ミュージカル『アリージャンス ~忠誠~』大阪公演初日 2021.04.23マチネ

主なキャスト感想

濱田めぐみさん(ケイ役)

めぐさんが演じたケイは家族思いのとても優しい姉。父と息子が少しギクシャクした時も、彼女が間に入ってやんわりとその場を収めるので見ていてとても癒されました。めぐさんってどちらかというと「強い女性」の役がハマるように思われがちなのですが、こういった物腰が柔らかな癒し系の女性も違和感なく見事に演じられるんですよね。本当に唯一無二の凄い女優さんだと思います。

ケイがフランキーと恋に落ちて徐々に自立していく姿も非常に印象的でした。収容所で反対運動をしていたフランキーが逮捕され死を覚悟した場面で、すがるように彼に抱きつきながら愛を歌う♪最後じゃない♪はとても情熱的で刹那的でグッときました。ちょっとミュージカル『アイーダ』を思い出しましたね。

そしてなんといっても圧巻だったのが1幕クライマックスで歌われた♪もっと高く♪でしょう!事前に動画でも見ていましたが、舞台で聴くとその何倍もの圧力とドラマを感じました。

めぐさんの豊かな感情表現と深みのある素晴らしい歌声と果てしなく続く声の伸び。次のシーンに入る寸前まで拍手が鳴り響いていたほどです。本当に感動しました!!

存在感全てが本当に素晴らしかった!ぜひ持ち役として再演でも演じていただきたいです。

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海宝直人くん(サミー役)

海宝くんが演じたのは「アメリカ人」へのこだわりが人一倍強いが故に家族と対立してしまうサミー。姉や父が「日系人としての自分」を大切にするのに対し、あくまでも「アメリカ人」としての自分を証明したいという強い意志は全く曇りがなく、とても真っ直ぐで清々しさすら感じるほどでした。猛然と自分の意見を主張し父やフランキーとぶつかるシーンでも、「彼の想いも分かってしまう」と思わせる説得力があったのは海宝くんが演じたからこそだったと思います。

ハナと出会い恋愛感情を抱くまでのお芝居は、どこか楽しそうでチャーミング。なんとか時間を延ばしてハナの気持ちを変えさせようと企んでるような表情が特にかわいくて魅力的でした。それゆえ、最後には根負けしてサミーの祖父のために薬を提供するに至ってしまうハナの気持ちがすごくよく分かったかも。そこから一気に恋愛モードへと進んでいくんですけど、まぁ、ちょっと展開早っとは思いましたが(笑)説得力はありました。

戦地から戻ってきた後の展開は本当に切なかったですねぇ…。自分だけ時代に取り残されてしまったかのような孤独感もヒシヒシと伝わってきたし、苛立ちを募らせてその場を立ち去らざるを得なかった苦しみも痛々しく心が締め付けられるようでした。こういった繊細なお芝居も海宝くんの魅力の一つです。

そしてなんといっても、澄み渡った声で歌い上げられるソロナンバーが本当に素晴らしかった!!特に1幕に歌われる♪男は♪は圧巻です。

たとえどんな外見であろうとも、自分はアメリカ人として生きるんだという強い意志が真っ直ぐに伝わってくる熱唱で、ここも次のシーンの音楽が始まり出しても拍手が鳴りやまないほどでした。

海宝くんはこのサミー役で菊田一夫演劇賞を受賞したそうです。

超納得です!!本当におめでとう!!劇団四季の子役時代から見ているだけに、その成長が本当に嬉しいです(ちなみに、めぐさんとは25年前に四季で共演した時以来だったそう!)。これからも応援してます。

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中河内雅貴くん(フランキー役)

中河内くんは久しぶりに舞台で見たんだけど、登場した時からめっちゃ”アメリカン”な雰囲気が漂っていて思わず目を奪われました。『ジャージーボーイズ』のトミー役を見てた影響もあったかもしれないw。日系アメリカ人役がすごいハマってたのですが、フランキーはアメリカよりも「日系人として」という意識のほうが高いのでちょっと意外性を感じることもあったり。

印象的だったのは家族関係に悩むケイを励まし、彼女のアイデンティティーを目覚めさせていく場面。「私は何者なの!?」と混乱するケイに「君は君自身の人生を生きるんだ」と力強く語るシーンはとても説得力があったし、彼女がフランキーに惹かれていくのも納得できるものでした。
そんな彼が収容所内で自らの信念に従って多くの仲間を先導し、尊厳を勝ち取るために戦う姿はとても逞しいと同時にどこか危うさもはらんでいて見ていてハラハラさせられました。中河内くんの持つ鋭い切れ味が生きたシーンでもあったなと。

それからやっぱりダンスパーティの場面はめちゃめちゃキレキレな動きでカッコよかった!スマートな体系から繰り出されるパワフルな動きはとても魅力的でした。

新型コロナ禍のなかで一時期少し弱気な発言をSNSでしていたことがあり心配した時期もあったので、今回こうして元気な姿を舞台上で見ることができてとても嬉しかったです。まだまだ大変な時期は続くかもしれないけど、何とか前を向いて頑張ってほしいです。

小南満佑子さん(ハナ役)

小南さんは朝ドラ『エール』に出演してから一段と存在感ある女優さんになりましたよね。美しい顔立ちでもあるので、金髪のアメリカ人女性の役柄がめちゃめちゃハマっていて見惚れてしまいました。

ハナはアメリカ人の看護師ということで日系人たちには最初不利な対応ばかりしてきたのですが、サミーに出会ってからそんな自分の行動に疑問を持つようになっていきます。特に印象深かったのは、日系人夫婦の幼い子供が過酷な生活環境に耐えられずに亡くなってしまったシーン。
葬儀の様子を陰から見守っていたハナが、あまりにも哀しすぎる光景にショックを受けて泣きながら走り去ってしまうのです。その姿が本当に切なくてねぇ…。アメリカ人の立場であるハナの気持ちが大きく日系人へと動いた瞬間にも感じられました。

サミーとの恋愛シーンはもう美男美女の組合せで超眼福!!彼と愛を歌う♪きみと♪も非常にドラマチックでした。どこかちょっとディズニーっぽさも感じられたり。

その美しい恋愛がいつまでも続き成就されることを願っていたのですが…、あのまさかの悲劇シーンはすごくショッキングだった(涙)。迷いながらも最後まで自らの想いに真っ直ぐ生きたハナを小南さんはとても誠実に丁寧に演じてくれたと思います。

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上條恒彦さん(おじいちゃん/老サム役)

上條さんは冒頭とラストシーンに登場する老いたサム(サミー)と、キムラ家の祖父カイトおじいちゃんの二役を演じられていたのですが、全く違う人物を見事に演じ分けられていてさすがだなぁと思いました。

タツオの父親でケイとサミーの祖父であるカイトは、とても穏やかで優しさに溢れたおじいちゃん。縁側でいつも日向ぼっこしているような雰囲気を醸し出していて、キムラ家の家族はこのおじいちゃんに何度救われていたかと思えるほど。
どんなに家庭がギスギスしても、アメリカ兵に粗雑に扱われても、常に穏やかでまるで周囲を浄化してくれるような圧倒的な安心感がありました。たとえるなら・・・『赤毛のアン』に出てくるマシュウみたいな感じかな。それだけに、花壇の傍で倒れてしまうシーンは本当に哀しかった(涙)。

一方の老いたサミーは、家族と分断してしまったまま50年が経過してしまった歴史が色濃く残る雰囲気で、苛立ちや鬱々とした暗い影が色濃い人物。とても少し前まで穏やかで優しいおじいちゃんを演じていた人とは思えなかったほどです。まるで別人

しかし、姉の亡霊の声を聞き入っていくうちにそれまで溜め込んできた暗い感情が一気に解放されていく瞬間はとてもドラマチックです。そして姉から預かっていたという”雑誌”の存在も…。それを見たときに、これまで口にできなかった父への愛情を吐露し涙する場面は本当に泣けました(涙)。まるであの日にタイムスリップしたかのような、若き日のサミーがしっかりと上條さんのお芝居に反映されてたのが素晴らしい!
そしてもう一つのサプライズ・・・あれはもう、涙なくしては見れませんね。老サミーと共に私もボロボロ泣いてしまった。

上條さん、久しぶりに舞台で活躍される姿を見れて嬉しかったです。まだまだお元気で素敵なお芝居を見せてほしいです。

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今井朋彦さん(マイク役)

今井さんが演じたマイクは、日系アメリカ人市民同盟の事務局長。つまり、日系人を取りまとめる立場の人間でした。彼は収容所へ送られることはなかったのですが、収容所で苦しい生活を強いられている日系人たちの生活を少しでも改善させるために外から様々な意見を出し奮闘する。でも、状況が改善されることはほとんどなくて、苦肉の策として提案したのが「質問票」を配って彼らを”アメリカ人”と同等の立場にさせようとすることでした。

ところがその質問票の内容は、日系人の気持ちを逆なでするような「アメリカに絶対の忠誠を誓うか」と迫るものでマイクの思っていたものとはかけ離れていた。自分は必死に日系人のために尽くしてるのに結局空回りに終わってしまっていることに苦しむ姿がとても印象的でした。一人だけ安全地帯に身を置いていたことも彼にとってはマイナス材料だったのかもしれません。

しかし、時が経つにつれて収容所の人たちへの想いが薄れてしまうようにも感じられたマイク。何をやってもうまくいかず、しかも彼らのために尽くしているにも拘らず敵視されるばかりで理解されない。そんな状況により心境が移ろいで行く感じを、今井さんはとても丁寧に演じられていたと思います。

今回はソロで歌うシーンはなかったのですが、ストレートプレイ的なシーンを引き締めてくれる存在で作品のいいスパイスになっていました。

松原剛志くん(タツオ役)

名古屋公演から体調不良のために出演できなくなってしまった渡辺徹さんの代わりに、主人公の父親という大役を演じられた松原君、本当に代役!?って思えるほど役に馴染んでいて素晴らしい存在感で演じ切ってくれました。

ケイとサミーの父親であるタツオはあまり感情を表に出さず、どちらかというと寡黙な父親といった雰囲気。でも、自分の中に流れている「日本人」としての血に対して誇りを持っていて、アメリカ人に拘り続ける息子のサミーとはいつもギクシャクした関係になってしまいます。アメリカ国籍ももらえず、ついには財産も奪われ収容所に送られたことでアメリカ人に対して不信感を抱いていたこともあり、自分の望んだ方向に進もうとしないサミーに対して「なぜわかってくれないんだ」といった苛立ちがある。その複雑な心境を、松原君は抑え気味ながらも丁寧に演じていました。

一番感情を出した質問票に「NO」と記載したシーンは特に印象深いです。たとえそのことによって逮捕拘束されると分かっていても、自らの日系人としての誇りと信念は絶対に曲げられないんだと強い意志を告げるタツオの場面はグッとくるものがありました。

結局は戦地から戻った息子と和解する機会を失ってしまうわけで…。意見が違いながらも息子を誇りに思っていたことをハッキリと伝えることができなかった無念が滲んでいたシーンはとても切なかったです。

短い準備期間のなかでまだ若い彼が老いた年齢まで演じるのは、とても大変なことだったと思います。でもこの経験が後々大きなチャンスへと繋がっていくかもしれないですし、松原君にとってもすごくプラスな出来事でもあったのではないでしょうか。

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後述

今回は珍しく、舞台が終わった後の2度目のカーテンコールで写真撮影することが許されました。かなり良席にいたこともあり、何とか頑張ってスマホ撮影を試みたのですが・・・やはりこういう時になるとテンション上がってなかなかうまく撮れないものですね(苦笑)。

とりあえず、まぁまぁ上手く撮れたかもというのを載せてみますw。

見切れて写せなかったキャストの方もいらっしゃって申し訳ない(汗)。

でも、公演できるかどうかギリギリの状況であったこともあり、カンパニーの皆さんも感無量といったような表情をされていました。私も、あの場にいられたことに感謝したなぁ。3回目のカテコではスタンディングにもなって、一体感のある素敵なカテコになったと思います。

また次の機会に、さらに洗練された状態の再演を期待したいと思います。その頃にはみんなが安心して舞台へ足を運べる状況になっていますように…!!

5月にはWOWOWで放送も決定したようです(おそらくその後も不定期でリピート放送するはず)。

今回観劇できなかった方もぜひ見ていただきたい作品です。

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