とうとうこの日が来てしまいました…!
10月1日に東京で始まったミュージカル『タイタニック』が、22日に大阪シアタードラマシティで大千穐楽を迎えました。この日だけは何としても見届けたいと気合い入れてチケット入手していたので、なんとも感慨深い気持ちで劇場へ向かいました。
※2018東京公演感想
本当は大阪公演も数回行きたかったところなのですが、色々と予定が重なりすぎてしまって(汗)、結局は大千穐楽のみということに。前回は関西に住んでたこともあって複数行けたんですけどねぇ…。
ちなみに、シアタードラマシティは大阪の梅田芸術劇場の地下に降りたところにあります。
東京で上演していた日本青年館ホールよりも見やすい劇場(1階席のみだし)。個人的にはドラマシティの方が近くに感じられて好きなんですよね。
タイタニック号のセットとしては東京よりも少しコンパクトな印象となり、客席降りの回数もちょっと少なめな演出に変わってました。が、その分ドラマの濃密さが増したように思えて感動もひとしおでございました。
本当にこの作品が好きすぎるからか…この大千穐楽はもう、始まる前から涙が零れてしまったりして大変なことに(汗)。前回上演の時も、初演版の時もそうだったけど、あまりに感情が激しく動きすぎたからか終わった後の喪失感が半端なくて…、今回も終演後1日半はまともな自分に戻れなかったほどでした(苦笑)。
ということで、以下、それぞれのシーンを振り返りつつの感想を書いていこうと思います。もう上演は終わっていますが、一応念のため・・・ネタバレ満載の内容になってますw。
2018.10.22マチネ・大千穐楽公演(1幕) in シアタードラマシティ(大阪)
キャスト・演出など
- アンドリュース:加藤和樹
- イスメイ:石川禅
- バレット:藤岡正明
- エッチス:戸井勝海
- エドガー・ビーン:栗原英雄
- アリス・ビーン:霧矢大夢
- キャロライン・ネビル:菊地美香
- チャールズ・クラーク:相葉裕樹
- マードック:津田英佑
- ジム・ファレル:渡辺大輔
- ブライド:上口耕平
- ライトーラー:小野田龍之介
- ハートリー:木内健人
- ベルボーイ:百名ヒロキ
- フリート:吉田広大
- ケイト・マクゴーワン:小南満佑子
- ケイト・マーフィー:屋比久知奈
- ケイト・ムリンズ:豊原江理佳
- 給仕:須藤香菜
- アイダ・ストラウス:安寿ミラ
- イシドール・ストラウス:佐山陽規
- スミス船長:鈴木壮麻
- [演出] トム・サザーランド
- [脚本] ピーター・ストーン
- [作詞・作曲] モーリー・イェストン
※あらすじと概要に関しては、以下の前公演記事を参照してください。
第一幕
開演前
前回の公演からですが、舞台が始まる30分前…つまり、客席入場が始まった時には舞台の上に「トーマス・アンドリュース」としての加藤和樹くんが居てお芝居しているんですよね。これ、前回ネタバレになるので書かなかったんですけどw。
ミュージカル タイタニック、東京千秋楽無事に終わりました!観に来てくれた皆さんありがとう!次は大阪。また劇場も変われば雰囲気も変わるので楽しみです。
今回、開演までの30分を共に過ごしているけんとと。正直、めちゃ救われてます笑笑 pic.twitter.com/dz6KXBaBX5— 加藤和樹 (@kazuki_kato1007) October 13, 2018
たしか3年前の時には1人の時間がすごく長かった気がするんですが…今回はちょいちょい同僚役として木内健人くんが登場して二人で話している時間がけっこう長かったのが面白かったです。
この開始30分前からの「アンドリュース」のお芝居なんですが、それを見ると見ないとでは後半の衝撃と悲哀度というのが変わってくるなぁと思ったんです。
冒頭の時間で、アンドリュースはタイタニック号をよりよい船にするために色々とアイディアを書き加えたり消したり…とてもひた向きに純粋に設計図と向き合っています。彼の夢や希望もあの設計図に込められてるんだろうなって思いながら本編前の姿を見つめてたら・・・2幕後半の彼に襲い掛かる激しい絶望や後悔の念というのがより濃く心に迫ってきたんです。
なので、あの冒頭の和樹くん演じるアンドリュースの芝居はこの作品の中で重要な意味を持っているんだなって今回思いました。
千穐楽の今回は、いつも以上に感情移入して冒頭の静かに没頭して設計図書いてる和樹@アンドリュース見てたら・・・開始のアナウンスが流れる前から涙が溢れて仕方ない危険な状況になってしまいました。楽ということもあってか、最初の音が鳴る前の数分間の静寂もすごく緊張感が高まって良い雰囲気だったな…。
オーバーチュア~いつの世も
最初の鎮魂歌のような美しい旋律から、衝突後の混乱を感じさせる緊迫感ある旋律がきて・・・そしてすべてが終わった後の静かで物悲しい雰囲気の音楽へと変わる。
このオープニングの音楽だけ聴いても涙が出ます。あの短い時間に濃密なドラマが詰まってるし、何より、美しい。こんな最初から心を持って行かれる音楽というのはそう多くはありません。
一番最初の初演ではアンドリュースが歌っていた♪いつの世も♪ですが、トム演出版からはイスメイが歌っています。東京公演では登場した時には音楽が流れていましたが、大阪で観たら登場してマントを脱いだ後に音楽が鳴るように変更されてましたね。
多くの遺族がイスメイに非難の声を浴びせかけるのですが、その現実のシーンの傍らには設計図を書き終わって仲間たちと笑顔でそれを見つめ誇らしげな顔をするアンドリュースの幻影があるんです。非難の声が遠ざかったあとに、イスメイの目にはしっかりとかつて同じ船に乗り命を落とした船員たちの姿が浮かんできて…。もう、その姿を捕えた瞬間からイスメイ演じる禅さんの目にはたくさんの涙が溢れていて…思い出しただけでも泣けてしまう。イスメイは自らの罪を彼らの幻影を見ることによって受け止めているのかなぁとも思えたりね…。
さらば恋人~乗り損ねた男
最初にイスメイが出てくることで、この物語は彼の回想で始まるようにも思えました。
タイタニック号に乗りこむために船員から登場してくるんですが、最初の方に藤岡くん演じるバレットが「さらば恋人、すぐに帰ってくるから」って手紙を見つめながら歌うんですよ…!!この歌詞を聴いただけでもう、滂沱の涙が溢れて仕方ない。他の船員たちもそれぞれの愛する人への手紙を手にしながら「すぐに帰ってくるよ」って続いて歌ってて…その先の船の未来を知っていながらこの場面見ると、たまらないです、ホント(涙)。
この舞台は開演してから約25分間は客席に入れないことになっていましたが、このオープニングの出航シーンは客席全体を船に見立てた演出になっていたのでキャストがかなりの頻度で通路を駆け巡っていたからなんですよね。特に、ベルボーイの百名くんは客席から船員の名前を一人ずつ呼んで歌ったりしてけっこうハードです。
乗り込みの時にまずドキドキさせられるのが、壮麻さん演じる船長スミスたち上層部が登場した時。そのオーラがかなり強烈で、この人の支配する船に乗り込むんだなって気持ちにさせられる。
それに続くアンドリュースやイスメイも輝かしい未来しか見ていない表情でものすごい爽やかなんですよね。彼らの表情が晴れやかであればあるほど切なくなってしまうのは、その先の運命を知っているから…。このあたりの希望にあふれたシーンの創り方がドラマチックで実に印象深かったです。
先客は3等から順番にやってきますが、階級によって船に乗り込む際の待遇が違うことが顕著に描かれているのもこの作品の興味深いところです。
3等は乗りこむ前に頭から足先までチェックを受ける。一番下級の人々という視点で見られているのが分かる演出。2等は中流階級なのでチェックは受けず普通に乗船できますがそれ以上の待遇は無し。1等は乗りこんだ後に写真撮影してもらえたりとけっこう至れり尽くせりになってます。
ちなみに、1等の乗客は複数役持ってるメインの役者さんが多く演じててなかなか面白かったです。本役とはみんな全く違う雰囲気になってるので、その違いを感じられるのもこの作品の醍醐味だったかも。個人的には上口くん(本役では引っ込み思案のブライド)演じるタカビーなMr.セイヤーがお気に入りでした。
全ての乗客が乗り込んだ後、スミスが戸井さん(本役では1等給仕のエッチス)演じる三等航海士のピットマンに最終確認をするオープニングクライマックスは圧巻でした。この時ピットマンは客席中央の部分にいるので、なおさら劇場全体が船に思えてくる演出。この時の高揚感はハンパないものがあります。
そして出航すると、舞台上のタイタニックのセットが少しずつ後ろに下がっていって…本当に岸を離れたかのよう。その中で歌われる♪往け、タイタニック♪がもう、なんともドラマチックで美しい旋律で…。でもそれ以上に泣けるのが、この航海がこの先悲劇へと進んでいくと分かってしまう事なんですよね…。旋律が希望にあふれ、乗客の顔に笑顔が溢れているのを見ると、ものすごくこみあげてきて涙が溢れて仕方なかったです…。
しかもこのナンバー、2幕の最後に出てくるので…それ知ってるとなおさら泣けるんです。
乗客たちが最後にタイタニックのチケットを破いてパーっと舞台前方に散らす演出になっていますが、東京ではそれが客席に落ちてきたのに対して、大阪では舞台の上で留まっていました。
実は東京公演の時、一度だけ最前列に座れたことがあって…大量に破かれた紙切れが落ちてきて記念にいただいてきてしまいましたw。
タイタニック出航の後に乗り遅れてしまった乗客が必死に呼び戻そうとするシーンがあるのも印象的です。彼は「いい恥さらしだ」と嘆くのですが、私たちは彼こそが幸運だった人物であるということを悟ってしまう。なんとも皮肉な複雑なシーンだなと思って毎回見てました。
バレットの歌
航海が順調に進んでいくなか、ブリッジにイスメイが成功間違いなしと超ご機嫌でやってくるのですが、速度が19ノットと知ると「予定の時間に着かなければいけないんだからもっとスピードを上げろ」とカマをかけてくる。その圧に負けて、アンドリュースも「この船は頑張れば23ノットまで出せる」って教えてしまうのがなんとももどかしい…。
結局スミスはイスメイの存在が鬱陶しくなって、納得させるために速度を20に上げる決断をしてしまうわけです。これを機関士長のベル(演じる木内くんの本役はハートリー)がちょっと戸惑いながらも指示に従う様子が印象的でした。スミスはイライラした気持ちを二等航海士のライトーラーにもぶつけてしまって、航海が不穏な空気に徐々に飲まれていくのを感じます。この時のスミス船長の高慢な態度にもドキリとさせられるシーンでもあるんだよな。
ベルから速度を上げるために石炭をもっとくべるよう指示されたバレットたちは、自分たちの存在が上の立場の人間からすればゴミのように扱われているんだと憤りを覚えます。彼らはタイタニックの船員の中でも一番立場的に低い立場にあったことが伺えて、当時の身分制度の理不尽さに胸をつかれる想いにさせられました。
藤岡くんの怒りとやるせなさを込めた熱唱はバレットの本音がひしひしと感じられてグッとくるものがあったな。特に、1等客がこれから食事をするテーブルが出てきた時に、そのうえで足を踏み鳴らしながら怒りや、スピードを上げていく不安が入り混じった気持ちで歌うシーンが印象的でした。彼のささやかな抵抗って感じの場面でしたね。
1等客が食事に着く前に2等客の二組のドラマが展開されるのも面白いです。
エドガーとアリスの場合、アリスが興奮して1等への憧れを歌うなか、エドガーはその気持ちに乗れずに彼女を必死に自分の世界へと戻そうとしている。アリスはそれでも上流階級への憧れの気持ちを抑えることができなくて、それがもどかしくて仕方ないエドガーはつい下町言葉みたいな言葉づかいを叫んでアリスにたしなめられてため息ついてしまう。この凸凹な二人のやりとり、この時点ではすごく面白くてかわいらしいんですよね。
チャールズとキャロラインの場合、駆け落ちカップルだというのがこの時点で判明。キャロラインの方が階級が上であったが故に結婚を反対され、アメリカに渡って結婚しようって思ってる二人。すごくラブラブで、観ているこちらとしては一刻も早く正式に結ばれてほしいと思ってしまいます。
なんてすごい時代~船長になるということ
1等船客が食卓を囲む場面は、セット的には地味ですがとても華やかに見えました。この中には本役とは違う1等客役の役者さんも交じってたりして面白いんですよね。
面白いと言えば、エッチスの下で働いてる渡辺くん(本役では3等のジム)が思い切り転んでしまうシーン。エッチスはそんな彼を叱らずに、シャキシャキとユーモラスに指示をしながら歌ってるのが楽しいんですが、その最中、渡辺くん演じるオドオドした給仕さんにマジック見せてるんですよね。戸井さんの手さばきが実にスマートで見事!!肩からスプーンが出てきた時の渡辺くんのビビりっぷりが毎回可愛くて好きでした。東京では2回マジック披露してたけど、大阪では1回に減ったみたいでそこだけがちょっと残念だったなw。
1等客の食事中、またしてもイスメイがスピードについて我が物顔で語り出したりするわけで、スミス船長も列席している人たちに良い顔を見せたいという気持ちが湧いてしまったからか、さらに22ノットへとスピードアップする指示を出す決断をしてしまう。アンドリュースは不安に思いながらもそれを止めようとしない。1等の客は「本当に凄い時代がきたものだ」と感嘆の声を上げてスミスたちを称えている。傍から見るとすごく高慢で危険な空気感があってヒリヒリするシーンでもあります。
しかも、航路は北の方に進めるよう指示を出しているし、ブライドが持ってきた氷山の警告についてもスミスは他の客の手前、軽くあしらってしまうんですよね。こういう綻びから徐々に破滅の道へと突き進んでいるように思えて胸が痛くなりました。ブライドはその後も何度か警告の電報を持って行こうとするんですけど、そのたびに軽くあしらわれていくので徐々に気持ちが荒んでいってしまうんです。あの時彼の話をもっとまじめに聴く人が一人でいたら…って見るたびに思ってました。
そういえばこの食事シーンの中で一瞬、1等客の動きが止まる場面があったんですけど…この時の加藤和樹くん演じるアンドリュースの横顔が彫刻のように美しくて毎回見とれてしまってました。このクールさが後半に…変わっちゃうんですよね…。
1等との食事を切り上げたスミスは、1等航海士のマードックの元へ行って「なぜ船長の資格を取ったのに自分の船を持とうとしないんだ」と尋ねます。それに対してマードックは、「船を持つ責任を自分が全うできる自信がない」と答えてしまう・・・。
このやり取りは個人的にすごく印象深いんですよね。真面目で慎重な性格ゆえにその先に進む自信が持てないマードックの気持ち、なんだかすごく分かる気がしたんです。彼には野心というものがなくて・・・人間的にすごく好感が持てる人物。このやりとりが、2幕の後半に重く響いてきて泣けるんですよ…(涙)。
なりたい、メイドに~この手をあなたに
場面は3等客へと移るんですが、彼らが夢を語り歌うこのシーンは涙なくしては見られません。ここの旋律が流れてくると同時にボロボロと涙が零れ落ちて仕方なかったですね…。これは初演の頃から変わらない。
食事をした後、彼らはアメリカに渡った後の夢を語り合う。これまで差別されて苦しんできた人が多いだけに、アメリカでの自由な生活に憧れる気持ちはみんなとても強いんです。
ケイトはメイドになりたいと歌い、それに倣うように、お針子やエンジニアなど色々な夢が出てくる。ちなみに栗原さん(本役はエドガー)演じる3等客はお酒を手に酔っぱらいながら「金持ちになりたい」って歌ってハメ外しそうになってたのが毎回可愛かったなw。
そんな彼らの歌を聴きながら、ジムは抑え込んできた自分の夢「警官になりたい」ということを初めて口にするわけです。アメリカでなら叶うかもしれない、と希望を持った瞬間なんだろうなと思いましたね。
そして、この3等客の夢を語る輪の中に・・・百名くん演じるベルボーイも交じってくるんです。彼はそれぞれの夢を羨ましそうに可愛い笑顔で見つめてて、「僕もいつか…」って表情してるんですよ…。もう、それだけで涙が溢れて仕方なかった。
3等乗客の夢を語り合うこの場面がなぜこんなにも泣けるのか…。それは、彼らの抱いていた夢のほとんどは叶わない未来がやってくることを知っているから…。ベルボーイも然りです…。
しかも、音楽が優しくて温かいからなおさら泣けて仕方ない。ほんとに切なかった、今回も…!
シーンの最後にケイトは自分のお腹に子供がいることを一人ひっそりと歌います。そこで彼女の事情が見えてくる。そんな彼女に、ベルボーイが隠し持っていた食事の残り(最初にケイトが持っていたものですが、エッチスに取り上げられてしまったやつ)をこっそりと投げて返す。このちょっとした優しいやり取りの場面もすごく泣けました(楽では取り損なってちょっと落としてしまったけどね)。
その頃、ラブラブだったはずのチャールズとキャロラインの間にも微妙な空気になってしまう出来事があって。キャロラインは1等の時代に親しくしていたエッチスと久しぶりに再会して会話をしますが、その時に「チャールズと駆け落ちしている」ということを話しませんでした。そのことが、チャールズとしては「自分は八百屋の息子に過ぎないから一緒にいることが恥ずかしいと思ったのでは」とひねくれて受け取ってしまう。身分差があるカップルだと、こういうトラブルはありそうですよね(苦笑)。
でも、ひたすらに彼への愛を歌うキャロラインの気持ちが届き、チャールズは再び一緒に生きていく思いを強くします。ここのナンバーはとてもドラマチックで素敵でした。
一方のブリッジでは、イスメイがスミスに対して今まで以上に強くスピードを上げるようせっついている。イスメイにとっては、自分の会社の船が世界一であるということを示したい想いが強すぎて全く安全に対するところに考えが及んでいない。
スミスはそんな高慢なイスメイの態度に苛立ちを覚えながらも、自分が彼を黙らせてやるというプライドが大きくなりスピードをさらに23に上げる決断を下し、アンドリュースは不安を感じながらも諌めることができなかった。
彼らのそうした積み重ねの【罪】が、船を悲劇へと突き動かしているような気持にさせられて見ていて本当にヒリヒリしました。
プロポーズ/夜空を飛ぶ
こっそり通信室にやってきたバレットが、ブライドに電報を頼む場面。
二人は船に乗り込むときに最初に自己紹介し合った仲でもあったので面識があって、ブライドはバレットに対してその時にちょっとした友情に似た感情を抱いたのかもしれないなって思えたシーンでもあります。電報の費用を「社員割でタダ」にしちゃうところが可愛い。この「タダ」っていう時の上口くんのセリフ回しに毎回萌えてましたww。
だけど、この場面も本当にすごく泣ける…!!
ブライドの電報は国で待つ恋人にあてたもので、結婚の約束を伝える気持ちが込められている。彼女が愛しいという気持ちをありったけ込めて歌う藤岡くん演じるバレットに涙が止まらなかった…!
さらにそんなバレットを温かい目で見守っていたブライドが、彼に気を許して通信席に座らせながら「引っ込み思案の僕がここでは世界中の人たちと会話ができる」と喜びを歌う。彼のそんなささやかな幸せにも涙が溢れて仕方なかった。
この先の悲劇がなければ、きっと彼らは生涯の友達になれたはずなのに…って思うとねぇ、もう、なんか毎回たまらなくて泣けて仕方なかったです。
最新のラグ
1等客だけによるお楽しみの時間帯になるわけですが、そこにこっそりと2等のアリスが忍びこんでまんまと彼らに混じってしまう場面。何度かスミス船長に見つかってるんだけど、それでも諦めずに何度もトライしてついに目的を達成するアリスのバイタリティーは本当に凄いです(笑)。スミスも発見した時には手遅れで「まぁ、しょうがない」って感じになってるんですよねw。
ここで登場するのが、木内くんの本役・歌手のハートリー。彼の披露する歌は軽快で心が湧き立つような楽しさに溢れています。これまでとても美しい音楽が多かったこの作品ですが、その中で一番ポップな印象なのがこのシーンですね。モーリー・イェストンの曲のレパートリーの広さには本当に頭が下がる思いです。
アリスは一番最初にアンドリュースに狙いを定めて一緒に踊れてしまう。「アンドリュースさんっ」って必死に探し当てるとこはまさに執念みたいなものも感じたかも(笑)。その後も次々と1等客やイスメイとまでダンスを踊るアリス、彼女の上流階級への飽くなき夢がかなった瞬間でもありましたね。肩で息をしながらも、踊り終わった後は充実感でいっぱいのアリスがなんだか眩しく見えました。
でも、そんな彼女をエドガーはとても苦々しく思ってて。エッチスに呼ばれて踊り終ったアリスの元へ来た彼は思わず彼女への苛立ちをぶつけてしまう。でもアリスは負けじと「今の生活には満足できない」と反論。なんとしても上流階級の仲間入りをしたいアリスに「俺たちはあの人たちにはなれないんだ!」と叫んでしまいますが…、千穐楽に観た時、エドガーはそんな彼女のことが眩しく…羨ましいとすら思っていたんじゃないかなって感じてしまいました。
自分は現状維持の生活に満足していると言っていますが、心の底では上昇志向が高い妻のアリスのことが眩しく見えてて…そして愛しかったんじゃないかなって。同じ気持ちになれたらっていう憧れもあったかもしれない。そう思うと何だかエドガーが不憫で切なくなってしまいました。
1幕クライマックス
1幕のクライマックス約15分間は、悲劇へと着実に静かに進んでいく船の中で起こる様々な人間模様がえがかれています。
ブリッジでは、スミス船長が現状に満足して氷山の警告を「俺は紙に書いてあることなんか信じない」と言って無視し続けている。マードックもライトーラーもそのことについて多少の違和感は持っていながら、スミスの支持は絶対であるという想いから意見をそれ以上言おうとしません。
スミスは、船の安全よりも、イスメイよりも自分の方が立場が上であることを誇示したかったんだろうなと思える一幕でもありました。
面白いやり取りとしては、エッチスがエドガーに「私にもかつて妻がいました」って過去形で語っていながら「今もちゃんといますよ」って付け加えるシーンw。飄々としたエッチスの言い方がツボだったし、「え!?」って表情になってる栗原さんのエドガーも楽しかったw。
だけどこの時、エドガーは船のスピードが出過ぎていることに勘づいているんですよね…。
ケイトは「友達の話なんだけど」って前置きをしたうえで自分のこれまでの身の上をジムに語る。
ケイトは奥さんがいる相手と不倫したうえに子供ができてしまったことでずっと悩んでいました。産みたい気持ちが強いケイトは、ジムに父親になってほしい気持ちを高ぶらせていく。ジムはケイトの話が「友達」ではなく「ケイト本人」であることを悟っていますが、彼女に対しての気持ちもまんざらではない。
「どうせノーって言わせてもらえないんだろう」って言いながら「私を押し倒してキスをしてよ」って言うケイトの気持ちを受け入れていきます。ジムって包容力半端ないなって思う一幕でもありました。
イシドールはアイダと二人穏やかな時間を過ごしています。その会話の中で「羽織るものを持ってきてあげよう」と気を遣ったイシドールにアイダが「今離れたらもう二度と会えないかもしれないじゃない」って言ってそれを止める場面が印象的です。
この時点で二人はその先の運命など微塵も思っていないんですが、不吉な予感を感じさせる会話に聞こえるようになってて…毎回このセリフを聞くたびに胸を痛めていました。
チャールズとキャロラインは、アメリカに到着した後の生活に想いを馳せて幸せな気分に浸っている。
1等の喫煙室にもどかしい気持ちのままやってきたアリスは、ハートリーの歌う♪秋♪の音楽に自分の想いを重ねます。「秋、会えるだろうか・・・」という歌詞がその後の運命を暗示させているようで、美しいんだけど物悲しく聞こえて…ここの場面もすごく泣けてしまいました。
そんなアリスの元にやってきたエドガー。喧嘩別れした後だっただけに気まずいアリスでしたが、そんな彼女を強引に引き寄せてハートリーの音楽に合わせてダンスに誘います。この時の強引さが本当に実に頼りがいのある大きな器を感じさせたんですよねぇ…栗さんのエドガー。そして、踊り終わった後に彼女に熱いキスを送る…。その色っぽさったらなかった!!エドガーにとって、アリスはなにものにも代えられない愛しくてたまらない最高の妻なんだなって思いました。
船の上では、フリートが寒さに耐えながら見張り番をしています。この時に歌われる♪ノームーン♪の旋律が静かで美しくて…ちょっと不穏で、なんとも言えない雰囲気なんですよね…。
ちなみにこのデッキの下にベルボーイとバレットがいる時があったんですが、バレットの煙草のケムリが苦手だったのか思わず海の側の方へ行って休んでたのが可愛かったw。
そしてついに運命の時が訪れる。フリートが発見した時には目の前に氷山が迫っている状況で、それを確認したマードックとライトーラーは必死に避けるための対策を取る。比較的冷静に対応しているライトーラーに対し、マードックは明らかに動揺していて「曲がれ!!!曲がれ!!!」と叫んでいます。
そんな緊迫の状況は他の船客には伝わる術もなく、カップルはキスを交わし、アンドリュースやイスメイは自室で静かに執務に当たっている。この落差の場面も非常に印象深かったです。
というところで、1幕終了。この時点で私まだ涙がホロホロ状態で、席を立つのに時間がかかりました(汗)。
2幕の感想は次の記事にて。