大阪梅田芸術劇場で上演されたミュージカル『アリージャンス~忠誠~』を観に遠征してきました。
先週『ウェイトレス』を観劇しに来たときの大阪の情勢も厳しかったのですが、今週もあれから全く好転する兆しが見えず、ついに緊急事態宣言が出されることが決まるなかでの遠征となってしまいました。蔓延防止策の効果がここまで見られないとは…っていうか、多くの人がその内容をよく理解してないわけで、好転する兆しなんて見えるわけないなと思ってましたが。
緊急事態宣言がいつ出るのか、それによっては『アリージャンス』大阪公演そのものが中止になってしまうのではないか・・・。遠征する直前まで本当にどうなるか分からない情勢で、どうにも気持ちが落ち着きませんでした。
それゆえに、大阪公演決行の知らせを聞いた時にはホッとしたり…不安だったり…でも嬉しかったり…色んな感情が押し寄せたなぁ。観劇する前からこんなにも心乱される世の中になってしまうとは(汗)。でも、一つだけ確かなことが言えるのは・・・劇場と、大変な状況のなかでも大阪まで来てくれたカンパニーの皆さんへの感謝の気持ちです。本当に、本当に、ありがたかった(涙)。
どうしても舞台演劇の中心地は「東京」となってしまいますから、地方公演は「おまけ」みたいに捉えられてるのではと感じることも多いんです。東京楽が終わったらすべて終わったみたいな風潮になりますしね。まだ大阪や地方残ってるよ!!って声を大にして言いたいと思ったことが何度あったことか。
だから、公演を打つには厳しい状況のなかでもこうして大阪公演はじめ地方公演を大切に想って来てくれるカンパニーには本当に感謝の気持ちしかありません。
この日は大阪公演初日だったわけですが、客入りは6割弱くらいだったかなぁ…。SNSをチェックするとチケットを持っていても泣く泣く手放したという方を数人お見掛けしましたし。その気持ちも痛いほどわかるので胸が痛みました…。
ただ、思っていた以上には来てたなぁという印象(かなり少なく見積もってたので 汗)。後方席は相当空きがありましたが、前方席(15-6列目くらいまで)は埋まってたと思います。
開演前、休憩中、終演後のロビーは本当に静かでした。劇場スタッフの皆さんも気を配って「飛沫感染防止のための会話を控えて」と常にアナウンスしてましたし、舞台芸術を守るために頑張ろうという観劇を愛する皆さんの想いがひしひしと伝わってきました。
さて、今回は物販の方もグッズがかなり豊富に用意されていて私もけっこう散財してしまいました(笑)。特に、久しぶりに舞台写真販売もあったので…こちらは結局全種類お買い上げしてしまったw。後々いろんなシーンを思い出せるのが嬉しい。
あと、購入は見送りましたが、トートバッグやTシャツのデザインもすごく洗練されていましたね。お財布の都合で諦めちゃったんですが、ちょっと後ろ髪を引かれる想いでしたww。
以下、ネタバレ含んだ感想です。
2021.04.23マチネ(大阪初日) in 梅田芸術劇場(梅田)
主なキャスト
- ケイ・キムラ:濱田めぐみ
- サミー・キムラ:海宝直人
- フランキー・スズキ:中河内雅貴
- ハナ・キャンベル:小南満佑子
- カイト・キムラ/サム・キムラ:上條恒彦
- マイク・マサオカ:今井朋彦
- タツオ・キムラ:松原剛志
東京公演まで主人公の父親・タツオを演じられていた渡辺徹さんが、名古屋公演から体調不良のため降板という運びとなってしまわれました。徹さんのミュージカルを見たことがなかったので楽しみにしていたのですが、今はまず体調回復に集中していただきたいと思います。またお元気になられた頃に舞台でお会いできる日を心待ちにしていますので、どうぞお大事になさってください。
徹さんの代役にはアンサンブルで出演されていた松原剛志くんが入り、松原くんが演じていたマサト・マルヤマ役をスウィングの高木裕和さんが担当していました。お二人とも代役とは思えないほど役に馴染んでいて素晴らしかったです。
今回の作品は日系移民を支配するアメリカ兵が多く登場するのですが、人種の違いをみせるためか皆さんとても流ちょうな英語のセリフを語っていました。最近こういった翻訳劇の中に現地の言葉を普通に織り交ぜる手法が増えてきましたね。日本語のセリフを語るのも大変ななか、発音に注意しながらの英語のセリフをこなすのはさらに苦労されたのではないかと思います。
キャストの皆さんの努力によって、より日系人が追い込まれていく様子などが鮮明に表現されていました。特に、英語がよく理解できないおじいちゃんがアメリカ兵の言葉に戸惑うシーンとかはよりリアルに感じられましたね。
概要とあらすじ
この作品は、日系二世アメリカ人俳優のジョージ・タケイさんの実体験を基に製作されました。作詞作曲はジェイ・クオ(脚本も携わってます)、脚本はマーク・アサイトとロレンゾ・シオン。ジョージ・タケイさんはアメリカの人気作「スタートレック」や「宇宙大作戦」に日系人初の俳優として出演された経歴を持っています。
本日、大阪公演初日✨
13時開演です❗️
ジョージ・タケイさんからメッセージをいただきました✨
『日本の『アリージャンス~忠誠~』の公演のご成功を、心よりお祈りしております。』#アリージャンス#梅田芸術劇場#GeorgeTakei pic.twitter.com/Jz0fL8z7O2— ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』 (@AllegianceJapan) April 23, 2021
ちなみに、ノーベル平和賞を受賞した平和活動家のサーロー節子さんはジョージさんの母方の親戚筋に当たるのだそうです。
2009年にリーディング公演(台本を持ったまま演じる公演)からのスタートを経て、2012年に本格的な舞台公演として初演。2015年にはブロードウェイに進出して4か月間の公演を達成しました(賛否両論はあったようですが)。
初演には、モデルとなったジョージ・タケイさんが自ら主演で出演(オリジナルはサミーが主人公)、さらに『ミス・サイゴン』初演で大きな評価を得ているレア・サロンガさん参加されています。そのほかにもスタッフやキャストには多くのアジア系アメリカ人が関わっていたそうです。
簡単なあらすじ
2001年12月7日、80歳の退役軍人サム・キムラのもとに一人の女性が訪ねてきた。
遺言執行人と名乗る彼女は、サムの姉ケイが亡くなり、サムに封筒を遺したことを告げる。
50年間会うことのなかった姉、そして過去の記憶が蘇るー。
日系アメリカ人のキムラ家は、カリフォルニア州サリナスで平和に暮らしていた。1941年12月7日に真珠湾攻撃が勃発、米国の宣戦布告により第二次世界大戦に突入し、日本の血をひく日系アメリカ人たちは敵性外国人扱いをされてしまう。
翌年8月にキムラ家は自宅から強制的に追い出され、収容所へと移送される。
日系の人々は厳しい収容所生活を送りながら日本人の精神にも通じる耐え忍ぶ“我慢”に想いを重ね希望を失わずに暮らしていた。<公式HPより抜粋>
アメリカにとっては歴史的汚点ともいえる”日系人への非人道的な扱いをした過去”を扱った作品を、アメリカで・・・しかもブロードウェイで上演したということにまず驚きました。アメリカ兵が日系人を粗末に扱うシーンも多く出てきたので、これをよく現地の人たちが受け止められたなぁと。賛否両論はあったようですが、それでも高い評価を得た作品としてこうして刻まれていることは素晴らしいと思います。
第二次大戦時の日系人収容所送致については、ドキュメンタリー番組やドラマで見たことがあったので多少の知識はありました。今回こうして改めて”ミュージカル”という形でその歴史に触れ、戦争に翻弄された様々な人たちに想いを馳せることができたような気がします。今後も上演を続けてほしい。
ドラマで日系人収容所を描いた作品で一番印象深かったのは、橋田寿賀子さん脚本の『99年の愛~JAPANESE AMERICANS~』です。
99年の愛 ~JAPANESE AMERICANS~ Blu-ray BOX
草彅剛君が熱演していて、大変見応えのあるドラマでした。興味がありましたらチェックしてみてください。
全体感想
今回は梅田芸術劇場メインホールでの上演となりましたが、個人的には下の階にあるドラマシティクラスの広さの劇場でもよかったかもしれないなと思いました。めぐさんもトーク(特典映像による)で語ってましたが、稽古場はけっこうコンパクトな空間だったそうで実際に劇場入りした時はあまりにも広くて最初戸惑ったほどだったとか(東京はフォーラムCですからね)。基本的にはミュージカル作品ですが、ストレートプレイで見ているかのようなドラマチックな展開が多かったので、もう少し小さめの劇場のほうがさらに濃密なドラマを堪能できたのかもしれないなと少し思いました。
ちょっと、舞台空間を持て余してるなと思うこともあったので次回公演するときには中型劇場での上演も視野に入れてもいいのかも。
セットは規模が大きめなものが多かったですが、どちらかというとすごくシンプル。幕が上がる前は緞帳が下りていない状態だったのですが、舞台にはセットらしきものが何一つ見当たらずガランとした「無」の空間が広がっていました。物語がスタートしてから登場人物と共にセットが舞台袖から現れるといった感じ。
七夕シーンは巨大な飾りをぶら下げた木や盆踊り用の櫓などが出てきて華やかな雰囲気を演出していましたが、ダンスパーティのシーンや家族のやり取りのシーンなどは派手さはなく必要最小限のセットのみで、どちらかというと人間ドラマを主に前面に出しているような演出になっていました。
ただ、ダンスパーティの場面で舞台の一番奥に配置されたオーケストラが見える形になっていたのは面白い魅せ方だなと思いました。オケが見えることによって彼らのリアルな躍動感が伝わってきました。
印象的だったのは、収容所生活に入ってから「檻」のような格子状の巨大セットが上手と下手から出てくるシーンかな。普通の暮らしをしていた日系人たちが強制的に荒れ地にある収容所に送られ、まるで牢に閉じ込められたかのような閉塞感のある粗末な生活を強いられている状況がリアルに伝わってきました。
それから、サミーが戦場へ赴く場面も印象深いです。日系人のみで形成された部隊が必死に戦う姿を濃いグリーンを基調とした照明と映像を背景に演出していて、彼らがジャングルのなかで必死に戦う息遣いがより鮮明に伝わってきて、見ているこちらも思わず息詰まるような感覚に陥りました。
音楽は頭に色濃く残る楽曲というものはなかったのですが、どれも耳馴染みがよくとても聴きやすかったです。歌い上げる系のナンバーは演じ手の歌唱力と表現力がとにかくずば抜けていることもあって、めちゃめちゃ心打たれて何度も涙が溢れてしまった。
印象に残ったシーンをいくつか。
まず冒頭。戦争が終わってしばらく経っているにもかかわらず軍服を着て鬱々とした暮らしをしていた老人・サムのもとに姉が亡くなったという知らせが入る。しかし、サムは「50年も会っていないのだから興味がない」といって通知しに来た女性に取り合おうとしません。しかし、どうしても脳裏には家族との思い出が蘇ってしまうわけで・・・、そこから彼の苦しい過去の記憶が物語として展開していくドラマになっています。
この冒頭だけを見ると、サムは何かとてつもなく重い過去を引きずって生きているんだなということは伝わりますが、その本当の意味を知ることはできません。何があったのだろうかという興味を惹きつけたあとに、一つ一つ丁寧に彼の青春時代の思い出が紡がれていく構成は巧いなと思いました。
そしてこの冒頭シーンは、ラストシーンにとてつもなく大きな感動を呼ぶことにもなるんですよね。そういう展開になるんじゃないかなと最初に予感はしていましたが、それ以上の感情がどっと押し寄せてきてしまってクライマックスからラストの「冒頭の続き」シーンは涙涙の連続でした(マスクの中が大変なことに 汗)。あれは、やられたなぁと思った。
特に、ケイの霊が歌う♪二度目のチャンス♪の意味が明らかになったシーンは号泣(涙)。あの瞬間、本当の意味でサミーの心が救われた気がしてこみあげてくるものを抑えることができませんでした。その姿を見届けるために、これまでの物語が紡がれていったんだなというのも感じましたね。
第二次世界大戦で日本がアメリカの真珠湾を攻撃したことにより、日系人は過酷な運命に放り込まれてしまう。元々理不尽な人種差別を受けてきた彼らへの風当たりはさらに厳しくなり、有無を言わさず強制的に立ち退きを迫られ、ハートマウンテン収容所という過酷な環境へと追いやられる。
多くの日系人はあまりの粗末な環境に精神的に追い詰められてしまうのですが、そんな時にケイが優しく諭すように歌う♪我慢♪がとても心に沁みました。音楽も優しくとても温かくて泣けるんですよねぇ。ケイの歌声に導かれるようにやがてみんなが一緒に「ここはなんとか一致団結して我慢を貫き、明日を信じて前を向こう」と心を一つにしていく流れが本当に感動的でした。
ちなみにこの♪我慢♪というナンバーはBWのオリジナルでも♪GAMAN♪として歌われているのだそうです。歌詞にたびたび出てくる”がまん”というフレーズがすごく日本語っぽいなぁと思っていたのですが、訳したのではなくてオリジナルでも使われている背景があるからなのかと知った時には少し驚きました。
ニュアンス的には、ただ耐え忍ぶという意味合いよりも”過酷な状況を耐えながらも前を向こう”という希望的な意味合いが強く感じられました。
それでも、乗り越えられない過酷な環境を見せつけられるシーンも出てくる。特に嬰児を抱え必死に生きていた夫婦が、十分な栄養を与えられないまま我が子を失ってしまい嘆き悲しむ場面は哀しすぎて涙が溢れました…。
サミーとケイ姉弟のそれぞれの恋愛を絡めて展開していくドラマも非常に印象深かったです。収容所での家族の生活は苦しいながらもそこそこ安定した暮らしをしていたのですが、二人がそれぞれ恋をしたことによってそのバランスが徐々に崩れていってしまいます。
ケイが恋をしたのはロス出身のフランキー・スズキ。彼は日本語教師をしていた両親が逮捕されてしまい家族を分断させられたことでアメリカ人に対して激しい憎悪の気持ちを抱いていました。
それゆえ、収容所内で「アメリカに忠誠を誓うか」という細かいアンケートが実施されたことに反発し日系人の人権を守るための戦いへと没頭していきます。最初は戸惑いを覚えていたケイも、どんなひどい目に遭わされても信念を失わず運動への闘志を見せるフランキーに心動かされ共に戦う決意をする。ギリギリのところで自分たちのアイデンテティーを守るために支え合いながら、時に永遠の別れを覚悟しながら突き進んでいく場面はとても印象深かったです。
一方のサミーはアメリカ人看護師のハナと出会い恋愛関係に発展。最初は具合が悪い祖父のために薬を出そうとしてくれない彼女(アメリカ兵にだけ薬を配給できるという規則がありました)に対し反発を覚えていたサミーでしたが、そんな彼に根負けしてこっそり薬を渡してくれたことでお互いを意識するようになっていく流れは面白かった。第一印象は最悪でも、接していくうちにLOVEが芽生えちゃうっていうベタな恋愛ドラマ、好きなんですよね(笑)。
しかし、囚人同然の日系人に恋心を抱いてしまったハナが葛藤の末にサミーの想いを受け入れていく場面はグッとくるものがありました。彼女の恋はアメリカ兵に知られたらどんな目に遭わされるか分らない危険をはらんでいましたからね…。サミーは「自分はれっきとしたアメリカ人だ」という強い信念を抱いた真っ直ぐな男でしたから、彼女が彼に惹かれてしまう展開も説得力がありました。
ところが、二人の恋愛は姉弟の絆を皮肉にも割いていく結果になってしまう…。
サミーは人一倍「自分はアメリカ国民だ」という意識が強かったため、質問票にも「忠誠を誓うためにアメリカ軍人として戦う」という意思を表明します。それゆえ、ケイの恋人であるフランキーがアメリカ軍を憎み「日系人」としての人権を主張し戦う行動が理解できず、フランキーは反逆者だという視点でしか見ることができない。
フランキーもサミーがアメリカ人への拘りが強い想いを理解することができず、アメリカに迎合しようとしている彼に反感を抱いてしまう。大好きな弟と恋人が分かり合えない現実に苦しむケイの姿がとても切なかった…。
そんなケイも、サミーの恋人であるハナに対しては否定的でした。何より彼女がハナを許せなかったのは、規則とはいえ具合が悪く苦しんでいた祖父のために有効な薬を出すことを躊躇い続けてしまったことだった。ケイは家族をとても大切に想っていたので、なおさらハナはサミーの恋人として相応しい人物ではないと思ってしまったのではないかなと…。
サミーがアメリカ兵として従軍している間、ハナは彼の家族に寄り添おうとしましたがそれすらも拒絶するケイ。そんな二人がようやく分かり合えた瞬間に起こった悲劇はとても衝撃的で、見ていて大きなショックを受けてしまった(涙)。運命は本当に残酷…。
それまで穏やかな関係を続けていたものが、ある一つのきっかけで気持ちが分断されてしまう悲劇は、今の新型コロナ禍の現代の世界と重なる部分がとても多いなと感じました。
サミーは自らが正当なアメリカ人であることを証明するために、質問票にある「アメリカへの忠誠を誓う」欄に”YES”と記入する。しかし、日系一世で日本人としてのアイデンテティーを大切に想っていた父のタツオは質問票の忠誠を問う欄にハッキリと”NO”を突きつけ逮捕されてしまう。
二世でアメリカへの意識を強く持っていた息子と、日本から渡って開拓してきた一世で日本人としての意識が強かった父親はたびたび意見が食い違うことはありましたが、大きな衝突もなく違和感を感じつつもそれなりに平和に過ごしてきました。しかし、アメリカ軍から提示された「日本への想いを捨ててアメリカに忠誠を誓うか」を問う質問票によって決定的に意見が割れてしまい、最後まで分かり合うことができませんでした。
また、姉のケイとサミーも「アメリカ人」への認識の違いから分かり合うことができなくなっていく。
戦争へ行き「アメリカ人」として必死に戦いその功績が認められるサミー。彼が所属した442部隊は日系人だけで構成されていて、生きて帰ることが絶望視されるような厳しい戦場(ドイツ兵に囲まれて窮地に陥っていたアメリカ部隊を救出する作戦が有名)へ送られていました。仲間たちが次々と命を落とすなか、かろうじて生き残り結果を出したことで”ようやくアメリカ人として認められた”という誇りを持つことができたサミー。
しかし、戦後帰還したときに姉と結婚し子供をもうけたフランキーと父が共に平和に暮らしていた現状を見て絶望してしまうのです。サミーから見たフランキーは戦後も変わらず「アメリカに逆らい続けた反逆者」でしかなかった。家族のために戦ったにも拘らず、姉と父が”反逆者”のフランキーと一緒に暮らしていることがどうしても許せないサミーの張り裂けそうな気持がとても見ていて痛々しかったです(涙)。
そしてケイも、愛する人を拒絶し罵倒する弟のことが理解できなかった(でもサミーとしては、フランキーがきっかけになって自分の恋人に悲劇が起こったことを知ってしまうので仕方ない部分もあるんだよな…)。彼女は考え方としては「自分たちを不当な扱いをしたアメリカ人」に対してフランキーと同じく憎しみの感情があったんですよね。それだけに、「アメリカ人」として生きる意志が強すぎる弟のことを受け入れることができなかった…。
お互いの考え方がどうしても交わることができず、結果的に家族が分断してしまったキムラ家。それはまるで、未知のウィルスに対する認識の違いからお互いを理解できず気持ちを一つにすることができない今の世の中と重なるようで…、とても他人事とは思えませんでした。
この家族の分断を経てのラストシーン。老いたサムが過去を受け入れる瞬間の場面は本当に胸が震えました(涙)。父の持っていた雑誌と、そして目の前の真実。思い出すだけでも涙が溢れます。是非多くの人にそのドラマを見届けてほしいと思いました。
キャスト感想と後述は次のページにて。