ミュージカル『RENT』10.11.02マチネ

今期2度目のミュージカル『RENT』を観に行ってきました。

 

表にはキャスト変更の貼紙が…。本来ならばこの日のロジャーはAnisくんが演じるはずだったのですが体調を崩してしまったようで長期休演という事態に…。

そこで急遽キャスティングされたのが藤岡正明君です。

他のキャストよりもずっとずっと短い稽古期間でデビューした3人目のロジャーにこの日出会える事となりました。
ちなみにパンフレットも新たに舞台写真が加わったものが発売されていますが、ちゃんと藤岡君の項目もページとして追加されていました。前回購入を見送っておいて正解だった(笑)。

この日の客席も8割以上の入りでかなり盛況。どちらかというとご高齢の方の観劇が目立ったように思えました。内容的にはちょっと刺激が強いものが多いのでどうなんだろうかと思いましたが、私の前に座っていたご婦人たちは食い入るように舞台に魅入っていたのが印象的でしたよ。やはりいい舞台は老若男女関係なく惹きつけるものなんだなぁと感じた次第です。

ただ、曲と曲の間の拍手の回数が少なかったのがちょっと残念。みんな圧倒されちゃって拍手するのを忘れてしまった…と良いほうに捕らえていいんだろうか(汗)。"Another Day"の後に大拍手が起こるかと思ってたんですがシーンとなってて、自分ひとり手をたたく勇気がなかった私です(苦笑)。ホントに素晴らしかったんだけどなぁ。

約半月ぶりの『RENT』ではありましたが…ビックリするほど進化しております!かなりの好位置で観劇できたこともあり感動もひとしお…。号泣してしまうシーンもいくつかあって、本当にとても充実した時間を過ごすことができました。

個人的にちょっと体調をおかしくして悩んでいた時に観た事もあり、今まで観てきた『RENT』の中で一番心の中に響いたかもしれない。この舞台の上からたくさんの生命力や活力をもらえたような気がします。

 

主なキャスト

マーク:福士誠治、ロジャー:藤岡正明、コリンズ:米倉利紀、ミミ:ソニン、エンジェル:田中ロウマ、ジョアンヌ:Shiho、モーリーン:キタキマユ、ベニー:白川侑二朗安崎求 ほか

 

以下、ネタバレ込みのキャスト感想などです。

 

この日もキャスト変更の貼紙の下になぜか撮影カメラ設置の断り書きが…。映像化するつもりは版権の問題もあるからないと思うんですが、またどこかで演劇関係の番組とかで使うのかな?それともいつも録画機材が入っているとか?

今回は印象に残ったキャストについてを中心に感想を書いていこうと思います。

 

マーク@福士誠治くん

福士くんの歌は決して上手いとは言えないんですけど、とっても聞き取りやすいんです。音程もそんなにずれてないし違和感もありません。それどころか、公演も半分過ぎてきて確実に彼の歌は進化しているなと感じました。

冒頭の♪RENT♪の熱唱からもう全力投球で素晴らしい勢いでしたよ!熱血漢で真面目なんだけどどこか抜けてるような親しみやすさがあり感情移入がしやすい。
コミカルな芝居にもちょっと余裕が出てきたようで、それが一番顕著に出てたのが♪Tango: Maureen♪。Shihoさん演じるジョアンヌとモーリーンをネタにして単語を踊るシーンなのですが、ここの動きがとても面白かった。前回はここにあまり時間を取ってなくて少し物足りなかったんですけど、福士君なりのマーク像が出来上がってきたのかロボットみたいな動きをしてみたり無理に足を開こうと頑張っていたり(笑)その姿がとにかく滑稽で楽しかった。
一番グッとくるのは2幕からのマークの苦悩ですね。福士君の演じるマークからはとてつもない孤独感を感じるんです。周囲が変化していく中、自分だけが空回りしてどこにも行き場がないと苦しんでいる。そのやるせなさや怒りの感情をロジャーにぶつけていくシーンは見ているこちらも胸が張り裂けそうになるほど切なくて涙が止まらなかった。自分自身の中で抱えているどうしようもない負の感情を吐き出していく芝居は本当に秀逸です。

藤岡君との相性もいいようですね。このコンビでできればもう一度見てみたい気がします。チケット足そうかな…。カーテンコールの時には放心状態の福士君。それだけ出し切っているんだなぁと思いました。

 

ロジャー@藤岡正明くん

急な代役で稽古期間も相当短かったと聞いていますが…それであの完成度は本当に素晴らしいと思いました。

藤岡君の演じるロジャーは今まで見てきた中でもどちらかというと庶民的って印象がありますね。ロック歌手としてのカリスマ性みたいな部分はあまり感じないんですが、ふと隣を見るとそこにいるって感じの親しみやすさがあった。こんな新しいタイプのロジャーもいいんじゃないでしょうか。福士くんのマークとも本当に目線が同じといった感じの関係でよりリアルに見えたかも。

冒頭の♪RENT♪熱唱、すごかったですよ!エンジン全開で声を枯らしかけながら全速力で顔真っ赤にしながら歌ってました。あんな藤岡君の姿、初めて見たかも。すごく新鮮。それでいて、ミミに誘惑されるシーンではものすごい翻弄されてて…その戸惑いっぷりが可愛いのなんの(笑)。かなーーり萌えてしまった。ソニンちゃんが演じているのでたまーに"キムとクリス"を思い出しちゃったりもしたし。とにかく、喜怒哀楽がハッキリしている芝居をするのでロジャーの心の動きが掴みやすいし感情移入しやすかったです。

特に印象深かったのは♪Another Day♪のナンバーですかね。この作品の中で一番グッと来るシーンなんですが…藤岡ロジャーのこの時の芝居と歌には…なんていうか、ものすごく魂を揺さぶられました

外へ出るべきと言うミミの誘いを必死に拒絶しているロジャーの苦しみが痛いほど伝わってきて、気がついたらもう号泣(涙)。藤岡ロジャー見てたら涙が溢れてあふれて仕方がなかったです。思い出しても泣ける…。

カーテンコールでは顔を真っ赤にして汗をかきながらも笑顔で客席に応えてくれていました。まるでマラソンを走りきった後の選手みたいだった。そんな表情を見ていたら、なんだか無性にもう一度会いに行きたくなってしまった…。

 

コリンズ@米倉利紀さん

相変わらず素晴らしい歌声と安定感。米倉さんのコリンズってものすごい包容力を感じるんですよね。エンジェルが惹かれていくのが納得できる魅力と安心感みたいなものがある。
英語の発音もとても綺麗でセクシーだし、低音ヴォイスが本当にすごく心地いい。

1幕と2幕にそれぞれ♪I'll cover you♪が歌われるのですが、1幕はエンジェルと超ラブラブモード。この時のすごく幸せそうなコリンズが微笑ましいのです。それだけに2幕のリプライズは本当に泣けます…。エンジェルを想う心の深さが痛いほど伝わってきてこのシーンでもボロ泣きしてしまいました(涙)。

 

ミミ@ソニンちゃん

NHKで彼女のミミを特集した番組を見ていたせいか、前回よりもすごく感情移入してしまった気がします。ソニンちゃんのミミからはものすごく強烈な『生きる』ことへの執着が感じられる。

ドラッグに溺れ、エイズ発症の恐怖に震えボロボロになっていても、いつもどこか生きたいという執念が息づいているんですよね。恋人のロジャーとの微妙な関係で彼女の心と体がボロボロになっていく過程は本当に危うくて見ている者の心に突き刺さります。

そんな彼女が命の危機と直面し、再び蘇るというあのラストシーン。最初に見たときはこの展開にすごく驚いて『なぜこんな結末になったんだろう』とすら思ったりもしましたが、特集番組の中でソニンちゃんがこのシーンに対する想いを語っていたのを見ていたので、なんだか初めてストンと腑に落ちるようなものを感じ溢れる涙を止めることができませんでした。

このラストシーンのミミには将来への希望と確信が込められているんだなと納得できた気がします。それはきっと、ジョナサン・ラーソンが死の瞬間まで望んでた世界だったと思う。

 

エンジェル@田中ロウマくん

前回観た時よりもなんだか知らないけど数段可愛く見えました(笑)。

特に1幕の♪Today 4 You♪でのクリスマス扮装が可愛くて、こりゃコリンズも惹かれるよなぁとこちらでも納得みたいな。彼のエンジェルってなんか男性でも女性でもない魅力を感じるんですよね。本当に天使みたいな子。見た目は女の子の扮装をしたりしているんだけど、それだけではない、なんだかとてつもなく大きな愛を感じます。
そんな彼が2幕で死の間際にベッドの上で絶唱するシーンは本当に涙を誘います…。この世に何かを必死に遺そうとしている気がして…。コリンズの握る手からすり抜けるようにして天へと旅立つ田中エンジェルの後姿に涙が止まりませんでした…。

 

ジョアンヌ@Shihoさん

前回観た時よりも感情表現がとても前面に出ていて見ていてとても面白かったです。マークとの奇妙な友情関係、そして愛するモーリーンに対する複雑な女心…。ジョアンヌって本当に真面目人間なんだけど愛する人に対してはすごく不器用なんですよね。それ故に自由を求めるモーリーンにいつも翻弄されてしまってて。その苛立ちと愛情との間で激しく揺れ動く女心みたいな部分がとても良く表現されていたと思います。
そしてあのハスキーな歌声がとっても素敵!♪Seasons of love♪での彼女のソロ部分は本当に胸を打ちます…。今回もシッカリ泣かせて頂きました。

 

モーリーン@キタキマユさん

前回はなんとなく影が薄く見えたんですが、今回は異様に存在感を感じました。近くで見ると…彼女のモーリーンはもんのすごく美人で可愛らしい!!

 ♪Over the Moon♪では前回よりも客席とのコンタクトに余裕が感じられて色んな動きも増えてました(笑)。
印象的だったのはエンジェルが死んでしまった後のモーリーン。コリンズよりも号泣してた。ミミがロジャーに話しかけようとした時にベニーはそれを諌めようとするのですが、「誰と話そうが彼女の自由でしょ」と泣きながらベニーに抗議していた姿にグッときました(涙)。

 

ベニー@白川侑二朗くん

前半の透かしたキザな雰囲気が個人的にすごいツボです(笑)。ガタイがよく背丈もあるのでカッコイイし見栄えもいい。

それでいて歌声が透き通っていて綺麗。2幕に入るとベニーの複雑な感情が色々と顔を出してきます。仲間と別れて金持ちのお嬢さんと結婚したことを心のどこかで引け目に感じているような表情をチラっと見せた時がとても切なかった。
エンジェルの死後、ベニーが少し彼らと近づけたみたいなシーンがあるんですが個人的にはその部分がとても嬉しかったりしますね。

他のキャストの皆さんも本当に熱演で、着実に前回よりもパワーアップしたRENTが観れてよかったです!2幕はほとんど泣きっぱなしになるほど素晴らしかったし、観に行けてよかった。

藤岡くんがいる間にもう1枚追加してしまおうかな…。

 

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