ミュージカル『オン・ユア・フィート !』東京公演 2018.12.20

ミュージカル『オン・ユア・フィート!』を観に日比谷のシアタークリエへ行ってきました。

この作品が2018年観劇納めということになりました。11月と12月は金銭的事情もあって1本ずつに抑えていたので(交通費が… 汗)、今年の後半は観劇面では辛抱の月といった感じです(苦笑)。

『オン・ユア~』は来年に大阪公演もあるのでそちらを観に行ってもよかったのですが、今回ちょうど関東の実家に里帰りするタイミングと重なったので、舞台に興味のある母親と一緒に観れるもの…と調べた結果、東京で観ることとなりました。

久しぶりにシアタークリエを訪れましたが、もはやあの狭いロビー空間ですら懐かしくて嬉しいw。関東に住んでた時はあんなに通ったのに、遠方住まいになってしまうともうめったに来ない場所になってしまったのでちょっとテンションは上がりますね。

ロビーの壁にずらりと並んだクリエ上演作品のチラシ。前半部分は観たことがあるものがかなり多かった(ちなみに、杮落しの三谷作品は最前列で見てましたw)

東京公演中は「カラフルウィークデーキャンペーン」というイベントが開催されていて。月・水・木・金それぞれの曜日ごとに違った企画がありました。

私たちが観劇した木曜日は『イエロー・サーズデー』。舞台本編中にグロリアがファンのTシャツにサインをするシーンがあるのですが、それを抽選応募したお客さんにプレゼントっていう企画やってました。

休憩時間までに申込用紙に必要事項を書いて応募。とりあえず私もチャレンジしてみました。
が、たった2枚しかないので…カスリもせずに落選(笑)。まぁ、そんなもんよww。

 

以下、ネタバレありの感想になります。

 

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2018.12.20 ソワレ公演 in シアタークリエ(東京・日比谷)

主なキャスト

  • グロリア・エステファン:朝夏まなと
  • エミリオ・エステファン:渡辺大輔
  • ホセ:栗原英雄
  • レベッカ:青野紗穂
  • コンスエロ:久野綾希子
  • グロリア・ファハルド:一路真輝

今回驚いたのは、子役のレベルの高さです。

特に、リトル・グロリアを演じた藤巻さんの歌唱力にはビックリ!!今まで見てきた子役の中でも群を抜いて上手かったんじゃないだろうかっていうくらいで、一緒に観劇した母親もかなりビビっておりました(笑)。

リトル・エミリオとグロリアの息子・ナイーブを演じた木村くんも澄んだ歌声だったし、存在感がキラキラしていて目を惹きました。

ミュージカル界の将来は明るいかも!できれば二人とも長く舞台を続けてほしいです。

 

あらすじと概要

80年代から90年代にかけて世界的大ヒットを飛ばした”グロリア・エステファン&ザ・マイアミ・サウンド・マシーン”

私の学生時代に全盛期だったグループではありますが、当時はほとんど洋楽に興味がなくて彼らのことは知りませんでした。
が、グロリア・エステファンの名前だけは耳に残っていました。洋楽に全く疎い私の記憶にその名前が残るくらいですから、よほどの人物ではないかと。

このミュージカルは、グロリア・エステファンの波乱に満ちた半生を描いた作品です。彼女の名前しか聞いたことがないので、初めて知るエピソードだらけで大変興味深く面白かった。

誰でも聞いたことがある楽曲といえば、やはり『コンガ』ではないでしょうか。

 

あらすじは以下の通り。

歌の大好きなグロリアはキューバ移民の両親のもと、マイアミという開放的な場所で暮らしていたが、戦争によって身体が不自由な父親や妹の世話に追われ、歌の才能を発揮できずにいた。

ところがある日、祖母の計らいで、地元で名の知れたバンドのプロデューサー、エミリオ・エステファンの前で歌を披露することに。それは輝かしいスターへの階段を駆け上るとともに、栄光と挫折の日々の始まりでもあった――。

<公式サイトより引用>

 

今回のミュージカルを見てグロリア・エステファンに少し興味を持ったのでネットで少し補足しようと調べてみました。

グロリア一家はキューバ革命の影響でアメリカのフロリダ州マイアミへ亡命していました。マイアミにはグロリア一家と同じように亡命してきたキューバ人がたくさん移民として住んでいたようですね。

一番気の毒だなと思ったのが、グロリアの父親のホセ。劇中にもエピソードがチラチラ出てきましたが、イマイチ分かりづらい部分もあったので調べてみたら・・・かなりの波乱万丈な人生を送られていました。

ホセは大統領のボディーガードを務めるほど優秀なキューバ軍人でしたが、キューバ革命でカストロが政権を取ると2年間「反対分子」とみなされて投獄されてしまったそうです。そののち家族を連れてアメリカへ亡命したと。
カストロの独裁政権によってキューバの人たちは長きに渡って不自由な生活を余儀なくされた…ということはニュースなどで聞いていましたが、おそらくそれは想像以上の苦しみだったのではないかと思います。

さらにその後、ホセはベトナム戦争に行くことになりますが・・・枯葉剤の影響によって体を壊してしまったと(涙)。劇中でホセが重い病に冒されている描写が出てきましたが、その原因がベトナム戦争の枯葉剤だったというのが…なんとも胸の痛むエピソードです。

グロリアの母親が「キューバもアメリカも私の大切な人を奪った!!」と悲嘆する場面もありましたが、こういった背景があると分かるとなおさら切ない響きとなって受け止められるシーンになると思います。

グロリア・エステファンはそんな家族の中で生まれ育っていました。おそらく、お父さんのことは特に気にかけていたのではないかと思います。

 

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感想

『マンマ・ミーア』の成功以降、『ビューティフル』や『ジャージーボーイズ』などジュークボックス・ミュージカルというジャンルが確立されてきたような気がしますが、この『オン・ユア・フィート』もその中の一つになるのではないかと思われます。

ストーリーの最初は華々しいグロリアのライブシーンからスタートしますが(のっけから大音量の音楽がドーンとくるのでめっちゃビビったww)、なにやらグロリア自身が精神的な疲れをみせている。彼女の心の中になぜあのような感情が出てきたのだろう…と観ている者の心をざわつかせつつ、ストーリーは子役時代へとさかのぼります。
実は、このあたりの流れのテンポがちょっと早くて…最初はストーリーがよく分からなかったりしたんですよね(汗)。急に女の子が完璧な音程で歌い出してて何が起こったのかと思ってしまって(苦笑)。それがグロリアの幼い頃なんだと理解するのにちょっと時間がかかってしまったw。

エミリオの登場で、語学堪能で優等生のグロリアの心に「歌」への情熱が花開いていきます。エミリオのキャラクターは「英語が苦手」ってことなので話し方がけっこう独特で面白かった。最初ちょっとエセな雰囲気プンプンしてたけどね(笑)。っていうか、あのホットパンツスタイルからして吹いたww。

最初は苦手だったダンスも、エミリオの情熱的なスパルタ指導によって輝きを増していく。
宝塚のトップ女優さんだった朝夏さんがカチコチになって動く場面はなんだかすごく奇妙に見えたのですがw、あれはあれでなんだか可愛らしい動きだったなぁとも。逆に、踊れる人がああいった「踊れない芝居」をする方が大変じゃないかと思います。

グロリアは最終的にはカッコいいダンスを見事に自分のものにして仲間と溶け合うことができていましたが、私はリズム感がゼロなので無理だな…と自分と重ね合わせてちょっと苦笑いww。勉強一筋の秀才な彼女が苦手なダンスをあのように克服したのには本当に並大抵の努力ではなかったかと感心して見てしまいました。

エミリオと共に楽曲の売り込みに行くシーンは、『ジャージーボーイズ』の展開と重なるものが多かったです。やはり最初はどんな人(グループ)も大変な苦労があったんだなぁと改めて。特にDJに売り込みに行く場面はフランキーの『君の瞳に恋してる』をボブが必死にPRしてた場面を思い出しました。
ただ、キューバ移民のグロリアたちならではの苦労や悔しさという部分がクローズアップされていたのはこの作品ならではの展開だったかなと。

彼らの努力は実ってライブの回数も増えていきますが、それと引き換えにグロリアは自分の家族に接する時間が減っていってしまいます。
そのことに激しい不快感を露わにしたのが母親のグロリア。本心ではその成功を喜んでいるのですが、エミリオとの仲も親密となり家族と距離を置く生活になっていった娘のことを許せない気持ちも強い。さらに、かつては自分も歌手を志していたものの家族に反対されてその道を断念した過去がある母は、娘にとても複雑な感情を抱いていたのです。

キューバ革命の混乱期を経験したことで家族への愛が人一倍深い母の気持ちも分かってしまうし、大好きな歌の世界でもっと頑張りたいという娘の気持ちも分かってしまうんですよねぇ…。この母娘のすれ違いのシーンはけっこう濃く描かれていたので切なくなってしまうことが多かった。

そんな微妙な関係の中で、大々的に娘を応援してくれる祖母と、魂の世界の中で娘を気遣い応援してくれる父親の場面は救いでもありました。
明るく前向きなおばあちゃんの存在はどんなにかグロリアの精神的救いになっていたか。そして、直接の意思の疎通はできなくても、父親の娘を想う心がグロリアに届いてると確信できるシーンもかなり泣けましたよ(涙)。

父との哀しい別れのあと、1幕クライマックスで世界的大ヒットとなる『Conga』が登場します。グロリアのアイディアが織り交ぜられたラテンのリズムでノリノリなこの曲は、彼女たちの知名度を一気に押し上げる。

手拍子しながら「この曲は知ってる」と思いながら聴いていると、グロリアが「みんなもっと盛り上がってーー!」みたいな掛け声をかけてきて。あれよあれよという間に1幕ラストで劇場が総立ちのライブ会場状態に(笑)!!
まさか1幕からスタンディングするとは思ってなかったのでちょっと慌てたけどww、やっぱりあの曲は立ち上がってノリノリで踊りたくなっちゃいますよね~(踊りはしなかったけどw)

 

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個人的には、グロリアの家族のストーリーのほうが印象に強く残っているのですが・・・エミリオのサイドにもドラマはあるわけで。
彼もキューバ革命の時に家族が分かれてしまうという辛い経験をしている。ツアー中に感傷に浸るエミリオの場面はグッとくるものがありました。

が、それ以外のところはあまりエミリオの内面は描かれていなかったように思いました。やはりグロリアが主役ですからそこのあたりは仕方ないかなって思ったんですが、今ひとつ彼に関するエピソードとの釣り合いが取れていないかも…っていうのは感じたかな。少し物足りなさもあった、みたいな。渡辺くんがかなりの熱演だったので、そこは勿体なく思ってしまいました。

グロリアとエミリオが恋に落ちる描写はなんとなく伝わったんですけど、結婚に至るまでのエピソードはかなりサラリと描かれていて(汗)。正直、二人がいつどのタイミングで結婚に踏み切ったのかが今でもちょっと分からない・・・ww。
この作品の中では、グロリアとエミリオの恋愛結婚という部分のドラマはそんなに重点が置かれていなかったのかもしれない。でも私はそこももう少し見てみたかったんだけどね(苦笑)。

活動は絶頂期に入っていましたが、グロリア自身はエミリオが次々と持ってくる仕事をこなしていくことに心の余裕を失いかけていきます。それがストーリーの冒頭部分に繋がってくるのかなと。お互いに腹を割った話し合いができない中、大きな事件が起こる。

ツアーに向かう途中、乗っていたバスが事故に巻き込まれグロリアが意識不明の重体となってしまう。1990年のことでした。ネットで調べてみたら、後ろから猛スピードで大型トラックが突っ込んできたそうですね。想像するだけでも恐ろしい…!

意識が戻らないグロリアに祈るような気持で寄り添う母親とエミリオ。それまで母はエミリオのことを認めてはいませんでしたが、二人でグロリアのことを想い看病していくうちに心を開く関係へと昇華していきます。
娘が瀕死の状態となって初めてそのような関係になったことは皮肉な展開だなとも思いましたが、これはきっと、グロリアが結び付けてくれた関係なんだろうなと思うとなんだかジーンとなってしまいましたね(涙)。

さらに母と娘の少しこじれた関係もこの事故をきっかけにして良い方向へと変わりました。なんだかんだあったとしても、やっぱり母と娘の絆は深いところで結ばれてるんだなって思えて感動しました。

そして、なんとか意識を取り戻しリハビリを開始できるまで体力を回復させたグロリアでしたが、エミリオが持ってきた次のステージに関しては「惨めな自分を見せたくない」と激しく拒絶。
それでもエミリオは彼女のためにと必死に説得をします。この後半のグロリアとエミリオとの攻防のやり取りはかなり感動的でした。ここにきてやっと、エミリオのグロリアへの深い愛情がしっかりと心に伝わってきたんですよね。

それ故に、彼女を再びステージへと向かわせる大きなきっかけとなるあのシーンが出てきた時はこみ上げてくるものがありました。復活コンサートはとても感動的で思わず涙が溢れたほどです。

 

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