ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター ~北斗の拳~』大阪公演 2022.01.08マチネ・ソワレ

ラオウはかつてケンシロウと虎対決をして師匠から告げられたことを思い出して苦しんでいました。ラオウは自分が常に一番強いのだというプライドを持ち続けていただけに「虎はケンシロウに恐れをなしておとなしくなったのだ」と言われたことがショックで未だに引きずっていたんですよね。「最強」ということに囚われてどんどん残虐性を増していくラオウがなんだか哀しく見えてくる…。

このあと、自分の側についたシンと戦いの決意をラオウが歌うんですが…、このシーンでの歌の迫力は福井さんが本当に凄かった…というか凄まじかったです。稲妻が落ちてきそうな感じだった。宮尾さんも迫力があってズシンときたんですが、歌唱力という点ではやはり福井さんのほうが上だなぁと思うんですよね。
一時期は体調を崩されててとても心配したのですが、あれだけの圧巻の歌と芝居ができるまでに回復したんだなと安堵するとともに嬉しく思いました。

あと、後ろで舞うように踊るシン役の植原卓也くん(マチネ)・上田堪大くん(ソワレ)もとても華麗でよかった。上田くんは今回初めましてなんですが、歌がとても上手くてビックリしました。

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そして満を持してジュウザが登場。マチネの理生くんは「呼んだ?」とニヒルな笑みで登場ww。ソワレの伊礼くんは「お待たせ」とチャラいキザな雰囲気で登場ww。二人ともタイプが違うんだけど、それぞれに個性を爆発させてて非常に魅力的でした。理生くんは硬派なイケメンで、伊礼くんはソフトな遊び人みたいな感じだったかな(笑)。どちらにも女の子が殺到してしまうの納得です。

ジュウザのナンバーの時はシオタクターこと指揮者の塩田さんもノリッノリで自然と客席からは手拍子が沸き起こってました。ナンバーが終わった後も塩田さんが客席に「もっと!!」を要求してて(笑)さらに手拍子が大きくなって大いに盛り上がりました。シオタクター、久しぶりだったけど相変わらずアグレッシブな指揮者さんだなぁと(笑)。

そして、ケンシロウたちがトキからラオウとの兄弟愛のエピソードを聞くシーンがこれまためちゃめちゃ泣けました(涙)。

トキとラオウは幼い頃両親の死をきっかけに北斗神拳を学ぶために弟子入りしようとしていたのですが、非情にも師匠となるリュウケンは二人を谷底に突き落とし生き残ったほうの面倒をみようとした。シビアな世界…どころの話じゃないよ、これ!!『北斗の拳』ってこんなにも苛烈なエピソードが入っていたのかと驚愕(汗)。
熱血兄ちゃんのラオウは少し体が弱かったトキを片手一本で必死につなぎ止め、二人一緒に生き残ろうとして見事にそれを果たした。トキにはその時の優しくて逞しかった兄の姿が忘れられなかったんですよね…。

結局ラオウの心意気が師匠の気持ちを動かしてトキは弟子入りしないで面倒をみてもらえることになった。でも、ラオウのあまりにも過酷な修行姿を目撃して心揺さぶられたトキは一緒に修行させてもらうことを決意。そんな弟に兄のラオウは「もし俺が道を誤った時にはお前がその手でそれを正してほしい」と告げていた。
トキは、それがまさに”今”だと感じていたからこそ自分の命を懸けて兄を救わなければと思ったんだろうな…。優しかったあの頃の兄に戻ってもらいたかったというトキの切なる想いはこの過去のエピソードを聞くとなおさら泣けました(涙)。

そしてトキは兄のラオウと直接対決をするのですが、和樹くんトキの動きがめちゃめちゃカッコよかった!!奇麗な筋肉と美しい蹴りが最高です。それを重厚な存在で受け止める宮尾・福井両ラオウもすごい迫力だった。

しかし、自らの命を犠牲にする壮絶な戦いを挑んだトキはついに力尽きてしまう。ラオウはそんな弟の覚悟に心を打たれていて…最後のトドメも直接下すことはなかった。「お前の哀しき宿命に対する兄の恨みの一撃だ」と地面に拳を突き立てながら告げたセリフはとても心に刺さった…。最後の最後に、二人はやっと信頼し合える兄弟に戻れたんだなと思ったら切なくて涙があふれてしまいました(泣)。
ケンシロウの腕の中で兄・ラオウへの想いを歌いながら命の火を消していく和樹くんのトキがまた哀しくて哀しくてねぇ…(涙)。こういう儚くて切ないお芝居は彼は本当に素晴らしいです。

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ケンシロウはラオウを止めるためにバットやリンが預けられている村を旅立つことを決断する。最初は迷っていたケンシロウにバットが「俺はもう一人じゃないから」と寂しさをこらえてその背中を押すシーンがまためちゃめちゃ泣けました(涙)。
いつもケンシロウと離れないと言っていたあのバットが、今では自分の居場所を見つけて逞しく自立しようとしている。だけど本当はケンシロウと一緒にいたい気持ちも垣間見えてて…そのせめぎあいの芝居が蒼くん、すごく丁寧に演じてくれてたと思います。

ケンシロウが旅立つときにバットの頭をクシャっとやるのをやめて、ヒジをガツンと合わせる仕草に変えたのも非常に印象的でした。あの時ケンシロウはバットを子供ではなく一人の男として対等な存在だと受け止めたんだろうね。そんな二人の絆に心が熱くなりました。

その頃、ラオウのもとにはジュウザが勝負を挑みにやって来ていた。ラオウとジュウザの関係がこの作品では描かれていないので「久しぶりだな」というジュウザのセリフにちょっと戸惑うところはあるんですが、二人はかつてライバルだったようですね。
あと、ジュウザはユリアに想いを寄せていた過去があるのですが、ユリアが異母妹である事実を知ってショックで出奔してしまったらしい(汗)。それであんな女たらしみたいな生活を送るようになったわけか。でも、再びラオウとの戦いに彼を導いたのは、やっぱり愛する人の存在だったというのがなんとも切ない話です。

ジュウザは最初は互角に戦っていましたが、鎧を付けずに生身の体でラオウに立ち向かっていったのが驚きでした。どう見ても分が悪くて見ていて心臓に悪いというか(汗)。でもそれがジュウザらしくもあって…。最後はなんだかプロレスのような戦いになっててもうハラハラしまくり(汗)。肉体同士の本気のぶつかり合いは非常にスリリングで刺激的だった。これを毎公演役者さんはやってるのかと思うと、本当に頭が下がります。

最後はラオウが片腕でジュウザを持ち上げて(ワイヤーアクション、ここは上手く生きてた)秘孔を突き勝利。ラオウの腕力、おそるべし!!!でも、最後の最後まで「南斗の将」の名前を告げずに「クソ馬鹿野郎」とだけ吐き捨てて事切れるところはジュウザの最後の意地だろうね。
ここでラオウは彼の勇敢さに敬意を示し「丁重に葬ってやれ」と命令する。全力で戦った相手にきちんと礼を以て尽くすところがラオウの魅力だと思います。多くの人が彼に惹かれる理由も分かる気がしました。

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ラオウの前に立ち塞がろうとしている「南斗の将」とされている人物は、死んだと思われていたユリアでした。シンがユリアとの過去を語りそれが明らかになるのですが…、あんな高いところから飛び降りて、ユリアはどうやって助かったのかビックリしてしまった(汗)。相当な高さがありましたから、魔法のじゅうたんでも飛んでこない限り助かるのは不可能じゃないかと(汗汗)。このあたりも、漫画原作だから許される展開ってことかな。

シンはユリアを助けたのがリハク、フドウ、トウだったことをラオウに伝える。彼らはラオウにユリアを奪われないため匿っていたのだという。フドウはケンシロウとラオウと対峙するため一緒に行動していて、トウはラオウに想いを寄せているキャラでした。
シンはユリアを本当に好きだったので、彼女が助かるならとその手に委ねたのだなと思いました。

ユリアとトウはそれぞれ想う人を心に抱きながら歌う。ユリアはケンシロウを、トウはラオウを。May’nさんのユリアは凛として力強い印象で、平原綾香さんのユリアは柔らかく包み込むような温かみを感じる印象がありました。トウは二役目として演じる白羽さん。ラオウへの叶わぬ想いを歌う姿が切なかったなぁ。
でも、私は未だに白羽さんを見ると「アンネローゼ様」って思っちゃう(舞台銀英伝で演じられていた白羽さんのアンネローゼ、最高だったんですよね)。

トウは自分の想いが決してラオウに届かないことを悟ると彼の目の前でその命を散らす。そうするしかできなかったトウが哀しい…。ラオウはユリアへの執着を見せるけれど、それは愛情ではなくて征服心なんだよなぁ。
そのことを悟ったシンは、この時初めて愛するユリアを巡って対決するのに相応しい人物はケンシロウだと認めるのです。最後の最後にシンがすごく良い奴になってビックリしたよ!でも、彼が本当の愛を学んだことはすごくよかったなと思った。

シンはユリアを想う気持ちを爆発させながらラオウと戦いますが、実力の差は歴然。ボコボコにやられてしまうのですが、執念でラオウにくらいついていこうとする。その必死な姿がなんとも切なくて泣けた…。

そこに現れたケンシロウは「シンは俺と戦いたいと言っているんだ」と告げてラオウの前に立ちはだかりシンと向き合います。もう戦う力が残っていないシンと、あくまでも対等に向き合おうとしたケンシロウの優しさがこれまためちゃめちゃ泣けた(涙)。死の瞬間までユリアへの愛ゆえにケンシロウと戦おうとしたシンの想い…ただただ切ない。
事切れた彼の手を握り、自分の頬を殴らせたケンシロウにまた泣けた(涙)。どこまで情が深くて優しい男なんだ、ケンシロウよーーーー!!!大貫くんの人間的なキャラもそこに投影されてるようですごく感動しました。

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ケンシロウは失われた大切な人々の魂を受け止めながらラオウとの戦いに挑みます。
この場面、宮尾ラオウと大貫ケンシロウのアクション対決はものすごく見応えがありました。二人ともダンサーですから、動きが本当に狂いなくて力強さの中に美しさがあるんですよね。ムキムキの体で本気で戦うダンサー出身の二人の姿を生で観れるなんて、本当に贅沢な瞬間だなと一人感動してしまった。

ケンシロウは初めて恐怖に震えたラオウに勝負では打ち勝っていましたが、ユリアを奪い去られてしまいます。えーーー!!そこでそんなどんでん返しが(汗)とビックリしましたw。普通ならそこで勝負ついて終焉に向かうところですが、まだまだ展開が転がっていく『北斗の拳』恐るべしっ!

戦いに疲労したラオウが椅子に座り死んだように眠っている姿は孤独そのもので…、ユリアがそこにずっと付き添いたくなる気持ちがすごく理解できました。ラオウは未だに愛が何かを知らないわけで、自分の力を持て余すあまり破壊行動に出るしかなくなってたのかもしれない。人間の情を理解できないまま突き進んできたラオウはとても哀しい人物だなとこのシーンを見て胸が痛くなりました。

夢の中でラオウは幼い日のユリアと再会する。自分の元から去っていくユリアを必死に求めるも、それが自分のなかでどういう感情から叫んでいるのか分かっていない様子なのが哀しい…。彼は無意識の中でユリアのことを本気で愛したんだと思うんだよなぁ。だけど、それを実感できないままここまで来てしまって、孤独の中で戦ってて。色々と切ない。

目が覚めたラオウは、ケンシロウが哀しみを糧に力をつけたのだと悟り自分も哀しみを体感しそれと同じ力を身に付けようと思いつく。しかも、その手段をユリアの死だと考えてしまうところがあまりにも無謀すぎる。
ただケンシロウに勝利するために執念を燃やし続けるラオウの姿が、ユリアにはとても哀しく映ったに違いない。もしも自分の命ひとつで彼が救われるのならと覚悟を決めたのだろうか…。原作ではこの時ユリアは余命いくばくもない状況になっていたそうですね。色んな想いを抱えて彼女はラオウに自らの命を差し出そうとしていたんだと思うと泣けてきます…。

そして、ケンシロウとラオウは最後の戦いの場に赴く。しかしケンシロウはユリアがラオウによって命を奪われてしまったと知り大きなショックと哀しみに襲われてしまった。ラオウはユリアの死によって「究極奥義」を手に入れたと自信満々の表情で語っていましたが、そこに哀しみの感情は見えてこない。ただ強くなるという野望のみに捕らわれている。

そんなラオウにケンシロウは最後の戦いを挑む。勝利したのは、人間の情を知るケンシロウだった。ラオウは破れましたが、この戦いのなかで今まで見えなかったものを見る事が出来たんじゃないかなと思いました。だからこそ、あの有名な最後の一言「我が人生に一片の悔いなし」というセリフが心に響いたんじゃないかと…。
ラオウが昇天していくシーンはワイヤーで吊るされて天井に消えていくといった演出。客席からは大きな拍手が沸き起こっていました。最初に観た時はミュージカル「CATS」のクライマックスシーンをちょっと思い出したかもw。

ユリアは結局ラオウから仮死状態にされていただけで無事にケンシロウと再会。ラオウはやっぱり愛したユリアを手にかけることはできなかったんだろうなと思ったらグッときてしまった。あまりにも不器用すぎる愛情だった…。

多くの哀しみを胸に、ユリアと旅を続けるため立ち去るケンシロウの後ろ姿を見送るバットやリンたち。追いかけていきたい気持ちをグッとこらえるバットの姿がとても切なくて泣けるラストシーンでした。

後述(トークショーレポあり)

大阪公演は3公演しか行われませんでしたが、私が観劇した2公演を含めてすべてがほぼ満席だったそうで、カンパニーの皆さんには大入り袋が配られたそうです。

終わった後も役者の皆さんがSNSで「大阪で見た3階席まで満席の光景は忘れられない」と感動を伝えてくれていて、その場に私も居られたことをとても嬉しく思いました。和樹くんは「(コロナで)また舞台に立てないかもという不安を吹き飛ばしてくれた」って書いてくれてたっけ。それがすごく泣けました。

1月に入ってから急速に感染状況が悪化してきましたからね…。カンパニーの皆さん、本当に不安との戦いも壮絶なんだろうなと思います。そんな中でも、大阪で公演できてよかったと思ってもらえたことは、観劇した私たちファンもとても嬉しいことでした。

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ちなみに、8日ソワレにはトークショーがありました。参加者は司会が指揮者の塩田さん、そして、大貫くん平原さんでした。今回は殆どメモが取れなかったので一つの記事でのレポは割愛しますが(すみません 汗)、記憶に残ってるエピソードをいくつか紹介します。

塩田さん、自己紹介の時に「山崎〇〇です」って言うのは相変わらずだなって思いましたがww(たしか山崎さんは今落語家さんになって違う名前になっていたような)、そこに新たに「千鳥の〇〇」が加わってましたね(笑)。あぁ、そういえばちょっと似てるかもって思っちゃったw。

平原さんがユリアのドレス姿だったので座るのにかなり苦労してて、それを必死に助けてた大貫くんがめちゃめちゃ可愛かったです(笑)。

マチソワを演じた感想を聞かれた大貫くんが「2回公演が限界」とクタクタになりながら語ってました。ソワレの戦いのシーンの時には「俺、本当によくやってるな」と思っちゃうらしいですw。それくらいハードだってことですよね。っていうか、あの激しい動きをマチソワで短い休憩時間を挟んで演じてることがむしろ超人だと私は思いましたよ!!

トークの内容は音楽的な内容が多かったかな。ワイルドホーンはすごい音楽家なのにとてもフランクな人って語ってたの印象的でした。でもその音楽はとても緻密で微妙に音が半音上がったり下がったりするので歌うのがとても難しいのだそう。

大貫くんによれば、最初はアクションをした後に歌うという段取りだったそうなのですが、稽古のなかで試しに歌いながらアクションしたらできてしまったらしくw。演出の石丸さんも「それでいこう!」ということになりアクションしながら歌うというスタイルになったのだとか。このエピソードを聞いてた平原さんが横でボソっと「自分で自分の首絞めたのね」って突っ込んでたのは笑いましたww。

大貫くんの印象を聞かれた平原さんが「とても不思議な人で、何も考えていないんじゃないかと思うこともある」ってコメントしたら、大貫くんが立ち上がって「考えてるよぉ~~!!」と思わず素が出ちゃったように子供っぽく抗議してたのがめちゃめちゃ可愛くて萌えました(笑)。平原さんとしては、大貫くんが演じてるときはもう無意識に役に入りこんじゃってるということを言いたかったらしいw。

ケンシロウの役作りについては、原作をリスペクトしながらも「生きた生身のケンシロウ」を演じることを心掛けたという大貫くん。そんな彼が作り上げたのが、あの情が深くて優しくて温かく、ちょっと涙もろいケンシロウだったんだなと思いました。原作を知っている人がそれをどう思ったのかは定かではありませんが、私は大貫くんが演じたケンシロウ、めちゃめちゃ愛しくて大好きでしたよ。

三人とも、大阪公演はたったの3公演しかできなくて本当に残念と言ってくれていました。そういう言葉が聞けただけでも私は嬉しかった。地方公演ってどうしても上演期間短くなっちゃうんですよね。でもそこにカンパニーの皆さんが熱い命を吹き込んで熱演してくれてて、それはもう本当に感謝です。

今回覚えてるエピソードはこんな感じかな。少ないレポでスミマセン(汗)。

最後の上演地は愛知県です。社会情勢はとても厳しくなってきていますが、初日と前楽を観に遠征してきます。ここまで来たら最後まで無事に駆け抜けることができますように!

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