赤坂ACTシアターで上演されたミュージカル『スクルージ~クリスマスキャロル~』を観に行ってきました。ハイ、日帰り遠征ですw。
12月は手放せないチケットがいくつかありましたが、これもその一つ。どーーーーーしても、行きたかった。
と、言うのも、私はこの作品を97年と99年に観ていまして…、その当時もう、自分でもびっくりするくらい泣いたんですよね。99年公演時に劇場限定で当時のキャストのCDが発売された時には真っ先に購入して、家に帰って聞いては涙していたくらいこの作品は私の心の琴線に触れまくっていたんです。あのあと、スクルージはクリスマス時期には2年おきくらいに上演されるんだろうなって漠然と思っていました(同時期に市村さんの一人芝居クリスマスキャロルもあったので)。
ところが…、なぜか、この14年間全く音沙汰がなかった…。あんなに素晴らしい作品なのになぜ上演されないんだろうとずっと疑問に思っていましたが、数年前くらいからもうあきらめの境地に入ってて。
そんな時に、再演のニュースが飛び込んできて、そりゃもうビックリしましたよ。上演期間は短いけど何としても行くんだと複数チケット取ってましたw。が、それが叶わぬ土地へ越してしまったので手放したわけですが…どうしても1回分だけは諦めきれずというわけで。あのまま関東にいれば、私は間違いなくリピートしてました。それくらい大っ好きな作品です。
劇場内には素敵なクリスマスの飾りがあちこちに。役者さんに届けられた楽屋花もクリスマス一色で楽しませてくれてました。
1階の客席ロビーでは市村サンタがお出迎えです。
著名人からもたくさん花が届いてましたが…そうそうたる名前の数々に、さすが市村さん!と唸ってしまいました。
これまでの「スクルージ」感想一覧
主な出演者
エベネザー・スクルージ:市村正親、ボブ・クラチット:武田真治、イザベル/ヘレン:笹本玲奈、ハリー/若き日のスクルージ:田代万里生、ジェイコブ・マーレイ:安崎求、過去のクリスマスの精霊:愛原実花、フェジウィッグ夫人:今陽子、現在のクリスマスの精霊:今井清隆、トム・ジェンキンス:石井雅登、ティム坊や:古家茂晴 ほか
以下、ネタバレを含んだ感想です。
主人公は、クリスマスキャロルに出てくる守銭奴のエベネザー・スクルージ。事務所の従業員であるボブ・クラチットの給料を長い事上げることもなく、ただ機械のように働かせているような非情な性格の持ち主。町の人々に金を貸しては利子を吊り上げ皆から嫌われ者扱いを受けている。偏屈で愛想もなく、貧しい人への施しの心も失ってしまったスクルージ。
そんな彼の元に、かつての相棒で今は亡きマーレイが体に鎖を巻きつけたままの姿で突然現れる。彼の犯してきた業の重さが鎖になっていると告げてもスクルージは信じようとしない。そんな彼に、今夜3人の精霊が現れると告げて去っていくマーレイ。
そして真夜中になり、1時間おきにスクルージの元へ過去の精霊、現在の精霊、未来の精霊が現れる。彼らとの旅の中で自らを見つめ直したスクルージは…
ストーリーはざっとこんな感じです。有名な「クリスマスキャロル」が原作になっています。
いやぁぁ、ほんっっとに懐かしかった。しかも私、14年ぶりにも拘らず、セリフや仕草をほとんど覚えてて自分でビックリしました(笑)。スクルージはここでこんな行動をするんだよな、とか、あの人はここであのセリフを言うんだよな、とか、けっこう詳細に覚えてた。それほど好きだったんだよなぁと改めて再確認。
14年前の記憶とほぼ同じセリフや動きをしていたということで、あの時と基本的にはセットも衣裳も演出もセリフも動きもほとんど変わっていなかったと思います。今回の演出家さんはあの時と違う方だそうですが、当時のものとほぼ同じ形で再現してくれたようですね。それだけに、本当に懐かしかったです。
そして何よりも懐かしくて胸が熱くなったのは素晴らしい楽曲の数々です。心の中で一緒に歌えるほどほとんど覚えてた。特に印象深いのが、「しあわせ」「君…君…」「美しい日」「もう一度はじめるぞ」ですね。この4曲は無条件で涙腺大決壊するほど泣きました。
「しあわせ」は過去の精霊に連れられて自分の過去を目撃したスクルージが若いころに恋したイザベルを想って歌うナンバー。躊躇う若いスクルージに現在のスクルージがイザベルのほうへそっと背中を押すシーンがあって…もうここから私、号泣モード突入でした(涙)。本当に愛した人だっただけに、そのあと、自分の過ちで去られてしまうのがものすごく切ない…。このナンバーを歌っている時点で、現在のスクルージにはその未来が見えてしまっているわけで…もう、涙なくしては見れませんでしたね。
「君…君…」は現在と過去のスクルージが愛するイザベルとの別れに涙しながら歌うナンバー。「しあわせ」を受けてからのこのナンバーなので、もう、観ていて胸が痛くて痛くて…涙が止まりませんでした。
「美しい日」は現在の精霊に連れられてボブ・クラチットの家へ訪れたシーンで出てきます。ボブの一番下の息子、ティム坊やがクリスマスに1曲この歌を歌うのですが…もう、これも、涙なくしては聞けません!!ティムは病弱で足を引きずっている少年。家族は貧しくても温かくて皆笑ってるんだけど、ティムの小さく弱々しいながらも心がジンとくるような歌声にボブ一家は涙するんですよね…。貧しい故にまともな病院にもつれて行けず、皆がティムを心配してて…。
そんな生活を目の当たりにしてしまったスクルージは激しいショックを受けてしまうのです。自分はボブに一度も給料を上げたことはなくただただ働かせてしまっていたことを心から後悔する。それでもボブの一家は暖炉みたいに温かい。その温かさがスクルージには痛くて切なくてたまらないのです。これ、2幕の頭に出てくるんですけど、もう、最初から涙腺大決壊しておりました…
「もう一度はじめるぞ」は全ての精霊との旅を終えたスクルージが人生をもう一度やり直そうと決意して歌うナンバー。ここまでにもたくさん涙していましたが(汗)、このあたりからまたさらに涙が増量。またこのナンバーの盛り上がりっぷりが心にジンジン響くような旋律で本当に素晴らしいんですよ。
ラストシーンでリプライズがもう一度来るんですが、この時点で私の涙もクライマックス状態に(涙)。もう、頭痛くなるほど泣きましたw。声を殺すのに一苦労するくらい、嗚咽寸前になりましたね。14年前も、初めて見た16年前も同じ状況だったので、まさに歴史は繰り返すって感じでした(汗)。
それから耳に残るナンバーとしては「サンキュー・ベリーマッチ」ですね。
1回目に出てくる時はスクルージの葬式に皆が大喜びしてスクルージに死んでくれてありがとうって意味で歌うんです。ものすごいシビアなシーンですが、スクルージはこの時点で彼らがなぜ自分に感謝してくれているのか分からず無邪気に喜んでいる。笑えるようで笑えないシーンでもあります。2回目に出てくる時は、スクルージが改心した後サンタの格好になって町の人たちにプレゼントを配り歩くシーンで出てくる。ここでは皆が心からスクルージに感謝をしていてものすごく幸せな場面になってます。軽快で楽しい音楽を二つの全く違うシーンで魅せるあたり、このミュージカルの巧みなところだなと改めて思いました。
一つ残念だったのは、後半の一番の盛り上がり所でマイクの調子があまり良くなかったこと。そこで一瞬ちょっと私の集中力が途切れかけたんですが、市村スクルージは魂込めて歌ってて・・・その姿にかえって感動が倍増いたしましたが、やはり、ちゃんとクリアな音で聴きたかったなというのはあります。
14年前とちょっと演出が変わったかなと思ったのは、マーレイが連れてくる亡霊ですかね。以前はもう少し大きかった気がするんですが?あれ、気のせいかな。あと、スクルージが「もう一度はじめるぞ」を歌ってている時にマーレイがフライングで安心したように見届けるシーンがあって。これも以前なかったかも?って思いました。あの時のマーレイの表情がすごくいいんですよね。とても感動的だった。
市村@スクルージ、もうこの役はこの人しかいないっていうくらいハマリ役です。あの当時よりもスクルージ本人の年齢により近くなった市村さん。しかし、衰えるどころかますますパワフルで、声の伸びも本当に素晴らしかったです!
スクルージは偏屈で嫌われ者という設定ですが、市村さんが演じると根っからの悪い人には見えません。ちょいちょい出してくる観客へのサービス精神みたいな仕草が本当に可愛らしくて(笑)。でもそれだけじゃなくて、スクルージは心のどこかで殻を破って出たい気持ちがあるんじゃないか…って思わせるような雰囲気を出してるんですよね。そのさじ加減が絶妙なので、スクルージが様々な経験を経て変わろうと決意するまでの過程をすんなり受け止めることができるんです。そういった芝居の持っていき方とか本当に素晴らしいなと思いました。
フライングも頑張ってましたね~、相変わらず(笑)。1幕から2幕のフライングの動きのキレのよさとかなんかちょっと惚れ惚れしてしまったw。
武田@ボブ、前回この役を見たのが岸田さんだったので、ちょっと若いかなと思ったのですが・・・予想外に優しいお父さんがハマり役!子供たちを見つめる目がすごく優しくて見ていて和みました。それに、歌が以前よりもうまくなってたような気がします。武田さんは市村さんが指名してこの役に入ったということですが、さすが見る目があるなぁなんて思いました。
笹本@イザベルと田代@ハリー、二人とも美声の持ち主なのですが、この舞台では出番は意外と少ないんですよね。特に笹本さんはちょっと勿体ないなと思っちゃったかも。でも、すごく可愛らしく愛らしいイザベルで素敵でした。万里生くんも相変わらず美声で聞かせてくれるのですが、やはりちょっと声量が足りないかなと思ってしまう。だけど、彼はだいぶミュージカル慣れしましたよね。動きや表情に余裕が出てきたように思います。明るくちょっと能天気なハリーがけっこうハマってて可愛かったです。
安﨑@マーレイはあの役にピッタリの迫力ですねw。フライングもかなり頑張っていらっしゃって。スクルージに「座れ」と言われて一本のピアノ線だけの状態で座らなければいけないシーンがあるのですが、そこでけっこう苦労されててw、市村スクルージに「なんか足がプルプルしとるぞ」とツッコミ入れられてました(笑)。
愛原@過去の精霊、今井@現在の精霊もハマってました!愛原さんは宝塚っぽいセリフ回しなんですがあの役には合っている温かみのある声がグッときましたね。ただ、歌はあまりお上手なほうでは…(汗)。今井さんは現在の精霊なのですが、14年前は恰幅のいい北川さんだっただけにスリムになったなと思ってしまった(笑)。だけど、あの豪快さはものすごく良く出てて。もっと弾けても良いかも、みたいに思えたほど。迫力ある美声で魅せてくれました!
14年前は駒田一さんが演じていたトム・ジェンキンスには元四季の石井くんが!アンサンブル的な役ではありますが、「サンキュー・ベリーマッチ」のソロがある大役でもあります。駒田さんに比べるとアクの強さがちょっと足りないかなとは思いましたが、町の皆のリーダー的な存在は伝わってきたし、歌も上手かったし楽しませてもらいました。
ティム坊やは新人の男の子が演じていましたが、病弱な雰囲気が自然に出ていて涙を誘いましたね。歌は不安定でしたが、14年前の子の方がもっと不安定だったのでこれで良いかなと。そういえば、14年前にティムを演じた子はもう二十歳かそれに近い年齢になっているのか…。なんか、歴史を感じるなぁ。
25日に横浜で大千穐楽との事。私、ちょうどその時また別のことで遠征しててww・・・縁あって観に行けることになりました!大泣きしてきますw