ミュージカル『RENT』08.12.02マチネ

シアタークリエで上演中のミュージカル『RENT』を観てきました。

約10年前に日本初演されたときは山本耕史くんのマークや宇都宮隆さんのロジャーが話題になっていましたが、あの時はちょっとテーマが重いんじゃないかと思って観劇しなかったんですよね…。今から思うと本当にもったいないことをしたと後悔してます。

ちなみに98年の再演にはベニー役で泉見洋平くんも出てて…この作品が彼にとっての転機になったそうで…返す返すも観なかったことを悔む私(苦笑)。再演を見た友人が「すっごいよかった!」と大絶賛しててもついに観ることなく終わってしまった(汗)。

しかし、2年前に『RENT』の映画が公開されたとき初めてこの作品に触れて…大感動!!

テーマは確かに重いですが、あのロック調の音楽がたまらなくソウルフルで感動的でボロ泣きしながら見たんですよ。「絶対好きな作品だと思った」と後日友人に言い当てられた私(笑)。

 

それからしばらくして日本でまた再演されると知って・・・この日が来るのを本当に心待ちにしてました!

映画しか知らなかったので生の舞台はどんな感じかと思っていましたが、映画よりもさらにエピソードが多くて「へぇ、こんなシーンもあったんだ」とか新たな発見がいっぱいありましたね。英語のセリフで聞き慣れていたので日本語訳に最初はちょっと違和感を感じてしまったんですけど、それも早い段階で解消できて・・・生の迫力を存分に堪能してきました。やっぱりダイレクトに歌や想いが届いてくる舞台は素晴らしい!

今回は全員オーディションで選ばれたというだけあって歌唱力は何の問題もないですね。素晴らしいロック音楽をガンガン聴かせてくれて観ていて思わず体が動きそうになりました(笑)。
それと思ったのが、日本版なんだけどアメリカナイズされてるなってこと。日本語で歌ってるんだけど英語のオリジナル観てるような感覚になりました。台詞の喋り方が日本語チックじゃないんですよ(笑)。英語の発音もかなり忠実に再現してると思うし、さらに出演者も国際感覚豊かな人が多い。ものすごく新鮮な舞台でした。
ただ気になったのが音響とセット。ロック音楽なので舞台端っこでバンドが演奏する形になっているんですけど・・・この音量がちょっと爆音すぎて歌い手のバランスが悪いかもって思うところが何箇所かありました。

役者さんはもう最大限に声を出してるんですけどどうしてもバンドの大音量にその歌が飲み込まれてしまうみたいな・・・。すごく勿体ない。クリエという劇場の音響と合わないのかなぁ?

それからセットなんですが・・・なぜかものすごく小さなロジャーとマークの部屋が1つあるだけって感じでちょっと違和感(苦笑)。部屋というよりも貧相な箱って見えちゃったんで…あれだったらいっそセットなしで違う演出として配置するのもよかったんじゃないかなぁと。

初演・再演の日本語版はどんな感じだったんだろう?

この作品は全編ロックで早口になるナンバーが多いので、初めての人はセリフが聞き取りづらくそれぞれの関係性を理解するのに少し時間がかかってしまうかもしれません。少し前知識としてネット検索などから情報を得るか、映画のDVDを見ておくといいかも。私は映画版を見ていたおかげですごく楽しめたんで。
ちなみに私が観劇した日はなぜかご高齢の方が多くいらっしゃってて・・・「いやぁ…音楽が迫力ありすぎて疲れたなぁ」なんて感想を耳にしてしまいました(苦笑)。ロックロックした音楽が苦手な人はちょっと向かないかもしれませんが・・・でも、この作品のロックは魂に訴えかけるような心揺さぶるナンバーばかりなのでいろんな人に観てほしいです。

 

主なキャスト

マーク:森山未來、ロジャー:K、コリンズ:米倉利紀、ミミ:Jennifer Perri、エンジェル:辛源、ジョアンヌ:Shiho、モーリーン:Mizrock、ベニー:白川侑二朗安崎求 ほか

 

以下、ネタバレ込みのキャスト感想などです。

 

 

「RENT」はジョナサン・ラーソンが脚本・作詞・作曲を担当した作品で80年代後半から90年代にかけてのアメリカの退廃的な背景をロックミュージカルにしたものです。

ジョナサン・ラーソンはこの作品がオフブロードウェーでプレビュー上演初日を迎える日の朝、エイズのためにこの世を去ってしまいました。このことが作品にさらなる厚みを加え、オフからブロードウェーに進出しトニー賞に輝くなど数々の賞を受賞しています。

まさに、「RENT」はジョナサン・ラーソンの魂がそのまま宿っている作品として今も多くの人の心を揺さぶり続けています。

 

自称映像作家のマークと元ロックミュージシャンのロジャーはNYの倉庫ビルで生活していますが、そのビルのオーナーであるベニーから再三家賃(レント)を払うように迫られている。しかし彼らにはお金がない。そんな二人にさまざまな人が絡んでくるのですが、皆それぞれに事情を抱えています。
風俗系ダンサーのミミ、ハッカーのコリンズ、ドラッグクイーンのエンジェル、アングラパフォーマーのモーリン、エリート弁護士のジョアンヌ
ロジャーとミミは恋仲になりますがそこにはエイズの恐怖クスリの誘惑があり、コリンズとエンジェルは男性同士の同性愛関係になりますが彼らにもエイズの恐怖が付きまとう。モーリンとマークは恋人同士でしたが今ではモーリーンは弁護士のジョアンヌと女性同士の同性愛関係。みんな一人で抱えるには重すぎる荷物を背負っていますが、その日一日を懸命に必死に生きている
そんな彼らの一年間がロックに乗せて展開されます。

ストーリー的にはかなり重いし取り上げるテーマとしては誰もが敬遠したくなるようなことばかりなのですが、それをジョナサン・ラーソンの素晴らしいロック音楽がカバーしてくれています。
退廃的な世界にいる人々の喜びや悲しみや怒りといった感情がストレートにロック音楽に投影されている。ラーソン自身、明日をも知れぬ恐怖と闘い続けた人だっただけに・・・その背景を思い浮かべながら聞くとこのミュージカルはかなり泣けますね。
その音楽には悲壮感は全くなくて生命力で満ちあふれている。聴いているだけで心の奥がゾクゾクしてくるのが分かるし、いつの間にかものすごく感情が揺さぶられているんです。
未来が来ることを保証されていない若者たちの魂の叫びは、今この時を精一杯生きる大切さを伝えてくれているような気がします。
特に心揺さぶられるナンバーはやっぱり2幕冒頭の「Seasons of Love」ですね。

映画では冒頭に流れた曲だったのですが、初めて聞いた時に涙があふれて仕方なかったんですよ。なので今回2幕最初にキャスト全員によるこの曲が始まった時には・・・条件反射的に涙が溢れてしまいましたね。このナンバーは本当に今生きていることのありがたさみたいなものを痛感させられる。あの美しい旋律が本当に素晴らしい。

それからロジャーとミミが歌う魂の叫び「Anoter Day」、エンジェルとコリンズが歌う愛が溢れる「I’ll Cover You」、モーリーンとジョアンヌが歌うコミカルな「Take Me Or Leave Me」も大好き。実際に生で聞くと映画とは違った感動が押し寄せてウルウルしっぱなしでした。
そしてラストの「Finale B」は猛烈に泣けます!!マークの撮りためた映像が流れるだけで落涙(涙)。あの中には希望と未来がすごく感じられる。心が揺さぶられるっていうのはこういうことなんだろうなぁっていうのを実感。

 

森山くんのマークは歌声に迫力もあるし抜群の身体バランスで動きも面白いしで見ごたえがありました。「タンゴ・モーリーン」のシーンでポケットからお金が落ちてしまってジョアンヌに拾ってもらって苦笑いしてたのは…アクシデントかな?なんか可愛くて笑っちゃいました。
 

Kさんは韓国の方です。今回ダブルキャストのロジャーということなのでぜひ彼の歌が聞いてみたくてこの日を選びました。ポップス系の歌を歌っていたのはテレビで知ってたんですけど、ロックもかなり歌えるんですねぇ。びっくりしました。顔がちょっとリュ・シウォンに似てるかも?

 

米倉さんのコリンズはホント素晴らしいの一言!以前彼の歌をラジオなどで聴いていましたが、今回生で初めて聴かせてもらって・・・その温かく大きな愛で包み込むような低音の歌声に感動しまくり。大好きなコリンズです。

 

Jenniferのミミはすごく可愛いです。映画のミミとイメージがけっこう重なって違和感がなかったですね。歌声もカッコよかったです。

 

辛源さんのエンジェルも素晴らしかったなぁ~。女装がものすごく似合っててかなり可愛い!コリンズが惚れちゃうのも納得です。ピュアな歌声に聞き入ってしまいました。

 

Shihoさんのジョアンヌはかなりカッコイイ!ジョアンヌって「Seasons of Love」でソロが入るかなり重要なポジションなのですが、その歌声もしっかりして安定していましたね。男前な姉さんって感じがよかったです。

 

Mizrockのモーリーンはちょっと迫力不足だったかも?映画のイディナ・メンゼルによるダイナマイトな高音に慣れてしまったせいもあるかもしれませんが、もう少し声に透明感も欲しかったような・・・。でも「Over The Moon」の牛の声を客席に求めてるのはけっこう面白かった。

 

白川侑二朗さんのベニーは悪役っぽいポジションではあるんだけどどこか憎めない感じで可愛かったです。これを前回洋平くんが演じてたんだなぁと思うとなんか感慨深かった…。歌も安定感がありますね。ちなみに経歴に最初相撲部屋だったというのがあったは正直驚きました。ヒーロー役者からしか知らなかったんで(汗)。

 

それから若い役者さんのサポート的な感じで安崎求さんが出演していたのもよかった。もう少し安崎さんがお若ければ主要キャストのどれかできたと思うんですけど…(笑)。

 

次回はもう楽間近…。違うキャストで見るので楽しみなのですが…できればもう一度その前に観たいなぁ。

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