ミュージカル『ミス・サイゴン』2012.08.22ソワレ

先月から始まった『ミス・サイゴン』の全国公演が青山劇場にやって来ました。東京ではこれまでずっと帝国劇場で上演してきましたから、この前の目黒もそうだったけどなんだか違う劇場で観るのはとても新鮮な気がします。ちなみにこの日は青山公演初日でした。

実はこの日のチケット、プレビューを見た後で感激して急遽買い足したものだったのですが…それからしばらくして青山公演の前売りチケットが完売になったことを知りビックリ!!ここまで売れ行きが良いとは予想外だったので驚きです。危ないところだった(汗)。
当日券も発売しているようですが、けっこう多くの人が並んでいて…場合によっては立ち見になるんだとか。3時間の立ち見はけっこうキツそうですが・・・でも、見る価値はあると思います。

めぐろのプレビュー公演を見に行ったときにサイゴンの大きなボードがあったのですが…

こんな感じだったのが・・・

文字でびっちりになってました!!最初に書かれていた市村さん始め4人のメインキャストのサインがどこに紛れてしまっているのか分からないほど(笑)。全国を回っている間にこのボードにたくさんの人が作品に対する愛を書き連ねているようです。私が見に行った日も横にさらに拡張されたボードに思いの丈をマジックで書き込んでいる人が何人もいました。私はもう一度見に行く予定なので…その時に、書いてみようかなぁ…なんてw。

主なキャスト
エンジニア:市村正親、キム:新妻聖子、クリス:原田優一、ジョン:上原理生、エレン:木村花代、トゥイ:泉見洋平、ジジ:池谷祐子 ほか

以下、ネタバレ含んだ感想になります。

スポンサーリンク

プレビュー公演を一度見ているので、前回ほどの「おーーーっ!」感は少なかったのですが(笑)それでもやっぱり新演出のサイゴンは以前にも増してとてもドラマチックで何度も涙腺を刺激されました。

ただ、最初のキムとクリスが出会って一夜を過ごすあたりのシーンはほとんど舞台上手の上の方で行われているので座席によっては見切れてしまう部分が出ているのではないかと…。けっこう重要なシーンなのでこういう場面をあまり端っこの方中心で展開させないほうが個人的にはいいんしなゃないかなぁと思ってしまった。以前は中央でやりとり有りましたからね、なおさら…(汗)。

それから、サイゴン陥落から3年後のシーンはなんだか常に煙たい感じでちょっと見づらい部分があったのが残念。ヘリコプターが今回からデジタル映像になったのですが、それがなんだかよく見えなくて(苦笑)。まぁ、あそこはそれよりも下の方の人間ドラマが濃厚すぎて号泣してしまっているんですが。もう少し視界良好にしてもいいかも?

それから、青山劇場ってあんなに音声が響いて聞こえる劇場だったっけ?久しぶりだったので少し驚きました。セリフがちょっとはっきり聞こえないところとかもあったりして…やはり色んな劇場で上演してるので合わせるのも大変なのかも。

気になった点はこのくらいかな。それ以外は本当に素晴らしかったです!カーテンコールなんか大盛り上がりでほぼ全員がスタンディング。客電がついても拍手鳴りやまず3回くらい多めに開いたと思います。市村さんは最後にキャイーンのポーズみたいなのしててww洋平くんたちが爆笑してました(笑)。物語的にはとても悲劇的なシーンで終わるので、最後にああいったキャストの皆さんの笑顔を見るとホッとします。

それにしても、この日のサイゴンはなんだか最初からちょっと感極まってしまったと言いますか…。普通に生活している光景に突然響く爆音が本当にリアル。ある日突然普通の生活を奪われた人たちの悲劇が浮き彫りになったオープニングになっています。これが、今週亡くなられた日本人ジャーナリストの山本さんの事件とものすごく重なって思えてしまって…。彼女が死の瞬間まで回していたVTRの光景、そこには普通の生活があってとても戦闘がおこるような雰囲気ではなかった。

でも、突然その平和的な空気は響き渡る銃声によって壊されてしまって、彼女もその銃弾の犠牲になってしまいました…。このニュースを見ていたので、状況は違えどもなんだかすごく身近に思えてしまって冒頭から涙が溢れてしまいました(涙)。

スポンサーリンク

プレビューで見たものと基本的には演出に違いはなかったかと思います。今回初めて気が付いたシーンですが…ドリームランドの乱痴気騒ぎが終わった後の夜明け。外に一人のが歩いてて、エンジニアが儲けたお金を一枚お布施してるんですよね。えっ、あのエンジニアがっ!?ってちょっとビックリなワンシーンでしたw。この夜明けの風景も以前と比べて本当に実に自然体として描かれているのでリアルです。

クリスがキムと一緒に彼女の両親の遺影の前で歌うシーン、以前は呼ばれてから靴を脱いでいたクリスですが、新演出では先にちゃんと靴を脱いでいる。でもキムの前に行くときに他の女性たちから作法の指南を受けているんですよね。こういった点も細かいです。ちなみに、テーブルには「FUJI FILM」の文字がありましたw。これも何か関係があるのか!?

モーニングオブドラゴンのシーンは巨大ホーチミンが出なくなりましたが、かえってその頃よりも演出が派手に見えます。突然爆竹が鳴り響くし、巨大な龍が出てきて鼻から白い煙をシャーーーっと吐きまくってるし(笑)。こういう大掛かりなものは目黒の小さめの劇場よりも大きな青山劇場のほうが栄えるなと思いました。

そういえば、「命をあげよう」のシーンでキムがタムにお絵かき用の紙を渡すのですが…以前はスケッチブックを取り出していたのが、今回からどこぞで拾ってきたかのような大きめの粗末な紙になってます。こういう細かいところもリアルだなと思いました。

2幕はあまり大きな変更点はありませんが、ジョンにキムがバンコクへたどり着いた経緯を話しているシーンがコミカルになってます。エンジニアが「荒海に投げ出され…」と横から出しゃばってきたのをジョンがシャットダウンしてキムの話に切り替わるんですよねw。このあたりのメリハリが前回よりもくっきり出てて面白かった。

悪夢のシーンは何度見ても泣けます、号泣です…。キムとクリスの別れがあまりにも切なくて痛々しくて涙なしには見れません。金網は手動でキャストの人が場面場面によって移動させているんですが、その配置とかも実によくできていて、役者さんは大変そうですがとてもリアルでより一層哀しみが深まって見えますね。以前はヘリに乗り込む寸前にキムの名前を叫んでいたクリスですが、今回からヘリが映像化されているのでクリスは乗り込む前に金網をよじ登ってキムの名前を絶叫します。もう、ここ号泣(涙)。

そういえばエレンの新曲ですが…一つの曲としてはすごくきれいで美しい旋律なんですよね。花代さんの歌もドラマチックでとてもいい。しかしながら、『ミス・サイゴン』の物語の中の流れの一つとして見るとどうしても違和感は拭い去れません。長い事以前のナンバーで慣れ親しんできたからというのもありますが、曲調が明らかに新曲だと色が違うんですよ。なので、いったんそこで流れが切れてしまうような感覚がある。なぜあそこを大幅に変えたんだろう?それが謎…。

クリスとエレンのキムを巡る激しいやり取りは見ていて本当に胸が痛みます。エレンの辛く苦しい気持ちも分かります。「うそつき!」とクリスを責め感情のままに涙するエレンを見てクリスは逆ギレしてその場を出て行こうとしてしまう。このあたりの人間臭いクリス、新演出ならではかも。ここでいったん、クリスってひどい奴だなぁと思わせるんだけど、そのあとに彼の苦しい胸の内が語られる。それを聞くとなんだか彼に同情したくなって…誰も悪くないのにって思えてしまうんですよね。このあたりの流れが良いなぁと思います。

アメリカンドリームはバックに流れる映像が結構斬新でドラマチックです。アメリカのを煌びやかにいくつも登場させておいて、さいごのほうで夢が消えるのと同時に一つ一つ破裂して消えてしまう。ちょっと派手すぎる演出かもって思わなくもないけどw、でも嫌いじゃない。市村エンジニアが最後に「一個だけになっちゃった」と泣き言をいうのが面白かったw。とか言いつつ、私、今回のアメリカンドリームでキャデラック出てきた瞬間になんか泣いてたんですけどね。

哀しいラストシーン、キムの最期も本当に泣けるんだけど、かなりグッと来たのが幕が締まる間際にやり場のない感情に捕らわれていたエンジニアの姿。あれは本当に泣けた…。

スポンサーリンク

市村さんのエンジニアは本当に若々しくて見応え充分です。以前の帝劇公演では「市村さん、お疲れ?」と感じる時もあったのですが、今回は本当に調子いいみたいで。声の張りもすごいし、動きもしなやか。もうその存在そのものがエンジニアです。2幕頭のバンコクシーンでお客さんとのコミュニケーションをとるのも市村さんならでは。ボスから「客が入ってないぞ」と怒鳴られ「こんなに入ってます」と客席を見ながら言うと自然に拍手が沸き起こって、市村さんも嬉しそうにさらにその拍手をあおったりしてました(笑)。こういうやりとりをストーリーの中にうまく盛り込んでいくのも市村さんならではだなぁと思いました。

新妻さんのキム、彼女を見たいがためにこの1回を追加したんですよね。最初で最後の新妻キムなんですけど…凛とした強さが本当に美しい。クリスへの愛に必死にすがっていく彼女のキムは見ていて本当に胸をえぐられるような気持にさせられます。タムのなかに常にクリスを見ているんですよね、新妻さんのキム。それだけに、エレンと出会った時の衝撃が計り知れない。「胸塞がれ息ができない」と歌うところでは、本当に息ができない感じで歌詞もまともに出てこないほど苦しそうにしていたのが印象的でした。3人のキムの中ではたぶん個人的には一番グッとくるのが新妻さんだろうな。その場その場の感情がとてもリアルで哀しい。見れてよかったです。

原田くんのクリス、久しぶりに見たけどまた一段と逞しくなりましたねぇ。それに歌声はやっぱりとても綺麗で力強い。タイタニックでの若者っぷりが懐かしいくらいw大人の男になったなぁと感慨深く見てしまった。印象的だったのはエレンにキムのことを打ち明けるシーンかな。一度は逆ギレして出て行こうとする子供っぽさを見せるものの、そのあとベトナムでのトラウマの出来事を吐き出すように感情を爆発させて歌っていた姿がとても印象的でした。鍵の投げつけっぷりがすごかった。

上原くんのジョン、ようやく舞台の上の姿を見ることができたよー。制作発表では見れたけど、役柄としての上原くんを見るのは今回が初めて。レミゼもロミジュリも違うキャストだったのでようやく念願かなってということで。これまでのジョンってすごい大人なイメージがあったのですが、若い上原くんが演じるとだいぶ雰囲気が変わりますね。クリストのやり取りがものすごく近く感じる。上官みたいな雰囲気だったジョンがクリスの友人としてリアルに見えてきたので面白かったです。まだちょっと荒削りな部分があったけど、これから回数重ねてさらに役として深みを増していくのではないでしょうか。楽しみです。

木村さんのエレンはアメリカ人女性っぽさがすごく出てていい雰囲気です。美人だし歌も抜群にうまいし見栄えもします。クリスと言い争いをするシーンで「うそつき!」と感情を露わにして涙するシーンはとても印象的ですね。そういえば、木村さんはドリームランドのシーンでも密かに出演しているようです。というわけで探してみたところ…おそらく、カウンターの一番奥にいる娼婦じゃない店員がそうじゃないかと…。キムを怒鳴りつけたりしてて、こういったところのリンクも面白いなと思ってしまいました。あ、もし違ったら見当はずれなんだけど(汗)。

池谷さんのジジ、新演出では以前にも増して存在感がとても際立っているんですよね。ジョンとの絡みも多いし、彼女のやり場のない哀しみと言った部分もよりいっそう強調されている。印象的なのはドリームランドが終わった後、エンジニアをにらみつけながら身も心もボロボロになりながら店からフラフラと立ち去るシーンです。あそこはグッときました。

スポンサーリンク

そして泉見くんのトゥイ!!彼が出てくるシーンは私ほぼすべて泣いてます(涙)。キムを初めて見つけたときのシーン、もうそこから彼女を愛してるっていうのが伝わってくるんですよ…。すがるような目でキムを見てる。だけどその想いはキムには届かなくて…それでいてクリスの存在を知ってキムの両親の写真立てを叩きつけて立ち去ってしまう。トゥイのやり場のない怒りと悲しみが本当に切なくて泣けます。

エンジニアにキムを見つけてこいと頼むシーンはさすがに涙しませんが、年月が経って彼が出世して変わった様子がとても顕著に現れています。冷たい威圧的な目をしている。こういう表情も泉見くん、本当に上手い!!

そして難民キャンプでのキムとの再会…。キムを目の当たりにしたとき、本当に心の底からホッとしたような感動にも似たような表情してて…あぁ、本当にトゥイは彼女のことを愛しているんだなと痛感。その時の眼差しはとても優しくて切ないんです。でも、キムの心は変えられなくて、自分の想い通りにならないことのいら立ちから部下に命令して脅しをかけてしまう。打たれて悲鳴を上げているキムの声を内心どんな想いで聞いているのかと思うと本当に泣ける(涙)。本当はそこまでしたくなかったからそのあと「もう十分だ」といって彼らをさがらせているんですよね。

そして最後の望みを託すように「お前は、俺と…」の歌い方が…。この声聞いただけでボロ泣き…。それを拒絶する理由がキムの息子のタムの存在。その告白を聞いているとき、衝撃のあまり固まってて…その間に泉見くんの顔から滝のような汗がボタボタと舞台の上に落ちててすごかった(汗)。あれ、池ができてたんじゃなかろうか?それくらいの大熱演ですよ、本当に。

そしてタムを見て心の中で何かがぶつりと切れてしまったトゥイは襲おうとしたところをキムに拳銃で撃たれ倒れてしまう。泣きながら彼を抱き上げるキムを見たときの表情…涙なくしては見れない(号泣)。必死に彼女の顔に手を伸ばして・・・それでいてちょっと何かが抜け落ちたようなホッとしたような顔で息絶えてた…。それを見たときに、ああ、トゥイはキムに撃たれて初めて安らかになったんだろうなと思った。もしかしたらあの瞬間が彼が一番幸せだったのかも…とも。

もうねぇ、泉見くんのトゥイは本当に毎回毎回見るたびに感動をくれます。亡霊姿になった時の迫力は以前よりもさらに増してて怖かったし、色んな顔を見せてくれる。屈折しながらも彼なりの純愛を貫いていると思わせてくれるトゥイは泉見くんしかいない。あと1回、心して見てこようと思います。ちなみに泉見くんもドリームランドのシーンで出てるんですよね。今回ようやく発見できてうれしかったですw。

ホントは泉見くんのトゥイに関してはもっと語りたいけどw、それはあと1回見る来週に延ばそうかと思います。『ミス・サイゴン』いよいよ次回マイ楽。

error: Content is protected !!