ミュージカル『October Sky -遠い空の向こうに-』大阪公演 2021.11.12マチネ

1幕感想

♪炭鉱へ♪

米ソ冷戦の時代におけるアメリカのウェストバージニア州コールウッドに住んでいる人たちは、その多くが決められた人生のレールが敷かれていてそこを進むのが当たり前として暮らしていました。男たちは炭鉱夫として石炭を掘り続け、女たちはそんな炭鉱夫の妻になるのがコールウッドの人たちの運命と皆受け入れている。

その炭鉱夫たちがこの作品のオープニングにガッと前に出て歌う場面は男臭く勇ましく、迫力があります。このシーンで最初のフレーズを歌い出すのが畠中さんが演じるケン。これがめちゃめちゃ良いんですよね。あれで一気に物語の世界観に没入していく感覚になる。その声に引っ張られる形で炭鉱夫役のアンサンブルさんたちがまた力強い歌を重ねていって…これが本当に素晴らしかった。

そこに小さなドラマが挟まるんですよね。炭鉱の現場監督の父・ジョンにランチを届けたホーマーは、偶然他の炭坑の事故で人が亡くなるというニュースを耳にしてしまった。元々炭鉱夫になる運命を受け入れたくないと漠然と思っていたホーマーだったようですが、この時さらにその想いを強くしてしまったように見える。
この彼の小さな”反抗心”のようなものがその後に続くドラマを盛り上げていくわけで、ここの導入部分は色々な意味でドラマチックだったなと思いました。

ホーマーにはロイとホデルという親友がいましたが、彼らもまた今の生活に違和感を感じていてここから抜け出したいと思っている(♪抜け出したい♪)。ロイは特に炭鉱夫の義理の父から常に暴力を受けているのでその想いは強い。

そしてもう一人、いつも本ばかり読んでいるクエンティン。この時代はスポーツ(アメフト)で活躍する若者に大きな期待と人気が集まっていたようですが、彼はそれとは真逆の人間であるため常にバカにされたりイジめられたりして孤独を感じている。一人だけ浮いた存在になってて、クエンティンが虐げられてるシーンを見るたびに「もうやめてあげてよーー」って何度も心の中で思っちゃいました(涙)。だけど本人はその運命を受け入れて諦めちゃってる感じなんだよねぇ…。

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♪星を見上げて♪

そんなある日、ホーマーたちはミス・ライリー先生からソ連が人類初の人工衛星”スプートニク”の打ち上げに成功した話を聞かされます。彼女は自分の教え子たちが危険な炭鉱夫になる将来をなんとか変えたいという情熱を秘めていて、その糸口をずっと探っていたように思えます。だから、学校側がいくら「スプートニクは共産主義者による陰謀」と言ってもそうとは思わず「偉業だ」と捉えたのかもしれない。
この話をほとんどの生徒はバカにしてまともに聞いてませんでしたが、ホーマーだけは心が動き漠然と宇宙への興味を募らせていく。そんな彼に、ライリー先生は「期待」をかけた。彼は運命を変えるキーマンだと直感したんだろうなと思いました。

そしてコールウッドの上をスプートニクが通るのを目視できる日。多くの人たちがそれを見に集まっているなか、ホーマーの父のジョンだけは炭鉱のトラブルのことで頭がいっぱいでその場に立ち会わなかった。自分とまともに向き合おうとせず憮然としながら立ち去ってしまうジョンを哀しげに見送るホーマーと、複雑な表情を浮かべる母・エルシーがとても切なかった…。

そんな彼らの気持ちを一気に高めてくれたのが夜空を横切るスプートニクのちいさな光。皆は「すごい」と歓声を上げて見えなくなったらそのまま立ち去ってしまいましたが、ホーマーだけはその場に残って例えようのない胸の高まりを感じ心の内側を解放するかのように喜び歌います。
この時のナンバーが本当に心揺さぶるもので…聞いていて思わず落涙してしまった。現状から抜け出したいと思っていた彼の心にスプートニクは大きな希望の光を灯したんだなと思ったら…なんだか感極まってしまった。

その日を境にホーマーの「ロケット熱」は一気に上昇。母親は呆れながらも微笑ましく見つめている雰囲気でしたが、父親は兄のアメフトの試合のことばかり気にかけている。ホーマーのやりたいことに関してジョンはこの時も無関心なんだよなぁ…。
それでもホーマーはロケット作りに情熱を燃やし、親友のロイとオデルも巻き込んであっという間に第一号機が完成w。最初ロケットを飛ばす物語って聞いてたので本物の大きさを想像してしまったのですが、彼らがチャレンジしたのは簡易性のミニチュア物でいかに正確に飛ばすかというのが大きなテーマになっていたようです。

しかし、そんなに簡単に巧くいくはずもなく打ち上げは大失敗で挙句の果てに家の柵まで破壊してしまったw。その現場を見に来た母のエルシーが悲鳴を上げるシーンはめちゃめちゃ面白かったです(笑)。エルシーはホーマーのやったことに始めは憤っていましたが、上手くいかなかったと落ち込む息子に対して「計画通りに行かないことが人生だ」と諭すのでした。この言葉がとても印象深かった。

♪地に足つけて♪

エルシーはホーマーのロケットづくりについて最初は軽く見ていた節がありましたが、それが本気なんだなと悟ると「やるからには地に足をつけて本気で取り組みなさい」と励ましてやる。その言葉の裏には、かつてエルシー自身も海の近くでのんびり暮らしたいと抱いた夢があったもののジョンが炭鉱夫だったことからそれを諦めざるを得なかったという背景がありました。
それゆえ、せめて息子には自分の決められた運命から抜け出して自由に羽ばたいてほしいという気持ちが強かったのかもしれないなと思ったかな。あと、自分の代わりに鬱々とした現状をホーマーに打破してほしいという期待を寄せたというのもあったかもしれない。ライリー先生と同じように、彼女もまたホーマーに光る何かを見つけたんじゃないかな…なんて。

エルシーがホーマーを励ますこのナンバーはダイナミックでとても明るい。肝っ玉母ちゃん的な朴さん演じるエルシーのお芝居がとにかく圧巻でした。あんな感じで励まされたら、やってやるぞって気合も湧くよね。

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ホーマーはロケットについて人一倍興味を持っていたクエンティンを誘い仲間に入れることにしました。皆がクエンティンのことを避けているなか、最初はちょっと戸惑いながらも思い切ってその隣にホーマーが座り言葉をかけるシーンはとても印象的だった。もともと彼は避ける気持ちもなかったようだし、いつもみんなとフラットな感覚で接しているのがいいよね。
最初は「僕と一緒にいたら嫌われるだけだよ」と後ろ向きだったクエンティンが切なくて泣けたけど、ホーマーたちのロケットづくりへの情熱が本物だと感じてから彼らと一緒に夢を見ようと決意する場面はとても感動的だった。

ロケットづくりに情熱は注ぐもののなかなかうまくいかなかったことで、ホーマーは知り合いの溶接業をしているバイコフスキーに協力を仰ぐ。バイコフスキーさんが作業している時に歌を歌ってる場面があるのですが(♪星に還る♪)、これが彼の豪快でフレンドリーなキャラと正反対で歌詞とメロディがなんとも物悲しいのが心をざわつかせるんですよね…。
最初はジョンに見つかったら大変なことになると躊躇していたバイコフスキーでしたが、ホーマーのロケットづくりに対する真摯な想いを聞いて協力してくれることになりました。一見陽気に見える彼もまた、今の状況を打破したいと心のどこかで思っていた一人だったのかもしれないな…と。

その頃、ジョンのもとには親友のケンが組合員としてやって来て作業環境をもっと改善させてほしいと訴えていた。会社の都合で人が減らされて現場の負担が大きくなっていたことから、ケンは事故を避けるためにも何とかしてほしいと切羽詰まっている。
しかしジョンは「今目を付けてる炭鉱があるからそれに取り掛かれればなんとかなる」と楽観的な言葉しかかけてくれない。現実に目を向けないジョンにケンは苛立ちを爆発させますが、実は現場監督のジョンも炭鉱に入っていることから肺をやられていて…。きっと、ケンたちの言いたいことも分かってたんだと思うんだけど、会社の意見も聞かなきゃいけなくて板挟みみたいな状態だったんだろうなぁ。中間管理職は辛いよ…。

そんなジョンに追い打ちをかけたのが、跡継ぎとして期待をかけていたホーマーの兄のジムがアメフトのスポーツ推薦で大学行きが決まったことだった。ジョンはかつてアメフトの道を進みたいと思った時期もあったことから、それに反対することができなかったのかもしれない…。

ホーマーは自分が父の後を継がなければいけないかもしれないという不安にさいなまれながらも、ロケットづくりに情熱を注いでいく。その時だけが彼が彼らしくいられる時間。ある日校長からそのことを叱責されてしまいますが、ライリー先生の機転で納得させることに成功。この時の♪言われたとおりに♪は明るいカントリー調のナンバーで、ライリー先生とロケットボーイズたちの連携の動きもとても楽しく見応えがありました。

♪お前はおまえ♪

ジョンがホーマーに自分の過去について語り聞かせ、炭鉱夫になる運命にあることを改めて知らしめようとしてしまう場面。早くに父を失ったことでアメフトの選手になる夢を諦めて炭鉱夫の道に入るしかなかったジョン…。家族の誰かが働いてなければその家に住むことができないという背景もあったようですから、その時のジョンの気持ちを考えると心が痛みました(涙)。
「無限に続いていく変わらない運命」と歌うシーンが特にグッとくるものがあったかなぁ。ジョンもまた、自分の夢を諦めて運命に従って生きるしかなかった哀しみを背負っている。それゆえになおさら、ロケットづくりに没頭し続けているホーマーのことにイラついてしまったのかもしれない。

また、その心の内にはホーマーが決められた運命から逸れてしまった後の人生に対する心配する気持ちも含まれていたと思います。既定路線である炭鉱夫という仕事に付けば路頭に迷うことはないと…。ただやみくもにホーマーのやることに対して嫌悪感を見せていたのではないんだなって感じられたこのナンバーのシーンはすごく肝になっていたかもしれない。ジョンは彼なりに、不器用ながらもホーマーを大切に想ってたんだよな…。だけどそれを見せたくないっていう頑固さもあって、本当にややこしい(苦笑)。

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自分の運命がいよいよ定められようとしていると気持ちが沈みがちになるホーマーでしたが、仲間たちとのロケットづくりはそんな気持ちを救ってくれていたように見えました。
失敗作が続くなかで、バイコフスキーさんが次々と試作品をドラえもんのポケットのように差し出しまくるシーンは面白くて思わず笑ってしまった(笑)。そしてついにロケットを上に飛ばすことに成功。ここに至るまでの♪うまく行けば♪はボーイズたちの躍動感やドキドキが伝わってくる楽しいナンバーでした。

そんなある日、ホーマーはライリー先生からミサイル学について詳しく書かれている本を手渡され、サイエンスフェアの優勝を目指して頑張るようにと励まされました。この本を渡すときライリー先生がいたずら心で「トイレで拾った」って言っちゃって、ホーマーがそれを信じて本の匂いを嗅ぎまくっていたのが可愛くて面白かったww。本当はライリー先生は彼のためにわざわざ取り寄せて買ってくれたんだよね。こんなに親身になってくれる先生がいて羨ましいなぁと思った。

ライリー先生からの本を手に入れてからますますロケットの性能は進歩。ホーマーの兄のジムはロケットづくりに没頭して次第に周りの理解を得ていく弟に対しイライラしていて「潰してやるぜ」と意気込んでいたんだけど、実際にホーマーの作ったロケットが飛ぶ姿を目の当たりにしてビビッて圧倒されちゃうのも面白かったww。
これがきっかけで、お兄ちゃんはホーマーに理解を示してくれたみたいだから良かったけどね。なんだかんだで弟想いなところあるじゃないかとちょっと見直したシーンでもありました。

しかし、ロケットの飛び方に今ひとつ納得していないホーマーに焦りが見え始める。父との関係がうまく行かないこともあり、早くコールウッドの町を抜け出したいという気持ちに駆られている様子。そんな彼に想いを寄せるドロシーは、町の良さについて語りながら彼に好意を寄せているとアピール。
今回一番あまりピンとこなかったのがホーマーとドロシーの関係なんだよなぁ。ドロシーがちょっとアイドル色が強い印象がしちゃって(苦笑)。二人のラブラブな場面とかって、あまりこの物語に合ってないかもとも…(汗)。

♪星空輝いて♪

数日後、ホーマーたちが炭鉱のすぐ近くで上げたロケットが打ち上げに失敗してしまう事件が起こる。折り悪くちょうどその頃にジョンは会社と組合長のケンと今後の現場についての話し合いがうまくいってなくて追い詰められた心境になってた…。
ジョンは激しくホーマーを叱責。一歩間違えれば大怪我する人や最悪死人も出てしまったかもしれないから…ここは叱られてしまっても仕方がない。でもこの時、ロケットづくりに協力した人を問い詰められたホーマーはそれが内緒にしていたバイコフスキーさんだと認めてしまった。これがのちに大きな悲劇に繋がってしまうんだよなぁ(涙)。

改めて炭鉱夫になる運命を父から押し付けられてしまったホーマーは、何も言い返すことができなかった。でも、自分のミスが招いた出来事とはいえ、父親となかなか心が通い合わないことが辛い。「パパの心は星よりも掴めない」というようなフレーズがめちゃめちゃ印象的だった…。

ロケットへの夢を捨てて父の言われる通り炭鉱夫になるしかないと頭では理解するホーマーでしたが、ここまでずっと本気で打ち込んできたことをそう簡単に諦める気持ちにはなれなかった。「本気だったんだ」と自分に言い聞かせるように悔し涙を浮かべ俯くホーマーの姿が切なすぎて泣けてしまったよ(涙)。

そしていよいよ炭鉱夫への道へ進まなければならない運命が目前に迫った時、ホーマーは最後の抵抗とばかりに「諦めてたまるか」と歌い上げる。でも、その後ろに並ぶ炭鉱夫たちの存在がその歌声をかき消すように迫ってくる…。
ここの葛藤の場面はものすごくドラマチックで見ているこちらも胸潰されそうになって涙が止まらなかった…。それぞれの人の色んなドラマが詰まったすごいナンバーだったと思います。

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2幕感想

♪最後のキス♪

2幕の冒頭のハミングは1幕冒頭のハミングの女性版になっているところが印象深い。

ホーマーの母・エルシーは毎日炭鉱へ向かう夫・ジョンに笑顔で「行ってらっしゃい」と告げながらも、心の中ではいつも「これが最後の別れになってしまうかもしれない」という不安にさいなまれ続けていました。炭鉱の仕事は生と死が隣り合わせだったわけで…、現場監督として常にその中に入って仕事をしているジョンの身をずっと案じ続けながら恐怖心を抱いてたんですよね…。その気持ち、もうほんとに、痛いほど切々と伝わってきて涙が止まりませんでした(泣)。
今日が最後の朝になるかもしれない…って思いながらその不安を表に出さず笑顔で送り出すって…、その心境を考えると切なくて切なくてたまりません。もしかしたら今もこんな心境で送り出している人も多いのかもしれないと思うとなおさらです。

さらにドロシーはホーマーがこの町では生きづらいということを分かってしまうことが辛いと歌い、ライリー先生は現状を打破してくれると期待をかけていたホーマーが炭鉱夫の道に進まざるを得なくなりそうな運命を嘆きながら歌う。
3人とも自分たちの本心は相手に知られたくないと思っているのですが…、やっぱりその中でも一番切実だと思えるのはエルシーなんですよね(涙)。ホーマーとなかなか向かい合おうとしない夫にヤキモキしながらも、彼女がジョンのことをいつも気遣い心から愛しているのが伝わってくるので…。

「これが最後のキスかも…グッバイ」というフレーズは思い出すだけでも涙が出ます。

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ホーマーのロケットづくりに協力したことがジョンに知れてしまったバイコフスキーは、坑道の中での作業員へと異動させられてしまいました。ホーマーは自分の責任だと激しく悔やみますが、なぜかバイコフスキーは「ジョンは良い人だから」と恨み言を言わない。
危険な場所へ行く代わりに給料も上げてもらえることになったと笑顔を見せていましたが、それ以外にも彼はジョンの不器用な優しさを心のどこかでいつも感じていたのかもしれないなと思いました。バイコフスキーを異動させたのも、ひょっとしたら会社との折り合いをつけるためのやむを得ない決断だったのかもしれないしね…(事の発端はホーマーたちのロケット打ち上げ失敗だったからなおさら)。

申し訳ない気持ちでいっぱいのホーマーが何か自分にできることはないかと問いかけた時、バイコフスキーが最後にたくさん作ったというロケットの型を渡しながら「だったらこれを飛ばせ」と優しい笑顔を向けてくれたシーンもグッときて涙が溢れました(泣)。最後まで彼はホーマーの理解者であり続けたんだよね…。

♪ムーンシャイン♪

炭鉱夫になる日が近づいたある日、ホーマーは自分だけは抜けて後は仲間たちに任せようとしましたが…どうしても我慢できずにやっぱり一緒に行動することにしてしまう。彼らは薄めていないアルコールが液体燃料に必要だと知ると、ロイの導きで酒場に赴き”ムーンシャイン”という強烈な酒を手に入れます。

で、この時3人は誘われるままにムーンシャインを飲んでヘベレケ状態に(笑)。カントリー調の楽しい旋律に乗せてノリノリで踊りまくるんですが、ロイが一番キレがあって「おおっ」と思っちゃいました。
このシーンは手拍子も沸き起こり一番シーン的に客席と舞台が一体になって盛り上がる楽しさがありましたね。やっぱり舞台のこういう臨場感、良いなぁと思いました。

ところが、酔っ払って店を出た後に3人は炭鉱夫でロイの乱暴な義理の父・アルと遭遇してしまう。アルコールを飲んだことを知られてしまったことで激しい暴行を受けてしまうロイを助けることができずに狼狽えてしまうホーマーたちでしたが、ちょうどそこにホーマーの父・ジョンが通りかかってアルを一喝し追い払ってくれた。
ホーマーはこの時初めて父の違う一面を見たのかもしれない。毅然とした態度で友達を救ってくれた父を誇りに感じる気持ちもあったんじゃないかな。しかし、ジョンはホーマーが未だにロケットづくりを諦めていないことを悟ると嫌味を告げて立ち去ってしまった…。せっかくの近づくチャンスだったんだけど、やっぱりうまくいかない親子関係がもどかしい。

ムーンシャインを液体燃料として試してみると、ロケットは今まで以上に真っ直ぐ上に飛んで行った。でも、ロケットが成功に近づいているのにホーマーの運命はなかなか好転しない。

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その後、サイエンスフェスティバルの地区予選に出場したホーマーたちロケットボーイズはあれよあれよという間に勝利を重ね、ついに代表に選ばれました。ところが、テンション上がって大喜びすると同時に大きな悲劇が起こってしまう。

人員削減が以前から大きな問題になっていた炭鉱で、ついに事故が発生。ジョンは大けがを負いますが、バイコフスキーは命を落としてしまった…(涙)。あの笑顔が可愛い巻き舌のバイコフスキーさんが犠牲になってしまうなんて、神様は酷いことをすると呪いたくなっちゃったよ…(ここで流れる♪星に還る♪のナンバーも泣ける 涙)。
バイコフスキーの妻のメアリーは働き手がいなくなってしまったことで家を手放さなければならなくなり、夫の故郷であるポーランドへ身を寄せるしかありませんでした…。そしてホーマーもまた、父が大怪我で動けなくなったことで高校を退学して炭鉱夫として働かざるを得なくなってしまった。誰かが働いていないと家を追い出されてしまうという当時の社会ルールに胸が痛んだ…。

数週間後、順調に回復しているジョンに寄り添い続けていたエルシーも少し安堵した様子。元気になってきたら仕事のことでまた頭がいっぱいになってしまう夫に「私は一人の男しか心配できない」と言い含めます。ジョンは仕事に対する責任感が強すぎるんだよなぁ…。そのためになかなか家族のことまで気持ちが回らない。だけど、エルシーと二人きりでいる時のジョンはリラックスしていてどこか甘え顔を見せているのがなんだか可愛らしい。

でも、ホーマーが見舞いに訪れると厳しい表情になっちゃうジョン…。しかも直接彼と会話をすることを避けようとする不器用さが何とももどかしい(苦笑)。
ところが、炭鉱に入った感想を聞かれたホーマーが「悪くなかったよ」と予想外の言葉をポツリと告げたことでジョンの気持ちが変化する。自分が心血注いできた炭鉱の仕事について悪くないと言ってもらえたことが彼の中では嬉しかったのかもしれないなぁと思ったかも。そして初めてホーマーを認める言葉を告げる。

「お前を、誇りに思うよ」

初めて父親から「誇りに思う」と告げられたホーマーは動揺してその場を立ち去ってしまいましたが、彼はずっとこの言葉を父からかけてもらうのを待ってたんだよな。まさかこのタイミングでかけてもらえると思ってなかっただろうから驚いちゃったと思うんだけど、内心は感動で胸いっぱいだったんじゃないだろうか。

しかし、エルシーはジョンがホーマーが炭鉱夫になったタイミングでやっと「誇りに思う」という言葉をかけてやったことに複雑な心境を抱いてしまう。「なぜ炭鉱じゃなきゃダメなの!?」っていう彼を責める言葉が非常に刺さりました…。ホントだよねぇ…。炭鉱以外のことではずっとホーマーから目を背け続けてきたジョン。そのことでホーマーがどんな哀しい想いを抱いていたか…。母親としてそんな息子の姿を見るのは辛かったと思います。

♪それがあなた♪

エルシーはホーマーに対するジョンの態度に複雑な想いを抱きつつも、ジョンへの愛情は揺らいでなくて彼に対する気持ちを切々と歌い上げます。このシーンはもう、涙なしには見られませんでした(号泣)。

エルシーは不器用だけど本当は優しくて温かい気持ちを持ってるジョンのことを心から愛していた。本当は炭鉱の町ではなくてビーチの近い町で暮らしたかったけど、ジョンについて行くと決めてその夢を捨てたこともここで歌われます。いつ命を落としてしまうかもしれない危険な仕事に就いている彼に常に不安を抱きながら、一緒にいる時にはありったけの愛情を注いできたエルシー…。
ジョンもそんな彼女に実は心から感謝していて、それに負けないくらいの愛情を持っていたと思います。エルシーにだけ見せるジョンの優しい穏やかな表情はそれを物語っていた。お互いになくてはならない存在だと認め合える本当に素敵な夫婦愛。

だけど、「炭坑」という現実が家族に波紋を投げかけるわけで…。本当はみんなお互いのことを愛してるし欲しているのにうまく行かない現状がとても切なかった(涙)。

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数日後、ホーマーは炭鉱夫として生きていくと決めた後に改めて一緒にロケットづくりをした仲間たちに別れを告げる。クエンティンが寂しそうに「もう僕らのものじゃない」と呟いたシーンがとても切なかった(涙)。

ところがその後ドロシーと会ったホーマーはロケットづくりを続けるべきだと説得され、気持ちが激しく揺れ動いてしまった。どうすればいいか自分自身が見えなくなったホーマーは、病気療養中だというライリー先生の元を訪ねます。しかし、彼女はホーマーが思いもよらない状況に置かれていた…。
このシーンを初めて見たときは私も大きなショックを受けて、ホーマーと同じく言葉を失ってしまいました(涙)。それでもライリー先生は明るく彼を励ましてくれた…。

♪神聖な何か♪

ライリー先生はかつてホーマーたちと同じ年頃のときに詩人になる夢を抱きましたが、その夢はかなわないまま終わってしまった過去がありました。でも、夢中で夢を追いかけていた頃の時間は今でも彼女のなかでキラキラと輝いていた。
抱いた夢が全て成功するとは限らないけれど、そこに挑戦する情熱こそが一番大切なのだと歌うライリー線先生の言葉の一つ一つが胸に響いて涙が止まらなかった…。

彼女が授業で常に生徒たちの身になって応援していた背景がようやくこの時ハッキリ見えてくる印象的な場面だったと思います。この先どう歩むか道に迷ってしまったホーマーに対して、ライリー先生は挑戦を続けることを辞めないでほしいと訴え続けてくれました。
たとえ炭鉱夫としての道へ行かざるを得なくても、ロケットづくりに挑戦する気持ちを持ち続けることはできるはずだと背中を押してくれたライリー先生…。もっと彼の傍で励まし続けてあげて欲しかった(涙)。

そしていよいよサイエンスフェスティバルの全国大会の日を迎えます。ホーマーを欠くなかで会場に訪れたロイ、オデル、クエンティンでしたが…、アルの陰謀でロケット本体が奪われてしまうというトラブルが発生(汗)。必死にロケットを探すロイたちでしたが、ちょうどこのシーンの時に後ろの違うチーム内にアルを演じてた大嶺巧さんの姿があってww。心の中で「そこにアルがいるじゃないか!!」とツッコミ入れずにはいられませんでした(笑)。

動揺した彼らはホーマーに連絡して何とかしてもらおうと話し合う。その連絡を聞いたホーマーはジョンに少しの時間で良いから工場を使わせてほしいと懇願しますが、現在ストライキ中ということもあり全く聞く耳を持ってもらえなかった。それどころか、炭鉱夫が嫌なら町から出て行けと怒鳴ってしまうジョン…。悔し涙を浮かべて家を飛び出すホーマーを背にしながら、ジョンも苦しそうな表情をしてたな…(涙)。

この様子を目の当たりにしたエルシーは、ジョンに最後通告ともいえる言葉をぶつける。「炭坑の話じゃなくて、家族の話をしているの」と必死に訴える彼女の言葉は非常に重い…。炭鉱はストライキに入ってしまいジョンがそれに頭を悩ませているのは重々承知の上、エルシーはそれでも今だけは家族に目を向けてほしくて血の出るような想いをぶつけるんですよね…。まさに賭けみたいな。彼の頑なな気持ちを動かすのはやっぱりエルシーしかいないだろうなと思いました。

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♪お前はおまえ(リプライズ)♪

♪世界を知りたい♪

肩を落としながら家に戻ってきたホーマーと庭で遭遇したジョン。そこで彼は息子に自分のこれまでの人生は間違いだというのだろうかと初めて弱音を見せました。失うかもしれないことの大きさに苦しむ父を見たホーマーは、「僕たちは思っていたよりも似ている」と告げたうえでもう一度自分の気持ちの全てを訴える。

ジョンから見ればとうてい認められないことばかりかもしれない自分だけど、閉鎖されたこの社会を打ち破り新しい世界を見たいという気持ちだけは変わらない。石炭が溶かした鉄でロケットはできている。実は父と息子は根っこの部分では繋がっていたんだというフレーズは特に印象的です。

そしてホーマーは父に初めて「誇りに思う」と言ってくれた父に感謝の気持ちを伝えました。これはジョンの心に一番グッと響いたんじゃないかな…。その瞬間に彼は初めてホーマーの本当の素顔を見た気がしたのかもしれないと思ったら涙があふれて止まらなくなった(泣)。

ライリー先生に教えてもらったように、成功するとは限らないことでも挑戦することに意味があることを切々と訴えたホーマー。息子の先行きを心配してロケットづくりを反対していたところもあったであろうジョンは、彼の本気と成長を実感したんじゃないだろうか。そんな自分の本音を必死に隠しながらも息子の言葉に心打たれ感極まりながら受け止めようとしていたジョンの姿に号泣でした(涙)。

ホーマーは再びロケットボーイズたちの仲間の輪に加わります。おそらくそれまでとは違う新たな喜びと情熱をもって…。

♪終曲 星を見上げて(リプライズ)♪

そしてラストシーン。再びロケットを飛ばす10月のある日の夜、大きな奇跡が起こる。ここからの流れがもう感動的という言葉を越える展開で…、なんとなく結果は読めてはいたのに大号泣状態になってしまった。今までの様々なドラマがあってこそのあのラスト、本当に最高だった。

たとえその先にまた問題が発生したとしても、あの瞬間だけはみんな一つに繋がっていたと思う。気持ちが重なることの素晴らしさを改めて教えてもらったような気がしました。あの瞬間をもっと多くの人に体感し見届けてほしかったです。

キャスト感想は次のページにて。

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