ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター ~北斗の拳~』愛知公演 2022.01.15マチネ・ソワレ前楽

全体感想 -2幕-

館に戻っていたラオウは、かつて師匠リュウケンからケンシロウと殺気ある虎と対決するよう命じられた時のことを夢に見る。ケンシロウは気で虎を圧倒してそのままおとなしくさせたのに対し、ラオウは激しい力で虎を粉砕して倒してしまう。当然自分の方が褒められると信じていたラオウでしたが、リュウケンが評価したのは虎に恐怖心を抱かせたケンシロウの方だった。その時のトラウマがラオウを未だに苦しめている…。

この虎さんのシーンは張り子みたいな感じで出てくるので怖さはなくて逆に可愛く見えたんですよねw。ラオウ、なんて酷いことしてくれたんだ!と心の中でツッコミ入れまくったっけ(苦笑)。

このとき、ラオウの配下となっていたシンが「南斗最後の将が現れた」と報告にやって来た。世が乱れたときに北斗の男と組んで時代を率いる存在だという。ラオウはその存在を手に入れようという野望を抱きます。
原作ではシンがラオウの下につくという展開はないそうで、これは舞台オリジナル設定とのこと。シンの活躍の場を増やすために加えたのかな。

M15.揺るぎなき信念

シンから村を制圧した時に村人たちが全く無抵抗だったと聞いたラオウはそのことに激怒してしまう。「戦わなければ生きる意味がない」と部下たちを従えて歌い踊る場面は圧巻です。あまりにも激しすぎる修行を積んだことでラオウは”戦闘”こそが生きる道だという考えを植え付けられてしまったのだろうか…。

宮尾さんのラオウは歌えば歌うほど彼の孤独な心が浮き彫りになっていく雰囲気があって、福井さんのラオウは圧倒的な力で制圧するという野望のような想いが強く感じられるような印象がありました。

それから、後ろで踊っているシンの動きがとてもカッコいい。ダンスが得意な植原くんは片手側転も披露していて実に軽やかで見応えがありましたね。上田くんは歌唱力が素晴らしかったです。

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M16.ヴィーナスの森

そして満を持してジュウザが登場!理生くんと伊礼くんが入れ替わりで演じていたのですが、二人とも全く違った個性で楽しませてくれました。

まず、リハクが「ジュウザぁ~~~」と呼びに走った後に登場するシーンも二人の個性がクッキリw。マチネの理生くんジュウザは伸びをした後にニヒルな笑みを浮かべて「呼んだかい?」と硬派なセクスィー男風で登場!こりゃ女たちが放っておかないぜ!!って言うのが納得です。
それに対してソワレの伊礼くんジュウザは「おまたせ♪」と超色気ムンムンな雰囲気で登場ww。でもどこかチャラさも匂わせてて遊び人的な匂いがプンプンしてました(笑)。さらに前楽では何かその後も喋ってたんですが、すぐにヴィーナスたちがキャーーって寄ってきちゃって「まだ喋ってる途中なのに」とツッコミ入れるというオマケつきwww。笑ったwww。

そしてさらにこのシーンでノリノリになるのが指揮者のシオタクターこと塩田さんです(笑)。なんか、大阪で見た時よりもかなーリ飛び跳ねてたぞwww。っていうか、楽団よりも客席見てる確率の方が高かったような(笑)。もうこれは、塩田さんだから許される光景でしょう。この方も相当なエンターテイナーだと思います。

客席もそれが分かってるから自然と手拍子が沸き起こるわけですが、塩田さんの手拍子煽り、マチネとソワレではリズムが変わってたな(笑)。マチネではあまり塩田リズムに客席が乗り切れてなかったのでソワレでは変えたのだろうかww。この場面はオーケストラボックスにまで注目しちゃうから色々と忙しい(笑)。

ナンバーが終わった後もヴィーナスたちを侍らせているウキウキのジュウザ。理生くんはリハクが来た段階で呆気なく彼女たちが散っていくのを見送っていましたが、伊礼くんは最後の最後まで女の子に執着してて、抱きかかえて放そうとしない女の子をリハクさんが無理やり自分のところに奪いとって引きはがしてました(笑)。

リハクは「南斗最後の将」にどうしても会ってほしいとジュウザを説得するものの、彼は全く聞く耳を持とうとしない。そこでリハクは無理やりジュウザを眠らせる強硬手段に出るわけですが、呆気なくバタキューしてしまう理生くんと、最後まで粘って目を開けようとする伊礼くんと、二人とも全く反応が違っててホント楽しめましたww。

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M17.兄弟の誓い

トキはケンシロウたちを両親の墓に案内してラオウとの過去を語ります。このシーンもめちゃめちゃ泣けました…(涙)。

トキとラオウは血が繋がった実の兄弟(ケンシロウは血が繋がっていません)。両親の死をきっかけに北斗神拳に弟子入りしようとリュウケンを待っていたところ、やって来るなり突然二人とも谷底へと突き落とされてしまう(汗)。マンガじゃなかったらリュウケンさん、〇人罪に問われまっせ!?と最初見た時ビックリしました(汗汗)。ちなみにこの当時はリュウケン師匠は髪の毛フサフサ生えておりましたw。

リュウケンは養子は一人だけと決めていたので、無事に上まで登れた方を選ぶとしてたって…マンガじゃなきゃ許されない所業(汗汗汗)
それでも少年ラオウは腕一本で必死に弟の少年トキの手を掴みあくまでも二人一緒に助かる道を諦めようとしなかった。ラオウってこんなにも弟想いの奴だったのかと胸が熱くなるシーンなのですが、一色君百名君の熱演が本当に凄すぎて涙が止まらなかったよ!!特に一色君の声の迫力がハンパない!!あんなすごい声出しながら枯れなかったからなぁ。ブラボーですよ、本当に。

ただ、マチネでは一瞬少年ラオウが少年トキの腕を掴みそこなってしまうことがあって…トキが謎の力で浮いてました(笑)。でも一瞬だったから気づかない人の方が多かったかも。あの場面は二人の呼吸が本当に肝になってて、腕を掴みながら必死に上る芝居をするのは本当に至難の業だったと思います。

そして何とか無事に二人で登り切ったことでリュウケンはトキを特別に養子として受け入れてくれることになりました。しかし、あまりにも過酷すぎるラオウの修行の様子を見ていたトキは、優しかった兄が変わっていってしまうのではという恐怖心を抱く…。舞台ではなかなか表現するのには限界があると思いますが、実は命スレスレな修行にラオウは耐えてたんですよね。
そんな兄の様子を見ていた少年トキと現在の和樹くんトキがリンクして不安そうな表情を抱いてるシーンがとても印象的でグッときました。

ある日トキはラオウに一緒に修行に参加することを申し出る。北斗神拳は一子相伝なので、トキが修行に参加するということはいずれ兄と戦わざるを得なくなることを意味している。それを問われても、トキはキッパリと「いい!!」と答えるのですが、百名くんのこの時の仕草がめちゃめちゃ力強くて毎回ウルッときちゃいました。

弟の覚悟を知ったラオウは、もしも自分が誤った道に行った時には止めてほしいとトキに懇願する。この時の約束を思い出したかのように和樹くんトキがかつて兄に握られた手をじっと見つめ拳を作るの、すごく泣けたよ…。本当はそんな時が来てほしくなかったって感じてただろうなって思ったら切なくてねぇ…。

トキは自らの感情を抑え込むようにラオウを止める使命を自らに課し、命をかけて戦う決意をします。和樹くんの力強さの中にある切なさを垣間見せるような表情が泣けたよ…。
ただ、この一番大事な良いシーンの時に後ろのワイヤーがチラチラ見えてしまってるのがちょっと残念だったなぁ。アクションで使うから仕方ないんだけどね。個人的にはあまりあの場面でワイヤーは見えてほしくなかったかも。

そしてついにラオウと真剣勝負をする日がやってくる。重々しいラオウの拳をトキが受け止めて「忘れたのか?私があなたの全てを目指していたということを!!」と叫ぶ場面は超胸アツだった。ラオウもそんな弟の心意気を感じそれを受けて立つ決意を固める。
このあと二人の壮絶なアクションが続くんですが、めちゃめちゃすごい迫力だった!!と言うか、もう本当に壮絶!!綿密に稽古してなければ怪我するレベルです、あれは。本当にキャストの皆さんすごいなぁとビックリする、この作品は。

そしてついにトキの拳がラオウに命中するのですが…、ラオウは「もしも病んでいなかったら…」と呻くのです。福井ラオウはものすごくドスの効いた迫力満点の言い方をしていたのに対し、宮尾ラオウはとても哀しげにこのセリフを発していました。弟の拳を受けたときに彼の最期を悟ったのかなって思ったら切なくてめちゃめちゃ泣けてしまった(涙)。
ラオウはトキが自分の命を削ってまで兄を留めようとしていたことを悟り、哀しみの拳を地面に打ち立てます。どんなに恐怖で人を支配しようとする人間になってしまったとしても、ラオウは最後の最後まで弟トキへの愛情を捨てることはなかったんですよね(涙)。出来ればこんな形で再会してほしくなかったなぁと思ったら哀しくて仕方なかったです…。

ラオウが立ち去った後、トキはケンシロウに最後の力を振り絞って「哀しみを怒りに変えて生きるんだ」と伝え、この世を去っていきました(涙)。和樹くんの演じるキャラが亡くなっていく作品は多く見てきたけど、トキはそのなかでも特に切なく美しかった…。
大切な人をまた失って号泣する大貫ケンシロウも哀しくて泣けました(涙)。

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リハクによって逃げ出さないように鎖で縛られたジュウザのシーン。ここの反応も理生くんと伊礼くんとではかなり違ってて面白かったww。

理生くんは鎖を断ち切ろうと柱のところまで行ってギリギリと擦るリアクションするんですが、愛知公演では「冗談じゃにゃ~でぇ~~」と名古屋弁挟んできて客席を喜ばせていましたwww。大阪弁バージョンは聞いてなかったので貴重なもの見れたよw。

対する伊礼くんはアドリブの独断場に突入w。たぶん全公演違うこと言ってたんじゃないかと思います(笑)。愛知公演では、その日に平原綾香さんが大千穐楽を迎える日ということで彼女にちなんだネタを披露。「こんな時はあいつのデビュー曲・ジュピターで癒されたいよなぁ。現れてくれないかなぁ、平原綾香」って感じだったと思いますwww。
この場面、その直後に「南斗最後の将」がジュウザの前に現れるって展開になってるわけですが…、あの日は仮面の中の様子がどうだったのかめちゃめちゃ気になった(笑)。あの直後でよく役に徹してたと感心したほどww。

M18.心の翼(リプライズ)

一方のケンシロウもラオウより早く「南斗最後の将」に会うため城に向かうことになるのですが、また自分がいない間に親しくした村の人たちが滅ぼされてしまうのではないかと思ってしまいなかなか出発できない。舞台版のケンシロウって本当に情が熱くて見てると本当に涙出てくるよ…。

でも、そんな彼に村に残ると決めたバットは「村は俺たちで守るから」と力強く伝える。最初の頃はケンシロウと一緒にいるとダダをこねていたあのバットくんが、今では逞しい一人の青年に成長していた。それだけでもほんと泣ける(涙)。
さらにケンシロウが「強くなったな」と嬉しそうに告げた後、この場面の最後にバットの頭を撫でようとしたのを思い止まって胸を軽く叩いた後手を合わせるんですよね。ケンシロウが初めてバットを一人の男と認めた瞬間でもあって、毎回ここで私はウルウルしまくってました(泣)。

だけど本当はバットはケンシロウと別れたくない気持ちが強くて、彼の姿が見えなくなった後に涙を見せないようにゴーグルで目を覆いながら思わず追いかけようとしちゃうんだよねぇ…。そんな彼をリンやマミヤたち村の人たちが励ましてて、めちゃめちゃ泣けました。

M18A.拳王の進軍

その頃ラオウ軍も南斗の城へ向かっているんですが、ここは歌ではなくダンスのみという面白いシーンになってました。とにかくカッコいいの一言でした。特に植原くんのシンはダンスのキレが本当に素晴らしくて毎回惚れ惚れしてしまった。

そしてジュウザとラオウの戦いへ。最初は防具を身に着けていたらしいジュウザなんですが…、どこが”防具”になっていたのか分からないような軽装っぷりでビックリww。
最初は善戦したジュウザもラオウの圧倒的な力の前では歯が立たなかったわけですが、もしもしっかりとした防具を身に着けて戦っていたらもう少しいいところまで行けたんじゃないかとすら思ってしまいました(汗)。

最後は半裸状態でラオウに挑戦し、結局は致命的な攻撃を受けて倒れてしまうジュウザ。ラオウの腕を捻り潰そうとするシーンでのワイヤーアクションはなかなか見応えがあったと思います。「南斗の将」の名前を最後の最後まで言わずラオウをおちょくって事切れたのはいかにもジュウザらしい。
ラオウはそんな彼の戦いっぷりを尊重して「丁重に葬れ」と部下に命令する。ここが彼の素敵なところなんですよね。

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M19.ただ愛のために

シンはラオウに「南斗最後の将」の正体がユリアであることを明かす場面。ここはたぶん、原作を読んでないとちょっと驚きすぎちゃうかもしれないw。
だって、どうやってあんな高い塔から飛び降りて命が助かったっていうのかって疑問が拭えない(汗)。下に柔らかいものがあったとしても命はギリギリ助かるかもしれないけどまともな体ではいられないと思うぞ!?トウたちは、どうやって彼女を保護したんだろうか。呪文とか!??ってことは、飛び降りるっていうの予想してたということか??ここはもう、原作知らない私は?だらけwww。

でも、シンがユリアへの愛を歌うこのナンバーはドラマチックでとてもよかったです。壮絶な彼女の覚悟を悟った時に、シンはユリアへの愛の形が変わったのかなと思ったな。あの時やっと彼は本当の愛に一歩近づいたのかもしれない。

その頃、ケンシロウも「南斗最後の将」の正体がユリアであることを知るのですが、ジュウザが止めているという話を聞いた時に彼のことを語る場面はちょっと唐突だったかなと思いました。この作品の中で直接ケンシロウとジュウザが関わってる場面なかったですからね(ジュウザは冒頭で北斗神拳伝承者を見守ってただけだし)。
ジュウザはユリアのことを愛していながらも異母兄妹だと知って絶望して諦めた経緯があるらしい。このあたりのドラマは、時間の関係で描くのは難しかったのかもしれません。ちなみに、舞台では北斗3兄弟ということになってましたが、原作ではもう一人「ジャギ」というキャラがいて4兄弟なのだそう。

M20.この愛が砕けようと

ユリアの傍に就いていたトウは、「ラオウの孤独を救ってほしい」と彼女に懇願します。幼い頃からラオウにずっと思いを寄せていたトウ…。だけど、ラオウの気持ちは自分ではなくユリアに傾いているのをずっと感じ続けてきたんですよね。自らの気持ちに蓋をしてラオウの想いに応えてほしいと訴えるトウが切なくて哀しい…。
でもそれに対してユリアは「私が彼の想いに応えてもラオウは救えない」とハッキリ告げる。この時の平原ユリア、なんだか聖母のように神々しく見えた。セリフの語り方がホントすごく良かったんですよね、アーヤ。

そして、ユリアはケンシロウを想い、トウはラオウを想いながら歌います。自らの命をかけてでも愛する人の心を救いたいと歌う二人の姿はとても感動的でした。ワイルドホーンは本当にきれいな女性デュエット曲を書きますよねぇ。ちょっと「ジキル&ハイド」のルーシーとエマの場面を思い出してしまった。

そして城に到着したラオウの前に「南斗最後の将」の鎧を被って現れるトウ。ラオウはトウの愛の告白を受けても「俺はそんなものいらない」と全く相手にしようとしない。ユリアはケンシロウにしか気持ちが向いていないと訴えても「たとえそうだとしても、最後にユリアが自分の横にいればいい」とまるで戦利品のような口ぶりでしかユリアを語れないラオウ…。彼は「愛」という感情を理解できないままここまで戦い続けているからなぁ…。だけど、トウにとってこれほどショックなこともない。
「あなたの心に少しでも私の存在が残れば」と告げ自らの命を絶ったトウ。それが彼女のラオウの愛し方だったというのはあまりにも哀しすぎた(涙)。

ラオウは彼女の死の意味を全く理解できないようでしたが、シンは命がけのトウの愛ゆえの行動に大きく心揺さぶられたような表情をしていたのがとても印象的でした。彼はここでまた一つ「愛」について学んだのかもしれませんね。
ユリアの愛を競う相手はラオウではなくケンシロウであるとはっきり悟ったシン。愛を理解しようとしないラオウのことが許せなかった彼は戦いを挑むことになります。

しかし、シンの実力ではラオウにほとんど歯が立たない。でも彼は瀕死の状態になりながらも執念でラオウの足に食らいつき戦いを続けようとする。何がシンをそこまでさせるのか、愛の意味が理解できないラオウには全く分からなかった…。

そのとき、ようやくケンシロウが到着。立ち上がることも難しい状態となったシンを目の当たりにしたケンシロウはとどめを刺そうとするラオウの前に「彼は俺と戦いたいと言っているんだ」と立ち塞がる。この場面は本当に感動的だった…。シンがユリアを奪い去った頃とは違う、本当の愛を知った男であることを悟ったんだろうね。

最後の力を振り絞ってケンシロウに戦いを挑もうとしたシンでしたが、何もできないまま倒れてしまう。事切れたシンの拳を取って自分の頬を殴らせてやるケンシロウの優しさに心が震えました(涙)。

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M21.無想転生

これまで命を落としていった者たちを「犬死」と切り捨てるラオウに対してケンシロウは激しい怒りを覚える。「お前が踏みつけた命にもかけがえのない輝きがあったんだ!」と叫ぶケンシロウのセリフが非常に印象的で心に響きました。大貫くんの魂のこもった芝居が本当に感動的だったよ(涙)。

それにしても大貫くん、本当に歌が進化したなぁと思います。まだ「上手い」という域には達していないけれども、「メリー・ポピンズ」で見た時よりはかなり良い。それに、感情を込めた歌い方が私はものすごく好きだった。自分の体の中には無念の死を遂げた仲間たちの血潮が宿っていると歌うこのナンバーは聞いていて涙が出ました。

仲間たちの型を表現していくケンシロウに脅威を覚えていくラオウも非常に印象深かったです。トキとレイは分かってもジュウザとシンは分からなかったようで「それはなんだ!?」と動揺していたのはちょっと面白かったけどw。
そして、ついにラオウの体に震えが起こる場面。宮尾ラオウはそのことに恐怖しているようで、福井ラオウは必死に震えを拒絶しているように見えたな。ここは原作漫画でもかなり有名なシーンとのこと。

ラオウがケンシロウの規格外の力に屈してしまう場面は迫力がありました。倒れていった村人たちのパワーも吸収してたから、ケンシロウはもう最強中の最強状態だったんだよな。
ところが、そのすぐ後にラオウは偶然ユリアと再会して攫って行ってしまった。ここは正直ちょっとビックリしたぞ(汗)。戦いに負けたはずなのに次の瞬間には「俺の勝ちだーー!!」ってユリアを奪ってるんですものww。え??なんで??みたいなw。っていうか、なんでユリアそこにいたの!?これは、原作かアニメ見ないと分からない場面だったかもしれない。

城に戻ったラオウはユリアをほったらかしにして爆睡状態。それを、配下のハゲちょびんがヘラヘラしながら見ていて、ユリアにも好奇の目を向けている。去り際のあの妙な笑い方を見るに、よからぬ想像をしてたな、アイツww。っていうか、彼は何者!??突然出てきたやたら濃い~~~キャラだったのでちょっとビックリしたぞ(笑)。ここも原作かアニメ見ろってことだろうな。

ちなみにこのキャラ(ウサというらしい)を演じてたのが大迫力の青年ラオウを演じてた一色洋平君だということを終わった後に知りました(驚)!!

全く気付かなかったw!!役者ってすごい…!!

M22.氷と炎

眠り続けるラオウを見つめながら、ユリアは「この世はなぜラオウのような氷のような心の持ち主とケンシロウのように炎のような熱い心の持ち主がいるのだろうか」と歌う。これがまたものすごくドラマチックで素晴らしいナンバーだったんだよなぁ。
平原ユリアの深みのある歌声が最高だった!!ただちょっと高音部分が聴こえづらくなったのが残念だったけど…、二人の男へのユリアの切ない感情はひしひしと伝わってきました。特に「私がやらなければならないことは何か」と自問自答してる姿にはグッとくるものがあったな。

ちなみにこの場面でケンシロウはどこぞの階段で一休みしている。えーと、そこはどこですかw?大阪のトークショーの時も大貫くんが平原さんに「どこか寄り道しててなかなか来てくれない」とツッコミ入れられてタジタジになってたっけ(笑)。
っていうか、なぜ留守番してたはずのバットくんが現れてたんだろうか??ケンシロウの隣に嬉しそうに座ってる姿が見れたのは良かったんだけど、このあたりの流れが今ひとつ掴めなくてちょっと「??」となってしまった。それにしても、バットは本当にケンシロウ大好きだよね。なんか見てるこちらも嬉しくなっちゃうよ。

その頃ラオウは夢の中でリュウケンと再会している。ケンシロウの見たこともない奥義は何かと尋ねると、哀しみを背負った人間だけが会得できる「無想転生」だと語る。野望を持ちすぎたお前はそれに屈するだろうと夢の中で師匠に追い詰められていくラオウ。
本当は弟想いの優しい兄だったのに、力を求めすぎたことで愛も哀しみも分からない人間になってしまった悲劇が辛い…。

殺してほしいとまで思い詰めるような過酷な修行に取り組んでいた少年時代のラオウ。演じる一色くんの引き裂かれんばかりの悲鳴が本当に痛々しくてたまらなかった…。あれだけで彼がどれだけ苦しみの中に身を置いていたのか伝わってくるようだったよ。
そんな最中ラオウは少女ユリアと出会い、彼女の優しい手当を初めて受けていた。その当時の感触が蘇ってくるラオウ。彼はあの時、ユリアに特別な感情を抱いたんだろうな…。だけど、それが「愛情」だということに気が付かないままだった悲劇…。

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夢から醒めたラオウは、自らに哀しみの感情を取り入れるためにユリアの命を奪うことを思いついてしまう。どうしてそっち方向に行っちゃうかなぁ…って見ていてもどかしくてたまらなかったよ(汗)。彼の行動はどこまでも極端で不器用すぎる。彼女を手にかければ「哀しみ」のパワーが手に入ると信じてるんだけど、裏を返せばユリアを大切に想っているからこそ失えば「哀しみ」という感情が湧いてくることも無意識に分かってるんだよね。なぜそっちにベクトルがいかないんだ…。

ユリアは「お前の命が欲しい」とラオウから懇願されても動揺することなく静かにそれを受け入れようとする。それが自分に出来うる使命だと信じて…。ラオウの心に自分の命を差し出すことで人間らしい感情が芽生えるならと祈るような気持だったかもしれないなと思うと、ものすごく切なくて胸が痛みました(涙)。ユリアは本当に聖母みたいな存在…。

戦いに魅入られたラオウは「自分はケンシロウしか見えない」と苦しげに叫びユリアに拳を突き立てようとしましたが、振り下ろすことができなかった。そんな彼に「私に見つめられていては突きづらいでしょう」と哀しげに告げて背中を向け祈りを捧げるユリアの姿があまりにも神々しくて心が震えました…。
そしてついに「許せユリア!」の叫びと共に拳を振り下ろすラオウ。後から分かることですが、この時の彼の心境を想うとめちゃめちゃ泣けますね…。

しばらくして、ケンシロウとラオウの最終決戦の時が訪れる。そこにはいつの間にかリンちゃんの姿も。たぶん、バットくんと一緒に追いかけてきちゃったんだろうね。

いざ闘おうかというその時、ケンシロウはラオウが「無想転生」の力を得るためにユリアを手にかけて哀しみの感情を吸収したことを知ってしまう。愛するユリアと生きて再会することが叶わなかったことに激しい心の痛みを覚えるケンシロウが辛い(涙)。

M25.永訣の時

ただただ拳の勝利のみを求めるラオウ。そんな彼に怒りと悲しみの感情を爆発させながら立ち向かうケンシロウ。体に大きなダメージを受けたのは新たな力を手に入れたはずのラオウの方だった…。ずっと憧れていた存在だった兄だったのにと歌うケンシロウがめちゃめちゃ切なかったな…。

激しい拳の打ち合いは圧巻でした。vs福井ラオウの時にはまさにパワーとパワーのぶつかり合いといった感じ。vs宮尾ラオウの時はパワーの中にどこか悲しさも見え隠れしてて…。大貫ケンシロウとの打ち合いは激しいダンスをしているかのように美しく見えました。

命がけの拳の応酬がクライマックスに差し掛かった時、ケンシロウはラオウの前でを流す。もう二人の時間がそう長くないことを彼は悟ってしまったんですよね…。怒りを感じながらもやはりケンシロウはラオウを尊敬している想いも捨ててなかった。
そんなケンシロウの拳の前にラオウは敗北を喫する。この時やっとラオウは「常に最強でいなければ」という呪縛から解き放たれたのかもしれないと思った…。ケンシロウのことを「弟」と呼べたシーンは本当に胸アツで涙が出たよ(泣)。

さらに、ユリアが息を吹き返す。やっぱりラオウは愛した人を手にかけることがついにできなかったんだろうなと思うと本当に切なかった…。そして、自らの手で自らの人生を終わらせるラオウ。

「我が人生に、一片の悔いなし!!!」

原作漫画・アニメでも有名なラオウ最後の名言。福井さんも宮尾さんも、それはそれは力強く、凛々しく、神々しかった。特にステージの上に昇っていく姿はピタリと動かないまま拳を掲げていて思わず見惚れてしまうレベルでした。
でも、ここの演出はやっぱり『CATS』っぽいかもって言うのは過ったww。福井さんラオウだとなおさら想像しちゃって(まぁ、福井さんの持ち役だったマンカスは天井に昇りませんけどねw)♪の・ぼ・れ、天井へ~~♪の音楽が心の中によみがえってしまったww。

ラオウを見送ったケンシロウは、北斗神拳伝承者としてユリアと新たな旅に出ることを決意します。バットとリンに別れを告げ抱擁を交わすケンシロウの姿が泣けた(涙)。そして、追いかけたくなる気持ちをグッとこらえてケンシロウの名前を叫ぶバットやリンの姿も泣けました(涙)。このラストはホント感動的だった。
もしかしたら、このラストシーンを経てケンシロウは原作やアニメのキャラに近くなっていくのかもしれないなと思ったかも。

この舞台はいわば、ケンシロウのプロローグといった感じだったような気もします。私は口数も少なく感情が見えづらいケンシロウよりも、今回大貫くんが演じた優しくて涙もろい人間らしさが滲み出ていたケンシロウの方が好みでした。原作をリスペクトしつつ、新たな視点から描いたミュージカル『フィスト・オブ~』本当に面白かったです。

カーテンコールの様子などは次のページにて。

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