ミュージカル『ヘアスプレー 』博多公演 2022.10.17ソワレ/大阪公演 10.25ソワレ

主なキャスト別感想

トレイシー:渡辺直美さん

2020年の公演が中止になり、直美ちゃんがNYへ旅立ってしまったとき…もう『ヘアスプレー』の上演はできないかもしれないなと思っていました。なので、この公演のためにまた日本に帰ってきてくれたことが本当に嬉しかったです。日本版の『ヘアスプレー』は直美ちゃんなしには成立しない。

芸人さんとして大きな体ながらも洋楽に乗せて激しく踊る姿を見てきたので、トレイシー役は彼女にピッタリだなと思っていました。でも、見た目やダンスだけじゃなくて…彼女の生き様みたいなものも役柄とものすごくかぶるなと思ったんですよね。SNSなどを通じて世界中に多くのファンを獲得しただけでなく実際にNYで勝負するために日本を旅立った直美ちゃん。
芸人として出てきたばかりの頃は体型のことばかりが注目されてあまり良い売り出され方をしていなかった。それだけに、NY挑戦の話を聞いたときには、彼女はいろんな壁を乗り越えてついに世界へ飛び出すまでになったんだなと胸が熱くなったものです。その”打ち破り前進していく姿”はまさにトレイシーの生き方と重なると思ったんですよね。

戸惑いがちなリンクにグイグイ迫る時は”芸人さん”としての顔を見せて客席に笑いをもたらしていたし、『正しいことをする』という確固たる意志でアメリカにはびこる差別感情と闘うと主張するシーンでは熱を帯びた真っ直ぐな視線がとても印象的だった。表情のお芝居がどこをとってもすごく魅力的です。

ダンスは特に腰の動きがすごい!!テレビで何度かみたことあるけど、実際に生で見てビックリしました。大きな体を目一杯ゆらしながらキレキレな動きをするので迫力もあります。
さらに素晴らしいなと思ったのが歌。口パクで歌い踊ってる姿はテレビで見たことあったけど、実際の生の歌声もとても良かった。めちゃめちゃ上手いというわけではないけれど、素直でまっすぐと客席まで響いてくる歌声はトレイシーのキャラとも重なります。聴き取りやすいしめちゃめちゃ楽しそうに歌ってる姿が何よりも本当に魅力的だった。

少し年齢が離れているはずの三浦くんと並んでも全然違和感なかったし、あの若々しさも武器。もし次に再演する機会が訪れたときもぜひ直美ちゃんにトレイシーを演じてほしいな。っていうか、彼女しかいないと思う。また会いたい!

メイベル:エリアンナさん

メイベルは出番的には多くないんだけど、登場しただけで一気に場の空気を支配してしまうあの存在感は本当にすごいと思います。
厳しい黒人社会に身を置き、その理不尽さにモヤモヤして入るんだけど「運命なのだから仕方がない」と状況を甘んじて受け入れてきたメイベル。そんな彼女がトレイシーの「肌の色なんか関係ない、今の状況をみんなで変えよう」という真っ直ぐな思いに心を動かされて行動に移す決意をする。

1幕ラストの♪Big, Blonde and Beautiful♪はメイベルがトレイシーと一緒に先頭に立ってデモ行進をするときにリードボーカルとなるナンバーですが、このときの歌いっぷりがエリアンナさん、本当に素晴らしくて!!あの歌声と存在感があれば、みんな勇気を出して行進したくなるよ!!っていう説得力がすごかったです。
更に素晴らしかったのが、2幕クライマックスで脱獄したトレイシーが「これ以上みんなを巻き込みたくない」と珍しく後ろ向きな発言をしたときの場面。このときメイベルは「一度失敗したら諦めてしまうの?」と問いかける。トレイシーのあの力強い説得があったからこそ自分たちは差別と戦う勇気が持てたと。そのセリフの力強さと温かさに思わずウルウルっときてしまう。あんな言葉を投げかけてもらったら、自分の行動は間違いじゃなかったんだってトレイシーももう一度立ち上がる勇気が出るよね。

そしてそこからの♪I Know Where I've Been♪はもう、ゴスペルというか、神の領域の魂の歌声と言うか…言葉になりません。魂が大きく揺さぶられ、涙なしには聴けませんでしたよ(涙)。号泣してしまった…!!ラストシーンは警備員からの華麗なる変身までめちゃめちゃ楽しませてくれました。

メイベル役は2020年の発表時点ではCrystal Kay さんが演じる予定でしたが、スケジュールの都合でエリアンナさんが配役となりましたが、ドンピシャで役にハマっていて本当に最高でした。

リンク:三浦宏規くん

三浦くんは2.5次元ミュージカルで主に活躍してきた俳優さんというだけあって、魅せ方が本当に上手いしとにかくカッコいい!!ちょっとナルシスト気味に「俺ってかっこいいだろう?」みたいな雰囲気でリンクが初登場するときの表情や立ち姿が美しく、ピタッと決まるポージングが最高に素敵。そこにちょっと童顔的な可愛さも加わってるのでなおさら目で追ってしまう。
私は映画版の『ヘアスプレー』しか見たことがなかったのですが、そのときにリンクを演じていたザック・エフロンの雰囲気と三浦くんがめちゃめちゃ重なって見えてビックリしました。

それからダンスのキレっキレっぷりがとにかく素晴らしい!!舞台『千と千尋の神隠し』の配信を見たとき三浦くんがハクを演じていたのですが、あのとき3回転ジャンプしながら立ち去る姿がすごく美しくて驚いたんですよね(今回はカテコで華麗に披露してた)。今回実際に生で三浦くんのダンスを目の当たりにしましたが、本当にすごかった。

お芝居もとても表情豊かで面白かった。リンクは歌もダンスも完ぺきにこなす超美男子だけど、実は単純思考の持ち主でもあってトレイシーにサラリと受け流されてしまう場面も出てくる。だけどそれがまためちゃめちゃ可愛くて萌えてしまったww。特にトレイシーが「いちばん大事なものがなにか分かった」と告げるシーンで「俺のことだよね」って真面目な顔でグイグイっと彼女の前に進み出ちゃうのが面白かったなぁ(トレイシーが言いたかったのはリンクが、っていうのとは別のことだったわけでw)。
ナルシストなんだけど、自分が大切だと思った人はたとえ相手がどんな立場であっても受け入れられる優しさを持っているリンク。三浦くんはそんなリンクをとても魅力的に演じてくれました。

コーニー・コリンズ:上口耕平くん

いやぁ~~~、ほんっとにカッコ良かった!!!上口君のダンスや歌が素晴らしいのはこれまで見てきて知っていたけど、今回のコー二ー役はその中でもベストワンと呼べるほど素晴らしかったです。

ショーに登場してからすぐのあのキレッキレのダンスパフォーマンス!あれはめちゃめちゃ目を惹くっ!しかもそれをとても涼しい顔をしてニヒルに決めてるところが本当に凄いと思う。あまりにカッコ良すぎて上口君が登場するシーンは私ほぼ目が釘付け状態になってました(笑)。
それから、ヴェルマとの息詰まるやり取りも見応えありまくり!!彼女の意見が納得いかなくて自分の思う通りにやりたいと火花を飛ばすわけですが、そのシーンの時の去り際の「フッ」と浮かべた余裕の笑みのなんとクールなことよっ!!あれは撃ち抜かれた(笑)。

こんなにコー二ーが上口君にドンピシャでハマるとは予想していなかったので、本当に嬉しい驚きでした。再演があった時にはまた是非会いたいです。

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シーウィード:平間壮一くん ペニー:清水くるみさん

平間君のシーウィードはとても親しみやすくどんな子とも友達になれちゃうという気さくさがとても魅力的でした。トレイシーが悪気なくつい”ブラックデー”と口走ってしまう時も「オイオイ」と少し複雑な表情にはなるものの、すぐに彼女に悪意がないことを察して受け入れてくれる。黒人社会の中で窮屈な想いをたくさんしてきているはずなのに、明るく前向きに生きている力強い姿がとても爽やかだった。

そんな彼が見た目や立場を全く気にせず素直でまっすぐ自分に想いを向けてくれるペニーに恋をする。2幕後半の♪Without Love♪でのラブラブっぷりが本当に可愛くて素敵でちょっとジーンときちゃいました。

そんな清水ペニー、なんって可愛いのでしょうかっ!!ぽわわ~~んとしてて喋り方もちょっとのんびり屋の天然さん。他の人とはちょっと違う角度からのセリフの言い方がとにかくめちゃめちゃキュート。自分の中に壁を作らず、信頼できると思った友達や大好きな人には素直に甘えることができる素敵な女の子をとても魅力的に演じてくれました。

ヴェルマ:瀬奈じゅんさんアンバー:田村芽実さん

瀬奈さんの悪女役を見るのはこれまであまりなかったのでとても新鮮でした。それはそれは高飛車で漫画に出てくるような傲慢っぷりを発揮してるわけですが(笑)なんだか憎めないキャラだったんですよね。けっこう辛辣な発言してるんだけど、台詞の端々にコメディっぽい雰囲気を含ませていて、なおかつ楽しそうに思い切り演じられてるのがかえってすごい好印象。どことなく、タイムボカンシリーズのドロンジョ様みたいな感じにも思えなくなかったかもw。♪ボルチモア蟹♪の怒りの歌いっぷりなんか迫力満点で最高でした!!

田村アンバーもこれまた漫画から出てきたかのような自分大好きっ子でww。何をするにも自分が一番最高って信じて突き進んでるのがムカつくを通り越してむしろ可愛くて楽しかったです。トレイシーやシーウィードたち黒人に対して母親のヴェルマと同じく見下した態度を取ってるんだけど、セリフ回しや行動がコケティッシュでやっぱり憎めないんだよね~。何とか自分を売り込もうとテレビカメラの前でアピールしようと上口コー二ーに何度も跳ね返されてもグイグイ行こうとする姿はもはやたくましさすら感じました(笑)。

ヴェルマとアンバーは物語の終盤で手痛いしっぺ返しを食らうことになりますが、舞台版はこの二人にもちゃんと救いが用意されてるのがすごく良かった。「できるぅ~~~♪」とオロオロした表情で前に出て訳も分からないまま踊っちゃう親子二人の姿になんだか癒された私ですw。(皆がハッピーになってるクライマックスでアンバーはショックのあまり頭に氷乗せて放心状態になってるんですが、それがとてつもなく可愛かったww)。

ウィルバー:石川禅さんエドナ:山口祐一郎さん

コロナ禍前に日本版の上演決定が発表された時に一番楽しみにしていたのが、禅さんのウィルバーと祐一郎さんのエドナのコンビ。これまで何度も舞台で共演しているお二人ですが、まさか夫婦役として見れる日がこようとはw!!もうそれだけでテンション爆上がりでしたよ。始まる前からベストコンビの予感がビンビンしてましたからね。

禅さんは本当に巧い役者さんですよねぇ。冷酷な役の時にはトコトン相手を追い詰めるような恐ろしさを表現されますが、優しくて温かい人物の役の時には包み込まれるような安心感を与える雰囲気で見ていると心が癒されてしまうお芝居で魅せてくれる。
今回のウィルバーは妻のエドナや娘のトレイシーを心から愛するお父さん役。もうこれが本当に可愛らしくて優しくて…。どんな苦境に立たされても親身になってトコトン相手と向き合ってくれるウィルバー。禅さんのあったかくて優しい雰囲気がこのキャラにめちゃめちゃハマってました。あんなお父さん、ダンナさんがいたらどんな辛い事でも耐えていけるよねっていう安心感が半端なかったです。

祐一郎さんのエドナはもう、なんといいますか、この方にしかない世界観が広がりまくっておりましたw。セリフ回しや動きなど、祐一郎さんの独自のワールドがエドナにめちゃめちゃ投影されていて思わず吹き出してしまうこと多数(笑)。エドナ役は男性が演じることと決められているそうですが、歴代の演じてこられた俳優さんたちの中でも祐一郎エドナはかなり独特の雰囲気を醸し出しているんじゃないかなと思いました。なので、たぶん、好き嫌いは分かれるかもしれない。私は祐一郎さん独特のあの不思議ワールドがエドナに生かされまくってるのを楽しんで見れたのでよかったです。

ただ、顔と衣装のバランスがちょっとちぐはぐだったかも!?パンフレットでは祐一郎エドナの顔にもお肉の特殊メイクがあったように見えるのですが、実際の舞台上だとお化粧のみのメイクでお顔のラインはけっこうシュッとしてる。なので、首から下の衣装のデカさがなんだか浮いて見えちゃってアンバランスだなぁと思わなくもなかったw。祐一郎さん、もともとはスリムだし上背も大きいので頑張って横に広げるビジュアルにしたかったんだろうけど、顔のラインをあのまま残すんだったらもう少し細目の体格として魅せるのもアリだったかもなぁと思わなくはなかったかな。

独特の不思議ワールドを醸し出してる祐一郎エドナを何でも温かく受け止めてくれる懐の大きな禅ウィルバーが包み込んでいるかのような”夫婦関係”でほっこり楽しませてもらいました。

スプリッツァー役の川口竜也さんはメイン以外にも多くの場面でアンサンブルとして登場。実に贅沢な配役だなと思ってしまう。特に冒頭♪グッドモーニング・ボルチモア♪の登場シーンは博多で見たときビックリしましたwww。あれを川口さんが担当するとはっっ!!なかなかあの姿はお目にかかれませんぜ(笑)。それから、トレイシーの学校の頭の硬い校長先生とか、2幕の不思議な片言と巻き舌で喋る看守さんとか、後舞台を横切るおじいさんも川口さんだったかな?とにかくほんと、いろんな姿で楽しませてくださっています。

でも一番ノリノリで気合入っていたのは本役でもあるスプレー会社の社長・スプリッツァーさん。コーニーとヴェルマに胸叩かれまくって「なぜかわからないけどココがすごく痛い…」とつぶやきながら袖に去っていく姿が可愛くて萌えちゃったよw。それからラストシーンの「素晴らしい〜〜!!」と駆け込んでくるシーンのテンションの高さも最高!!ラストは♪You Can't Stop the Beat♪をノリノリで踊りまくり。あまりダンスする川口さんをこれまで見たことがなかったのでなんかちょっと癒やされちゃいました。

ちなみに、アンサンブルの中にキャスティングされているMAOTOくんは川口さんの息子さんです。

今回親子共演が実現してお二人共SNSでとても喜んでいらっしゃいました。舞台の上で一緒にパフォーマンスできるなんて素晴らしい!

プルーディー役の可知寛子さん、実力十分なのにこれまで大きな作品では役名のないアンサンブルでのご出演が多かっただけに、こうしてサブメインとしてお名前が出たことが本当に嬉しかったです。プルーディーは教育ママで娘のペニーを品行方正に育てようと必死になってるキャラ。もう絵に書いたようなスパルタっぷりがめちゃめちゃ面白かったw。でも、ラストシーンでは驚くような変化があって、それがまたちょっと涙を誘うわけです。漫画チックに、でも娘を思う気持ちは誰にも負けてないプルーディーの演じっぷりが可知さん、素晴らしかった。

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後述

カーテンコールもすごく華やかで楽しかったです!!♪You Can’t~♪のナンバーを歌い踊っている皆さんを見てたら、見ているこちらのテンションもぐわーーーっと上がって一緒にシェイクしたくなっちゃったくらい(笑)。終わり良ければ総て良し的なハッピーな雰囲気がこの作品、本当に最高です。カンパニーの皆さんの笑顔満開の表情見てたらなんか盛り上がりつつもジワーーっと泣けてきちゃったよ。

カテコ3回目くらいの時には客席もスタンディングになって大盛り上がり(←もっと早く立ってもいいんじゃないかと思うくらいだったけど、率先して立つ勇気がなかった自分 苦笑)。直美ちゃんと三浦くんが劇中のトレイシーとリンクのようにラブラブなリアクションしながら袖に入って行くのがめちゃめちゃ可愛かった。っていうか、本当に直美ちゃん、若いよ!!

カラフルで派手な衣装に負けない歌と芝居が満載のミュージカル『ヘアスプレー』。日本ならではの色も出せたんじゃないかなと思います(差別エピソードとかも)。
今回の公演が終わった後はおそらくまた直美ちゃんはNYへ戻ると思うのですが、再演が決まった時にはまた何周りも成長した姿で戻ってきてほしいです。

※追記

大阪公演後半が公演関係者さんの体調不良のために1週間の中止となってしまったそうです…。東京公演の時には開幕が遅れたことがあったものの、博多、大阪とここまで順調に来ていただけに皆さんの無念さはいかばかりかと思います(涙)。まだまだ世の中安心して観劇できる状況ではないのだなと哀しい気持ちになってしまった…。とにかく、体調を崩された方が一日も早く元気に回復されますように。残りの大阪公演と次の愛知公演が無事に上演できることを心から祈っています。

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