宅間孝行さんが主宰するタクフェスの第9弾公演『天国』を観に大阪遠征してきました。
ついに、11月は予定していた舞台をすべて観に行くことができました!大阪の人出も緊急事態の頃からするとだいぶ増え、今では新幹線の自由席に座ることも少し難しくなってきました(苦笑)。でも、こうやって普通に舞台観劇できる環境は、本当にありがたいことです。
とはいえ、ここ最近ではまた不穏なニュースも流れていますのでいつ何が起こるか分からない情勢です。一応来年春までの予定は入れてしまっているのですが…、全て見ることができるよう祈るのみ。こちらでできることは、きっちり感染対策を講じることだけです。
さて、宅間さんプロデュースの”タクフェス”。2年前の『流れ星』ぶりの観劇となります。宅間さんの描き出す世界観、特に人情ドラマ系が大好きで(がっつりコメディも面白いんですけどねw)可能な限りタクフェスには足を運ぶようにしているのですが、今回は新作ということで特に楽しみにしていました。
開演約20分前にいつものように前説が始まりました。今回の参加者は、宅間孝行さん、大藪丘くん、広田亮平くん。「ここはどんどん写真撮ってOKですから!」という宅間さんの出血大サービス発言で、今回も何枚か開演前の楽しいやり取りを撮影させてもらいましたw。
今回もキャストの貴重な(?w)日常品が出品されておりまして。鈴木紗理奈さんの「休足〇間」(サイン付き)やら、広田亮平くんの「不織布マスク(新)」(サイン付き)やら、モト冬樹さんの某社の「水」(サイン付き)wwwといった、他ではあまりお目にかかれないようなレアなものばかり(笑)。
ちなみに、「シークレット」プレゼントも内容が明かされないままここで抽選されることになってました。「何かここで言えないのが心苦しいんですけど」と宅間さんが苦笑いしてるのが面白かったw。
抽選方法は、亮平くんとじゃんけんして勝ち抜いた人へということで。私も参戦したんですが、相変わらずじゃんけん弱すぎて2回戦くらいで脱落いたしましたww。ちなみに、コロナ前までは実際にその場で渡してくれていたのですが、今はご時世柄ということで…、ちゃんと消毒を施したうえで終演後にグッズ売り場で受け取るという形式になっておりました。直接…っていうのが醍醐味でもあったんだけど、仕方がないですね…。
じゃんけん大会が終わった後は、お客さんのリサーチタイム。亮平くんはじゃんけん後に出番のための準備があるということで退場してしまったので、ここからは宅間さんと大藪くんが担当。
毎回1人くらい台湾など海外から観に来たという方がいらっしゃるのですが、今のご時世はやはり来日するのは難しかったようでさすがにいらっしゃいませんでしたね。宅間さんが少し残念そうに「2週間の隔離は無理だったかぁ…」と呟いていました。
あとは、学校がお休みだという学生さんが1人いらっしゃったり、沖縄から見に来たという方がいらっしゃったり。リサーチに答えた方には宅間さんからスペシャルなwお土産がもらえることになってました(終演後に受付で)。
お客さんたちとキャッチボールしてる時の宅間さん、ホントいつも楽しそうなんですよね。おもてなし精神を存分に発揮していらっしゃって、見ていて私も嬉しくなってしまいます。そんな宅間さんが大好き。
最後にセットの説明や舞台の大まかな流れを解説。「ここに見えない壁があります」みたいな説明に思わず笑ってしまうww。サイン会や撮影会はできなかったけど、今回の前説もとても楽しかったです。
以下、ネタバレを含んだ感想になります。
2021.11.25 マチネ in シアタードラマシティ(大阪・梅田)
キャスト
- 島村龍太郎:原嘉孝
- 本郷さゆり:入山杏奈
- ガンツさん:浜谷健司(ハマカーン)
- 光明寺くん:大藪丘
- 稲妻くん:広田亮平
- 本郷穣:モト冬樹
- 本郷理香子:鈴木紗理奈
- 菅原さん:西村佳祐
- 岡田さん:藤田真澄
- 本郷大:宅間孝行
西村くんと藤田くんは劇中での出番は少ないのですが、スタッフとして裏方で活躍していたとのことです。パンフレットによると菅原君はお稽古場で代役のためのお稽古を頑張っていて、藤田君は演出助手を兼ねていたのだとか。出演もしながらということですから、色々と大変なことも多かったのではないでしょうか。こういった目に見えないところで頑張っている皆さんがいてこそ舞台は成り立っていますから、とても大切な存在だったと思います。
今年はいつもはロビーに並んでいるお花がコロナの影響からか置かれていないのが寂しかったのですが、錚々たる名前の書かれた”名入り招木”が並んでいる光景は相変わらずすごい存在感を放っておりましたw。こんなにたくさんの人からタクフェスは愛されてるんだなぁと思うとなんだか嬉しい。
以下、けっこうネタバレを含んだ感想になります。ご注意ください。
あらすじ・概要
タクフェス第9弾『天国』は宅間さんの新作になります。ちょうど東北の震災10年目というのが大きなニュースになっていた2021年3月頃に執筆をされていたとのこと。
あらすじ
石巻に、実際にあった古き良き劇場をモデルに、映画、芝居、興行に奮闘するちょっぴりお間抜けな愛すべき人たちの優しさに溢れた物語―。
2010年春ー。
宮城県石巻市にあるひなびた映画館“山田劇場”の事務所に忍び込んだ高校生、島村龍太郎は、ひょんなことからこの映画館で働くことに。かつては芝居小屋だったこの劇場、今は社長の本郷 大が、妻の理香子、父の穣と共に移動映画上映会や演歌の興行で生計を立てていた。
まさにこの日は年に2回開催される「ヤマゲキがんばれ会」のイベントの開演直前。龍太郎はバタバタと大慌ての舞台裏で、東北大学に通う大の娘、さゆりにバッタリ出会い、心奪われ…
それから一年、怒涛の日々を過ごす山田劇場は、2011年の春を迎える。<公式HPより引用>
今回のテーマは、東日本大震災です。物語の舞台は宮城県石巻市。実際に存在していた「岡田劇場」がモデルとなっていて、制作にあたり宅間さんはじめ何人かのキャストは現地を訪れその空気を肌で感じてきたそうです。
綿密な現地取材を行い、ストーリーの中にも「岡田劇場」で実際に起こったことが何カ所か反映されているそうです(宅間さん曰く、4割フィクション、6割ノンフィクションとのこと)。
この物語を上演するにあたりかなり悩まれた部分も多かったようですが、”あの時を風化させてはならない”という強い使命感から舞台作品を通して伝えていきたいと決断されたというようなことがパンフレットに記されていて、宅間さんの強い覚悟のようなものを感じました。
全体感想
私がこれまで見てきた宅間さんの作品に出てくる建築物はレトロなものが多いのですが、今回もかなり古き良き時代の香りがする建物セットでした。モデルとなっているのが明治時代から続いていたという「岡田劇場」ということなので、必然的にレトロ感のあるものになっていたと思います。
基本的にはワンシチュエーションでのお話。舞台上ではなく、舞台の裏方…というか、経営している側の家族や仲間たちによる人間模様がメインです。開演前にセットの構造を宅間さんたちが軽く解説してくれたので物語にも入りやすかった。
全体像としてはこんな感じです(写真は、宅間さんと大藪くんによる前説中に撮影したもの)。舞台後ろに敷かれてある薄いカーテンは、時代の変化を可視化するために重要な役割を担っていました。
物語のスタートは現代。冒頭にK新総理大臣の就任インタビューが流れてくるほど最近だったのでちょっとビックリ(笑)。メインの東北・石巻ではなく九州・熊本のとある古い劇場でのひとコマから始まります。ここで何やら商談のようなことが行われているのですが、最初はちょっとどういう展開になっているのか少しわかりづらくて珍しく戸惑いました(汗)。東北のお話なのに、なぜ九州からスタートしているのか…。でも、この部分が始めよく分からなくても最終的には腑に落ちるので問題ないんですけどね。
10分弱くらいの現代パートが続いた後、主演の原くん演じる島村龍太郎が一人だけ残り物語を動かしていきます。「これから〇〇するんだけど、興奮しないでね」みたいなことを東北弁で言い出して「!?」となっちゃったけど(笑)ドキドキハラハラするようなことではなかったのでちょっと安堵(何がww)。
ただ、現代から11年前に遡るための変身シーンでもあるので…髪色がけっこう「え、すごっ」っていうのはありましたw。
そして、当時まだ高校生だった龍太郎がなぜか山田劇場で働くことになったところから本格的に物語がスタート。この時点では、龍太郎が何者なのか、なぜこの劇場にやって来たのか、なぜ働かせてもらうことになったのか明らかにはなっていません。山田劇場を運営している本郷一家の大らかな雰囲気にあれよあれよという間に飲み込まれていく感じが面白かった。
メインとなる本郷一家は、宅間さん演じる大と紗理奈さん演じる理香子夫婦と、娘のさゆり、大の父親のモト冬樹さん演じる穣の4人家族。山田劇場のイベント”ヤマゲキがんばれ会”(モデルとなった岡田劇場でも”がんばれ会”という名のイベントが行われているそう)の準備のためアタフタしているのですが、ここでの家族のなんとなくユルいながらもセカセカ慌ただしいやり取りは、宅間さんの描く世界観ならではのユーモアと温かさがあります。
特に、モトさんが演じるおじいちゃん、穣のキャラが面白いんですよね。実在している方をモデルにしたそうですが、見た目と行動がチグハグなところが笑えるし可愛らしい。
さらに本郷一家の元を常に訪れて家族のような存在になっているハマカーン浜谷さん演じるガンツさんや広田くん演じる稲妻くんも良いキャラです。ガンツさんはそもそも登場の仕方が非常に斬新(笑)。え、そこにいたの!?ってびっくっりしましたw。
そして、東京の芸能プロダクションから営業に来ている大藪くん演じる光明寺くん。すごいイケメンなのに髪型がオカッパ系で最初誰だか分らなかったww。
龍太郎は最初は山田劇場で働くことを拒絶して出ていこうとしましたが、本郷家の一人娘のさゆりに一目惚れしたことからこの場所に留まることを決めます。この時の龍太郎君の変わり身が分かりやすすぎて面白い。ところがさゆりさんはかなーり男勝りな性格で、見た目とのギャップがすごかった(笑)。
だけどさゆりは大らかな家族のもとで育っていることもあり、心根はとても優しい女の子。仕事がうまく行かずに悩んでいる光明寺くんをさりげなく励ましてあげたりするシーンは心温まる良い場面でした。
で、このさゆりの優しさがきっかけで光明寺くんが彼女に恋心抱いちゃってw、龍太郎とのバチバチなライバル関係(といっても子供っぽい駆け引きばかりですがw)が出来上がったのがなんとも面白く可愛らしかったですね。当のさゆりは二人の恋心にはまるで無頓着で、二人とも彼女の反応次第で気持ちが翻弄されて行ってしまう。だけど、こんな日常もすごく貴重で尊い時間なんだよなぁ…ということに後々気づかされるわけです。
そんなある日、山田劇場に大スターがやってくることになってみんなドタバタの大騒ぎw。そのスターが定めたNG事項というのが、”サイン・写真撮影・握手の3つは絶対ダメ”というもの。でも、だいたい禁止事項は物語が進行していくうえで守られる確率が少ない(笑)。今回も同様w。
ということで、ストーリーの中盤でタクフェスならではのサービスタイムが始まります!
まず、やってくる大スターさん役ですが…これは、公演地域ごとに違うシークレットゲストが登場する仕組みになっていたようです。ちなみに、名古屋は浅田舞さん、札幌は清水宏保さん、新潟はDJ KOOさん、仙台は京本政樹さんが登場されたのだとか。そして今回の大阪公演のスター役のシークレットゲストは…
ハイヒール モモコさんでした!!客席からは「おぉっ」と軽くどよめきがw。
主に関西を中心に活躍されているので、おそらく大阪でこの方を知らない人はいないと思います。私も関東から関西に引っ越した時にモモコさんの出演している番組よく拝見しておりました。ここ最近は全国ネットしている番組にも出演されていることがあるので、知名度も高まってきたのではないかと。
ステージに登場する前にまずは控室で皆様からの接待を受けるスター様という設定。最初の部分のお芝居でNG事項と確認し合っていましたが、結局は龍太郎がそれを忘れて堂々とやっちゃうっていうね(笑)。ちなみに、前説の抽選の時に「シークレットお土産」がありましたが、それがこの場面で明らかになります。あ、なるほどねと納得。
そして、サインと握手をしてもらったことに満足した龍太郎はいったん自室に帰っていくという展開に。この直後に大役の宅間さんが「なんか撮影しちゃっても大丈夫らしいですよ」みたいに言い出してお客さんのカメラタイムに突入していくわけですww。龍太郎が捌けていった理由がこの時明らかに(原くんはジャニーズの子なので)。このあたりの演出も巧い流れだなと思っちゃった(笑)。
モモコさんを交えてのシーンのお芝居は、”基本的に”w最初と最後の部分だけでその他はすべてその場でのトークショー状態ww。
のっけから某高級ブランドについて根掘り葉掘りの質問攻めにあっていたのがめっちゃ笑ったwww。この公演のために持ってるやつを全て家からかき集めて持参したらしいです(上から下まで全身あのブランド状態 笑)。ちなみにこの日の一番お金かかってたアイテムは…真っ赤なスーツだとのこと。
さらにはデビュー秘話や、同期の芸人さんとのエピソード、副業でやってるお店についてなどめちゃめちゃ貴重なお話がバンバン出てきて、この時はキャストの皆さんも「素」に近くなってたのかかなり前のめりでしたねww。
お店のくだりで「福島が近いんで」みたいな話が出て、あくまでも舞台の設定は宮城県石巻市だったことから宅間さんが即座に「福島と言ったらちょっと遠いんじゃないかと」とツッコミwww。それに対して「すぐ隣だから!」と皆が反応しててもうみんな爆笑ww。大阪駅の隣にたしかに「福島駅」ありますからね(笑)。
このトーク時間に思いのほか時間をけっこう割いていたので、写真撮る時間に余裕がありましたね。最後のほうはみんな撮影よりもモモコさんのトークに夢中になってたくらいです(笑)。
そんな空気を感じた頃になんとな~~く物語の本編の雰囲気に話が戻っていきました(モモコさん、最後の部分は台本通りのセリフって感じで退場w)。その後は写真タイム終了ということで、場内が明るくなって電源を切る時間もしっかり設けられてました。そして、芝居の世界に帰ったタイミングで自室から原くん演じる龍太郎が戻ってきます(笑)。
東京公演のゲストは誰になるのかな?私は行けないのでSNSでチェックしたいと思いますw。
2010年の年末、光明寺が熊本の古い劇場の運営をやってみないかという話を持ってきます。最初はみんなあまりその話に乗り気ではありませんでしたが、さゆりのツルの一声で龍太郎にその経営を任せたらどうかという話に。龍太郎としては、一目惚れして以来ずっと片想い中のさゆりの近くにいたい気持ちもあって即答することができない。このあたりの葛藤は見ていて切なかったな…。
でも、自分を受け入れてくれた本郷家の家族のみんなは「お前ならできる」と全面的に信頼を寄せてくれている。龍太郎は両親を亡くし孤児院で育ってきたというバックボーンがあったことから、本当の家族のように接してくれている本郷家に居心地の良さも感じていました。そのみんなの信頼に応えたいという気持ちもあったんじゃないかな…なんて。
さゆりに対する失恋にも似た感情と、本郷家の温かさと、色んな思いを受け止めて龍太郎は熊本の劇場の経営を担当することに決めるのでした。
あともう一つ印象的だったのが、穣が常に口癖のように言っている言葉を家族がみんな「もう聞き飽きたよ」と少し呆れながら受け流していたシーン。龍太郎は知らないから教えてあげようということになってそれが明らかにされます。
「人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、そして・・・」
この3つ目の坂がこの作品の中の一番の核となっていたような気がしました…。あの時みんな、それをもっと真剣に受け止めていたら…。そんな風にも思わずにはいられなかった。
そして、2011年3月11日がやってくる。
いつもと変わらない日常を過ごす山田劇場の面々。災害に備えての耐震補強が終わったとドヤ顔をしているガンツさん。看板も金色の立派なものに賭け替えるべく準備万端。劇場の幟も新調したとみんなのテンションが上がっている。さゆりがケーキを買って来たと嬉しそうに机に置いている。
そんな変わらない普通の日常の光景に、何の前触れもなく突然その時がやって来た。この演出は本当に衝撃的でした。本当に、誰も予感すらできない状況だったのだなと…。
実際の東日本大震災の時の激しい揺れは約2分半だったとのことですが、舞台上では1分程度にしたとのこと。でも、その1分もとてつもなく長く、恐ろしく感じました…。建物のきしむ音がすごくリアルで、まるで劇場全体も揺れているようだった…。
私は2011年3月当時千葉県に住んでいたので、東北程ではないもののこれまで体験したことのないような激しい揺れを経験しました。2回の大揺れのあと、恐怖で体の震えと涙が止まらなくなったのを思い出したな…。
その時山田劇場にいた人々は、耐震補強したことが吉と出て全員命が助かります。地震の直前にたまたま耐震補強をしていたというこのエピソードは、モデルとなった岡田劇場で本当にあった出来事をモチーフにしていたとのこと。虫の知らせ…ってやつだったのかな。
揺れが収まってみんなお互いの無事を確認した後も、あまり緊迫感がない様子だったのがすごくリアルに感じました。すぐ高台に逃げるという感じではなく、倒れた家具を「びっくりしたねぇ」みたいに語りながら呑気に戻している。その先のことを知りながら見ているこちらとしてはその姿がもどかしくてたまらなかった(汗)。
ようやく劇場で揺れを体験した人たちが高台へと避難した後、仲間を心配した大と龍太郎が戻ってくる。そして同じく家族を心配した理香子と穣も劇場へ戻ってきた…。
ここからの展開はもう、涙無くしては見れなかった…。特に、大がどうしても持っていきたいものと選んだアイテムが泣けて仕方ない(涙)。ここのシーンは、色んな意味ですごい脳裏に焼き付くというか…。エンターテイメントという形を通して「あの日」のことを伝えていくという宅間さんの覚悟みたいなものをすごく感じました。
そして、舞台は再び10年後の九州・熊本に戻ってくる。冒頭で「社長は遅れてやってくる」というセリフがありながらも本人が登場しなかった理由が最後に判明する展開がまた泣けた…。
龍太郎は頑張って劇場運営を続けていたものの、今度はコロナ禍が災いして客足がすっかり遠のいてしまい万事休す状態となっていました。冒頭で商談していたのは、なんとか古い劇場の建物だけでも残したいという想いから市の職員を呼んで引き取ってもらえないかと話していたのです。しかし、返事の方はあまり期待できそうもない雰囲気…。このあたり丸く収めないところもなんかリアルだなぁと思いました。
そして、話はまだ終わりません。本当の意味での心震える瞬間が最後の最後に待っていました。
ここまで見てきて、残っている謎が一つだけあった。それは、11年前のあの日、なぜ龍太郎は山田劇場にやって来たのかということ。そのきっかけ、本郷大との関係などが最後の最後に明らかにされていきます。
龍太郎の冒頭部分のドラマをこれまでの本編をずっと見た後に知るって…、もう、心が震えまくって号泣状態になってしまった(涙)。とにかく、あっったかい・・・。働くように勧められた後思わず龍太郎が感極まってしまった理由も、最後にもう一度見るとものすごく腑に落ちてくる。
こういう巧みなタクフェスの世界観、やっぱり好きだし愛しい。是非多くの人に見ていただきたい。
主なキャスト感想
原嘉孝くん(島村龍太郎役)
原くんの舞台を観るのは今回で3回目(しかも2021年内で3回)。J事務所のなかでもお芝居に対する情熱がひしひしと感じられるので私個人的には注目している俳優さんです。宅間さんによると、この「天国」の上演を決めたときから原くんを主演にオファーすることは念頭にあったということで、龍太郎のキャラも当て書きしたところが多かったそうですね。
本当に大熱演!!宅間さんの作品にはよくちょっとヤンチャ系のキャラクターがメインとして登場してくるのですが、これまではその役は宅間さんが演じることが多かったんです。でも、今回は原くんが演じることになってて…、それがめちゃめちゃハマってたんですよね。
しかも、ただヤンチャなだけじゃなくてところどころに繊細な感情ををちょいちょい織り交ぜてくるのも素晴らしい。それゆえに、なんだか放っておけない奴だなぁという愛しさみたいなものが見ていて沸き起こってきました。宅間さんの描く世界観にそういう意味でもすごくマッチしていたと思う。
現代パートと10年前パートの演じ分けも素晴らしかったですね。龍太郎が色んな想いを受け止めながら歩んできたことがちゃんと感じられるように演じてた。まさに、作品の中を生きてた。
実際に現地へ取材に行き当時の出来事を肌で感じたことも多かったようですから、なおさらお芝居にリアリティが生まれていたのではないかなと思います。
今回の経験を糧にまたさらに進化した役者さんに成長してほしいです。
入山杏奈さん(本郷さゆり役)
あんにんちゃんはAKB48のアイドルですが、ここ最近はドラマなどで見かけることも増えてきたなと思います。タクフェスには「歌姫」に続いて2度目の登場とのこと(歌姫は観に行けなかったんだよなぁ)。
あんにんちゃん演じるさゆりは、見た目は超美人で龍太郎が一目惚れしちゃうのも納得の可愛さなんだけど、言動や行動が雑でちょっと荒っぽい性格というギャップがあるところが面白かったです。けっこうまくしたてるセリフも多かったんですが、こちらも頑張っていたと思います。
男勝りなところはあるけれど、他人には本当は優しくて。特に光明寺くんを励ますシーンとかは印象的でよかった。
だけど、演技全体としては…なんとなくまだ「頑張ってる」感があったような気も。動きとかセリフ回しとかもう少し自然にスムーズにできるようになったらもっといい女優さんになるんじゃないかなと思いました。美人さんだし舞台映えもするしね。頑張ってほしいです。
浜谷健司さん(ガンツさん役)
ハマカーンの浜谷さんは以前ある2時間ドラマで役者やってるのを見たことがあったんですが、その時の印象がけっこう微妙…だったのでw、正直今回も最初はちょっと心配していたところが大きかった(すみません 汗)。
ところが、その予想は見事に外れて舞台の上ですごく自然に存在してて、会話劇もめっちゃスムーズ。ガンツさんという飄々としながらも頼りになる面白いおっちゃんがすごいハマっててビックリしました。芸人さんとしてのアドリブの機転の速さなども楽しめたし、とても楽しい素敵なお芝居だったと思います。
大薮丘くん(光明寺くん役)
大藪くんは今回初めまして。宣材写真を見たときはけっこうイケメンさんだなと思っていたので舞台上ではそれとは全く違うイメージで最初誰だか分らなかったほどでした(笑)。でも、時間が経つとあのオカッパ頭がすごく似合って見えてきて…愛着すら湧いてしまったよ。
光明寺くんはちょっと気弱で自信がなさげなところがある青年。でも、ある日さゆりから思いがけず励ましの言葉をもらったことで自分にちょっと自信を持ち、彼女にほのかな恋心を寄せ始めるんですよね。さゆりとのシーンの前と後とでキャラの印象が変わるのがすごく分かった。自分の出来ることを一生懸命前を向いてやろうという気持ちが伝わってきてとてもいいお芝居だなと思いました。
パンフレットによれば、稽古場ではみんなのアイドル的存在だったみたいで(笑)。そんな裏側の姿も見てみたいなと思っちゃいました。いつかお芝居でそういう役も見てみたいぞ。
広田亮平くん(稲妻くん役)
広田くんは個人的には某朝ドラに出ていた男の子という印象がすごく強い。あの朝ドラは作品的に嫌いだったのですが、広田少年のことはすごく記憶に残っています。そんな彼ももうこんなに成長して…と思うとなんだかとても感慨深い。大河ドラマ『真田丸』で久しぶりに見たときも驚きましたけどね。
広田くんが演じた稲妻くんは東大の農学部出身でとにかく真面目一本道みたいなキャラ。真面目過ぎるが故に、ちょっとでも引っかかることがあると感情的になって食って掛かってしまうわけですが、その時の興奮っぷりがとても面白かったですw。感動する映画を見たら人目も憚らず号泣しちゃうキャラも可愛かったな。
トークショーの時にも広田くんの話題は出てきたのですが、この作品を演じるなかで一番成長して変わったとみんな口をそろえて言ってました。最初の頃は自分の殻を破り切れてなかったそうで「質問を質問で返してくるタイプだった」って宅間さんたちが笑ってたw。今では全くその面影を感じさせないほど成長したそうで、「あの頃が懐かしいくらい」と皆息子を想うような表情で目を細めていたのがとても印象的でした。
モト冬樹さん(本郷穣役)
モトさんはタクフェス2回目の参加だそうですが、その作品も私は見そびれてしまっているので(汗)今回舞台で拝見するのは初めてになります。
いやぁ、さすがの存在感でしたね!冒頭の893の親分みたいな羽織袴にサングラス姿で登場するシーンとか最高でしたww!超コワモテ系なのに、実はそれを気取ってるちょっとお間抜けなおじいちゃんで(笑)。すぐに穣さんが好きになっちゃいましたよ。「俺のことは会長と呼べ」とすごんでるんだけど、みんなほとんど相手にしてなくてちょっと寂しそうにしてしまう表情とか可愛くて萌えレベルw。
「俺のことは会長と~」っていうセリフは何度かこの作品の中で出てくるんですが、後半のあるシーンでそのセリフの場面がすごく重みのある響きを持つ瞬間がくるんですよね。穣が龍太郎を家族の一員だと告げるシーンがあるんですが、ここのセリフの伝え方がものすごく感動的で涙がこみ上げてきてしまった。そんな愛すべきおじいちゃんが…、って顛末は本当に泣けました(涙)。
鈴木紗理奈さん(本郷理香子役)
紗理奈さんを大阪の舞台で見ると、なんだかすごくしっくりくるものがありますねw。セリフは東北弁なのになぜか大阪弁喋ってるような幻聴が起こりそうになってしまった(笑)。
理香子さんは旦那さんをめちゃめちゃ愛している奧さん。時には厳しい一言でビシっとさせることもあるものの、常に愛情深く肝っ玉母さんのように山田劇場を支えている存在でした。その姿はとても逞しくて、そして優しく温かい。
一番印象に残ったのは、龍太郎が孤児院の子供たちを招待したいと言っているからお金の援助をしてくれないかと大に頼まれた場面。龍太郎の身の上を知った理香子が、「そんなこと聞くまでもないじゃない」といって厳しい財政状況ながらも自分のポケットマネー崩してでもお金を工面すると迷いなく告げる。
大のことを愛して信用していると同時に、彼が信頼を寄せた龍太郎のことも大きな心で受け止めていたんですよね。あの優しさが泣けました。
あと面白かったのは、好きな芸人はってシーンでタムケンさんの名前出してたことw。何回も言ってたなw。これは大阪限定??
宅間孝行さん(本郷大役)
これまで見てきたタクフェス作品では原くんが演じてきたようなヤンチャな人物を演じることが多かったように思えた宅間さんですが、今回は優しい穏やかな旦那様(でもけっこうツッコミも入るけどww)を演じられていてとても新鮮でしたね。
妻の理香子さんのことを本当に愛していて、二人でデレデレする場面とかはなんだか可愛らしくてちょっとホッコリしました。喧嘩するシーンを一つも出さなかったのもよかったと思います。父親である穣や、娘のさゆりのこともなんだかんだ言いながらも大好きで、とにかく本郷家、山田劇場の人たちが愛しいんだというのがすごく伝わってきた。
ハイヒールモモコさんがスター役で登場した時はめっちゃ食いつくように質問してたのも笑えたww。よくあんなに質問出てくるなってくらい聞き出してたので(笑)おかげで貴重な楽しい話をたくさん知ることができました。あれ、毎公演ごとにニュアンス変えてたのかな?
一番泣けたのはやはりクライマックスからラストシーンにかけてでしょう。「大事な宝物」を取りに戻ったシーンとか、なんか、胸が締め付けられるほど切なかった…。でも一番泣いたのはラスト、11年前にもう一度時間が戻ったところかなぁ。龍太郎との関係が明らかになるあのシーン。その時の宅間さんが演じた大はとてつもなく優しくて温かくて…思い出すだけでも涙があふれるほどです(涙)。素晴らしかった…!
後述
本編が終わった後のカーテンコールで、スター役のモモコさんが紹介されたのですが、その時に「私がサプライズで出ても大阪の人は絶対驚かないからって何回も言ったんですよ~!」と弁解しまくってたのがめっちゃ笑えましたww。本編で大泣きしてカテコでも涙止まらない状況だったので、この時のモモコさんとのやり取りはなんだか救いに感じましたねw。
いやいや、けっこう大阪のお客さん、モモコさん登場でどよめいてましたからw。私は大阪らしくてすごく良いと思いましたよ。でもご本人的には女優として出たかったそうですけどね(半分は女優としての登場だったと思いますがw)。
今回は終演後のイベントがダンスの日、お見送りの日、トークの日と細かく分かれていました。私が選んだのはトークの日でしたが、宅間さん曰く「ダンスは毎日しっかり届けようという話になって」ということで、ダンスも一緒に堪能することができました。
とはいえ、今回はコロナ禍ということで手拍子のみになったのはちょっと寂しかったかな。いつもは立ち上がって一緒に踊ったり客席降りがあったりしたんですよね。早くそんな日が訪れてほしいなと思います。ちなみにダンスにはモモコさんも張り切って参加されててめっちゃ楽しそうにしてました。
原くんはさすがJ事務所で鍛えてるだけあって動きにキレがあってカッコよかった!それからアイドルのあんにんちゃんも慣れたようなしなやかな動きで、原くんとツインで踊るシーンなんかは見応えがありましたねぇ。
モトさんはギターの生演奏で参加!これはめっちゃ贅沢なものを聴かせていただきました。エレキギターをノリノリで演奏するモトさん、カッコよかったな~!
今回、トークはカテコから休憩を挟んだ後に行われたのですが…、メモを取ることができなかったので詳細レポはできません(汗)。ただ、覚えている印象的だったものだけ少し箇条書き程度に書き記したいと思います。
参加者は、宅間孝行さん、原嘉孝くん、鈴木紗理奈さん、モト冬樹さんでした。
基本的には事前質問制だったのですが、せっかくなのでということで挙手でも数人の方からの質問を募集ということに。ところが、一番最初に当てられた方がタクフェス『天国』にはほぼ触れないマイペースな内容の質問をされてて皆さんどんな反応していいか戸惑う場面が発生w。「大阪の方はさすがです」とさすがの宅間さんもタジタジでしたね(ちゃんと質問に回答していたところが素晴らしかった)。
仙台公演を観た方から、大阪公演で意識が変わったことはあったかというような質問。
大阪の直前が仙台公演だったそうですが、皆さん口をそろえて言っていたのは、やはり東日本大震災の直接の被害を受けた地域での公演はこれまでとは違う感覚が自然と沸き起こったということでしたね。どの公演も全力で演じているけれど、仙台公演は何か違う力が別に働いたような気がした、みたいなコメントもありました。
それゆえ、今回の大阪公演はその時の感覚がいい意味で体に染みついていてより感情に深みのあるお芝居になったかもと話されていました。たしかに、あのラスト前での皆の独白は涙無くして見れないくらいリアルだったし感情の伝わり方がハンパなかったもんなぁ…。
皆さんが思う横に座っているキャストさんの印象は、というような質問。
モト冬樹さんから原くんへ。
とにかく全力で魂をぶつけるようなお芝居が魅力的だし、原くん本人の人間性も大好きと熱弁されていました。
原くんから紗理奈さんへ。
とにかく元気がいい(笑)。これに対しては紗理奈さんは「それだけ!?」みたいに不満そうでしたww。もちろんそれ以外にも明るくて場の空気を和らいでくれるみたいなコメントも追加してたと思います、確かw。
紗理奈さんから宅間さんへ。
最初会う時には怖い人なのかと緊張してたけど、全然そんなことなくて面白くていい人。あと作品の世界観について絶賛されてました。初対面の印象については宅間さんも「稽古が厳しいということが有名になっちゃって怖い人だと誤解されやすくなった」みたいに苦笑いしてましたw。記者会見でもみんなそれめいたことを言うのでなおさら怖いイメージになっちゃうじゃないかと皆にツッコミ入れまくってました(←たぶん東京公演前の会見もそうなるかもって言ってたな 笑)。
宅間さんからモト冬樹さんへ。
最初は照れ隠しからか「別に」とツンな発言する宅間さんでしたがww、本心では、とにかくモトさんはとても優しいとそのお人柄を大絶賛されていました。稽古場でも気楽に呼んでいいよってことで、みんなそれぞれ呼びやすいような名前でモトさんのことを慕っていたそうです。
地方ごとの行きつけのお店は、という質問。
宅間さんはとにかくたくさんご贔屓の店があるということで、回るのがけっこう大変らしいです。ただ、お店の皆さんはいつも見に来てくれるのでとてもありがたいと感謝されてましたね。コロナ禍になって足を運べなくなったところもあるようですが、明けたときにはまた伺いたいというようなことを語られてました。
原くんへ、髪の毛は大丈夫ですかという質問。
劇中、原くんは何回かスプレーで髪の色を変えるんですけど、ファンの方はそれでかなり傷めてしまっているのではと心配されていたようです。原くん曰く「バッキバキですww」とのことww。なので、スタッフさんにお願いして最高級のシャンプーとリンスを用意してもらっているのだとか。東京公演も頑張って乗り切ってーー!
最後に、宅間さんが『天国』上演についての熱い想いを切々と語られていました。震災の記憶を伝えていくことに対する覚悟みたいなものをひしひしと感じてちょっとこみ上げるものがありましたね。
他にもいろんな質問あったんですが、覚えているのはこんな感じで。
私が観劇した日はお客さんの入りが7割ちょいくらいで少し勿体ないなぁと思ったのですが、大阪楽は満席に近い状態でスタンディングもあったとのこと。大阪のお客さんはみんな熱いから、キャストの皆さんも感極まる人が多かったようです。私もその中に加わりたかったなぁ(遠征だとなかなか突発できない 汗)。東京公演もたくさんのお客さんが入りますように。
最後の最後までとても楽しい有意義な時間を過ごせました。ありがとう、タクフェス!!来年の新作ももう決まっていて大阪公演もあるとのこと。また是非観に来たいと思います。無事に上演できますように!!