※この記事は前記事から繋がっています。よろしければその1からお読みください。
本当はひとつの記事にまとめるはずだったのですが、案の定長くなりすぎてしまったので(爆)二つに分かれてしまいました。スミマセン…。思い入れが深いとついつい語ってしまう悪い癖が・・・(汗)。
本編感想に入る前にちょっと閑話休題。
今回の『タイタニック』再演ではタイタニック関連の物販がちょっと乏しかったのが残念。パンフレット(バッグつきの特別セットもあったけれど私はパンフのみ買いました)やポスターはありましたが、初演で売っていたBWのCD(←公演後半に売り切れたんですよね)やタイタニックの歴史本みたいなものは置いてなかった。日本版のCDが出る気配がまだないのでBWの音源はこの作品が好きな人にはかなり貴重なものだと思います。
BWオリジナルキャストのCDです。私は初演で購入しましたが、聞くたびにシーンが走馬灯のように思い出されて涙が出てきました…。ミュージカル『タイタニック』を気に入った方にはぜひともお勧めしたい一枚です。近い将来、日本キャスト版も出せるときが来ればいいな…
他にもタイタニックに関する書籍など色々出ていますので興味のある方はチェックしてみてはいかがでしょうか。ちなみに私が一番最初にタイタニックに触れたのは97年の映画です(笑)。映画関連本が当時色々出てまして、そこにかかれてあった資料などを読んで興味を持ちました。
というわけで、以下、相変わらず長文な『タイタニック』シーン感想になります。自己満足的に熱血系な感想になってると思うので(爆)興味のある方、お時間のある方のみお進みください。
2009年2月8日千穐楽公演 第2幕感想
おかしな現実
船が止まったことに気がつき一等の船客たちが異変を感じ始めた頃、デッキでは被害状況の情報収集で躍起になり始めています。このとき、プライドを持ってキビキビ仕事をしていたマードックにはこの先起こるであろう恐怖を予感させるように体中震えが走っているんですが・・・それをなんとか沈めようと懸命に平静であろうとする戸井マードックがとても印象的でした。手の震えが理性で押さえようとしてもどうしても止まらないんですよね…。1幕とのギャップがここでなかなかいい感じに出ていたと思います。戸井さんのマードックにはやっぱり違和感はあるんだけど、こういう芝居とかは好きでした。
ただ、そのあとに動揺を隠すためにブリッヂで動かない船の舵をマードックが握っているシーンがあるんですけど・・・あそこはもう少し微妙なニュアンスで演じてほしかったなぁと。傍から見てもハッキリと体中が痙攣してる戸井マードック、その言わんとするところは伝わるし分かるんだけど・・・あそこは個人的には初演の岡田マードックのように事故を起こしてしまったことへの罪悪感からくる恐怖で身動きひとつ取れず茫然自失状態に陥ってしまう(スミス船長から状況説明を迫られて思わず舵を手放してしまう岡田マードックの仕草がとても泣けたんですよね・・・)、みたいな芝居のほうが腑に落ちるような気がします。見るものの好みの問題かもしれませんけどね。
ちなみに、そんなマードックの代わりにキャプテンに規則正しく冷静に受け答えしている乾ライトラーがこのシーンではとても魅力的。船の状況を調べるようスミスキャプテンに言われたときの「アイアイサー」の答え方がカッコよくて大好きでしたね。
一方の乗客たちは最初は止まったことも軽いトラブルだろうと受け止め暢気に構えています。デッキに転がっていた氷山をセイヤーが拾ってきてジョージと無邪気にはしゃいでる姿がなんとも平和で笑えます。二等のアリスやエドガーもこのときは「船の塗料がはげて止まっている」という説明を鵜呑みにしていて、アリスなどは一等の人とサロンで会える興奮から化粧直しにまで行ってしまう始末(笑)。そんな彼女に「化粧が終わる前に船が直っちまうぞ」って言うエドガーの台詞がユーモアあって好きでした。
一等や二等の船客が比較的落ち着いている中、三等の人たちは船底に近い位置に宿泊していたために衝撃をリアルに肌で感じているせいか(上級クラスの客室は全く振動を感じなかったらしいのでなおさら優雅に構えていたんだと思います)ちょっと緊迫しています。様子を見てくると言い出して階段を駆け上るジムを職務からか必死に押し留めようとしていてるエドワードの姿がけなげで泣けました…。彼らは忠実に上の命令に従うように教育されてますからね…。
その頃ブリッヂではアンドリュースが最悪の状況を告白。タイタニックはボイラールームが3つから4つの浸水では浮くように設計されていましたが今回の事故で浸水した6つでは耐えられなかった。「タイタニックは沈没します」と断腸の想いで告げなければならないアンドリュースの苦悩、その言葉が全く受け入れられず混乱するしかないイズメイ、そして衝撃を受けていただろうにそれを表に出さず冷静に沈没までの残り時間を尋ねるスミス船長の三人の心理描写がとても印象的でした。あの状況下で冷静にその後の時間を計算しているアンドリュースってすごいなと思いますね。
この事実は航海士から客室係にも伝わっていきますが、彼らは乗客の混乱を招かないようにそれを隠したまま対処に当たることになります。
そうとは知らないサロンでは一等の乗客たちが♪サロンにパジャマの姿、これはかなり可笑しい♪と歌いながら相変わらず暢気に踊ってます。このときの金澤ジョージが大きな熊さんが踊ってるみたいで異様に可愛かった(笑)。そんな彼らに事情を知っているエッチズはなんとか真実を知られないようにしつつも救命胴衣をつけてもらうように懇願し続けています。その姿がなんとも中間管理職で胃が痛くなりそうな様子で・・・思わず同情。男性は特にプライドが高くてほとんどの人が救命胴衣をつけてくれないし、ジョージなんかは奥さんと救命胴衣で遊んじゃってますから(笑)。この時代の上流階級の人たちにとっては救命胴衣をつけることは惨めな姿と映ってしまったんでしょうねぇ…。
そんなところに二等船客がやってきて、夢のファーストクラスの人たちとお近づきになれたアリスはテンションがアゲアゲになってます。それをすごく嫌そうな顔で♪あ~、ほら来たセカンドクラス♪と歌うエッチズさんが私は好きでした。さらに面倒な人が来たよ・・・みたいな心境ですよね、あれ(苦笑)。そんななかでとても紳士的なのがイジドー夫妻。ちゃんと救命胴衣もつけているしセカンドクラスの人たちにも敬意を持って接している姿がとても印象的です。
しかし、時が経って紅茶を乗せたカートが船の傾きを示すように自ら滑っていくのを見て・・・今まで暢気に構えていた人たちの間に徐々に緊張感が募っていきます。ここの演出はとても分かりやすくてよかったです。そんな彼らの緊張を察したエッチズたちが必死に事実を押し隠そうとしている姿がなんだか切なく見えました。
脱出
一等と二等の船客が避難経路に案内されている頃、三等の乗客たちは足止めを食らったままの状態に。そうこうしている間にとうとう水が流れ込んできてただ事ではないことを悟ります。一番最初にタイタニックの沈没を実感したのは三等の人たちだったんですよね…。ジムが「この船、沈むんだよ!」と衝撃の言葉を発するのが印象的なのですが・・・kimeruくん、もう少し緊迫感こもった台詞回しができればもう少し良かったかなぁ。なんかサラッと叫んでた印象があるんで。ケイトたちも緊迫した状況に混乱しますが、一番心拍数が感じられたのが白木原ケイトでした。彼女のケイトは本当に臨場感があって表情も豊かで好きだったなぁ。
そんな混乱状態の三等の人たちに救いを差し伸べてきたのがボイラー係のバレット。私は下手側の席だったので上手側の宮川バレットの表情がちょっと見づらかったのですが、その台詞回しから事態の緊迫感がビリビリと伝わってきてすごく良かったと思います。
上級クラスの人々は着実に救命ボートの位置まで近づいていますが、このときもまだ本当の恐怖を予感できていないようで優雅に構えてます。そんななか、イェーツがカルドザに「いざとなったときには妹に自分がタイタニックに乗っていたことを伝えてほしい」と一通の手紙を託すシーンが非常に印象的です。詐欺師で偽名で船に乗り込んでいた彼は一等にいながらもどこか異質な存在。イェーツだけがこのときこれから起こるであろう恐怖を予感していたのかもしれません。自分がひょっとしたら助からないんじゃないかと…。だからこの手紙をカルドザに託すシーンはなんだかとても切ないのです。今回の再演を見て初めて感情移入した場面のひとつです。やはり深いぞ、『タイタニック』。
気を取り戻したマードックは厳しい顔で今後の処置についててきぱきと指示を出していきます。ボートの数が足りずにやがてパニックになることも彼の頭の中ではちゃんと計算されていて、そのときには・・・とピストルを持ち出してしまうのですが、アンドリュースは「それは使ってはいけない」と言うように懐にしまわせるんですね。トークショーのときに戸井さんが言っていた「アンドリュースはマードックが好きらしい」という言葉を念頭にこのシーンを見てみたのですが・・・たしかに、アンドリュースはマードックが好きかも。ピストルを出したマードックをなだめるときのアンドリュースの目が・・・なんとなく、親愛の情がこもっているように・・・確かにそれを感じました。なるほどねぇ。細かいわ、松岡さん。
スミス船長は三等船客を気にするライトラーを諌め、上級クラス船客のボートの案内に徹するように指示を出します。船長の命令は絶対だったためにそれに従うしかないライトラーでしたが、アンドリュースはここで初めてスミス船長に意見します。「神の心はすでにファーストクラスの心に傾いているように見えます」と責める言葉がとても印象的です。乗組員ではない立場だったとはいえ、神の存在とも称されていた船長に「誰を生かし誰を殺すかあなたが決めるのか」と詰め寄るのはとても勇気がいる行動だと思います。こんなところからもアンドリュースの真面目で誠実な人柄がうかがえますね。松岡さんは凛としたとてもいい雰囲気の芝居をしていたと思います。
誰のせいだ
通信室にやってきたスミス、イズメイ、アンドリュースの三人は必死に救援打電をしているブライトをせかします。スミス船長が声をかけたとき最初はうるさがっていたのにその声の主が船長だと知って慌てて敬礼する岡田ブライトが毎回ちょっと面白かったんですが、楽ではさらにその慌てぶりがオーバーアクションになってて少し笑ってしまいました(笑)。でも面白かったのはここまでかなぁ。
近くにいる船のうちカルパチア号は駆けつけるのに4時間もかかりタイタニック沈没には間に合わない、さらに近くにいるカリフォルニア号は小さな船のために一人しかいない無線技師は眠ってしまったのか応答してくれない。史実では無線技師が電源を落としてしまったためとも言われています。さらに遭難信号も確認はしていたらしいのですが、その意味が理解できずにカリフォルニア号は結局救助に向かうことはなかったんだとか…。
必死にカリフォルニア号に信号を送り続ける岡田ブライド・・・頭をかきむしって髪の毛が乱れさらに焦燥感が出ていて切なかった…。その様子を見ていて耐え切れなくなったイズメイが船が沈んだのはアンドリュースに「君の作った船だ、役立たず!」と責任転嫁を始めてしまう。それを見ていたスミスが自分に言い含めるように♪乗客には罪はない、その人生を夢に見ていた・・・見ていた・・・♪と搾り出すように歌うシーンからもう涙が・・・・(涙)。イズメイから攻められ続けたアンドリュースは冷静を装うもついには事態の重さに耐え切れずに♪誰のせいでこんな悲劇、さあ奇跡を起こしてくれ♪とイズメイに詰め寄るシーンも本当に切ないです・・・。ここはアンドリュースの感情が初めて爆発するシーンなんですけど、とても人間臭くて愛しく思えてしまうんですよね。スミス船長もイズメイからの攻撃に我慢しきれず感情を爆発させてしまい3人は「誰がこの事故の責任者なんだ」と激しく責めあうのですが・・・楽の迫力は本当にすごくて・・・見ているこちらに風圧がかかるような、そんなすごいシーンだったなぁ。出発前はあんなに自信に満ち溢れていた彼らが危機に面してそのことの重大さに押しつぶされそうになりもがき苦しんでる。なんか見てるだけで涙が溢れて仕方なかったですよ・・・。さらにその様子を絶望感と焦燥感が入り混じったなんともいえない茫然自失状態に陥っている岡田ブライドの表情が涙を誘いました(涙)。
互いを激しく責め続けて一拍置いた後、我に返ったスミス船長とアンドリュースは自分の責任を本当の意味で受け止めます。イズメイは微妙な心境だと思っていたのですが、楽に大澄イズメイを見ていたら・・・彼も彼なりに自分の責任を受け止めているように見えました。その姿がなんだかものすごく哀愁を含んでて・・・涙してしまった・・・。
明日また会える
いよいよ乗客たちの救命ボートへの乗りこみがはじまるわけですが・・・・このシーンは本当にどこを見ても涙止まらず終始号泣状態・・・っていうか、楽ではすでに嗚咽寸前までいってしまった(涙)。とりあえず涙しながらも千秋楽ということもあり、必死にそれぞれの動きを観察したんですが・・・私が見た人間ドラマをいくつか。
ストラウス夫妻の決断
ボートに促されたとき、光枝イジドーが歌う♪いいや、年よりは後だ♪というフレーズがものすごく印象深いです。彼はもしかしたら自分は助からないかもしれないということをあの中で最初に予感していたのかもしれません。そのうえで、妻のイーダを船に乗せようとするのですが・・・彼女も自分が船に乗ったら愛する夫と永遠に別れなければいけないということを本能的に悟ってしまう(涙)。なんとか船に乗せたいイジドーでしたが、ついには妻の想いに負けて共に船に残ることに…。そのやりとりを見ていた他の船客たちがようやく事の深刻さを理解していく表情に変わっていくのがとても印象的でした。
セイヤー一家の別れ
ここはボートに乗り込むことが父親との永遠の別れになることを理解できない息子が無邪気に救命胴衣をたたいてはしゃいでいる姿がなんとも切ないです。母親はその現実が見えていながらも息子に状況説明をしていない。父親はただ優しく息子の頭をなでる…。
ボートに乗り込む際にデッキにやってきたアンドリュースはタイタニックの模型を息子に渡すと、「おもちゃ貰ったよ」と父親にニコニコしながらそれを見せてて・・・その無邪気さが余計に涙を誘いました。ボートに乗り込むまで、父親は息子と妻のそばを離れようとせずにその最後の瞬間まで必死に息子の頭をなでていた姿にはもう号泣するしかなかったですよ(涙)。上手席にいたのでボートに乗り込んだときの息子の表情がよく見えなかったのがちょっと残念だったかも。
ジョージ夫妻の別れ
妻を船に乗せようとしたとき、彼女もこれが永遠の別れになるのではと予感して乗り込むことを体が拒絶するのですが、ジョージは優しく彼女の肩に自分の着ていた大きなコートをしっかりと着せてやるんですよね(涙)。妻が冷えないようにというジョージの優しい気遣いが泣けました・・・。彼女が船に乗り込んだあとも階段の上から必死に励まし続ける夫ジョージの姿に号泣です(涙)。
アリスとエドガーの別れ
一等クラスに夢中だったアリスがこの瞬間に初めて自分の本当に居たかった場所が夫のエドガーのもとだったことに気がつくんですよね。それだけでも泣けるのですが、今回は舟のこぎ手がもう一人必要だと言われたときにアリスが必死にエドガーを推薦しようと手を挙げている姿を目撃してしまいボロ泣き…。ジムが漕ぎ手に決まってしまったときの彼女の落胆の表情とそれを慰めて「もういいんだよ」と言うように抱きしめてるエドガーの姿は本当に泣けました(涙)。
そして一度はボートに乗り込みかけていたアリスが最後にエドガーの元に駆け寄り二人は熱く最後の抱擁を・・・。その二人を引き離せずにためらいながら見守っているマードック・・・。船に乗り込んだあともアリスにありったけの笑顔を送り続けるエドガー・・・。この二人の別れは初演以上に号泣してしまった(涙)。
三等船客の悲劇
やっとの思いでボートデッキにやってきた三等船客たちでしたが、一等の夫人を優先にしていたために弾き飛ばされてしまいます。夢を語っていた彼らはこうしてその夢を果たせずに船と命運を共にしたんだと思うと切なくて涙が・・・。
マードックの動揺
残り少なくなった救命ボートに殺到した乗客の圧力に圧倒されたマードックはピストルを上空に向けて一発発射してしまいます。それを目撃した上手側階段上にいたアンドリュースは「やめるんだ」と言うように手で制止しているんですが・・・その時のアンドリュースの目を見たときに彼のマードックへの親愛の情をものすごく感じました。やっぱりアンドリュースはマードックが好きだったんだ…(変な意味じゃなくて 笑)。それを見たマードックは我に返り自分がした行動に動揺してしまう。戸井さんのここの表情はとてもよかったです。
バレットとブライド
漕ぎ手に指名されかけながら「彼らは自分の給料を払ってくれているから」とジムにその役割を譲ったバレットは船と運命を共にすることを受け入れます。そして恋人の写真を見つめながら「プロポーズ」を歌うんですけど・・・ここも本当に涙止まりません(涙)。初演ではボートに乗り込む船客たちのドラマだけでゴーゴー泣いてたんですけど、再演ではそれと同時に宮川バレットの恋人を想いながら切々と歌い上げるシーンでも号泣(涙)。帰ったら結婚するはずだった彼女だったのに・・・あまりにも彼の行動は切な過ぎる・・・。
その頃電信を打ち続けていたブライドはついに諦めてその席を立ち上手側の階段を呆然と上っていきます(いつ立ち上がったのか見逃してしまったのが悔やまれる…)。そして泣きながらボートに乗り込む人々をなんともいえないやるせない表情で見つめているんですが・・・最後のボートが出て行ったあとに下手階段にいた宮川バレットと目が合ってしまう。宮川バレットは岡田ブライドに友情の証でもあるグーの手サインを送るんですけど・・・岡田ブライドは無線技師としての自分の無力さや罪悪感に苛まれてその呼びかけに答えることができず逃げるように立ち去ってしまうんです。楽に初めてこの光景を見たとき、初演で岡田マードックが「私には責任が重すぎたのです」と涙をこらえて逃げるように立ち去った姿を思い出してしまった・・・。今回はブライドとしてそのやるせなさを表現した岡田さんの芝居にただただ泣けました(涙)。
イズメイ
デッキでの惨状を目の当たりにしたイズメイは救命ボートに乗っていく人々をサポートしていくんですが、最後の最後、まさにボートが降りようとする瞬間に隙間を見つけて何かに吸い込まれるように乗り込んでしまいます。それを驚きの表情で支えている松原フリート、その手の中でガックリとひざを落とし呆然としている大澄イズメイの表情がとても印象的でした。再演のイズメイはけっこう自分のなかに罪悪感を抱いているように見えましたね。
イェーツの手紙
イェーツから手紙を託されていたカルドザはボートに乗り込む瞬間まで必死に彼の姿を探し続けています。それでも結局会うことはできず手紙を手にボートに乗り込んだカルドザ…。このシーンもとても切なかったです(涙)。
ケイトたちの別れ
三等船客のなかで救命ボートに乗れたのはジムとケイトだけでした。ケイトが仲良くなったほかの二人のケイトはついに船には乗れなかった…。その姿を目の当たりにしていたストラウス夫妻は二人のケイトに自分たちがつけていた救命胴衣を彼女たちにつけてやるんですよね(涙)。その優しさにまた涙・・・。その後も船が下りていくまで彼女たちは必死にジムとケイトにエールを送り続けてました…。
このシーンの最後に流れる♪もしも明日会えなくても、永遠に変わらない、愛はいつまでも♪というフレーズは涙なくしては聞けません、本当に・・・。
最後の救命ボートがタイタニック号を離れたあと、残った乗客たちは静かにそれぞれの時間をすごします。一等の男性は懺悔大会、エドガーとイェーツそしてバレットはカードゲームを・・・。恋人の写真を前に悲しそうな笑顔を落とすすバレットに対して「私たちは未亡人を作らなかったんだから」というイェーツの励ましの言葉ががなんともいえず切ないです・・・。
船長の資格reprise
静かにそのときを待つスミス船長のもとに、一番若いベルボーイ・エドワードが報告にやってきます。彼のけなげな働きに心打たれたスミス船長は自分の勲章を渡し、無邪気な笑顔でそれを喜び去っていくエドワード・・・。このときのなんともいえない嬉しそうな顔がさらに哀愁を誘います・・・。
一方のマードックは自分が船が衝突したときの指揮をしていたので全ての責任は自分にあるとスミス船長に詫びを入れるのですが、それに対して船長はマードックのせいではないと答えます。その言葉は彼にとっては重いものでしかなく・・・「私は船長の期待に応えることができなかった。私には任が重すぎたのです」と言い残して去ってしまいます。このシーンの戸井マードックなんですが・・・やっぱり自分に課せられた責任の重さに耐えられなかった、みたいには見えなかったんだよなぁ・・・。どうも「私には荷が重すぎたのです」の台詞が私の中に落ちてこなくて・・・最後までイマイチ戸井さんの演技プランがよく理解できなかった。それがちょっと残念でした。
Still
まるでレクイエムのように流れてくる旋律に・・・もうそこからして涙涙ですよ(涙)。船と共に運命を共にすることを決めたストラウス夫妻はエッジスから貰ったシャンパンを手に改めてお互いの愛を確かめ合います。光枝さんと諏訪さんが本当に素晴らしい表情で歌ってらして・・・それだけであの二人がどれだけお互いを想い合っているのか痛いほど伝わってきます。
最後にシャンパンのグラスを割り、永久の愛を誓い合う二人。あのシーンは初めて見た人にはわかりづらいかもしれませんが、ユダヤ教式の結婚式を表現しているのだそうです。たしか初演のときに何かに書いてあったかな。ユダヤ教の結婚式ではグラスを割る行為があるらしいということで。再演から追加された二人が叫ぶ「シャローン」という言葉もユダヤ語だそうです。
アンドリュースのヴィジョン
船の沈没もカウントダウンに入ったとき、アンドリュースはタイタニックの設計図を見つめ「ここをこうしていれば沈まなかった!」と狂ったように修正を加えていきます。このときの松岡さんの表情がいつも鬼気迫っていてすごいなぁと思っていたのですが・・・千秋楽はさらに今までの想いを総括したかのような緊迫感がビリビリと伝わってきて、そんな彼の様子を見ているだけで涙が溢れてきてしまいました(涙)。まさに狂気そのものだった。そんなアンドリュースに逃げないのかと必死に説得するエドワードでしたが、船と運命を共にする決意をしていた彼は優しくエドワードを抱きしめてやるんですね(涙)。アンドリュースの心境を思うとこのシーンも本当に泣けます。
そしてついに沈没が始まり、残った人たちはただ逃げ惑うのみ。アンドリュースの♪残ったのは残酷な生き残るためだけの世界♪というフレーズが重く重く響いてきて胸が痛みます。
逃げ惑う人々の中にはそこから脱出する人のドラマもあるのですが・・・一番泣けるのがバレットとブライドの別れです。ここは本当に泣けますっっ!ライトラーは残っていた船員をできるだけ逃がそうと奔走していてエッヂスも彼に導かれて助かっています。そして最後に彼が見つけたのは傾く船の中で不安げに柱にしがみついているブライド・・・。ブライドは傾く船にしがみつきながら反対側で必死に傾きから逃れようとしているバレットと目が合うんですよね。乗客たちが船に乗るときにはバレットの友情に応えられなかったブライドでしたが、このとき彼はグーの手を差し出しバレットの友情に必死に応えてるんですよ(涙)。このときブライドはたぶんバレット共に船と運命を共にする覚悟をしていたんじゃないのかな・・・。親友と一緒に沈むならと・・・。でも、そんなときにライトラーは彼を発見し、ブライドを必死に逃げ道に導いていきます。ライトラーに連れられているときブライドは必死にバレットの存在を指差していて彼も一緒に助けてほしいと懇願してるんですよ(涙)。でも位置的にそれは不可能で・・・二人はここで永遠の別れをすることになってしまう。バレットの姿が見えなくなるまで必死にグーの手で友情を示し続けていた岡田ブライドの姿に涙止まらず(涙)。その姿をグーの手で笑顔で見送り続けた宮川バレットの姿にも涙止まらず(涙)。ここにこんな哀しい別れがあったなんて・・・再演で初めて気がつきましたよ・・・。
ちなみに、史実でのバレットさんは間一髪生還しているそうです。だから余計にミュージカル版のバレットの運命には泣けますね…。
アンドリュースの「オータム」の歌詞と共に船は沈んでいきました。沈む瞬間、宮川バレットは恋人・ダーリーンの名前を絶叫し最後に写真にキスをしています(涙)。ストラウス夫妻は「主よ御許に近づかん」の旋律が流れてる中、沈み行く船の中で二人はなれず海の中を漂っていくんですが・・・このときに二人は何かを歌っているんですよね。で、号泣しながらもなんとか耳を傾けていたら・・・聞こえてきたのは「オータム」の♪秋にお会いしましょう♪というフレーズだった・・・(涙)。
Godspeed TITANIC reprise
救命ボートで脱出した人々はカルパチア号に助けられます。カルパチア号のマントをかぶった人たちがそれぞれの想いを告白。このシーンでタイタニック号の沈没時の惨状が語られ、三等の人はほとんどがデッキにたどり着けなかったことや救命ボートには450席以上が空いていたことなどが明らかにされます…。聞けば聞くほど本当に切ない話です…。フリートは氷山を発見できなかったことを悔やみ、ブライドはカリフォルニア号の反応がなかったことを悔やみます。そしてブライドは祈りの歌を歌うのですが・・・バレットが歌っていた「プロポーズ」の旋律なんですよ(涙)。このことに再演で気がついて切なくて号泣してしまった・・・。岡田さんの歌声が本当に美しく哀しかった。
そして彼らは冒頭でアンドリュースが歌っていた「いつの時代にも」を歌うのですが・・・沈んでしまったあとにこの歌を聞くと本当になんとも言えない切ない感情が襲ってきます。♪優雅で完璧な叡智の結晶♪だったタイタニック・・・。その歌と共に船と運命を共にしたアンドリュースが現れてセイヤーの息子からタイタニックの模型を受け取ります。それに導かれるように船と運命を共にした人たちか現れ、生き残った自分の家族のそばに行き・・・・その流れで「Godspeed TITANIC」。エッチズの「イングランド・サウザンプトン」の掛け声と共に原点回帰していくシーンは本当に素晴らしいと思います。楽の「Godspeed~」の大合唱は今までのなかで最高の希望に満ち溢れた美しく素敵なナンバーでした。感涙!!!
あ・・・・また・・・・長すぎた(爆)。もう脳内でずっとミュージカル『タイタニック』がグオングオン鳴り響いててここに書かずにはいられなくて…(苦笑)。えーと、スミマセン、本当に。これは自己満足です、ハイ。それでも最後まで読んでくださった方・・・私のタイタニック熱血話に付き合ってくださり本当にありがとうございましたm(__)m。
今回の再演は約2週間ちょっとでしたが、2週目に集中して3回も見てしまったせいかカンパニーと一緒に長い旅をしてきたような気がしています。本当に本当に待ちわびた再演だったので舞台を見ているときは号泣しながらもとても幸福な気持ちでした。素晴らしい時間をありがとうございました。
『タイタニック』は目立った主役もいない群像劇なので好き嫌いが別れてしまう作品だと思うのですが、それでもやっぱりまた近い将来上演してほしい演目です。見足りないシーンとかもあるし(笑)。再び『タイタニック』カンパニーに会えることを信じてます。