ミュージカル『October Sky -遠い空の向こうに-』大阪公演 2021.11.12マチネ

主なキャスト別感想

甲斐翔真くん(ホーマー)

今年のロミジュリでの甲斐くんを見たときにめちゃめちゃ進化しているのを目の当たりにして、是非次回作を見てみたいと今回のチケットを確保しました。そこからさらにロケット級の進化を見せてくれて…驚きと感動でいっぱいです。

ホーマーは演じ方によっては周囲にかき消されかねない少し地味なキャラだなと思ったのですが、甲斐くんは見事にホーマーを物語中心の核としてしっかりとした存在感を出す熱演を見せてくれました。繊細だけど情熱は誰にも負けないほど熱いものを持ってて、仲間たちが彼を頼りにするの、めちゃめちゃ理解できた。
そして親子関係のシーンでの芝居と歌も秀逸!!特に父にクライマックスで自らの気持ちの全てを訴えるシーンは胸に迫るものがあり、ジョンを最後の最後に振り向かせるだけの力と説得力があって本当に感動しました。あれは魂の芝居だったと思う。

甲斐くん、もっともっと進化していくんだろうな。今後の活躍が本当に楽しみです。出来れば再演があった時、またもうひ泊まり成長した彼のホーマーを見てみたい。

阿部顕嵐くん(ロイ)井澤巧麻くん(オデル)福崎那由他くん(クエンティン)

ロケットボーイズ3人とも今回が初めましてになります。東京公演の時の配信を観たときはちょっと歌が弱いかなというところもあったのですが、大阪公演を観たときにはそこから進化して上手くなっていたのを感じ嬉しく思いました。

阿部君は体感がしっかりしていて動きにキレがあったのが印象的。複雑な家庭で育ったことへの微妙な心境も繊細に表現されていたと思います。
井澤くんはお調子者のオデルを大熱演!ところどころで妙な動きをしたりww不思議な言い回しをしたり(ドラえもん的なw)してて面白かったです。
福崎くんはまだ若いけどとても奇麗な顔立ちをしていましたね。いじめられっ子で引きこもりがちだったクエンティンが仲間たちと出会い感情を解放させていく姿は胸を打ちました。ただ、歌はもう少し頑張ったほうがいいかな。

夢咲ねねさん(ミス・ライリー)

常に生徒たちのことを気遣って明るく導いてくれるライリー先生がねねさんの雰囲気にこれでもかってくらいピタリとハマっていました。あんな先生だったら、みんな頼りにするよね。そんな中でも特にホーマーとのやり取りは印象深いです。

病気の身を押して自らの過去の経験を語り、挑戦を続けることの大切さを訴えた場面は本当に感動的で涙が出ました。体が辛いはずなのに明るく元気に温かみを以てホーマーに接してくれたライリー先生。あの場面があったからこそ、ホーマーは前に進む勇気を持てたんだとすごく納得できてしまった。

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朴璐美さん(エルシー)

朴さんと言えば個人的には声優さんというイメージがすごく強い。あと、最近は山路和弘さんとご結婚されたことでも話題になりましたよね(嬉しかった)。
そんな朴さん、これがミュージカル2本目で分からないこともたくさんあったとのことですが…とんでもございませんよ!!っていうか2本目というのが本当に信じられません。ベテランのミュージカル女優と言っても誰も疑わないと思えるレベルで本当にビックリ致しました(レミゼは中止になって見れなかったので朴さんのミュージカルを見るのは私はこれが初めて)。

エルシーはヒッカム家のなかでいつもドーンと構えている逞しさのある肝っ玉母ちゃんみたいな存在。二人の息子にも均等に愛情を注いでいるし、夫のことも心から愛しているという気持ちがその姿からひしひしとリアルに伝わってきます。
ホーマーとジョンの関係については常に気持ちを割いていて、どちらも愛しているが故に上手くいかない二人の関係に心をずっと痛めている姿がとても繊細に演じられていてめちゃめちゃ泣けました。

でもなんといっても、やっぱり個人的には栗原さん演じるジョンとの夫婦愛を歌うシーンが一番好きだったかなぁ。あの時のエルシーはとても芯が強いながらも柔らかい表情を見せていて心から彼のことを慕っているのが伝わってきた。ジョンが愛したエルシー像をこれでもかと見せられた場面でもありましたね。

朴さん、圧巻の歌声とお芝居は今後のミュージカル界にとても必要な存在だと思います。次の作品もぜひ見てみたい(千と千尋でしたよね)。

栗原英雄さん(ジョン)

最初にチケット確保した時にはこの作品に栗さんが出演することを知らなくて、あとからそれを知った時には「ラッキー」と心の中でガッツポーズしましたw。これまでも何本が、栗原さんが出演した作品を観てきましたが…、まさかこんなにもメインにがっつり関わってくる役とは知らなかったので初めて東京公演の配信を見たときには感動と驚きで体が動かなかったほどでした。

ジョンは炭鉱の仕事を強い責任感を持って向き合っているんですが、実は初めからその道を目指していたわけではなく、若い頃にはアメフト選手になりたいという夢があったんですよね。だけど、家の事情で炭鉱夫になる道しか選べなくて現在に至っている。息子に対するいら立ちの原因の一つに、そんな彼の複雑な背景があるんだろうなっていうのを、栗さんの芝居の端々からすごく感じました。

ことごとくホーマーのやることに反対し反目していたジョンでしたが、不思議と彼を憎いキャラだと思う瞬間が一度もなかった。本心ではジョンはホーマーとも上手く向き合いたい気持ちはあるんだけど、自分が良かれと思う道に進もうとしてくれないことに戸惑いと苛立ちを感じてしまってるんですよね…。息子を気遣う気持ちはちゃんと持ってるっていう根っこの部分が、どんなに対立しているシーンでも垣間見えてきたんです。こういう繊細なお芝居はホント、栗原さん、素晴らしいと思う。

そんなジョンだったからこそ、ホーマーは最後まで父と向き合おうとすることを諦めなかったんじゃないかな。エルシーも最後に突き放すような言葉をぶつけながらも、祈るような気持があったはず。
そう思えたのは、栗原さんが演じたジョンが本当は温かい心を持った人物だと感じられたから。バイコフスキーさんが最後にホーマーに行ってた「彼は良い人だから」というのが嘘ではないと思える人物像を作り上げてくれたと思います。

最も印象深かったのはやはりクライマックスでホーマーの気持ちを受け止めてからの場面。泣きそうになるのを必死にこらえながら息子の想いを全身に浴びていたあの姿は涙無くしては見れなかった…!そこからあのラストですから…もう、思い出すだけで泣いちゃいそうですよ(涙)。
非常に魅力的な最高級の栗原さんのお芝居を堪能できた作品だったと思います。この役に栗さんを配してくれたことに感謝したいくらい。また再演があった時には同じ役で会いたいです。

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中村麗乃さん(ドロシー)は乃木坂46のアイドルとのことですが…今回の舞台のなかで残念に感じる部分が多かった(ファンの方、ごめんなさい)。歌は音程はなんとか取れてるけどそこに感情が乗ってないというか…歌ってるのが精いっぱいに見えてしまう。
さらにドロシーというキャラをどう構築しようとしていたのかも伝わらなかったので、ホーマーとの恋愛場面がすごく薄く感じてしまったんですよねぇ…。舞台の上にアイドルの子がいるなって感じにしか見えなくて…浮いて見えてしまったのがとても残念だった。

畠中洋さん(ケン)はさすがの存在感と歌唱力で本当に素晴らしかったです。畠中さんの歌声から物語がスタートするっていうのもすごくいい。透き通って美しい歌声が魅力の一つでもありますが、力強い男らしい表現力も加わるとものすごいパワーを発揮されますよね。
栗原さん演じるジョンと言い争うシーンは目が離せなくなるほどの迫力で、非常に見応えがあり心が常にヒリヒリさせられました。それだけに、ラストシーンでケンがジョンに親しく触れあう場面はもう涙なくしては見れなかったです…!

青柳塁斗くん(ジム)はめちゃめちゃ筋肉がすごい!!出番はあまり多くなかったけど、アメフトの才能があることはすごく伝わってきました。あと、ホーマーのロケットを見に行くぞってシーンの直前に両手放し腕立て伏せやってたのがビックリした(笑)。どんだけ鍛えたらあんなすごい筋肉が作れるんだろうか…!キャラとしてもなかなか面白かったので、もう少し活躍してほしかったかも。

筒井俊作さん(バイコフスキー)、どこかで名前を聞いたことがあると思ったら…キャラメルボックスの役者さんだった!たしか1回見たことがあるぞ。そんな筒井さん、これがミュージカル初めてということが驚きです。どっしりとした存在感と優しい笑顔が本当に素敵でめちゃめちゃ癒されました。それに、歌もとてもお上手。ホーマーに対する愛情もヒシヒシと伝わってきてとても良いキャラでした。
ただ、巻き舌台詞がちょっとしつこかったかもww。少しシリアスなシーンでも巻いてたのでそれだけはちょっと気になったかなw。

礒部花凜さん(エミリー)は、明るくて活発なアメリカの女の子って雰囲気が出ててとても可愛らしかったです。複雑な家庭で育つロイはそんな彼女の明るさに惹かれていたんじゃないかなって納得できました。ナンバーも可愛らしく歌いこなせてたし…彼女のドロシーで見てみたかったかも…とも過ってしまった。

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後述

大阪公演のチケットはかなり初期の段階で確保していましたが、その前に東京前楽公演の配信を観たことでこの作品に対する愛情がグッと高まったような気がします。大阪の大千穐楽公演の配信までしっかり見届けるほど、本当に今年見たなかでも上位に入るほど私個人の心に深く刻まれました。

大千穐楽の時に甲斐くんが感無量の表情で挨拶していた姿もすごく感動したなぁ。ラストシーンのあの瞬間だけはどんな未来が待ってるかもしれない中で特別な時間だった、みたいなこと語ってて…まさにその通りだよなぁと思いました。この日は甲斐くんの24歳の誕生日だったということもあり、彼にとっても忘れられない特別な公演になったんじゃないかな。
何回目かのカテコの時に対立する父を演じた栗原さんが自ら甲斐くんに握手を求めに行った姿もとても印象的でした(個人的には大好きな栗さんと畠中さんがカテコでラブラブだったのもすごくうれしくてテンション上がったけど)。

大阪千穐楽の配信は本来はリピートなしとのことでしたが、今回特別に本家からもう一度流してもいいという許可が出たそうです。ブロードウェイ進出に向けての途上の作品ということで色々な許可が下りるのが難しい事情があったようですが、そんななかでのこのお話はすごい快挙だと思います。本家に認めてもらうほど素晴らしい完成度だったということですよね。

11月23日に再度、素晴らしい熱量のこもった大千穐楽公演が配信されるそうなので、もしも見逃してしまい悔しい想いをした方がいらしたら…ぜひとも見ていただきたいです。そしてコロナが納まってきた頃、気兼ねなく観劇に行ける環境になった頃にまた日本版上演の許可を出してほしいなと思います。

思い入れが深かった分めちゃめちゃ長文になってしまった(汗)。

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