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ミュージカル『キンキーブーツ』大阪公演ネタバレ感想 2025年5月29日ソワレ・30日マチネ

ミュージカル『キンキーブーツ』を観に大阪まで遠征してきました。

3演目が上演されたのが約3年前、あの頃はコロナ禍真っただ中で大変な時期だったことを思い出します。今こうして普通に観劇できることが本当にありがたい。

本来ならば関東住まいになったことで東京公演を観劇…したかったところなのですが、悉く前売りが落選しまくりまして(苦笑)。ここが最後の砦としていたところにも弾かれ心が折れw、東京公演は諦めてしまったんですよね。改めて、演劇の中心地で人気作品のチケットを確保することの難しさを思い知りました(汗)。
でも…大好きな『キンキーブーツ』、しかも新しいキャスティングと聞けば…やっぱり観劇を諦めることはできず。過去2回通って気心知れた大阪のオリックス劇場公演の前売りチャレンジに切り替え。そこでようやく拾っていただきました。希望していたWキャスト制覇の日程を取ることができて本当に良かったです。

物販コーナーは開演45分前から購入可能ですが、私が到着した30分前にはすでにコスチュームキューピーは売り切れ状態。毎公演めちゃめちゃ人気ありますよね〜。

通販でも扱っているのですが、前回購入したので今回は潔く諦めましたw。

代わりにBall&Chain(ボールアンドチェーン)とコラボしたエコバッグを購入!最初は買うつもり無かったのですが、直前に友達とこのバッグについて話題がのぼり…語っているうちに欲しくなってしまいまして(笑)。かなりお値段張ったんですが思い切って入手。すると、その直後に「売り切れましたー」という声が響いてきてびっくり!どうやら見に行った回の販売分は私が最後だったようです。まさかそこまで人気とは思わずビックリ(汗)。大切に活用させていただきます。

オリックス劇場に来るのは前回の『キンキーブーツ』再演ぶり。よく考えてみたら、キンキーはオリックスでしか見ていないw。2019年のときには3階席(S席価格なのに3階だったのは衝撃的だった 汗)、2022年のときは1階席最後方近く(こちらもS席価格 汗)。つまるところ、かなり遠くの席からしか見たことがなくて(笑)。それがどういうわけか、今回は両日ともにびっくりするほどの前方列(サイドだったけど)!!!
ということで、キンキー3演目にしてついに裸眼でキャストの表情が見える位置から観劇することができました。

以下、ネタバレ含んだ感想です。

これまでの『キンキーブーツ』感想

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2025年5月29日ソワレ・30日マチネ公演 in オリックス劇場(大阪・本町)

概要(原作・上演時間など)とあらすじ

作品についての簡単な概要

原作は2005年に公開された同名のイギリス映画。実際にイギリスであった実話エピソードが元になっています。2012年にミュージカル化され、オフブロードウェイを経て2013年にブロードウェイに進出。その年のトニー賞でミュージカル作品賞を含む6部門を制覇しました。楽曲を担当したのはグラミー賞受賞者のシンディー・ローパー

日本初演は2016年。小池徹平くんと三浦春馬くんのダブル主演として上演し大きな話題を呼び、2019年にもほぼ同じメンバーで再演されました。2020年に春馬くんが突然この世に別れを告げてしまった後公演が危ぶまれた時期がありましたが、2022年にその遺志を継ぐ形で城田優くんがローラに配役され3演目が上演。

2025年、主要キャストがほぼ入れ替えとなり、新生『キンキー・ブーツ』が始動。4月の東京公演から6月の大阪公演まで4度目の再演が実現しました。

初演:アメリカ(2013年・ブロードウェイ)/ 日本初演:2016年(東京)
制作:AMUSE CREATIVE STUDIO
演出・振り付け:ジェリー・ミッチェル
作詞・作曲:シンディ・ローパー
脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン
日本版演出協力 / 上演台本:岸谷五朗

2025年4月27日初日(東京・シアターオーブ) / 2025年6月8日千穐楽(大阪・オリックス劇場)

あらすじ<公式HPより引用>

イギリスの田舎町ノーサンプトンの老舗の靴工場「プライス&サン」の次期社長として産まれたチャーリー・プライス(東啓介/有澤樟太郎)。彼は父親の意向に反してフィアンセのニコラ(熊谷彩春)とともにロンドンで生活する道を選ぶが、その矢先父親が急死、工場を継ぐことになってしまう。
工場を継いだチャーリーは、実は経営難に陥って倒産寸前であることを知り、幼い頃から知っている従業員たちを解雇しなければならず、途方に暮れる。従業員のひとり、ローレン(田村芽実/清水くるみ)に倒産を待つだけでなく、新しい市場を開発するべきだとハッパをかけられたチャーリーは、ロンドンで出会ったドラァグクイーンのローラ(甲斐翔真/松下優也)にヒントを得て、危険でセクシーなドラァグクイーンのためのブーツ“キンキーブーツ”をつくる決意をする。チャーリーはローラを靴工場の専属デザイナーに迎え、ふたりは試作を重ねる。

上演時間

休憩を含み約150分(2時間30分)

内訳は、1幕75分(1時間15分)休憩202幕55分、になります。平日ソワレの終演時間は20時30分頃、マチネの終演時間はだいたい15時40分前後。

キャスト

  • チャーリー・プライス:有澤樟太郎(29日)・東 啓介(30日)
  • ローラ / サイモン:甲斐翔真(29日)・松下優也(30日)
  • ローレン:田村芽実(29日)・清水くるみ(30日)
  • ニコラ:熊谷彩春
  • ドン:大山真志
  • ジョージ:ひのあらた
  • パット:飯野めぐみ
  • トリッシュ:多岐川装子
  • ハリー:中谷優心
  • エンジェルス:穴沢裕介、佐久間雄生、シュート・チェン、大音智海、工藤広夢、轟 晃遙
  • エンジェルス/スウィング:本田大河、長澤仙明
  • サイモンシニア:藤浦功一
  • ミスタープライス:石川 剛
  • リチャード・ベイリー:聖司朗
  • マージ:舩山智香子
  • マギー:伊藤かの子
  • ジェンマ・ルイーズ:熊澤沙穂
  • フーチ:竹廣隼人
  • マット:趙 京來
  • ヤングチャーリー:星駿成(29)村山董絃(30)
  • ヤングローラ:・見﨑歩誠(29)髙橋維束(30)
  • スウィング:上条駿加藤文華
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全体感想

キンキーブーツは開演直前に大山くんドンによる客席とのコール&レスポンス的なパフォーマンスがあります。電子機器を使ったらだめよっていう最終確認なのですが、大山くんは非常に客席を乗せるのが上手くて(笑)最初は戸惑い気味だった空気が一気にグワーーっと大阪らしく盛り上がりました。

まず全体に関して…。これまでの中で一番近い席から観劇したことも大きかったと思うのですが、おそらく、キンキー観劇史上過去一泣いた!!!特に2幕。キンキーってこんなに刺さる作品だったのかと。後半からラストまでは込み上げ方が半端なくて嗚咽しそうになったほど。自分でもビックリです。

この作品は全体的に華やかでノリノリな音楽に血湧き肉躍るような楽しさが魅力ですが、その中で歌われている内容やセリフはとても深い。いまの世の中「多用性」を理解しようという流れが生まれてきましたが、まだまだそれが浸透しているとは言い難い。
その時代を生きる私達にこの作品は”あるがままの姿を生きること、あるがままの相手を受け入れること”について改めて問いかけてくる。人と人とが真剣に正面から向かい合うことの難しさと尊さの物語が私の中にこれでもかというほど染みて心が震えて仕方なかったです。それもこれも、カンパニーの皆さんの熱演があってこそ!!

以下特に印象に残ったシーンについて挙げてみます。

THE MOST BEAUTIFUL THING IN THE WORLD~この世で一番素敵なもの~

最初にチャーリーとローラの少年時代エピソードが登場する時点でウルッときてしまう。二人は全く違う世界で生きていましたが、共通していたのは「靴」という存在が重要なポジションとして彼らの中に息づいていたこと。「靴」をクローズアップした冒頭演出は観劇3回目にして初めてすごく意識して見たかもしれない。

チャーリーは父親を愛しているけれど靴屋を継ぐことに関しては子供の頃から消極的。対してローラは女性への憧れの対象として真っ赤なヒールの靴に自らの自由を託し夢を抱きますが、父親から強く反対されてしまう。二人とも父への愛情と”ありのままの自分”との狭間でずっとモヤモヤしたものを抱えてきてるんですよね。
♪THE MOST~♪のナンバーは心をグッと鷲掴みにされるナンバー。「一番素敵なもの」とは彼らにとって何なのか。その問いかけがこのポップでじんわり心に広がる美しい旋律に乗せてみる者の心に語り掛けてきます。

青年になったチャーリーにはニコラという都会的思想が強い恋人がいる。父の靴屋を継ぎたくない気持ちが高まっていた彼にとって、ニコラの存在はとても眩しく思えたに違いない。でも一方で、彼女の輝きに疲れてしまっている自分もいたんじゃないかなと。
有澤くんチャーリーはテンション高いニコラの後ろで笑顔を作ることすら辛そうな表情をしていたのが印象深い。東くんチャーリーはニコラに合わせなければと笑顔を浮かべているんだけどどこか無理してるように見える感じでしたね。東くんのほうがニコラに執着したい気持ちが強いのかなと思った。

TAKE WHAT YOU GOT ~やるしかないさ~

チャーリーは父親が急逝してしまったことで、自らの意志に反して靴屋を継がなければならなくなる。この時点ではやる気がほぼゼロなので挨拶も超適当w。特に最後力業で「グッドラック」と従業員に絞り出した言葉の言い方が有澤くんも東くんもめっちゃ面白かった(笑)。

いざ会社に身を投じてみれば、経営状況は彼が思っていた以上に最悪で。質の良い紳士靴は製造しまくってるのに時代に合わないからか季節ごとに返品が増えていく有様。チャーリーはその返品の山を父がディスカウントショップに売ってなんとかやりくりしていた事実を知って愕然としてしまいます。まさかこんな綱渡り経営やってたなんて、そりゃショック受けてしまうよねぇ。それでも会社潰すわけにはいかないから、チャーリーはディスカウントショップをやってる親友のハリーに頼るしかありませんでした。そんな状況下で歌われる♪TAKE WHAT ~♪は勇気が湧いてくるナンバー。どんな苦境でも「やるしかない」と歌うハリーとチャーリーに胸が熱くなりました。

LAND OF LOLA ~ローラの世界~

ここのシーンは『キンキーブーツ』のになると言っても過言ではないほど惹きこまれます!!なんといっても、ローラの登場シーンがめちゃめちゃカッコイイのですっ!!!出てきた瞬間の客席のテンションも一気に爆上がりしていくのを肌で感じたし、大阪オリックス劇場はまさにローラとエンジェルスたちのライブハウス状態になるほど熱い手拍子や歓声が凄かった。

ローラとエンジェルスたちの息の合ったパフォーマンスは最高of最高!!!みんな動きがキレキレだし、ローラは神々しいくらいの輝きを放っているし、エンジェルスちゃんたちは美しくも可愛らしいし・・・もう目がいくつあっても足りません(笑)。

ショーが終わった後ローラは楽屋でチャーリーに助っ人に入ろうとしてくれたことへの感謝をユーモラスに伝えます(ショーの前にローラが助けてくれたチャーリーを靴で殴って気絶させちゃった顛末が面白いw)。ドラァグクイーンは世間から冷たい目で見られる存在でしたが、チャーリーは偏見なく自分の元へ来て助けてくれた。チャーリー自身はこの時点では彼女たちにどのような印象を抱いているのか曖昧な感じでしたが(ローラのリアクションにビビる素振りもあるしね)、ローラ自身はたとえ本音がそうでも”迷わず助けに来てきてくれた”チャーリーの行動が嬉しかったんじゃないかなと思いました。
甲斐くんのローラは時折ドスの効いた男声で脅すような喋り方になるのが面白かったし、優也くんのローラは艶めかしく時折低めのイケメン声で翻弄するって感じでドキドキさせられるし、二人とも個性があって見応え十分でしたね。それに対して有澤チャーリーは割とローラの存在を受け入れてるのかなと感じるお芝居をしてて、東チャーリーはあまり深く関わりたくないかも的な気持ちがダダ洩れてるお芝居してたように見えました。こちらも個性が違っていて面白かったです。

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経営状態の悪化に伴いチャーリーは従業員を解雇して工場を閉鎖するという苦渋の決断をくだしますが、誰もそれに従おうとしない。特にドンは幼馴染であるチャーリーを圧倒した武勇伝を持ち出して来て脅すありさまww。板挟み状態で追い詰められるチャーリーは見ているこちらも苦しくてもどかしい気持ちにさせられてしまいます。そんな彼にヒントとなる言葉をさりげなく提案したのがローレン。そこから再びチャーリーの時間が動き出します。

最初は会社経営を継ぐことに超消極的だったチャーリーでしたが、関わっていくうちに何とか従業員たちの生活を守りつつ会社も維持したいという気持ちが芽生えてくる。しかしそれと引き換えに、ニコラとの心の距離がじわじわと広がっていってしまう。ニコラとしてはチャーリーと一緒に華やかな都会の生活を満喫したいという気持ちが強いのですが、チャーリーは今まで否定してきた伝統ある実家の事業を守ることに傾倒し煌びやかな都会暮らしへの憧れが薄れていく。どちらが悪いわけではない、ただ価値観が違ってしまっただけ。ニコラの気持ちも分からなくないのでなおさら切なかったな。
このシーン、チャーリーはけっこう精神的に追い詰められてるわけですが・・・有澤くんは全く余裕がなさそうにしていたのに対し東くんはニコラの話を聞く余裕を見せていましたね。この違いも面白かった。

STEP ONE ~第一歩~/SEX IS IN THE HEEL ~SEXはヒールにある~

これまでにない新しい靴づくりをすることで会社を救う道筋ができるかもしれないと希望を抱いたチャーリーが歌う♪STEP ONE♪。黙々と生地を切っているときは自問自答していた彼が切り終わった”型”を見つめていくうちに「やるしかないんだ」という前向きな気持ちへと変化していくまでの盛り上がり方が本当に秀逸。迷いを吹っ切ったように工場の皆に「これで新しい道を切り開こう!」と声高高に歌うチャーリーの姿はとてもキラキラしていてカッコいいし、見ていてなんだか勇気をもらえるような気持にさせられます。

そしてついに新しい”ブーツ”が完成。そのタイミングで派手派手ローラが出来栄えを確認しにチャーリーの工場へやってくるのですが…、「これは小豆色よ!!」とバッサリ(笑)。個人的に小豆色を「おばあちゃんの湯たんぽの色よ!」とツッコミ入れてたローラの台詞がツボwww。
ローラのブーツへの熱いこだわりを込めた演説に他の従業員たちは魅了されていき、チャーリーは困惑(ローラに接近された時のひのあらたさん演じるジョージの反応が笑えますww)。それにしてもローラたちの”女性”オーラは半端なく華やかで美しい。ドンは途中まで女性だって信じ込んでバカにしてたくらいだからね。

ローラがエンジェルスたちと自分たちにとっての”ハイヒールブーツ”について熱く歌とダンスで表現するシーンは圧巻です!!!ここ、劇場でも最高潮に盛り上がってた。踊りはキレキレでカッコいいし、2人のエンジェルたちの個人パフォーマンスは鳥肌が立つほどすごい。あのブーツを履いたままジャンプやらバク転って…どれだけ運動能力凄いんだよ!?みたいな。ローラ役の甲斐くんや優也くんも彼らを率いるだけのオーラたっぷりなダンスを魅せてくれたし、もうあんなの見たらチャーリーの小豆色のブーツがいかにダサいかって思い知らされちゃうよなぁw。

このナンバーには日本ではちょっと公にしづらいワードがフィーチャーされていますが、実際には”性”をクローズアップしたというよりも”ドラァグクイーンにとっての命ともいえる存在”としての意味合いのほうが強いと思います。そのニュアンスを日本語訳で出すのはけっこう難しいですけどね。

ローラたちの激熱なプレゼンに心動かされたチャーリーは、本格的にドラァグクイーンたちも喜ぶようなぶっ飛んだブーツ(キンキーブーツ)を作ることで会社を立て直そうと決断する。そのためのパートナーとしてローラに”デザイナーとして残ってくれないか”と依頼しました。
でも彼女はその申し出に消極的。ローラは堂々と生きているように見えますが、心の中では自分たちの存在が社会から疎外されていることを痛いほど自覚していたんですよね。だから自分とは違う世界で生きているチャーリーたちと一緒に働く選択肢に踏み込むことに躊躇ってしまう。ローラの繊細な心の内が見えるような気がしてとても切ないシーンでもあります。

それでも、チャーリーが去った後に彼女は「私がデザイナーに!?」と喜びを爆発させる。自分の管轄外の世界へ出ることへの躊躇いよりも、チャーリーが自分の存在を認めビジネスパートナーとして誘ってくれたことへの喜びが勝ったんだろうなと。ここのローラのテンションの上げっぷりのお芝居は面白いんだけどw、彼の勇気に心が熱くなります。

THE HISTORY OF WRONG GUYS ~間違いだらけの恋の歴史~

新しいブーツで会社を盛り立てることを決めたチャーリーは、そのヒントをくれ励ましてくれたローレンに素直に感謝の気持ちを伝えます。最初はチャーリーを「やる気のない跡継ぎの坊ちゃん」としか見ていなかったローレンでしたが、新しくやる気に満ちてキラキラした瞳の彼と改めて向かい合った時に「ヤバイ!!」とこれまでになかった感情が発動(笑)。恋に落ちる瞬間ってこういう些細な出来事が多いのかもしれないなぁと。
過去の自分の恋愛を振り返りながら「チャーリーに恋しちゃダメ」とストップ掛けようとするんだけど、そう思えば思うほど沼にハマって行って結局「いっちゃう!?」と突き進む方向へ舵を切っちゃうローレンはこの上なく面白く可愛らしい。でも結局チャーリーの恋人ニコラを見て現実を想い知らされちゃうんだけどね。

この場面はひたすらローレンが可愛い。今までソニンさんでずっと見てきましたが、芽実ちゃんも清水さんもそれぞれの個性を生かした可愛さで魅了してくれてとても楽しいシーンになっていました。

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NOT MY FATHER’S SON ~息子じゃないの~

デザイナーとして招かれたローラはその初日、ドラァグクイーンではなく化粧を落とし地味な服装に身を纏ったもう一人の自分(男性)の姿で出勤。ところがそんな彼をドンは侮辱し嘲り笑ってしまう。居たたまれなくなったローラはトイレに駆け込んで出てこれなくなってしまった。
このシーンは非常に切ない。これまで好奇の目に晒されて生きてきたローラは様々な誹謗中傷の声を聞いてきたはずです。それでも希望を抱き勇気を奮って新しい場所で再スタートを切る決断をした。普通の恰好で現れたのも、彼なりの覚悟の表れだったと思うんですよね(自分を着飾っていた派手な鎧を脱いできたし)。でも現実は彼が期待した温かな世界ではなかった。心のどこかで覚悟はしていただろうけど、実際に直面してしまったら…傷ついちゃうよなぁと。

ドンはこの作品の中では非常に保守的というか、偏見が強い人物として描かれています。なので見てるこちらとしてはムカつく対象として捉えることも多いんだけど…、でも現実社会においてはドンと同じ考えの人のほうが多数派を占めるのかもしれないなとも。そう思うと何とも複雑です。

チャーリーは慌ててローラの元に駆けつけ寄り添おうとする。ローラは新しい世界へと誘ってくれたチャーリーに自らの過去を静かに語りだす。
ローラは父親のことは尊敬していたし彼なりに愛していたけれど、真っ赤なシューズを履いて女性への憧れを強く持っていた自分を受け入れてもらえなかった。その辛さを心に秘めながら「男らしくあれ」とする父の言われるがままボクサーへの道を進むも、”女性になりたい”といった心までは抑えきれず結果的にその期待を裏切ってしまったことが彼女の心にトラウマとして疼いていた。この話を聞いたチャーリーは、いつしか”靴を愛し事業を継いでほしい”という父の期待に応えることができなかった自分自身と重ねていく。

最初はローラの話を「そうだったんだ」と普通に聞いていたチャーリーが、「父の期待に応えられなかった」と自分を責め苦しんでいるローラの気持ちを察してから自らの父の想いと重ね合わせ感情移入していくくだりはめちゃめちゃグッときて涙が溢れました。二人は全く違う世界で生きてきたけれど、親への複雑な感情を抱いていたという共通点があったんですよね。
お互いの気持ちが共鳴した瞬間に涙をこぼしたローラとチャーリーがハグし合う姿はとても尊く美しく見えました。ローラが自らの本名「サイモン」を名乗るシーンは泣いた…。

その数日後、ニコラが嬉々として「プライス&サン」の売却先が見つかったとやって来る。彼女は恋人チャーリーが靴屋経営から解放されて自分との未来を描いてくれると信じている。でもこの時すでにチャーリーは会社を立て直したいという気持ちの方が遥かに勝っていた。このすれ違いが何とも哀しい…。
ニコラは一見するとちょっと対立軸にある人間として捉えられなくもないんだけど、彼女はちゃんとチャーリーを愛していたし自分と同じ方向を見てくれる人だと信じてただけ。ただ環境が変わったことで、お互いの価値観がいつの間にか大きく変わってしまった。

もう一つ切ないのが、チャーリーが父親が会社を売却に出していた事実を知ってしまった事。「父さんは僕を信じてくれていなかったんだ」と絶望してしまうチャーリーですが、本当はそうじゃないと思うんですよね。父親はチャーリーが会社を継ぐことに消極的だったことを知っていましたから、息子を解放する意味で自分の代で会社を終わらせようとしていたんじゃないかなと。でもその真意は直接聞くことができないわけで…。チャーリーが父を誤解してしまったのが何とも哀しかった。

EVERYBODY SAY YEAH ~みんなでYEAH!~

チャーリーがモヤモヤした気持ちになった直後、工場ではローラが考案した通りの”真っ赤なキンキーブーツ”が誕生する。それを目の当たりにした彼は感動のあまり「YEAH…」とだけ声を発する。皆が「??」と反応する中、チャーリーの「YEAH!!!」はどんどん熱を帯びていき、やがて工場中のみんな(ドンを除き)が「EVERYBODY SAY YEAH!!!!」と大盛り上がり!!!

このシーンはもう、文句なしに最高オブ最高すぎる!!!

『キンキー~』の中でも私が特に大好きなナンバー。この瞬間を生で体感したくてチケット取りに必死になると言っても過言ではない(笑)。劇場全体の一体感が半端ないんですよ、本当に。歓喜に沸く「YEAH!!!!」の大合唱、そしてベルトコンベアを使ったアグレッシブな演出、すべてが華やかで明るい希望に満ち溢れている。これ、客席からもコール&レスポンスみたいに「YEAH!!!」と一緒に叫びたくなるんですよね~。

あまりにもこの1幕ラストが最高すぎて、いつの間にか涙がボロボロ零れてきた。人は心から感動してテンションが上がった時は無条件で感情が昂り涙が出るんだなと思った。

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WHAT A WOMAN WANTS ~女が欲しいもの~/IN THIS CORNER ~赤コーナーVS.青コーナー~

「プライス&サン」で新しいブーツが誕生してからチャーリーは次第にピリピリしていく。

そんななか、ドンによるローラたちドラァグクイーンへの偏見はますますひどくなっていく。彼としては、自分たちのテリトリーを軽蔑してるローラたちに占領されてしまっているのが気に食わなかったというところでしょう。

ローラがドンに向かって堂々と「私は女性を崇拝しているの。だから彼女たちも私を愛してくれる」と宣言するシーンはとても印象深い。ドラァグクイーンの原点ともいえるセリフだなぁと思いました。
それでも彼女を理解せずに噛みつかんばかりの勢いでローラを侮辱し続けるドン。そんな彼にローラは工場の女性陣を味方につけて「女が本当に欲しいもの」をプレゼンする。♪WHAT A WOMAN WANTS♪はタンゴ調のナンバーですが、何とも艶っぽいんですよねぇ。ローラが女性たち全員とかわるがわるタンゴを踊り「男とはこういうものであるべき」と主張し続けるドンたちを挑発するシーンはゾクゾクきます。ムチを手に彼女たちをリードするローラもセクスィーでカッコいい。

♪WHAT A WOMAN~♪は原語だとけっこう艶っぽさ満載なんだとかw。欧米はアジアに比べると性について大らかな印象(日本も江戸中期はそれに近い雰囲気だったらしいけど)があるのでそういうナンバーになってるのかなとも。個人的に耳に残るのは、パットやトリッシュをはじめ女性陣がローラとタンゴを踊りながら「男!男!男!」と連呼する場面。あれ、初めて聞いた時はめっちゃ奇妙に聞こえたんですよね(笑)。
このナンバーは社会的にまだ地位が低い立場だった女性たちの男性に対する”逆襲”みたいな意味合いが強いのかなというように今ではとらえています。

そしてドンはローラに挑発されるまま「男らしさ」を証明するためボクシングの試合を申し込む。その話を聞いたチャーリーが「血を見ることになるぞ!?」と大慌てになるのがちょっと面白い。ローレンはローラがボコボコにされると勘違いしちゃうんだけど、チャーリーはローラがプロボクサーとしての経歴を持ってることを知ってるのでドンのことを心配してるんですよね(笑)。

ボクシングシーンではドラァグクイーンの仲間たちが華やかに盛り上げてくれるのですが、もう皆さん、めっちゃナイスバディすぎて目がいくつあっても足らない(笑)。特にラウンドガール担当のエンジェルさん(私が見た時はシュート・チェンさんと佐久間雄生くん)の圧倒的な”美”には本当に驚かされましたよ。ここは『キンキー~』のなかでもかなりテンション上がる場面。

最初はボクサーとしての経験があるローラが優勢でドンは歯が立たない。でも第2ラウンドの最後、ローラは突然試合を放棄したように棒立ちとなりドンのアッパーをまともに食らって倒れてしまう。ドンはローラに勝利したことに喜びを感じつつも戸惑いを隠すことができない。トロフィー持って「ウォー!!」となりながらも目が泳いでオロオロしてる大山ドンはなんだか可愛かった。
試合後、困惑しながら「なぜわざと試合に負けたのか」とローラに尋ねるドンに対し「あなたが工場で恥をかかないようにするため」と答える。自らのプライドよりもドンの名誉を守るためだったと告げるローラの言葉は確実に彼の心に何かを投げかけたように見えます。ここでローラが茶目っ気たっぷりに「試合に負けることなんてブレックファーストの前よ」と告げたのに対しドンが「??…朝飯前だろ!?」とツッコミ入れるシーンが好き。あの時二人の距離感は一気に縮まったよね。

そしてローラはドンに試合前に交わしたドンにしてほしいことを紙に書いて手渡す。そこには「あるがままの他人を受け入れて」とあった。その真意が掴めないドンでしたが、ローラは言葉の意味を告げずにその場を立ち去る。試合に勝ったことに疑問を抱いたドンはきっとその意味を自分で見出してくれるはずと彼女は信じて賭けたんじゃないかなって思えて、ここも胸アツでした。

一方チャーリーは開発した新しいブーツを売り込むためミラノのファッションショーへ出品することを提案しそれに向けて必死に準備をしていましたが、資金繰りが上手くいかず次第にイライラしてしまう。しかも、完成したブーツは彼の思った通りの出来栄えではない。やり直しを命じても従業員たちはそれに協力的ではなくてますます苛立ちが増幅してしまう悪循環。
チャーリーは会社を立て直すことで今は亡き父に自分の存在を証明したいといった気持ちが強くなりすぎていたんじゃないかな…。会社を売却に出していたということがチャーリーの中でかなり大きな心の傷になっているような気がして痛々しかった。

チャーリーにはさらに悲劇が。恋人のニコラが自分に内緒でミラノのファッションショーの資金のために二人の家を担保に入れていたことを知り大激怒。ニコラはチャーリーが靴会社から解放されることを期待しているのに、彼はそれと真逆の方向へと突き進んでいる。そして二人の心の距離はもう修復不可能なところまで行ってしまった…。お互いの価値観が決定的にすれ違ったことを確信してしまったチャーリーとニコラの別れの場面はとても切ないです。
このシーン、とんちゃんチャーリーはニコラと別れた後めちゃめちゃショックで凹んだ感じに演じていたけど、有澤くんチャーリーはこれも仕方ないといった諦めのような心境も垣間見えるお芝居に見えました。二人の反応の違いが個性的で印象深かったですね。

CHARLIE’S SAD SOLILOQUY ~チャーリーの独白~/THE SOUL OF A MAN ~真の男~

ニコラと別れてしまい心の余裕を失ってしまったチャーリー。そこへローラがやって来て、ミラノのランウェイでは女性のモデルではなく自分たちドラァグクイーンが歩けば経費削減になるしインパクトも大きいからいいんじゃないかと提案してくる。思い立ったら吉日のローラはチャーリーに相談もなく勝手にモデルたちをキャンセルする連絡つけちゃってるところがなんともw。これが結果的に火に油状態になってしまうんだよなぁ・・・。
チャーリーはローラの提案を真っ向から否定。チャーリーはローラの存在を受け入れてきたように見えましたが、実は心の中で異端として捉えているところも大きかった。父親への複雑な想いを共有して心は通い合ったけれど、本当の意味でローラやエンジェルスたちドラァグクイーンの存在を自分の中で消化しきれていないんですよね。だから、会社の命運を左右すると思い込んでるミラノファッションショーで彼らが表舞台に立つことをどうしても認めることができなかった。

この二人の対立シーンは本当に色々と考えさせられます。分かり合えたつもりでいても、実際のところ全く違う世界の他人を自分の中でしっかりと受け止めることは難しいことだったりする。そういうことって、今の時代にもあり得ることだったりするわけで…。
様々な出来事が重なり苛立ちの気持ちを抑えきれなかったチャーリーは、ローラに侮辱的な言葉を投げつけ彼女を大きく傷つけてしまった。彼の中にもドンのような感情があったという事かな…。

工場の皆にも去られ、ローラも離れていってしまいついに孤独となったチャーリーが歌う♪THE SOUL OF A MAN♪は彼の心の痛みがこれでもかというほど伝わってくるナンバー。
たった一人になった時に、改めて自分の罪と向かい合い葛藤しながら「どうすればよかったんだろう」と絶叫のように歌うチャーリーは人間味に溢れていて本当に切ない。歌っていく中で、改めてローラという存在の大きさ、魅力に気づかされていくチャーリー。自らの過ちで大切な人を遠ざけてしまった事への後悔。色んな感情が波のように押し寄せてきてめちゃめちゃ感情移入してしまいました(涙)。

そんな彼の横に寄り添うのはローレン。彼女だけはチャーリーの苦しみを理解し励ましてくれる。そういうことが自然とできる女の子なんだよね、彼女は。その優しさに触れた時、チャーリーはローレンに恋心を抱いたんじゃないかなと思いました。
さらに彼女に促され工場へ戻ると、想定外の光景が広がっていた。そのように仕向けてくれたのは、ローラから授けられた言葉の意味をずっと探し求めていたドンだったというのがめちゃめちゃ胸アツ展開なのです(涙)。彼はチャーリーが工場の皆を守るため、会社を存続させるために必死に闘っているチャーリーのことを受け入れたんですよね。

この出来事はチャーリーを生まれ変わらせるきっかけになったかもしれない。ミラノへ出発する直前、チャーリーは”サイモン”への嘘偽りない謝罪、そして別れを告白する留電メッセージを入れます。このシーンは涙無しには見れません(泣)。

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 HOLD ME IN YOUR HEART ~心で抱きしめて~

チャーリーたちがミラノへ出発する頃、ローラは老人ホームの慰労に訪れソロバラードを熱唱します。彼女の衣装は真っ白なドレス…、それはかつてチャーリーに父との過去を告白した時に語っていたボクシングの試合前に着用したものを暗示してのものではないかなと。ローラの父はその姿を見て衝撃を受け彼を勘当してしまいましたが、今それと同じ衣装をあえて切る意味とは…。

それは、ローラが訪れた老人ホームにすっかり年老いた父がいることを知っていたからだと思う。

父が見つめる前で、本当の私を愛してほしいというありったけの想いを熱唱するローラの姿はあまりにも神々しくて涙が止まりません…。気持ちの行き違いはあったけれど、やっぱりローラにとっては父親は愛する存在なんだなと。その真心は伝わるかどうかわからない。でも今伝えなければ後悔すると思ってのあの熱唱だったんじゃないだろうか。
すっかり体が弱ってしまった父に最後の別れをそっと告げたローラでしたが、その直後に小さな”奇跡”が起こる。きっと、彼女の父も同じように苦しんでいたんだろうなと思えるワンシーンで…思わず号泣してしまった(涙)。

ローラはこの時自分の中にある暗い部分を払しょくし、チャーリーの留守番電話の言葉も受け止めることができたのではないでしょうか。信じたい存在、愛すべき存在へ歩みを進めていくローラの姿はとても美しい。

RAISE YOU UP/JUST BE ~上げたげる/ただなりなさい~

ミラノに到着したもののモデルの存在がなく仕方なく自分で一人何役もこなす決断をするチャーリー。この時彼は最初幕で自分の下半身を隠して対応しているんですが、とんちゃんも有澤くんもめっちゃデカくて面白かったw(それまでチャーリーを演じてきた徹平くんは小柄だったからね)。

ガチガチに緊張しながらランウェイに立つ奇妙な格好のチャーリーはまともに歩くことさえできない。最後に倒れちゃったときのリアクション、有澤くんは「もうダメだ」と凹むタイプでしたが、とんちゃんは「センキューー!」と力業で〆てたの笑ったwww。

そんなピンチな状況に堂々と現れたローラ、そして仲間のエンジェルス。色とりどり様々なデザインを履いた彼女たちのパフォーマンスは鳥肌がくるほどカッコいい。そしてローラは倒れたチャーリーに手を差し伸べて「あなたは私の前に現れて勇気を与えてくれた人」と歌う。彼女はチャーリーから侮辱的な言葉を投げられてしまったけれど、彼は信頼できる人だという気持ちをどうしても捨てることができなかったのではないかな。
そしてチャーリーもローラと出会ったおかげで前に進む力を得ることができたと歌う。色々すれ違いはあったけれど、二人の心は以前よりももっと強く固い絆で結ばれていたように見えた。

そこに工場の仲間たちやニコラもキンキーブーツを着用して登場、ローラやエンジェルスたちの輪の中へ飛び込み一緒にノリノリのダンスと歌で盛り上げます。あの20㎝ヒールを履きながらのダンスは圧巻の一言です!!立つだけでも大変そうなのに、皆さんの体幹の良さに脱帽。

『キンキーブーツ』ゲネプロ「Raise You Up/~上げたげる~、Just Be/ただなりなさい」#shorts
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『キンキーブーツ』ゲネプロ「Raise You Up/~上げたげる~、Just Be/ただなりなさい」#shorts
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立場や考え方の違い、それぞれのプライドからぶつかり合い傷つけあうこともあったけれど、最後は全員”キンキーブーツ”を履いて共に最高の時間を分かち合う。そして最高潮に盛り上がった時、チャーリーとローラ(サイモン)は共にある光景を見つめていた。そして、「私たちは同じだったのだ」と抱き合う。このシーンは今思い出しても涙が止まりません。

あるがままの自分を受け入れ、あるがままの他人を受け入れる。

簡単なようで難しい、でも勇気をもって一歩前に進み出た世界はなんと愛に溢れた尊い世界なのだろう。争いの絶えない世の中だからこそ、『キンキーブーツ』のラストシーンは激しく心揺さぶられるものがありました。めちゃめちゃハッピーでノリノリなカッコいいナンバーなんだけど、熱い手拍子を打ち鳴らしながらも色々なことが頭の中をよぎって大号泣しまくってしまった。

見る前はこんなにもボロ泣きしまくるなんて思いもよらなかったよ!!

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主なキャスト感想

チャーリー・プライス:有澤樟太郎くん/東 啓介くん

有澤くんは見た目が王子様みたいにキラキラしていてスマートで本当にかっこいい。そんな彼が父の死をきっかけに様々な困難にぶち当たるわけで。有澤チャーリーはニコラとの新しい生活にあまり乗り気なように見えなかった(赤いヒールを見て喜ぶ恋人の後ろで苦笑い状態だったし)ので、会社建て直しへ注力していくまでの流れがとても自然。
様々な問題と向き合う中で、葛藤しながらも亡き父との複雑な想いを抱え懸命に前を向こうと頑張る姿はとても健気で見ていてめちゃめちゃ感情移入しました。

ローラとの関係は、最初はぎこちなかったけれども次第に”彼女”の魅力を受け入れていく感じ。父親への想いを打ち明け合うシーンでは涙を浮かべて通じ会えたことの喜びからローラを抱きしめてて…その姿にめちゃめちゃぐっと来ました。
圧巻だったのは♪THE SOUL OF A MAN♪。あのナンバーに有澤チャーリーのすべての感情がこれでもかというほどぶち込まれていて…涙が止まらなかった!!あんなすごい感情表現する役者さんだったのか!!そこからはそれまで以上にグイグイと惹き込まれていって、最後まで目が離せず彼のお芝居に泣きました。本当に素晴らしかったです。次の『ジャージーボーイズ』公演で会えるのが楽しみ。

東くん、とんちゃんのチャーリーは有澤くんよりも少し落ち着いていた印象。ニコラとの恋人時代もちょっと戸惑いは見せていたものの彼女を大らかな愛で見つめていたし、父親に対しても犯行はしてもそんなにガッといくタイプではないように見えました。最初の頃はあまり自分の意志をもたず流れに身を任せてる感じだったかな。

ローラと出会ってからは”彼女”に翻弄されつつ次第に工場を立て直すため情熱を注ぐようになっていくチャーリー。とんちゃんはそこに至るまでの流れがゆるやかで少しずつ熱量が上がっていく過程をとても繊細に演じていたと思います。実直な真面目さがあり、ローラの過去もじわじわと自分の中で消化して受け止めていく。父親の話をしながら涙をこぼした彼女を抱きしめた時の包容力は見ているこちらもめちゃめちゃ泣けたな。
2幕に入ってチャーリーは余裕を失っていきますが、有澤くんと比べると他の人の言葉を聞くだけの余裕が見えた印象が強い。ニコラに別れを告げられた時は超ショックを受けていて泣きそうになってて、そこからどんどん精神的に崩壊していくお芝居が切なかった。

面白かったのはラストのショー直前のとんちゃんチャーリー。上半身だけ客席に見せるシーンがあるんだけど、顔の位置がめちゃめちゃ高いところにあってビックリしました(笑)。

ローラ / サイモン:甲斐翔真くん/松下優也くん

甲斐くんのローラは絶対可愛いだろうなと想像していましたが、予想を超えた愛らしさで一気に惹き込まれました。♪LAND OF LOLA♪で登場したときの迫力もすごかった!!彼は背もかなり高いのでなおさらなのですが、さらにボクサー経験があるという設定の通り筋肉が半端なく美しい。こんなにすごい肉体美だったのかと釘付けになっちゃったよ。
肉体のみならず、キャラクターも実に魅力的。たくましい美しさと相まって、口を開けばキュートでお茶目が大渋滞(笑)。あれはまさに”ローラ”そのもの。とにかく一言一言が可愛くて仕方ない。たまに飛び出す”男”っぽい言動は周囲がビビるのも納得の迫力があるんだけどw、すぐに愛らしい笑顔で誤魔化してくるので見てるこちらも惹き込まれてしまう。更にダンスもキレててかっこいい!甲斐くんがあんなシャキシャキ踊ってるの初めて見たかも。

そんなおちゃめで愛らしさ爆発な甲斐くんローラだったけれど、それと同時にとても純粋で繊細な側面も存分に見せてくれました。チャーリーに父親との過去を語るときのシーンも印象深い。ありのままの自分を受け入れようとしてくれなかった父へのどうにもならない気持ちを語ってるときの表情やお芝居は抱きしめてあげたくなるくらい切ない。誰にも語れなかったであろうことをチャーリーには言えたって感じだよね。それだけに二人の絆が生まれた瞬間は見てるこちらも涙。
2幕でチャーリーに罵倒されてしまったときの激しく傷ついた表情も忘れられません。怒りの中にも深い悲しみの感情が手に取るように伝わった。その気持ちを抱えたまま老人ホームで歌うHOLD ME IN YOUR HEARTのシーンも涙涙…。そこからのラストシーンも本当に素晴らしくて。有澤くんチャーリーとの相性、すごく良かったなぁと。

ちなみに、甲斐くんのちょっとハスキーな声が時折IKKOさんに聞こえたのは私だけでしょうか。途中で「どんだけ〜〜」って飛び出すのではと思ってしまった(笑)。

優也くんのローラは東京公演の頃からSNSで大絶賛されていたのでとても楽しみにしていました。で、実際に目の当たりにして…本当にびっくりした!!そこに居たのは松下優也くんじゃなくて、ローラそのもの。憑依というか…、架空の人物ではあるけど実際に実在するローラがそこに居たって思えたほどドンピシャでしたよ。今まで色々な役の優也くんを見てきたけど、ここまで衝撃受けたのは初めてかもしれない。
言葉の発し方、体の動かし方、細かい仕草の一つ一つに至るまで…ドラァグクイーンのローラそのものです。春馬くんローラとはまた違った”本物”感がありましたね。

もともと美形青年だった優也くんなので、派手な衣装とメイクで着飾っている時のインパクトや迫力がとにかくすごかったんだけど、サイモンとしてのお芝居も実に繊細。甲斐くんは”お坊ちゃま”感が溢れていてとても可愛らしかったけど、優也くんはメイクを落としても妖艶な色気みたいなものがそこはかとなく溢れてる雰囲気だった。ローラという鎧を脱ぎ捨てたサイモンのお芝居は本当にとても儚くて。♪NOT MY FATHER’S SON♪の2番を歌ってる時に流した涙は切なすぎて思わずこちらももらい泣きしちゃったよ(涙)。

あまりにもジャストフィットしてた優也くんのローラ。終わった後、素に戻れるのか心配になるレベルwですさまじかった。今後も可能な限りライフワークとして演じ続けてほしいと思います。

ローレン:田村芽実さん/清水くるみさん

芽実ちゃんのローレンは、コケティッシュで小動物のような可愛らしさがありました。彼女は本当にコメディのお芝居が魅力的ですよね。特にチャーリーと見つめ合った瞬間に恋心が発動してしまったときに歌う♪THE HISTORY OF WRONG GUYS♪は最高!!必死に恋心を否定しながらもどうしても諦めきれない気持ちのほうが勝ってしまって、その葛藤のお芝居がとにかくコミカルで微笑ましかった。なんか、前回までずっとローレンを演じてきたソニンさんをリスペクトしたお芝居にも見えたかも。ところどころ被って見える瞬間も多かった。

くるみちゃんはミュージカル『ミセン』を見て以来。あの時は生真面目な女子社員がハマっていましたが、今回はチャキチャキした明るい女の子でとても可愛らしかった。明るさの中にも相手を思いやる優しさや芯の強さも垣間見えるとても魅力的な女の子でした。チャーリーに恋心を抱いてしまった時の動揺のお芝居は芽実ちゃんとは違った味があって、等身大の女の子が右往左往しながら葛藤している姿がコミカルで面白く見応えがあったと思います。ハキハキとしっかり聴こえてくる歌声も素敵だったな。

ニコラ:熊谷彩春さん

しっかり者の都会的なかっこいい女性で、ところどころイケメンなところが素敵。チャーリーとの恋愛に関しては、どちらかというと彼女がずっとリードしていく感じなのですが、その説得力ある芝居がとにかく素晴らしかったですね。ちょっと煮え切らないところのあるチャーリーを自分の世界にグイグイ引き込んでいこうとするお芝居がなんとも男前でかっこいい。
ニコラは彼女なりにチャーリーを愛していたけれど、価値観の違いまでは埋めることができなくて後半すれ違ってしまうシーンは切なかったです。有澤チャーリーはどちらかというと最初から彼女に対して腰が引け気味なところがあったので、ニコラとは合わなかったのも仕方ないかなぁなんて私は思っちゃったんですけどね。

あと、めっちゃ歌が上手い!!!!スコーンと突き抜けるような凛としてなおイケメンな歌声にとにかく魅了されました。また違う作品でもぜひ見てみたい女優さん。

ドン:大山真志くん

大山君のドンはジャイアンのようなガキ大将感があって初演再演の頃に演じていた勝矢さんとはまた違った迫力がありました。ドスを利かせてローラに噛みつきに行くシーンとかもけっこうヤバイw。仕事もテキトーにやってる感があったりしてなかなかな問題児っぷりを発揮してたのも面白かったです。
ドンはこの作品の中では敵役のようなポジションにある役ですが、現実には彼と同じく違う価値観や世界観を持った人を拒絶してしまう人のほうが多いように思います。それだけに彼の演じたドンはとてもリアルだったなと。

印象的だったのはボクシングの試合に勝たせてもらったドンがローラと改めて語り合う中で葛藤するシーン。勝負に勝ったのになぜか心が晴れないモヤモヤ感が手に取るように伝わってくる。ドンはもしかしたらローラと接する時間が長くなるにしたがって気づかないうちに彼女の存在を受け入れつつあったんじゃないかなと思えるお芝居だった。
それを経てからのあのラストシーンへの変化。”ありのまま生きる他人”を受け入れたドンは唐突感がなくとても自然に見える。ランウェイでの大山ドンの最高の笑顔を見た時には涙が溢れました。

初演から出演し続けているジョージ役のひのあらたさんパット役の飯野めぐみさん。彼らがキンキーの舞台にいるだけでなんだかすごい安心感がある。きっとあの頃はとても辛く心を痛められたと思うんだけど、それを乗り越えてまた新たなカンパニーで躍動されているお二人を見たらなんだか自然と胸が熱くなりました。

そしてなんといってもエンジェルスを演じたキャストの皆さん、最高すぎかっ!!!!

もう目がいくつあっても足りないくらい魅力的で美しくて…。頭の先から足の先まで追及に追及を重ねたと思われる”美”は圧巻以外の何物でもない。細マッチョな肉体で躍動するダンスのキレッキレさ、一人一人個性的な女性らしい仕草、時折飛び出す”オトコ”な表情、どこをとっても”魅力”の塊です。っていうか、私なんかよりも全っっ然、”女性”でしたよ、本当に。ローラとの一体感も素晴らしく、存分に堪能させていただきました。また彼女たちに会いたいです!!!

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後述

カーテンコールもほぼオールスタンディングでめちゃめちゃ熱く盛り上がりました!!エンジェルスさんたちも通路に降りてきてくれたしね(私の席からは遠かったけど)。

ロックの高揚感と、心揺さぶる言葉の数々。今年で3度目になりますが、見るごとに作品の素晴らしさが胸に迫っていくような気がします。徹平くんと春馬くんが初演・再演と繋いできて、優くんが遺志を引き継いで・・・そして新しいカンパニーへたどり着いたミュージカル『キンキーブーツ』。人として忘れてはいけない要素が明るく楽しい楽曲やドラマの中にたくさん散りばめられています。これからもずっと上演を続けてほしい名作中の名作。5演目がすでに待ち遠しいです。また会いましょう!

最高の景色を魅せてくれた『キンキーブーツ』カンパニーの皆さん、本当にありがとうございました!!

日本公演版のCDはアスマートさんで発売中です。

貴重な三浦春馬くんのローラの歌声を堪能できます。

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