年明け以来今季3度目の劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』を観に行ってきました。
上演されている浜松町の四季劇場【秋】(とライオンキング上演中の【春】)は今年6月を以て閉鎖されるとの事。この『ノートルダム~』の上演が秋劇場最後の演目になるそうです。私が東京でこの作品を見るのはこれが最後なので、必然的に【秋】劇場ともお別れということになってしまいました。
思えば1998年の杮落し公演から何度となく足を運んできた思い出深い劇場(関東に住んでいた期間が長かったので)。【春】劇場の『ライオンキング』はあまり好みに合わなくて1度しか観に行きませんでしたが、オリジナルの坂元健児さんのシンバと濱田めぐみさんのナラを見れたことは思い出深いです。今から思うとすごいゴールデンメンバー!余談ですが、その数日前に皇太子ご夫妻が観劇された席とほぼ同じ席で母親と観劇したのも思い出深いですw。
開館当初は2階席後方からの眺めが悪い(ジーザスではユダたちがクライマックスで上から降りてくるシーンがあるのですが、足しか見えないという苦情が相次いだんですよね)と話題になったりもしましたし、正直、全てにおいて親切な座席設定ではなかったけれど…やはり【秋】劇場は通った回数も多かったので愛着があります。
これまで本当にたくさんの作品を楽しませていただきました。ありがとう!!
劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』これまでの感想一覧
2017.03.24マチネ公演 in 四季劇場・秋(東京浜松町)
主なキャスト
- カジモド:田中彰孝
- エスメラルダ:宮田愛
- フロロー:芝清道
- フィーバス:佐久間仁
- クロパン:吉賀陶馬ワイス
田中カジモドとワイスクロパンは今回が初めてです。これでメインキャストはほぼ制覇。残念だったのは達郎くんのカジモドに一度も当らなかったことかな。やはり3回だけでは全キャストを見るのは難しい(特にキャストが間際まで分からない四季は 苦笑)。京都公演も行きたいと思っているのでその時に会えればいいな。
アンサンブルさんも前2回とはちょっと様変わりして少し若返った印象があり新鮮でした。
雑感
ノートルダムの東京公演は今回が最後ということで、カジモドベア(小)を買ってしまいました!
四季は演目ごとにテディベアを作って売ることが多いのですが、好きな演目のものはだいたい購入してる私。カジモドベアのコンセプトは道化の王様バージョンですな。今回も可愛いです。
それから、やっと、劇団四季バージョンのCDも購入しました(結局豪華版にしてしまった)。
劇団四季ミュージカル「ノートルダムの鐘」オリジナル・サウンドトラック | |
V.A.
WALT DISNEY RECORDS 2017-03-14 |
カジモド役はまだ見たことのない飯田達郎くんで、豪華版にはオマケで海宝くんのカジモドも数曲収録されています。が、6月には正式に海宝くんバージョンも発売されるとの事。結局そちらも買ってしまいそう。
あと、パンフレットの写真が舞台稽古風景から本番舞台ものに変わりました。ということで、パンフレットもお買い上げ…。CDは買う予定にしていましたが、それ以外にもクマとパンフが加わりwけっこうな散財をしてしまいました。
さて、本編についてですが、前回観劇の時にかなり泣いたんですけど…今回はけっこう冷静に観てしまったかもしれません。初めて見るメインキャストの人もいたので、そちらに注目してしまったからかな。だけど、歌の持つ力強さは相変わらずで心に何度もずしりと来ました。
最後の方まで泣かなかったことは泣かなかったんですが、やはりラストシーンの語り部分からは自然と涙があふれました。聖歌のような美しい旋律と、カジモド・エスメラルダのこれまでの歩みが重なって…特に最後のカジモドを演じた役者によるモノローグには心が震えてしまうんですよね。アニメ版とは違うラストシーンとなりますが、ミュージカル版は「人間とは、怪物とは」といった観る者の内面に問いかけ訴える力がとても強く深く心に刻まれる作品となっているので、ずしりと記憶に留まり続ける重みを感じます。ストレートプレイで見たらもしかしたら心が疲れてしまうかもしれないけど、美しく聖歌のような優しく力強い響きのある音楽と歌と共に観ることによって「またこの物語に戻りたい」という気持ちにさせられるんじゃないかなと今回の観劇で思いました。
そんな意味でも、この作品はミュージカルとして上演されたのは正解だったなって感じますね。すごく重く大事なテーマがたくさん詰まってる。今の混沌とした時代にこそ多くの人に観てほしい作品です。
ただ、東京公演はもう前売りチケットは売り切れてしまったのだとか…。四季サイトや定価以下でのチケット譲渡掲示板をチェックしていれば運良く戻りが出てくることもあるようなので、行けそうな環境にある方はそちらを注目してみるのもいいかもしれません。
主なキャスト別感想
田中彰孝さん(カジモド)
一番最後にカジモド役として登場した田中彰孝さん。登場した時から評判も良かったので、1週間前のキャスト予定が発表されたときからとても楽しみにしていました。
アッキーというと、どうしてもライオンキングの「シンバ」のイメージが強く(かなりの回数シンバを演じている)どちらかというと元気印のような役柄の印象があったので、カジモドのような繊細な青年はどのように演じるのだろうかという興味はすごくありました。
海宝くんのカジモドは徹底して背中を丸め声を枯らしたように話す役作りをしていたのですが(歌う時の綺麗な声とのギャップが役柄を浮き上がらせているようでした)、田中さんのカジモドは基本背中を丸めた歩き方はしているのですが、海宝くんよりは曲げてなくて結構普通に近い姿勢になることが多かった印象です。あと、声もベースは枯れた感じにはしてるけど4割くらいは普通の声に近くなることも。
なので、田中カジモドは海宝カジモドよりも身体的といった点では少し症状は軽い感じなのかなと思いました。そこにちょっと違和感はあったんですけどね。
フロローとの関係は海宝くんよりも良好なように思いました。特に前半。常にフロローに怯えに似た感情を抱いているように見えた海宝くんとは違って田中さんは積極的にフロローと接している印象だったのが新鮮でした。むしろ、フロローのことは保護者としてリスペクトしていて父親にも似た感情があるように感じましたね。それだけに、2幕の反逆シーンで逆上してしまう場面はより切なく見えました。
これ、野中フロローとのコンビで見たら・・・あのクライマックスでの二人の対峙シーンは泣いてしまうかもしれません。
歌はどの音も安定して出ていて良かったのですが、いまひとつ深みが感じられなかったのが残念でした。「陽射しの中へ」のナンバーはアッキーならではの爽やかさみたいなものがあってよかったんですけど、そこにもう一味、心から湧き上がる感情を出せば心に響くなんばーになるのになぁと。ちょっと平坦に聞こえてしまうことがあったのが気になりました。
また、2幕のビッグナンバー「石になろう」はカジモドのどうしようもない気持ちの爆発は感じられたんだけど、最後の伸びがもうひと越え欲しかったかも。ロングトーンがもう少し伸びていれば音楽と同時にドラマチックに終わったんですけど、この日はちょっと中途半端になってしまったのが残念でした。
今はまだ模索しているところが多いかなと少し感じた田中カジモドでしたが、それでもラストの「青年」に戻った時の表情はとても静かでハッとさせられるものがありました。
ものすごい大量の汗をかいていたことからこの役柄がいかに大変なのかがものすごく伝わってきましたが、また時間をおいて京都でもう一度進化した田中カジモドに会ってみたいです。
宮田愛さん(エスメラルダ)
昨年12月以来の宮田エスメラルダでしたが、道化の祭でのダンスがとにかく刺激的で美しくカッコいい!女性の私が観ても惚れてしまうような可憐さと力強さがあって本当に素敵です!フロローとフィーバスが猛烈に彼女に惹かれてしまうのが納得できてしまうw。
カジモドに対しても温かく素直な気持ちで接しているのが伝わってきて、二人のシーンは見ていてホッとできる瞬間でもありました。「世界の頂上で」を二人で歌う時の幸せそうな表情も印象的です。
フロローに捕えられ彼に迫られているときの宮田エスメラルダは強さよりも弱さの面が感じられます。窮地に陥り強がろうとしても恐怖心でつぶれそうになってしまう。そんなところもなんだか宮田エスメラルダは愛しく思えるんですよね。
フィーバスへの感情は岡村エスメラルダのほうが『好き』度が大きかった気がするかもw。宮田エスメラルダは『好き』という感情の前にフィーバスのアタックに屈してしまった感があるように見えるのが何だか面白かったです。
芝清道さん(フロロー)
前回観たときは野中さんのフロローとは違う、悪の一面が早い段階から見え隠れしてる印象があった芝さんのフロロー。でも今回はそれよりも少し「悪」色がマイルドになったように感じました。
たぶん、田中カジモドがフロローを尊敬しているように演じている面が大きかったのが影響しているのかもしれません。「聖・アフロディージアス」について語って聞かせようとする場面などではカジモドのことを可愛い息子って思っているように見えて…なんだかちょっとお父さん的なところを芝フロローに感じてしまうことも。「笑ったりしてすまん」の言い方がなんか優しかったんですよね。たぶんあれは、田中カジモドにしか見せない顔なのかも?
そんな関係がけっこう後半もカジモドが嘘をつく前くらいまで感じられたので、キレられた末のあの末路のシーンは今までよりも哀れに思ってしまいました。
エスメラルダへの抑えきれない感情の表現は芝さんやはり巧いですよね。最初に赤いスカーフを手にしてしまった時、ハッと気づいてそれを捨てるように手放すのですが…そのあとで自分の心を鎮めるかのように慌てて十字架をきってる姿がとても印象的でした。
自分では抑えようとしても心がそれについてこずにどんどんハマってしまう、そんな悲しさを強く感じた今回の芝さんのフロローでした。
佐久間仁さん(フィーバス)
相変わらずカッコいい佐久間さんのフィーバス!!登場した時に女性たちの肩を抱いてすかした感じになっていても、なんか見ていてドキッとしてしまうww。
でも一番佐久間フィーバスに惹かれる部分は、根底にいつも戦争での過酷な体験を抱えているのが見える芝居をしているところですね。表でちょっとチャラい風に見せていても、戦場で仲間たちが息絶えていく姿を目の当たりにしたことなどへのトラウマが暗い影を落としていて、それを語り歌うシーンでは握った手がその時の恐怖心やショックからか少し震えていたりする。そんなフィーバスだからこそ、エスメラルダとの恋を応援したくなってしまうんです。
今回印象的だったのが、牢に繋がれたエスメラルダに最後の別れを告げにやってくる場面。怯える彼女を必死に抱きかかえて自らの愛を歌うんですけど、その時佐久間フィーバスは涙を流していて…あれは見ていて思わずウルっときました。
なんか、このシーン見ていたら・・・猛烈に『アイーダ』でのラダメスとアイーダの最後の二人の場面と重なっちゃってねぇ・・・。あの時の切なさとまんま重なるんですよ、本当に。宮田アイーダと佐久間ラダメス、将来的に実現しないかなぁとか思ってしまった。
吉賀陶馬ワイスさん(クロパン)
ワイスさんのクロパンは今回がお初です。ワイスさんじたいお目にかかるのが本当に久しぶりで…それこそ『アイーダ』思い出しちゃいました(メレブ役を演じたワイスさんを何度も観ていたので)。最初の印象は、見ない間にワイスさんちょっと髪の毛薄くなっちゃったなぁ…でした。もう少し若い印象だったんだけど、クロパンなワイスさんはなんだかけっこう老け込んじゃった感じ!?
よしつぐくんは若さを感じさせるような勢いのあるギラギラしたクロパンでしたが、ワイスさんは年齢を重ね酸いも甘いも見てきたからこそのしたたかさを感じるクロパンに見えました。そういった意味では、凄味…というか怖さという点でよしつぐ君より上だったかもしれません。ワイスさんって、あんな切れ味鋭そうな役柄もイケるんだなって新たな発見でした。
歌声にも若干黒さが混じっているように感じられて、この人に触れたら危ない感があったかも。なかなかに面白いクロパンでした!
後述
これまで3回観てきましたが、東京公演はこれで最後になります。近かったらもう少しチケット購入できたんですが、今の状況ではこれが限界。
笑いのほとんどない重厚な人間ドラマのミュージカルではありますが、観終わった後にしばらく物語やキャラクターが息づいているような…そんな作品だと思います。
東京公演が終わった後は京都公演が待っています。京都ならば東京よりも近く交通費も安く済みそうなのでw何回かまた足を運びたいですね。そのためにはチケット戦線を何とか乗り越えないといけないのですが。横浜に戻ってしまう前に、なんとか数回確保したいところです。
観に行ける時が来たらまたこちらでレポしたいと思います。