約1か月ぶりの『ミス・サイゴン』を観に帝劇まで行ってきました。本来この日は予定に入れていなかったのですが、キャスティングの組み合わせがかなり私好みだったので前回観劇直後に勢いで購入(笑)。そしたら・・・予想外にも前から3列目なんていうスゴイ席になってしまった!ちなみにその席、開幕前に行われたイベントで座った席のすぐ後ろでした。まさか本編もこんな近くで見れるとは…。
自分的にかなり厳選したキャスト組み合わせだったのですが、なんていうか・・・それ以上のものを見せていただきました。この日を選んで本当によかった!まるでストレートプレイを観ているかのような、ミュージカルなんだけど"芝居"色の強い素晴らしい舞台だったと思います。メリハリも効いていたし観ていてすごくワクワクしました。
それを前から3列目で見れたことが幸せ。オペラグラスなしで役者さんの表情がよく見える位置だったのでそれぞれの役者さんが演じているキャラクターの心が直に伝わってきましたよ。それだけにかなり入り込んで観ちゃって・・・いつも以上にウルウルしてしまった。あの躍動感、たまらないっす!サイゴンに関してはもうこんな座席に座ることはないと思うのでいい思い出になりました。
ちなみに、カーテンコールで投げ入れられるお花ですが・・・今回無事にゲットできました♪違う演目で前方に座った時、けっこう私のもとにくる確率が低かったので今回もダメかなぁと思っていたのですが、運よく1つだけ自分の座席方面に飛んできましたよ(笑)。誰が投げ入れてくれたか分かりませんがゲットできた時はうれしかったです。家に帰ってからドライフラワーにしました。
♪主なキャスト
エンジニア:橋本さとし、キム:新妻聖子、クリス:照井裕隆、ジョン:坂元健児、エレン:鈴木ほのか、トゥイ:泉見洋平、ジジ:菅谷真理恵 ほか
何気によく見てみれば7月に最初に観劇したときとほぼ同じメンバーだな。私と相性が合うのかもしれません。ちなみにこの日の指揮者はシオタクターこと塩田さんじゃありませんでした。オケピはカーテンコールのときとかけっこう地味だった(笑)。
以下、キャスト別のネタバレ感想になります。
橋本さとしさん(エンジニア)
ついにこの方のエンジニアを観ることができました!4年前に観て大好きになった橋本エンジニア!あの頃よりもずっと余裕のあるお芝居で心の底から楽しませていただきました。全く迷いなく自由奔放にエンジニアを演じているなぁって今回ものすごく思いました。本能のままに演じているっていう感じかな。広い帝劇の舞台を十分に使うダイナミックな動きも魅力的だったし、ちょっとした感情の動きとかもすごく分かりやすく演じていたのでいつも以上にエンジニアに感情移入してしまった。
それに、なにより、カッコいいです、さとしエンジニア!ものすごくカッコいい。あんなにさとしさんのことカッコいいと思ったこと今までなかったかも(笑)。立ち姿がとてもいいんですよね。それに醸し出してるオーラがなんとなく色っぽくて惹きつけられる。一つ一つのアクションも大きな芝居で魅せているのでなおさらカッコよく見える。非常に魅力的でございました。
特に印象的だったシーンをいくつか挙げると・・・まずは小ネタ。トゥイを殺してしまったキムが突然やってきた時のリアクションもかなりウケたんですが、そのあとのシーンがさらに面白かった!タムがアメリカ行きのパスポートになると知った時のナンバーで♪ハイ、ホーチミン♪ってフレーズがあるんですが・・・ここってそれぞれのエンジニアがアドリブを言う「間」があるんですよ。で、さとしさんはと言うと・・・♪ハイ、ホーチミン、"チミン・チミン"♪って可愛く腰振ってました・・・が、客席の反応がちと微妙だと察知すると「ミンチ」と一言(笑)。そこで見事に観客の心をつかんでかなり嬉しそうでした(笑)。それを観て「さとしさん、力技持ってきたな」とひそかに思ってしまった私です。
そんな面白くて魅力的なさとしエンジニアですが、さらに魅力的なのが内面のお芝居。4年前、初めて「アメリカンドリーム」で涙が出たのがさとしエンジニアだったので今年も楽しみにしていたんですが・・・やっぱり泣けました!泣けるんですよ、さとしエンジニアの「アメリカンドリーム」!アメリカに対する切ないまでのエンジニアの想いが痛いほど伝わってきます。歌いだしのところで自分の生い立ちを語りながらうっすら涙ぐむお芝居がとにかくものすごく感動的!あの「アメリカンドリーム」だったら何度も観たいです。さとしさんのエンジニアは今のところ10月のマイ楽までお預けなんですが、それまでに何としてももう一度会いたいです。
新妻聖子さん(キム)
7月以来の新妻さんのキムでしたが、抜群の安定感でしたね。特に歌声に全く不安がないのがすごいです。キムの歌ってものすごく落差が激しく、特に高音はハイレベル音なんですが・・・それを感じさせない歌唱力が彼女にはある。何度見てもそのレベルを保っているのは本当に素晴らしいと思います。
キムの芝居についてですが、さらに深みを増していたのも印象的でした。一番印象に残ったのがクリスに自分の生い立ちを話すシーン。目にいっぱい涙を浮かべ、悲しみと怒りに震えながら戦争体験を語る新妻キムにはかなりグッときました。キムってものすごく激しい面を持ち合わせた女性なんですが、新妻さんが演じると強さの中にもとても脆い面がチラチラ見え隠れしていて・・・見ていて守ってあげたくなるんですよね。クリスに全身全霊の愛を注いでいくなかにも、どこか一抹の不安があって・・・時々声が震えてしまう新妻キムが私はすごく好きです。
トゥイに関しては前回観た時よりもちょっと冷たくなっていたかも?以前はもう少し彼に対して優しさを見せる部分もあったのですが、今回は完全にクリスに傾倒していたのか彼が入り込む余地が全くなかった。撃ち殺した後の反応が彼を抱きかかえるのではなく見開いた目を閉じるといったアクションのみだったのも印象的でした。あれは切なかったなぁ。
照井裕隆さん(クリス)
8月はクリスをお休みしてベトナム視察に行っていた照井さんがこの日からまた舞台に帰ってきました。照井さんの復帰舞台第1日目に立ち会えてよかった~。カーテンコールでは盛んにさとしさんが照井さんを前面に押し出してて、ちょっと恥ずかしそうに満面の笑顔を浮かべていたのがとても印象的でした。
休演中にベトナムでかなり多くのものを吸収されたようで、前回よりも芝居に深みが増していてとてもよかったと思います。7月に観た時はちょっと弱いかもと思った1幕のクリスが今回飛躍的に進歩していたのが印象的でしたね。"芝居"部分が間違いなくパワーアップしてます、照井さん!クリスがキムに心を奪われていく過程が手に取るように理解できましたから。たまにあのシーンで「なぜクリスはキムと一緒に暮らそうと言い出すんだろう」と思うことがあるのですが、今回の照井クリスはそれを納得させるものがすごくあって・・・。自分もベトナム戦争で心に傷を負っているのにキムはもっと深い傷を負っているんだと悟りショックを受け愕然となっている照井クリスがものすごくよかったです。
それともう一つ魅力的なのが笑顔ですよね~。照井クリスの笑顔ってなんだかこちらを癒してくれるようなとても安心感のある優しくて可愛い表情なんですよ。観ているだけでこちらの心が温かくなっちゃうみたいな。あの雰囲気にキムも飲み込まれていったんだろうなぁっていうのを今回すごく感じました。それだけにキムとエレンとの間で苦しむシーンはとても痛々しかったなぁ…。純粋な照井クリスが二人の間で苦悩するナンバーのところではウルウルしまくりでしたよ(涙)。そしてあのラストの悲劇…。繊細なお芝居がとても印象的でした。照井さんのクリスは今のところこれが最後になっちゃうんですけど・・・もう1回会いたいよなぁ。
坂元健児さん(ジョン)
サカケンさんのジョンって本当に見ていて飽きない(笑)。1幕での弾けっぷりが特にかわいくて面白くていつも注目しちゃいます。で、今回かなり前方席で見たわけなんですが・・・ものすごく気になってしまった、サカケンジョンと娼婦とのやりとりが(爆)。なんとなく手が遠慮気味のような・・・(笑)。
可愛いと言えばエンジニアとのやり取りも最高でしたね。さとしエンジニアもかなりアドリブ入れてくるので二人の応酬はそれはそれは面白かったですよ~。特にマイクにあまり乗らないちょっとしたセリフのやり取りが前方だとかなり良く聞こえてきていろいろ笑わせてもらいました(笑)。1幕と2幕ではジョンの性格がガラッと変化するんですが、サカケンさんの場合は2幕に入ってもどこか1幕のファンキーな部分を感じさせるんですよね。そこが魅力だと思います。
「ブイ・ドイ」の迫力はすごかったなぁ。相変わらず舞台の上を熱く動き回ってているんですが(笑)、前方で見るとそれがものすごく大きく見える。以前は動きすぎかも・・・って思いましたが、この日に限ってはそれもありかな、なんて思いました(笑)。
鈴木ほのかさん(エレン)
大好きですねぇ、ほのかさんのエレン。あの深みと温かさと優しさ・・・ものすごく私好みのエレンです。見せ場はやっぱり2幕。キムがエレンの存在を知って絶望するシーンなのですが、その時のほのかさんのエレンの表情が泣けるんですよ…。特に「実はキムがまだクリスを愛していた」と悟った時の表情の変化が秀逸でした!クリスのことは愛していて彼女に渡したくないんだけど、キムの気持ちも痛いほど分かってしまう。その狭間でエレンはものすごく苦しむわけですが、ほのかエレンは本当に心根の優しい女性って雰囲気なのでここはキムよりもエレンに感情移入してしまいます。
そしてクリスに「キムとは結婚していないと言ってよ」と詰め寄るときのエレンの悲しみの演技!あの感情を抑えきれずに口に手を当てて涙を流すシーンは本当に印象的です。エレンの苦しみが痛いほど伝わってくる。本当に素晴らしいほのかエレンでした。
泉見洋平くん(トゥイ)
新妻キムと照井クリスの二人の愛に感情移入しながら観ていたんですが・・・二人がどんなに素晴らしくても洋平くんのトゥイが現れるとその瞬間から私の頭の中では「トゥイ物語」になってしまいます(笑)。彼のトゥイにはそのくらいの魅力があるしどうしようもなく惹きつけられるんですよね。1か月前に観た時よりもまたさらに愛が深まっているようで・・・泣きましたよ~今回も(涙)。
キムとクリスの平和な時間に割り込んできた時の泉見トゥイはのっけからキムへの愛を前面に出してます。とにかく歌声がものすごく優しくて「あぁ・・・本当にキムのこと大好きなんだな」っていうのが痛いほど伝わってくるんですよ。でもクリスが現れてから自分の居場所を取られたような気持にとらわれて豹変してしまう。ここのシーンで一番胸にきたのは♪裏切り者、呪うぞ♪とキムに捨て台詞を言うところ。恨み節というよりも悲しみと絶望の気持ちがすごくこもってた。半分涙声になってたのがまた泣けるんです(涙)。もう完全にこの時点でトゥイに感情移入しまくり。
そして3年後。ドキッとしたのはベトコンとしてエンジニアに接するときの目。あの冷たい目にゾクっときました!あれはすごい!なのにキムの前に再び現れた時のトゥイは完全に恋する男性の表情になってる。もう自分のすべてをかけて全身全霊でキムのことを愛しているのが痛いほど伝わってきて泣けてきますよ・・・。
あんなに優しい顔でキムにプロポーズしてるのに、完全に拒絶された時の豹変ぶりがまた尋常じゃなくなる。あの激しいシーン見てると、洋平くんが壊れちゃうんじゃないかと心配になってしまう(汗)。そのくらいすごいです、彼のトゥイは。でも豹変しながらもキムが殴られてる時の表情は自分も殴られている顔になってる。「本当はこんなことしたくないのに」っていう無念の気持ちが痛いほど伝わってきてさらに泣ける・・・。部下たちを下がらせるときのトゥイ見てたらあまりにも痛々しすぎて涙出てきますよ(涙)。
そしてトゥイのクライマックスに入っていくわけですが・・・タムの存在を悟った時の泉見トゥイの表情がものすごく鮮烈に印象に残りました。キムの話を聞きながら、「もしや、子供が・・・」と悟っていくまでの様子がとても繊細に演じられてて、なんだか見ていて私もトゥイと同じようなショックを受けた気持になっちゃいましたよ。そして実際にタムを見て「あってほしくない」ことが現実に目の前にあってトゥイは壊れてしまう。その壊れ方があまりにも哀しすぎてここでも涙涙・・・。銃を向けるキムに向かってその銃口を自分の胸に押し当てる行動がとにかくすごい迫力!あれ見るだけでもこちらの胸も痛くて仕方ない・・・。
で、撃ち殺されたあとなんですが・・・キムに向かってちょっと笑顔を見せてたんですよ。最後の最後、自分の愛する人に撃たれてトゥイ的には幸せだったのかもしれないなと…。さらに今回は事切れるギリギリの瞬間までキムに向かって手を伸ばしていたんですが、彼女はその手を取ることがなかったのでより一層トゥイの哀しみが際立って見えて泣けて仕方なかったです(涙)。
そしてさらに2幕の泉見トゥイも進化してた!相変わらず再登場の亡霊シーンのときの表情はゾクッとするほど恐ろしいのですが、キムに向かって♪見ろ、まだ俺は死んではいない♪と歌うシーンで泣いてるんですよ・・・泉見トゥイ(涙)。亡霊に感情が出るのはどうかっていう意見ももちろんあると思うんですが、私はこのときの洋平くんのお芝居にものすごく心打たれてしまった。キムの顔を見るとたとえ亡霊でも愛があふれてきて仕方なかったんだろうなぁ…。それがなんかものすごくショックで泣けてしまった・・・(涙)。
どうも洋平くんがトゥイだと彼に一点集中して観てしまうせいか文章が熱くなってしまう(笑)。何度でも見たくなりますよ、彼のトゥイは。お金と暇があれば洋平くんのトゥイを見るために毎週でも通ってしまいたい(笑)。それほど発見も多いし魅力的です。
菅谷真理恵さん(ジジ)
貫禄が出てきましたねぇ、菅谷さんのジジ!「ミス・サイゴン」に相応しい色気とカッコ良さがあってドリームランドのシーンでは思わず目を奪われてしまいました。ベトナム女性というよりはアメリカ女性って雰囲気なんだけど、そこがまた魅力だと思います。そんな彼女が秘めた悲しみを歌うシーンは感動的。以前見た時よりも"芝居"的要素が強くて素晴らしかったと思います。
次回は1000回記念公演。観る予定のなかった別所エンジニアと井上クリスを見ることになりました(笑)。果たしてどんな公演になるのか楽しみです!