ミュージカル『エリザベート』2019.07.30ソワレ

全体感想<2幕>

♪キッチュ♪

拍手喝采の客席に上機嫌な様子の成河ルキーニ(笑)。ギラギラしながらも品のある雰囲気で知らず知らず惹きつけられます。で、今回も張り切って前方客席に色々配ってたんですが(カップが一番高価なやつかな)、プレートだけは渡す素振りだけで自分の手元に置いてましたね。あれこそ渡してもいいんじゃない!?って思うんだけど(笑)。

♪エーヤン♪

ハンガリーの自治権を得て国王としてパレードするシシィとフランツ。その傍らにはトートが鞭を振るっている。この喜びのパレードシーンは『エリザ』の中でも特に好きな場面のひとつです。熱狂するハンガリーの市民たちに上機嫌で手を振るシシィを、トートが皮肉な目で見つめて「今だけだ」と歌ってるんですが、とにかくここはシーン全体…演出も歌も本当にカッコいい!ただ、前演出の馬車が亡くなったのはちょっと寂しいけどw。
特に民衆が「エリザベート」と連呼して歌うところは毎回テンションが上がりますね。あの中に混じって一緒に旗を振りたくなる(笑)。それにしてもこの時の成河ルキーニの歌声の伸びはすごかったです!!肺活量どんだけ!?と思うくらいだった。

熱狂パレードを見つめてる革命家たちのボルテージも6月より一層上がったように感じました。特に植原エルマーの熱さがだいぶ上がりましたよね。その脇に控えてる元くんの険しい顔もカッコいい。

♪私が踊る時♪

シシィとトートがお互い「自分の勝利だ」と主張し合ってぶつかり合うヒリヒリするナンバーですが、芳雄トートはシシィの強気な態度にもほとんど怯んでなかった気がします。どんなに勝利宣言されても「今に俺の望みどおりになる」っていう心の余裕みたいなのがあって、あまり挑発に乗ってなかったのが印象的でした。
ここでシシィは自分の道を見つけたって勝ち誇った顔してるんですよね。なので、その後の精神病院でのシーンはやっぱりちょっと違和感あるかな~。

このあと、少年ルドルフの前に現れたトートがピストルを受け取った後に銃口を向けるシーンがありますが、その時の芳雄トートの表情が色っぽ過ぎてビックリ!!氷の世界の死神みたいな顔だったよ!その後のルドルフの不幸な未来が容易に想像できてしまった。

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♪精神病院♪

「私は勝った」って勝利宣言していたはずのシシィですが、精神病院によく訪れるというエピソードが出てくると「私は孤独」と急にネガティブになって現れる(苦笑)。その落差が未だにちょっと違和感なんだけど、それだけ錯乱状態になってしまったって捉えるのが自然なのかもしれません。

このシーンで印象に残るのは「皇后エリザベート」だと思い込んでいる患者・ヴィンデッシュです。本物が現れた時に「私の方が本当の皇后だ」と錯乱状態に陥るんですが…演じている真瀬はるかさんの迫力が素晴らしい!!シシィと対峙していても、どうしてもヴィンデッシュの方に目が行ってしまったくらい。

そしてヴィエンデッシュをルキーニが操ってるように演出されているのが興味深いです。彼女の去り際にルキーニはそっと掌に口づけをして敬意を表している。最後去ってしまいそうになるのを後ろから押し出してシシィにその姿を見せつけようともしています。
「あなたも同じよ」と歌うシシィに背を向けるようにボロボロの扇子を広げて優雅に去っていく姿は圧巻でしたね。狂気の中に美しさがあり、非情に印象的でした。

♪マダム・ヴォルフのコレクション♪

なんとかシシィに一泡吹かせたいゾフィたちが策を練る場面。「彼女はきれいだから」と歌うグリュンネ伯爵に対してゾフィが妙案を思いつくんですが、剣ゾフィはちょっと動揺したような感じで「綺麗な女なら他にもいます…!」って反応してて面白かったw。他のゾフィさんたちは強気の姿勢でこのセリフを言うことが多いんですが、剣ゾフィはなんだかちょっとこっぱずかしさみたいなものを感じてたのかなって雰囲気だったw。

シシィの母親を演じている未来優希さんがマダム・ヴォルフを演じてるのですが、いやはや、すんごい迫力!!母親のルドヴィカのときにも貫禄あるお芝居でしたが、マダム・ヴォルフは柔らかさを全てそぎ落とした凄みがあります。この時ばかりはルキーニもヴォルフにタジタジになっちゃうのが可愛い(笑)。
にしても、マデレーネの黄金の褌みたいなやつの演出は…やっぱり何度見ても苦笑いしたくなるんだよなぁ~~。あそこまで表現する必要ないやろ、みたいなw。

まんまと策略に乗っちゃったらしいフランツにシシィは病気をウツされるわけですが・・・万里生フランツがそっちに行っちゃうのはあまり考えづらい部分はあるかもw。よほど気持ちが疲れていたとしか思えないなぁ(苦笑)。
それを悟ったシシィと、医者の振りして近づいたトートとの攻防は迫力がありました。このシーンのときには芳雄トートもかなり確信を持って口説いていたのでそれまで感じられていた余裕はなかったように見えたかな。なので、シシィから拒絶されたときは今までよりも苛立ちを覚えていたようでしたね。

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シシィから完全に拒絶されることになったフランツはゾフィに抗議しに行きますが、この時はもう母に対する訣別の思いが強いことがハッキリと伝わります。どんなに「ハプスブルクのためだ」と説得されてもその言葉は耳には入らない。
剣ゾフィの臨終のシーンは、それまでの迫力が消えて寂しく哀しい雰囲気でした。その先を憂えて絶望してなくなっていったかのようだった。

シシィはその後王宮を出て旅を続けるのですが、待ちわびてる万里生フランツは登場した時から涙目で「母上はもういない、帰っておいで」と歌う時なんか泣いてたほどだった。こんなにもシシィに依存しまくってるフランツ像は初めて見たかも。

コルフ島で父マックスの亡霊とシシィが語る場面は幻想的で物悲しい。ハラシンくんのマックスは亡霊メイクになっても爽やかでカッコよくて、シシィが「パパみたいになりたかった」って歌う歌詞に説得力があるように見えました。

♪父と息子♪

ついにここでりょん君のルドルフが登場!!いやぁ・・・本当に美形ルドルフだった・・・!!これまで見てきたルドルフ役者のなかでも一番かもしれない。儚さ漂う見た目に反して国内の現状を憂える革命家的な一面も感じられて♪憎しみ♪の場面でフランツを必死に説得しようとする場面は何だか逞しさすらあった。
逆にフランツはシシィのことで頭がいっぱいなのか、国内の様子に目をそむけてしまうんだよね。これが悲しいすれ違いの始まり。

鍵十字の巨大幕が取り払われたところに、民衆の姿ではなくトート閣下の姿がポツンとある演出は非常にインパクトがあって好きです。

♪闇が広がる<リプライズ>♪

芳雄くんとりょんくんの歌声の相性はどうかなって最初思ってたんだけど、想像していた以上に刺激的で迫力があり、何度もゾクゾクさせられました。芳雄くんがりょん君のテンションをグングン引き上げるような歌い方をしてて、いい相乗効果があったように思います。

それに、ビジュアル的にも最高(笑)。まさに美の共演!!芳雄くんとりょん君が一緒のシーンを一度見てみたかったのでなんか感無量でしたね。

そしてトートに唆される形でルドルフはどんどんと革命家への道に突き進んでいくわけですが、最後の一線をなかなか越えられずにいる。そこを後押しするのがトートの「ハンガリー国王になれる」という言葉。雷に打たれた課の表情で、ルキーニが持つ王冠の元へ進み跪くりょんくんルドルフのなんと美しいことよ!!目を閉じて王冠が被さるのを待ってる表情には特にドキリとさせられました。

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♪僕はママの鏡だから♪

結局革命に失敗して謹慎することになるルドルフ。名前を聞かれたときに必死に顔をそむけて名前を隠そうとしてる表情がなんとも言えず苦しげで見ていて胸が痛んだなぁ…。

帰ってきたシシィに自分の現状をルドルフは語るのですが…必死に訴えかけるように歌ってるりょん君見たらなんか、涙が溢れてきちゃったよ…。公演の最中にりょん君のお母さん亡くなっていますから…このシーンは特に本人的にも辛いんじゃないかなって思うとついね…。

♪マイヤーリンク♪

シシィに見捨てられて生きる希望を見失ってしまったルドルフに近づくトート。トートダンサーズから逃れようと動いてはいるんだけど、でも心の中ではもう「死」しか道はないと悟っているようでもあったな…。
芳雄トートとりょんルドルフのキスシーンは…この世のものとは思えないような美しさで思わず息をのんだ…!!!

りょんルドルフは銃を手にして引き金を引く時はもう既に心が死んでいるかのようでしたね。何も感情のない顔をしてたのが非常に印象的で、スーーっと魂が抜けたようだった。

ルドルフの死にショックを受けたシシィの目には彼が眠る棺しか見えない。万里生フランツはシシィに近づいてその体を支えようとしますが、彼女はそれを拒絶するんですよね…。その時の万里生フランツのなんと悲しげな表情よ…!!息子の死よりもシシィに心を開いてもらえないことの方が悲しくて仕方ないって感じだった。

♪夜のボート♪

ここまでずーーっとシシィへの溺愛っぷりを見せてきた万里生フランツだっただけに、湖まで追いかけてきたという展開が一番スッと納得できたような気がしました。なんとかシシィと心を通わせたくて必死になってる想いが痛いほど伝わるんですよねぇ。
でも、どんなに気持ちを込めてもシシィには伝わらなくて…最後の「わかって無理よ」の言葉を目の当たりにした万里生フランツはショックのあまりさめざめと涙を流して悲しんでたよ(涙)。あれは思わずもらい泣きするくらい切なかった…!!

♪悪夢♪

『エリザベート』の中で一番激しく感情が動くのがおそらくこの場面。とにかく、芳雄トートと万里生フランツの対決の迫力が凄まじかった!!シシィをめぐっての最後の攻防戦というか…二人とも感情剥き出しで対峙していて、そこにはもう誰も入りこめない雰囲気がある。
その中でも、万里生フランツの苦悩っぷりがものすごいツボだった。どんなに尽くして受け入れてもらえない辛さがひしひしと伝わってきて泣けた。

そして、ルキーニに落とされるナイフ。
受け取った直後に地獄の裁判長から事件のあらましを尋ねられる。その時の成河ルキーニはそれまでの勢いが嘘のように怯えたように質問に答えてるんですよね。これから自分が成すことに対する恐怖みたいなのも感じているようだった。こういう芝居はやっぱり成河さん上手い。

♪愛のテーマ♪

そしてついに黄泉の世界へ足を踏み入れるシシィ。今度こそ自らの意思で歩み寄ってくるシシィに対し、トートはこれまでの勢いが嘘のように少し怖気づいているようにも見えるのが面白い。拒絶しまくってきたからにわかには信じられないんだろうなとw。

そして抱きしめたあと口づけをし、シシィがぐったりした横にいた芳雄トートの表情は…色んな感情の処理が追いつかないように目を見開いたまま止まってた。ここで満足した表情を見せないのがツボです。

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主なキャスト感想

愛希れいかさん(エリザベート)

愛希さんは初めて見る女優さん。宝塚を退団されてからまだ日が浅いのかな。

まだ20代とのことで、若々しい爽やかな美しさで魅了されました。1幕ラストのエリザベートの姿は特に輝くほど眩しい美しさで息をのみましたね。少女の頃の芝居も可愛くてよかったけど、年を重ねていくほどに自我を高めて強い意志を見せていく姿も魅力的でした。

歌もあまり不安なところがなくて殆ど安心して聞いていられましたが、高い音程の部分になると少し声が揺れ気味になるのは気になったかも。あと、私だけにの最後の伸びもあと一息欲しいかも。そこはちょっと残念でした。

 

井上芳雄くん(トート)

最初は芳雄くんのトートは前回見ているからパスしても仕方ないかなって感じだったんですがw、今回見て、スルーしなくてよかったと心底思いました。いやぁ~~、なんか、初めて芳雄くんの芝居見て「すごい役者になったな」って思ったかも。巧いを越えて凄いって思った、ほんとに。

芳雄くんのトートは前回公演に比べると芝居に余裕ができてきたからか、色んな芝居の余韻を感じることができたんですよね。シシィに対してもガンガン攻めていくのではなく、一歩引いた感じで「必ず自分のことを愛するに違いない」という絶対的自信を抱きながら接している感じ。だから、どんなに拒絶されてもあまり試みだされず、ドンと構えている印象が強かったので貫禄も感じられたんです。帝劇全体を支配している…まさに帝王のようだった。

歌もソフトな歌い方から噛みつくような激しい歌い方まで変幻自在。そのシーン、感情に合わせて色んな声色を出して歌ってて…こんなバラエティに富んだ芳雄くんを見たの初めてかもしれないっていう衝撃がありました。

初演の時から東宝『エリザベート』に関わって来てますから、それだけこの作品に対する思い入れは人一倍強いんだろうなって思いました。次の公演があった時もさらに進化した芳雄トートが見てみたいです。

 

田代万里生くん(フランツ)

万里生くんのフランツの感情表現は、石川禅さんが演じたものと同じシンパシーを感じるので大好きですね。むしろ、それよりも熱いかもしれない。

もう、シシィのことが大好きすぎて常に目をウルウルさせて…拒絶の反応や言葉を聞くたびに涙を流す姿を見るたびにもらい泣きしてしまったよ~~。ここまでシシィを愛し抜いてるフランツというのにはあまりお目にかかれないと思う。
やり過ぎって思う人もいるかもしれないけど、私はこれくらい熱く感情をぶつけてくれるお芝居の方が好きなのでむしろこの路線を突っ走ってほしいです。

ただ惜しむらくは…メイクなんだよねぇw。前回公演の時もそこだけが気になったんだけど…せっかく熱くていい芝居してるのに、あの老けメイクがなんだかコメディに見えちゃってww…。いや、もっと万里生くんに似合うメイクあると思うんですよ。何とかなりませんかねぇw。

 

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剣幸さん(ゾフィ)

登場した時からゾクっとさせるほどの恐そうなお母様ゾフィ!あれはみんな逆らえないっていう説得力が凄かった。

正直、歌はちょっと不安定だったかなぁ…という残念さはあったのですが、それを補うだけの芝居力がさすがでした。剣ゾフィのシーンは何だかストプレを観ているようでした。

 

三浦涼介くん(ルドルフ)

感想でも書いたのですが…少女マンガから出てきたかのような美しいビジュアルに衝撃受けました!!もともと綺麗な顔立ちのりょん君ですが、ルドルフ役となるとちょっとイメージ違うかなって思ってたのですが…予想以上にマッチしていて嬉しい驚きでしたね。

見た目はものすごく繊細そうな美形なのに、ハスキーで太さもあるしっかりとした歌声が戦う青年のイメージ。りょん君のルドルフは革命家としての顔がすごく強かった印象があります。あんなに革命に熱心にのめり込んでいく青年になるとは…!外見とのギャップが逆にすごく魅力的でしたね。

その分、全てに挫折した後のりょんくんルドルフはとてもか弱い。シシィに意見をスルーされてしまった後の絶望感は特に印象深いです。そこから「死」へ舵を切ることが悲しいかな、とても自然な流れに見えた。
強さと弱さの二面性を見事に表現していたと思います。

 

成河さん(ルキーニ)

前回もその存在感に圧倒されてしまいましたが、今回はさらに熱量が上がった感じ。圧倒的な歌唱力と声量で帝劇全体を支配。井上トートとタイマン張ってるような激しさが刺激的で何度もゾクゾクさせられました。

あと、成河ルキーニだと、他の登場人物が皆彼の掌の上で踊らされているように見えるんですよね。すべてを操ってしてやったりな顔で嘲笑ってる。
そんなルキーニが自らも物語の中枢に深く入り込んでくるのがフランツの悪夢に登場する時かなって思います。ここでは成河ルキーニは彼らと同じ目線で意思を持って動いてる。阻止しようとするフランツの胸倉をつかんで突き飛ばすシーンとかは特に印象深かったです。

芝居と歌の両輪を上手く動かしてるなと。そういうところはさすがだなって思いました。

 

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後述

今回も充実のエリザ観劇ができましたが、木村ルドルフといっくんルキーニに会えなかったことはちょっと残念だったかな。何とかキャスト調整してチケット取ろうとしたんですが、確保するだけでも一苦労状態だったので(汗)全キャスト制覇することはできませんでした。

でも、非常に完成度の高い舞台だったので…可能ならば今回のもディスク化してほしいくらいです。

次はせめて大都市ツアーやってくれないかなぁ。東京だけだと色々と遠方ものとしては大変なので(汗)。また次回新しい『エリザベート』に会えることを楽しみに待ちたいと思います。

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