劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』京都公演 2023.01.24ソワレ/01.25マチネ

主なキャスト別感想

カジモド:寺元健一郎くん(24日)/山下泰明くん(25日)

カジモド役は肉体的に消耗が激しい役ということもあり1日交代での出演となっているようなので、寺元くんと山下くんの2人を観ることができました。

寺元くんはノートルダムが初演された頃(2017年あたり)からアンサンブルとして参加していた事は知っていたのですが、結局一度も観ることができずじまいで…。そうこうするうちに2019年にカジモドでのデビューが決まったという話が聞こえてきて、これは是非一度見てみたいとずっと思っていました。四季では観たことなかったのに聞き覚えある名前だよなぁと思っていたら、入団前の作品に出演しているのを何度か観たことがあったからだと今更ながら思い出した。カジ役が決まってから本格的に入団したようですね。

寺元くんは見た目がとても可愛らしくカジモドに”変身”したあともどこか爽やかさを感じさせるピュアな青年という印象。フロローに”管理”されているときはひたすら忠実に従っているんだけど、どこかそこに窮屈さも感じているような雰囲気も垣間見えるようだった。”道化の祭り”を見に思い切って外へ飛び出していくときは解放された喜びみたいなものも感じられたけど、どこかまだ内に籠もったようなおとなしい感じだったかな。
ところが、エスメラルダやフィーバスといった外部の人達との出会いによって今まで感じたことのないような新たな感情が芽生えてからの後半はどんどんお芝居に熱が帯びていって、見ているこちらが圧倒されてしまうほどの爆発力があった。この変化はすごく驚いたしとても刺激的でしたね。

それから、歌が抜群に上手い!!ピュアで透き通った突き抜けるような歌声にどんどん惹き込まれてしまう。キーは基本的に少し高めの印象で、高音のところも難なくスコーーンと出していたのがすごいなと思いました。タイプは違うけど、ちょっと歌声には海宝くんを彷彿とさせるものがあるかも。

山下くんは昨年の『アンマスクド』公演の時に観て、爽やかで力強い歌声にとても感動したんですよね。『ノートルダム~』ではこれまでクワイヤとして参加していたようなのですが、どこにいたのかも認識できていなくて(汗)。なので、今回京都公演でカジモドデビューしとと知った時にはぜひ一度見てみたいと思っていて、今回会えて嬉しかったです。

山下カジも見た目とてもピュアで可愛らしかったのですが、寺元くんよりも幼い印象がありました。フロローにはとても忠実でそれが正しいことだと信じ生きてきたといった感じ。それでもやっぱり外の世界が目に入るとそちらにも行ってみたくなっちゃって希望を膨らませているカジモドって雰囲気だったかな。フニャッとした笑顔が特に可愛くて…、時折ちょっと中村倫也くんに似てるなと思う瞬間も多々ありました(あくまでも個人的な見方なのであしからず)。

それから、動きはどちらかというと俊敏でアクティブ。♪陽ざしの中へ♪の時の側転はちょっとたどたどしかったけど、駆け出していく時などの動きはけっこうシャキシャキしていて元気がいいカジモドだなぁと思ったかもw。
歌声は爽やかでとても力強いし、客席までしっかりと届いてくる重みもすごく感じられたのが良かったです。ただ、歌い上げる時の高音にはちょっと苦戦してる印象もあって…♪石になろう♪のラストの伸びの時には少し声が裏返ってしまったのが惜しかったかな。それはそれでカジモドの激しい苦悩を思わせるものになっていてリアルでよかったんだけど、あそこは最後まで突き抜けてほしいので頑張ってほしいです。

まだ少しカジモドに馴染みきっていないかなと思うところもありましたが、今後の進化には大いに期待ができそうです。また日を空けた頃にもう一度会いたい。

エスメラルダ:松山育恵さん

松山さんは2018年からエスメラルダ役として出演されているとのことですが、私は今回が初めましてになります。いや~~~、もう、ほんっと魅了されました!エスメラルダ初登場の♪タンバリンのリズム♪でのダンスが素晴らしすぎて、これは男たちが心を持っていかれてしまうのも納得だなと思いましたね。女性の柔らかさと同時に男前なカッコよさも所々で垣間見えてすごく魅力的。

カジモドに対しては”友達”としてというよりも”姉”として接しているような雰囲気があったのも印象深かった。彼に向けるまなざしはとても優しくて温かく、カジが心惹かれてしまったのも無理はないかなという説得力がありました。
フィーバスに対しては最初彼を拒絶しているような素振りを見せていましたが、心のどこかでずっと彼のことが気になっていたという一面を覗かせていたのでキスを受け入れるシーンや一緒に生きていこうと決意するシーンもすごく自然に受け入れることができた。

フロローに対しては最初からどこか彼を避けたいという気持ちが滲み出てるように感じたかな。彼の本性を出会った時から見抜いていたって印象が強かった。その結果招いてしまう悲劇が訪れた時にはボロボロ涙を流しての熱唱。あの姿を見ていたらこちらも同じように辛くなって一緒に涙が出て止まらなくなりました。

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フロロー:道口瑞之さん

道口さんを見るのは何年ぶりだろうか…というほど久しぶりで。最後に見たのはもしかしたら私が狂ったようにBB通いをしていた時wwのルミエールだったかもしれない(←あまりにも久しぶりすぎて、最初に出てきたときは道口さんだって気づかなかったほど 汗)。初めて道口さんを見た『夢から覚めた夢』のメソ役がものすごく鮮烈に残っているので、どちらかというとか弱い印象が拭えてなかったんですよね。なので、ここ最近LKのスカーやアラジンのジーニーを演じているという話を聞いた時にもあまりピンときていませんでした(笑)。
それが見事に払拭されたのが今回のフロロー役です。私の中で強く印象に残っていた道口メソが吹っ飛ぶような…とにかく凄まじい熱演でものすごい大きな衝撃を受けました。。

3年前に川口竜也さんのフロローを見てそのキャラクターに深く惚れ込んでいたのですが(川口さんは今回のノートルダムにお名前がありません…)、それと同じくらい道口さんのフロローに魅了されたかもしれない。私個人としては、あのくらい感情剥き出しになったお芝居の方がすごく感情移入するというか…揺さぶられるんですよね。
見た目はこれまで見てきたフロローのキャラとしては一番若いです。なので”大司教”と呼ばれる雰囲気は正直最初感じられないかも…と思ったのですが、そのお芝居は見た目を大きく上回り見る者を圧倒するパワーがスパークしまくってました。あの熱量は本当にすごい!!!

弟のジェアンとの物語として登場した時は”優しくて弟想いな兄さん”だったのが、辿る道が違えるに従って複雑な感情を抱いてしまうクロード・フロロー。ここの冒頭での感情の移り変わりのお芝居も非常に繊細で分かりやすかった。
ジェアンから死に際に託された彼の息子・カジモドと接する時は基本的には穏やかなんだけど、自分の思い通りの反応が返ってこないとすぐにプチッとキレて怒鳴ってしまう危うさと恐ろしさがあるのがとても印象的でした。あれはカジ、びくびく怯えながら従ってしまう気持ちわかるよって感じ。あまりにも生真面目で順調に出世を重ねてしまったが故に挫折を知らない危険な匂いがプンプンしてた。

エスメラルダに理性が制御不能になるほど惹かれてしまう場面はもう、狂気が突き抜けるところまでいってしまったみたいな雰囲気で本当に恐ろしかった(震)。だけど、彼女は”悪”の存在だから近づいてはいけないのだと自分自身に言い聞かせながらも、ついにはその声すら聞こえなくなり「彼女が手に入らないのならばいっそ消してしまううしかない」という残酷な思想に辿り着いてしまう姿は恐怖を感じると同時になんだかとても哀れで胸が苦しくなるほどでした。
道口さんのフロローを見ていると、これでもかというほど”人間の闇”が胸に迫ってきたんですよね。その演技は本当に”剥き出し”状態でとにかく激しい。♪地獄の炎♪のナンバーの時の道口フロローは見ているこちらも焼け死んでしまいそうなほどの圧倒的な感情の爆発が歌に込められていて本当にすさまじかったです。カーテンコールの時にようやく穏やかでチャーミングな笑顔の道口さんが見られて心底ホッとしたほどだったw。

そのほかにも感じるところがホントに多くて…、道口フロローには何としてももう一度(というか何度も)会いたいという欲求が出てしまったほど(汗)。今後どれだけ深化していくのかと思うと末恐ろしくもありますが、そんな姿を見てみたいです。

フィーバス: 加藤迪くん

加藤くんは『オペラ座の怪人』のラウル役で見て以来かな。フィーバス役は京都公演からということで、今回会えるのをとても楽しみにしていました。

加藤フィーバスはこれまで見てきた中で一番軽やかで明るいお兄ちゃんっていう印象がありました。女性たちを口説いてる時なんかはイケメン笑顔振りまきまくっててww、あれはモテるわと納得(笑)。だけど、戦場での過酷な出来事を歌うシーンになった時には明るい笑顔が消え、凍り付いたような真顔に変わる。だけど辛かった経験の出来事を想定させるような苦しげな表情はほとんど表に出ていなかったなと思いました。その記憶を必死に打ち消して出てこないように押さえつけているような感じ。それがかえって戦場の過酷さを物語っているような気がしてすごく良かった。

エスメラルダには積極的にグイグイ押していく感じ。他の女性たちとは違う魅力を彼女に感じて惹きつけられていく様子がとてもリアルに表現されていたと思います。彼女が飛ばしたタンバリンを受け取った時の「これ、どうすればいいの?」みたいに戸惑う表情はめっちゃ可愛かったけどw。
酒場でエスメラルダにキスをした後の加藤フィーバスはもう完全に恋する青年の顔してた。「どこへ行ったら会える!?」と追いかけていく時の苦しげな表情はすごくキュンときたし印象深かったな。最後の最後まで彼女を愛し抜く男気が感じられたのもよかった。

カジモドに関してはエスメラルダとの恋路の邪魔な存在として煙たがるような素振りも見せるんだけど(特にカジがペンダントを見せた時の嫉妬からくるスネた表情が可愛いw)、彼を対等な存在だとして捉えてるようにも見えて嫌な感じはなかった。最後の最後、エスメラルダを巡ってカジモドと無言のやり取りをする場面はとても感動的でした。

クロパン:髙橋基史さん

髙橋さんは昨年の横浜ノートルダムからの参加ということで、とても良い評判が聞こえてきたので今回見れることを楽しみにしていました。

高橋クロパンは外見も大柄で濃い髭が圧倒的な存在感をさらに際立たせている雰囲気がありましたね。しかも歌声やセリフの言い回しも分厚くてとにかく力強く、ジプシーを取り仕切る王様と呼ぶのにふさわしい迫力でした。

エスメラルダに対しては批判的なことをよく口にしていたクロパンですが、皆を連れて逃げるとなった時に「一緒に連れていく」と宣言した時には彼女に対する優しさが滲んでいるような声色をしていてものすごくグッときたなぁ。奇跡御殿でカジモドとフィーバスを縛り上げた時は”悪党”か!?と思ってしまうほどの恐ろしい雰囲気を醸し出していたのに、あそこで彼の別の顔がちらりと垣間見える。その言葉には全く嘘がなくて、エスメラルダが思わず「ありがとう…」と感謝の気持ちを言葉にしてしまう気持ちがものすごくリアルに伝わってきました。

基本的には怖いけれど、根底にはジプシーの仲間を思いやる優しさを持ち合わせている複雑なクロパンをとても繊細に演じられていて素晴らしかったです。

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後述

久しぶりに『ノートルダム~』を観ましたが、いつも本当に色んなことを考えさせられてしまい…ついつい今回も長文になってしまいました(汗)。人間の光と影を見事に描いた素晴らしい作品だと思います。見終わった後はぐったりと消耗するしボロボロ涙が止まらなくなるほど感性を揺さぶられるのですが、必ずもう一度見たいと思わせてくれるんですよね。大雪で大変な時期ではありましたが、観ることができて本当に良かったです。

次は2月に観る予定。そろそろ達郎くんのカジモドにも会いたいなぁ。達郎カジと道口フロローの組合せだったら、最高に心が揺れまくって終わった後帰れなくなるかもw。

そうそう、四季の関西版スタンプラリーで1月分の特典をゲットできました。個人的にめちゃめちゃ感動的なデザインだったので2作品見れて良かったなと心底思ったw。来月分も楽しみ(オペラ座とノートルダム連続で見る予定なのでww)。

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