劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』京都公演 2023.02.17マチネ

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劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』を観に京都まで遠征してきました。

前回京都に来た時は大雪が降っていて劇場へ行くのも大変な状況でしたが、幸い今回は晴天に恵まれ京都タワーも奇麗に見えました。

大阪駅からJRで京都に向かう予定にしていたので、無事に到着できてよかったです(汗)。

ノートルダム~は人気演目という事もあってこの日もかなりの人で客席が埋まっていました。4月頭で終わってしまう期間限定公演なのが残念。四季専用劇場ではありませんから日数が限られてしまうのは仕方ないんですけどねぇ。

以下、大いにネタバレを含んだ感想になります。

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘』これまでの感想一覧

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2023.02.17マチネ公演 in 京都劇場(京都)

※概要とあらすじなどについては2019年11月06日観劇記事を参照。

上演時間は約2時間40分。内訳は1幕が1時間25分休憩20分2幕が55分となります。

キャスト

  • カジモド:寺元健一郎
  • エスメラルダ:山崎遥香
  • フロロー:道口瑞之
  • フィーバス: 野中万寿夫
  • クロパン:髙橋基史

【男性アンサンブル】

  • 鈴本 務(フレデリック ほか)
  • 梅津 亮(ルイ11世 ほか)
  • 今村 綱利
  • 長尾 哲平
  • 田口 暉 (聖アフロディージアス ほか)
  • 平山 信二
  • 貞松 響 (ジェアンほか)
  • 吉田 功太郎

【女性アンサンブル】

  • 平木 萌子(フロリカ ほか)
  • 近藤 きらら
  • 奥平 光紀
  • 原田 真理(マダム ほか)

全体感想・主なキャスト感想

この作品ほど様々なシーンで激しく感情が動き考えさせられるものはない、と言っても過言ではありません。改めて、濃い人間ドラマが詰まったミュージカルだと実感させられました。誰に感情移入するかによって見た印象がかなり変わってくると思います。私はどちらかというとフロローに寄せる傾向が強いので、毎回本当に胸抉られるような気持にさせられてしまう。

以下、シーンごとにキャスト感想も含め少し振り返ってみたいと思います。

1幕

♪OLIM♪

のっけから劇場中に響き渡る荘厳な歌声に毎回心が震えてしまいます。『ノートルダム~』はここからグワッと心をわしづかみにしてくるのが本当に凄いと思う。特に、張り詰めたような静けさから一気に焔が燃え上がるような分厚い音楽へと切り替わる瞬間がたまらないんですよね。

そして語りの群衆の中から「フロロー」が出現した瞬間に物語が始まります。野中さんのフロロー、めちゃめちゃ久しぶり。前回見た道口さんがかなりの熱量だったのでそれに比べると落ち着いた雰囲気があったのですが、内に秘められた”蒼白い圧”みたいなものが体から湧き出ているようでゾクっとさせられました。このあたり、流石初演から演じられているだけのことはあるなと思います。

フロローと弟のジェアンが登場する場面。個人的にはノートルダム寺院の鐘の音に対する二人の反応の違いがものすごく印象に残ります。フロローは鐘の音を神聖なものと捉え喜びすら感じているのに対し、ジェアンはその音に激しい拒絶反応を示している。ここからもう不幸の物語が始まっていたのだなぁと痛感させられます。
教会の教えを喜んで受け入れ出世していく兄・フロローに対し、自由を愛する弟のジェアンは教会が牢獄のように感じられてならずそこから脱出したいと常に願っている。そしてある日、ジェアンがジプシーの恋人・フロリカを連れ帰ったことで二人の絆に決定的な亀裂が入る。平木萌子さんのフロリカがフロローを誘惑するような目つきで見つめてたので、あれはトラウマになるだろうなと思ってしまった。

この作品を観ていると「もしもあのとき~だったら」という想いが何度も浮かんでくるのですが、フロローとジェアンの兄弟の物語にもそれが当てはまるんですよね。もしもあの時ジェアンがフロリカをフロローに紹介しなければ…、さらに、もしも二人のみなしごの兄弟を匿ったのがノートルダム寺院ではなかったら…。
フロローのその後の人生を知ったうえでこの冒頭の物語を見るとすごく胸が痛んでしまいます。

そして一番最後に満を持して「カジモド」を演じる青年がやってくる。彼がフロローが抱えたカジモドを包んだ”おくるみ”を背負う場面は毎回胸が熱くなります。鐘の音が鳴り響くと同時に涙が零れてしまいますね…。

♪陽ざしの中へ♪

ずっと一人で鐘撞堂の中に暮らしていたカジモド。唯一の友達は彼にしか聞こえない声で語り掛けてくれる聖人の像やガーゴイルたち。寺元カジモドは今回で2度目でしたが、本当に表情がすごくピュアで可愛らしいんですよね。”友達”に促されるまま「道化の祭り」への憧れを募らせていく時の笑顔なんか本当に可愛らしくて見ているこちらもホッコリしてしまう。

そんな寺元カジに対する野中フロローは厳しいけれど秩序ある教育を以て接しているなという印象。道化の祭りへ行きたいと言い出したカジモドに対してはピシャリと撥ねのけますが、どこか親心からそう言っているように感じられるんですよね。特殊な状況ではあるけれども、あの時のフロローには”父性”があったように思えてならない。

寺元カジが「僕がお守りしますからっ!」と道化の祭りへ行きたい気持ちを必死に訴えるのに対し、思わず大声で笑い飛ばしてしまった野中フロロー。そのすぐ後に「すまん、笑ったりして」と謝罪するシーンが個人的にはすごく印象に残る。温かいんですよね、この時の言葉の音色が。二人の関係性は決して険悪なものではないんだなと感じられます。ここが、アニメ映画と舞台との違いかな。

一度はフロローの言う通り外の世界へ出ることを諦めようとしたカジモドでしたが、溢れ出る興味と憧れはそう簡単には治まらない。寺元カジの歌う♪陽ざしの中へ♪は本当にキラキラしていて、どんなにか外の世界に途方もないほどの憧れを抱いていたのかが伝わってきてめちゃめちゃ泣けました(涙)。前回見た時よりも泣けたなぁ。歌声にもすごい伸びがあって安心して聴いていられる。ちょっと、海宝くんと似たような印象も受けたかも。

♪トプシー・ターヴィー♪

祭りの準備をしている最中、コソコソと動き回りながらも目をキラキラ輝かせている寺元カジはめちゃめちゃ可愛くて萌えますw。『ノートルダム~』は全体的には暗さを感じる作品ですが、この場面だけは素直に心からワクワクできるし楽しめるんですよね。アンサンブルさんたちのテンション高い盛り上がりっぷりにも気分が上がります。

そんな中で登場してくるフィーバス隊長。佐久間くんのフィーバスもめっちゃ久しぶり!やっぱりカッコいいです。彼は戦場での心のトラウマをかなり前面に出して演じている印象が強い。加藤くんはそれを必死に否定して思い出さないように払い除けてるような感じだったけど、佐久間フィーバスは笑顔の中にも戦場での過酷で残酷な景色を拭い去ることができなくて常に苦しんでいるような暗い影が常に付きまとっている。女性に囲まれてチャラ男的な笑みは見せてるけどw、目は笑ってない…みたいなね。そういうところが彼の魅力だなと思います。

祭りの盛り上がりが最高潮に達しようとしたところで颯爽とエスメラルダ登場。彼女の登場シーンは本当に何度見てもカッコ良すぎて鳥肌です!!演じる山崎遥香さんはどこかでお名前を見たことがあるなと思って遡ってみたところ…、『ロボットインザガーデン』の時のリジーだった方と判明!あの時とはまた違ったカッコいい女性っぷりで一気に目を奪われました。
山崎エスメラルダは、男前的なカッコよさの中にも女性らしい丸みが感じられる雰囲気だった気がします。そこにみんな惹きつけられていっちゃうんだろうなと。

個人的には♪タンバリンのリズム♪シーンがめちゃめちゃ好きです。彼女が投げたタンバリンを受けとって「これどうすれば…」みたいにオロオロしながらも顔がにやけちゃってた佐久間フィーバス、めっちゃ可愛かったww。その後野中フロローと目が合っちゃって気まずそうに隠しててwwこの一連の表情が最高。
彼女のダンスを見た瞬間にカジモド、フィーバス、そしてフロローが「あれは誰だ」とそれぞれの心の声を歌うシーンがめちゃめちゃ良いんですよね。カジとフィーバスが心をトキめかせているのに対し、フロローだけは自分の身にこれから降りかかる”不幸”を予感して警戒している。でも警戒しながらも彼女へ向けられていく強烈な引力に逆らえない自分もいて…。このあたりがすごく人間らしいなと思います。

「醜い顔選手権」の場面、セッティングしていた上のバーが外れて落ちてしまうミニハプニングがありましたが、山崎エスメラルダがさりげなーーく元の位置に戻してました。それがなんだか祭りのリアルさを演出しているようで逆によかったな。

エスメラルダに促されるまま「醜い顔」を突き出してしまったカジモド。その瞬間、高橋クロパンが山崎エスメラルダに対して「なんて余計なことしてくれたんだ、こるぁ!」みたいな表情で詰め寄ってたw。この時の高橋さんの眼圧が半端なかったぞ!!そのあとすぐに場を収めるためにカジモドを優勝者として仕立て上げるのですが、それがクロパンの苦肉の策だったことに今回初めて気が付きましたw。
でも結局はカジモドは民衆からの暴行を受ける結果になって祭りが大混乱に陥ってしまう。この時のアンサンブルさんたちのカジモドに向ける悪意に満ちた視線がとても恐ろしい。だけど、哀しい哉…あれが現実なんですよね…。人は”異端”の者を目にしたとき想像もしないような敵意や悪意が湧き起こってしまう生き物であることを見せつけられているような気持にさせられます。フロローは自分の体面を守るためという想いもあったかもしれないけど、こうなることを予測できていたからこそ保護者としてカジモドに外に出るなと言っていた面も大きかったのではないだろうか…。

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♪神よ 弱き者を救いたまえ♪

カジモドが虐待されたのは自分のせいだという罪悪感を覚えたエスメラルダはノートルダム寺院の中に足を踏み入れる。初めて見る聖堂の美しさに圧倒されていると、フロローが語りかけてくるわけですが…、この時拾い持っていたエスメラルダの赤いスカーフを慌てて隠すんですよね。そこに彼の彼女に対する特別な感情が感じられて少しドキリとさせられます。

最初は言い争いのような会話となっていた二人でしたが、エスメラルダから

「あなたがしてほしいと思うことをあなたも人にしてあげたらどうかしら?」

と問いかけられたフロローは大きな衝撃を受けてしまいます。その言葉は彼が愛し敬愛してやまない主・イエスキリストが発したものと同じだったからです。あの瞬間にフロローの心の中に「エスメラルダが欲しい」といった抗いようのない欲望が芽生えてしまったのではないだろうか…。邪悪な存在だと思っていたジプシーのエスメラルダが、突然彼の中で神聖な存在に思えたのかもしれない。
もう少し彼女と話がしたいという気持ちがフロローの中で盛り上がった時、ミサの時間を告げる合図が聴こえてくる。私はこの場面を見るたびに、「もしもあの時ミサの時間を告げられなかったら二人の関係はどうなっていたのだろうか」と考えてしまいます。あのまま語り合う時間がもっとあったなら、もしかしたらフロローは道を違えてしまうこともなかったかもしれない…。エスメラルダへの想いも、ひょっとしたら違うものに昇華していたかもしれない…。そんなことをずっと考えてしまう。

フロローと別れた後、エスメラルダは祭壇に祈りを捧げる。山崎エスメラルダの♪神よ~♪はとても深い祈りの気持ちが感じられてとても感動的でした。深みの中に柔らかさが感じられたのが特によかったなぁ。

祈りを捧げるエスメラルダの前にフィーバスが現れる。エスメラルダは最初彼に対して警戒感を抱き攻撃しようとしますが、フィーバスはそんな彼女にさらなる興味を膨らませていく。だけど、これから…ってときにエスメラルダはカジモドの元へ行こうとしてしまうわけで、その時のめちゃめちゃ悔しそうな佐久間フィーバスの表情がなんだかとても可愛らしかったですw。

♪世界の頂上で♪

恥ずかしがって隠れていたカジモドの元へ駆けつけるエスメラルダ。まともにフロロー以外の人と会話したことがなく、そのうえ胸ときめいた彼女がやってきてしまうわけですから…そりゃカジモドの慌てっぷりや動揺も頷けます。その手助けをしてくれるガーゴイルたちとのアタフタしたやり取りも微笑ましくて好き。

まるで人間を恐れる小動物のように怯えているカジモドに対し、そっと優しく寄り添おうとするエスメラルダ。そんな彼女に少しずつ心を開いていく寺元カジの表情がとても良かったな。鐘の音が原因で耳が不自由となってしまったカジモドに対し手話を使いながら会話をしてくれるエスメラルダ。徐々に顔を輝かせながら鐘撞堂から見る景色の素晴らしさを語るカジモド。だけど彼女は高いところが苦手で「困ったな…私、高いところダメなの」って弱音を見せるエスメラルダがなんだかとても可愛いらしい。
手すりの上をガーゴイルの手を借りながら(彼女には見えていないけど)おどけて歩くカジモドの姿に手に汗握ってるエスメラルダw。だけど、そんな生き生きとしたカジモドの姿に触発されてエスメラルダも勇気を出して欄干に座ってみる。するとそこには、これまで感じたことのない開放的な素晴らしい世界が広がっていた。カジモドとエスメラルダにしか見えないキラキラと輝く希望のような光景が見えているんだろうなと思うと、この場面は涙無くしては見れません。同じ思いを共有して「世界の頂上で」と歌声を合わせる二人の姿にどうしようもなく心が震えてしまいます(涙)。

さらに二人が意気投合して会話を進めようとした時、フロローがやってくる。あの時カジが興奮して鐘を鳴らしまくったりしなければ…あるいは違う未来が待っていたのかもしれないと思うと本当にもどかしい気持ちにさせられてしまいます。
鐘を鳴らしまくったカジモドを叱り飛ばしていたフロローでしたが、そこにエスメラルダの姿があることに気が付くと急に動揺して言葉を飲み込んでしまう。この時の野中フロローのオロオロっぷりが本当にリアルでちょっと可愛らしいんですよね。ものすごく人間臭い。あの態度だけで、フロローがエスメラルダに特別な感情を持ってしまっていることが伝わってきます。

カジモドを去らせた後、フロローは改めてエスメラルダと語り合おうとするのですが…「ここに私と一緒に住む方がいいかもしれない」と本音を口にしてしまった瞬間に彼女の目に嫌悪感が浮かんでしまう。フロローとしては、エスメラルダを手元に置いて一緒に神の道を究めていきたいという純粋な想いがあるつもりだったのだと思いますが、彼女はその言葉の裏に”フロローの女になってほしい”という”男”としての欲望を敏感に読み取ってしまった…。

「分ってるの…、私を見るその目つきで」

フロローとしては善意で告げた提案という意識しかないので、思いがけない彼女のこの言葉に逆上してブチギレてしまう。自分こそが”善である”という意識が猛烈に強かったフロローの悲劇というか…。エスメラルダを求める”男”としての本能に必死に蓋をしようとしているようでとても痛々しい。

そんなやりとりがあったとは知らないカジモドは、フロローがなぜエスメラルダに対して激しい嫌悪と憤りを示しているのか理解できない。「あの人は僕に優しくしてくれました」とあくまでも彼女をを庇い慕おうとするカジでしたが、その言葉がさらにフロローの苛立ちに拍車をかけることになってしまう。
カジモドにエスメラルダの邪悪さを熱弁するフロロー。彼女のことは忘れるようにと激しい言葉で制していましたが、それはまるで自分自身の心の弱さを他人に転嫁しようとしているように見える。カジモドとしては本当にいい迷惑でしかないよね。

♪酒場の歌♪

カジモドに暴力をふるってまで「エスメラルダに会うな!!」と律していたフロローでしたが、その行動とは裏腹に自分だけは逸る気持ちを抑えきれず彼女に会うため居場所を突き止めてしまう。この時点でフロローはもう自分の邪な気持ちを制御できなくなってるんですよね…。彼女の存在を拒絶しようとすればするほどズブズブと底なし沼のようにハマっていってしまう悲劇。

そんななか、フィーバスは彼女に自由に接近することができるしキスをすることもできてしまう。エスメラルダも彼のキスを拒まなかったので、彼の方に気持ちが向いていたに違いない。その一部始終を「下品で恥知らず」と罵りながらも「だが目を逸らすことができない」と食い入るように見つめてしまうフロロー。こういうところが本当に”人間臭い”と思ってしまう。
これまでずっと自らの存在を”善”であると信じ続け神に忠実に生きてきた自負を持っていたフロロー。それゆえ、これまでに出会ったことのない得体のしれぬ感情が湧き起こるのを制御することができなくなってしまった。このあたりがものすごく哀れだなぁと…。もっと自分の弱さを見つめることができる勇気が彼にあれば、あんな狂気的な想いに支配されずに済んだかもしれないのに…。

♪天国の光♪♪地獄の炎♪

カジモドはフロローから「エスメラルダのことは忘れろ」と厳しく言い含められていましたが、外の景色を眺めながらついつい彼女の存在を探してしまっている。でも、カジのエスメラルダへの気持ちはとてもピュアで可愛らしい。

「僕は醜いから諦めてたけど、天使が微笑みかけてこの顔に触れてくれたんだ」

と彼女にほのかな恋心を抱きながら歌う彼の姿に思わず胸が熱くなってしまいます…。エスメラルダはカジモドにとって明るい希望の光のような存在だったんですよね。
この「僕は醜いから」というフレーズは2幕でも出てくるのですが、その時はここのシーンとは全く違う意味で歌われます。それを想うともう切なくてたまりません。喜びの感情で歌う♪天国の光♪ですが、後半の展開を知ったうえで聞くとめちゃめちゃ泣けるんです(涙)。

カジモドの純粋な想いとは全く逆のところにいるのがフロローです。エスメラルダに対する”男”としての歪んだ感情が爆発するのが♪地獄の炎♪。神への祈りの言葉から始まるナンバーではありますが、その言葉は次第に清らかさから邪悪なものへと塗り替えられていきます。ここの歌いっぷり、野中フロローすごかった。道口さんの時とは違うフロローの並々ならぬエスメラルダへの執念みたいなものがヒシヒシと胸に迫ってきました。まさに、愛情と憎しみは紙一重というか…。言葉では説明できないような感情に支配されてしまっているフロローの気持ちがこれでもかというほど押し寄せてくる歌いっぷりだった。

♪エスメラルダ♪

「彼女を手に入れることが叶わないのなら殺してしまうしかない」という極端な感情に囚われたフロローは、罪のないエスメラルダを捕らえるための算段を巡らせ実行に移すことに。この常軌を逸した行動を見ると、本当に”人間”の恐ろしさを実感してしまいます。

フィーバスはフロローの命令に最初は逆らうことができず自分の気持ちを押し殺して彼女を探索する。でも、いかがわしい宿に辿り着いた時に女将から「あら、フィーバス隊長!お会いできてうれしいわぁ」と声をかけられるとめっちゃ気まずそうに「今それを言ってくれるな」的な表情してた佐久間くんが可愛らしすぎたww。こういった細かい表情がすごく良いんですよね~。

エスメラルダを差し出さないなら宿を燃やすという暴挙に出ようとするフロロー。火をつけるよう命令されたフィーバスでしたが、掲げていた松明の明かりから何かを感じ取ると反旗を翻す。あの時彼は「お前の正義とはなんだ」と自問自答したのかもしれない。
そこへエスメラルダが現れフロロー軍と戦うことになるのですが、いつも思うんですけど、フロローの命令で急遽隊長に任命され残酷な使命を遂行させられるフレデリックが気の毒だなぁと。上官であり友でもあるフィーバスと剣を交え捕らえる側に回らざるを得なかった彼の気持ちを想うといたたまれません…。

カジモドは眼下に広がる異変を察知するも、エスメラルダを心配することしかできない。フロローは目の前でフィーバスと消えたエスメラルダを見つけることに血眼状態。1幕の最後は皆がそれぞれの想いを抱きながら「エスメラルダ」の名前を連呼しながら歌うのですが、これがもう本当にめちゃめちゃドラマチックで何回見ても涙が出ます。

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2幕

♪エジプトへの逃避♪

フロローの乱で町中が火事に見舞われるなかクワイエの皆さんによる荘厳な歌声が響いてくるのですが、よく耳を澄ますと「アニュス・デイ」「ドナノービス」といったラテン語が聴こえてくる。「アニュス・デイ」は”神の子羊”、「ドナノービス」は”我々に平和を”といった意味のラテン語だったと思います。私は学生時代カトリック系の学校に通っていてラテン語が出てくる宗教曲をけっこう歌ったんですよね。だからこういったフレーズを聞くとちょっと懐かしい気持ちになります(本編とは全く関係ない情報ですがw)。

心配するカジモドの元へエスメラルダがフロローに傷つけられたフィーバスを運び込んでくる。最初はフィーバスの存在にかなりの嫌悪感を見せていた寺元カジでしたがw、エスメラルダにじっと見つめられながら「お願い」と懇願されると気持ちが揺らいで結局彼を匿う手助けをしてしまいます。まぁ、想いを寄せる人からあんな風に見つめられて信頼されたら…そうなっちゃうよね。ここはなんだかちょっとカジモドの人間らしさが出ていて微笑ましいw。

エスメラルダはカジモドに自分たちが潜んでいる「奇跡御殿」の場所を示すペンダントを託し慌てて帰っていきます。その寸前に彼女は「ありがとう」とカジの頬にキスをするわけで…これでまた彼の気持ちがグワッと舞い上がってしまう。エスメラルダも罪なことをするよなぁとちょっとツッコミたくない気持ちになるシーンでもありますw。カジとしては、自分だけが彼女の理解者なんだってますます恋心募らせることになっちゃうからなぁ。後半のことを想うとなんだかチクリと胸が痛んでしまう。

ガーゴイルたちは「なんで簡単に彼女を行かせてしまったんだ」とか「彼女が危険なのよ」とかけしかけてカジモドをエスメラルダの元へ向かわせようとする。「御主人さまの言いつけだから」とそれを躊躇っていたカジでしたが、ふと、フロローから説き聞かされていた聖アフロディージアスのことを思い出す。
この時に集まったガーゴイルたちの後ろからアフロディージアスが登場して、時折首が落ちそうになるのを抑えながらw♪エジプトへの逃避♪を歌います。危険を冒しながら聖家族を守った自分の体験記を歌い語りながら、それと同じ行動が君にも出来るはずだとカジモドの背中を押す。原作にも映画にも登場しないアフロディージアスをこういう場面で登場ささせて説得力を持たせるのがこのミュージカルの深いところだなと思います。

そこへフロローがやって来ようとするのですが、それと同じタイミングでフィーバスが目覚めてしまってカジモドは慌てて入口を乱暴に塞ぐ。この時のフィーバスへの扱いもぞんざいでちょっと面白いんですよねww。
なんとかその場を凌ごうとフロローと接するカジモドでしたが、エスメラルダの存在を聞かれた時に「居場所は知らない」と初めて嘘をついてしまいます。これまでフロローを自分を庇護してくれる絶対的な存在として見てきたカジモドの心に、それ以外の人物(エスメラルダ)が住み着いたわけで…ここのシーンはとても印象深い。

ところがフロローはカジモドがアタフタしていることから何か知っているのだなと鋭く察知。フレデリックが「部下がジプシーの隠れ家を発見した」と報告に来た時に野中フロローは彼に向けてちょっと意味深な視線を飛ばしていました。これを見た時にフロローはカジモドを罠にはめたんだなと思えた。このあたりの演技の繊細さは野中さん、流石です。
フロローは素知らぬ顔でカジモドに対し「もうすぐ彼女を捕らえるからすぐに安心できるぞ」と諭すように歌う。その前に「お前を本当の息子だと思うよ」と歌っていた時には少し柔らかな一面が垣間見えたような気がしたのですが、エスメラルダのことが絡んでくるとすごい狂気的なものを感じて恐ろしいです。

息を潜めてこのやり取りを聞いていたフィーバスは、フロローが去った後「早くエスメラルダを探して知らせなければ」と躍起になる。そんな彼にあからさまな対抗意識を燃やし彼女からもらったペンダントを自慢げに見せるカジモドww。寺元カジはこの時フィーバスにを”邪魔者”的な目線でしか見ていないなという印象が強いw。マウントを取るつもりでペンダント見せたら逆にフィーバスに取られてしまう脇の甘さとかはけっこう可愛らしいですが(笑)。

♪奇跡もとめて♪

対抗意識を燃やしながらもエスメラルダの居場所を探しに町へ出る二人。この凸凹コンビ感が実に可愛らしい。そしてついに「奇跡御殿」を発見するのですが、クロパンによってすぐに捕らえられてしまう。ここの演出がすごいスムーズ。最初に観たときは「え!?いつの間に!??」とビックリしましたからね。何度か見ているうちにカラクリが分かって”ここだな”みたいなのが分かるようになりましたw。

クロパンによって抹殺されそうになるフィーバスとカジモドでしたが、寸でのところでエスメラルダが助けに入ります。せっかくの隠れ家を見つけさせるなんて!とクロパンがお怒りモードになるのも無理はないなと。「今度こそは何年か落ち着けると思ってたのに」と告げた高橋クロパンからはそれまでのギラついたものではなく哀愁のようなものが感じられてとても切なかったです…。その一言で、ジプシーが置かれている過酷な現状の一端が見えるような気がしました。

奇跡御殿を引き払い別の土地へ安住の地を探しに行こうとするクロパン達。これまで何度もエスメラルダの行動に苦い思いをさせられてきましたが、彼女も一緒に連れて行こうというクロパンの義理堅い一面が見れるところがとても印象的です。
この地を離れる決意をしたエスメラルダに対し、カジモドは「鐘撞堂に一緒に住もう、僕が守るから」と必死に訴える。でもフィーバスは「僕もジプシーの仲間に入り一緒に旅を続ける」と決意を語る。そんな二人の申し出を聞いたエスメラルダが選んだのは…共に旅を続けようと言ってくれたフィーバスだった。この選択のシーンは何度見ても切なすぎて涙が出ます(泣)。カジモドはこの町から出ていけるだけの勇気を持つことができなかったんですよね…。

「愛に満ちたあの光に憧れていたけど、僕は醜いから諦めてたんだ…」

1幕で「僕は醜いから」と歌った時にはその続きがあって、そんな自分にも希望が差すんじゃないかといった明るい気持ちがありました。でも2幕で同じフレーズを歌うこのシーンは哀しみに満ちている。ジプシーの仲間に入りエスメラルダと心を通わせたフィーバス。二人が旅立とうとする姿に「孤独に生きよう」と絶望感に打ちひしがれるカジモドの姿は涙無くしては見れません(泣)。あのシーンのカジモドを見ると抱きしめてあげたくなってしまう…。

クロパン達が旅立とうとしたその瞬間、フロローが軍隊を連れて奇跡御殿に乱入してくる。この時初めてカジモドはフロローに自分が利用されたことを悟るんですよね…。失恋したうえに主人だと思っていた人の裏切りとは、あまりにも残酷な仕打ちすぎる(涙)。
この時フレデリックはフロロー軍としてフィーバスたちの前に立ちはだかるのですが、その表情は本当に辛そうで胸が痛くなります…。

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♪いつか♪

捕らえられ死刑を言い渡された後、別々の独房に入れられることになったエスメラルダとフィーバス。処刑の前夜、フロローは密かにエスメラルダの独房を訪れ自らの彼女に対する歪んだ愛情を吐露する。これがもう本当に狂気の沙汰としか思えないような迫りっぷりで…「二人で暮らすんだ、いつまでも」と歌った後にエスメラルダのスカーフを取り出し彼女を束縛しながら襲い掛かろうとする場面は何度見ても背筋が冷たくなります(震)。エスメラルダの断末魔が辛い…。
人を愛することを知らないフロローにとってはそれが”愛情表現”だと思い込んでしまう節があったでしょうけど、見ているこちらとすれば身勝手な独占欲でしかないんですよね…。だけど「頼むから愛してくれ!!」と懇願するフロローの姿は哀れにも見えるわけで…。人間とはなんと愚かで脆いものなのだろうと痛感させられてしまいます。

何とかフロローをはねのけたエスメラルダ。そんな彼女の元へフロローはフィーバスを送り込んでくる。フィーバスをエスメラルダ助命のカードとして使おうという腹積もりではあるのですが、彼女の気持ちは決して揺らぐことはなかった。
最初は命が助かるならばフロローの言う通りにしたほうがいいと告げていたフィーバスでしたが、彼女の自分への深い愛を悟ると運命を共にする覚悟を決めることに。別れの時が迫るなか、1分1秒を惜しむように抱き合う二人の姿は切なすぎて泣けてしまいます(涙)。この場面見ると、いつも『アイーダ』のクライマックスが浮かんじゃうんですよね。

♪石になろう♪

エスメラルダを助けるために町へ出たことが原因で、カジモドは鐘撞堂に縛られ監禁状態となってしまった。そんな彼にガーゴイルたちは「早くエスメラルダを助けに行かなければ」と必死に促そうとしますが、カジモドは「僕が手を出したらますますひどいことになるだけだ」と聞く耳を持とうとしない。この時の寺元カジ、ものすごく冷たい目をして彼らを睨みつけていてゾクっとさせられました。あんなにピュアだった子が、絶望を味わったことで暗い感情に支配されてしまったなんて…。それがすごいショックだったな。
なんとか彼を励まして勇気を奮い立たせようとするガーゴイルたちでしたが、その言葉の一つ一つが逆にカジモドの心を傷つけているようにも聞こえてきてすごく切なかったです…。寺元カジの歌が本当に凄い鬼気迫る激しさで…。彼の中で処理しきれない苛立ちの感情がめちゃめちゃリアルに胸に迫ってきたんですよね。ここのシーンの歌いっぷりが寺元くん、ほんとすごかった。

「もし石になれたら、何も感じなければどんなに楽だろうか。君たちを信じるよりもご主人様を信じるほうがマシだ。夢はいらない。一人にしてくれよ」

ガーゴイルたちにしてみれば、こんなショックな言葉はないと思う。彼らはそこから動ける自由がカジモド以上にないわけですからね…。でも、様々な挫折や絶望を目の当たりにしてきたカジが「御主人さまを信じるほうがマシだ」と言いたくなる気持ちも痛いほどわかる。フロローはカジにずっと現実を教えてきてくれた人であることには変わりなかったので…。
そんな彼に対し、ガーゴイルたちは諦めたように「いいよ、カジモド…。好きにしなさい。どうせ私たち石だものね」と告げながらその場から消えていく。グレーのローブを脱ぎ捨てて民衆の姿に変わっていくガーゴイルの演出がとても印象深い。どちらも本当に哀しい場面です。

誰の声も聞こえず、本当に孤独の身となったカジモド。「僕は今日から心閉ざして石になろう」と歌い上げる寺元カジの気迫の歌いっぷりはもう鳥肌もの!!!あれは本当に凄いです。

そして処刑日の朝。火刑となるエスメラルダに火をつける瞬間、フロローは耳元でもう一度だけ彼女の意思を確かめようとする。なんとしても自分のものにしたいという執念が恐ろしい。それでも、たとえ命尽きようともフロローのものになることを激しく拒絶したエスメラルダ。自らの手で薪に火を落とすときの野中フロローの冷たい表情がとても恐ろしかった…。

エスメラルダの処刑が始まったその瞬間、カジモドは”石”から”人間”へと変貌する。彼女を想う気持ちがついに彼の心を動かしたのです。必死に彼女の元へ駆けつけようとするカジの姿は見ているこちらの胸を大きく揺さぶります。
危険を顧みずに彼女を炎の中から救い出したカジモドの姿は、まるで聖人のように神々しい存在のように思えたな…。想いを寄せた人を守るために必死に戦う姿はとても感動的です。

町が大混乱に陥ったなか、カジモドは鐘撞堂にエスメラルダを連れ帰る。意識を取り戻したエスメラルダが彼に告げる”言葉”。そしてそれに対する素直なカジモドの”言葉”。そして抱擁。この一連の場面はすべて泣けます。それはとても温かく、優しく、愛しい。

逆に、フロローとカジモドの最後の対峙の場面は衝撃的です。大切なものを奪った者への制裁を自らの手で下したカジモド…。でも、全てが終わった後彼は意外な言葉を口にします。

”僕の愛する者”

これがとても印象深い。

♪フィナーレ♪

ラスト、物語冒頭に出てきたカジモドの両親であるジェアンとフロリカがもう一度登場するのですが、これがまためちゃめちゃ泣ける…。彼らはどんな想いで息子を見つめていたのだろうか。

全ての物語を演じ終わった舞台上の役者たちは、最後にまた素の姿に戻っていきます。そして、最初に問いかけたことをもう一度客席に向かって投げかける。

「人間と怪物、どこに違いがあるのだろう?」

今回このフレーズが私の頭の中でものすごくリフレインしました。この作品を観て感じたことは、”人間の潜在意識の中には常に怪物が住み着いているのではないか”ということ。人間と怪物は違う存在ではなく実のところは同じ生き物なのではないだろうか。あくまでも私個人の感想ですけどね。

後述

見るたびに様々な感情が頭の中を駆け巡るミュージカル『ノートルダムの鐘』。今回見て、改めて人間の脆さを突きつけられたような気がしました。なんだか考えてしまうんですよね、もしも私が〇〇の立場だったらと。○○は時にカジモドだったり、フロローだったり、エスメラルダだったり…。

京都『ノートルダム~』の観劇予定はあと1回。東京のチケットは取っていないので、次の観劇はまた心して臨みたいと思います。

ちなみに、2月も大阪公演スタンプラリー無事に2つゲット。今回のデザインもとても素敵だった!

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