然入ったんでほんとにビビりました
で、壮麻さんの2役目なんですが…メイクが部厚すぎて言われなければわからないような人物(?)になってましたww。顔は歌舞伎メイクのように真っ白ではげた頭の上にはボーリングのピン(またはコケシw)みたいなのが乗っててwwwもう正直、何者だったのか今でもよく分かりません(笑)。ほぼ喋らないしソロの歌もほぼないので、最後まで分からなかった人もいたかも?

相島一之さん(ステファン/フェルナンド)

相島さんがミュージカル出演とは、珍しいなと思いました。歌はソロの部分が一瞬だけあってさすがにそこは怪しい感じではありましたがw、役の存在感としてはさすがだなと思いました。ジュリアの厳格な父親役としてビクターと彼女の恋に頭を痛めているキャラで、ビクターを全否定しているわけではないという複雑なニュアンスを上手く出していたと思います。
2幕目は闘技場の元締めのような役で、たぶん相島さんの2役目は今回のメインの中で一番真逆と思わなかった人物かもしれません(笑)。いや、十分にフェルナンドは黒い奴でしたけどねw。かっきーとのアドリブ合戦は熱が入っててめっちゃ面白かったです

後述

一つ書き忘れてましたが、2幕の怪物とカトリーヌのやり取りの中に「熊を倒した」とか「熊がオイシイ」とかそういったセリフが出てくることがありました。無邪気に二人で「くま!くま!」と連呼しててww。
実は、この日は大阪で、ゆるキャラのくまモンがイベントをやってまして。フランケン終了後に駆けつける予定だった私の脳裏には、二人が「熊」連呼するたびに彼(くまモン)の顔が浮かびまくってしまって心がちょっと痛かったです
後述・・・というか、余談でしたw。

また再演されたときは…どうしようかなぁ。キャスト次第かもしれませんが、違和感を持ったストーリー展開部分も少し修正してほしいような気がします。

 

 

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