パルコ劇場で上演された朗読劇『ラヴ・レターズ』を観に行ってきました。
男性と女性一人ずつが舞台中央に座り約50年間にわたる書簡のやり取りが記された"love letter"を読んでいくといったスタイルのものです。
毎年だいたい夏と冬頃に数日間限定で上演されていますが、今回はなんと20season目に入るんだとか。これまで本当に様々なジャンルの人が挑戦してきている舞台なのですが、ロビーには前回までの朗読カップル写真がズラリと貼りだされてて…それはそれは壮観でした。
この朗読劇の存在はかなり以前から知っていたのですが、興味のある役者さんが出てる回に行こうかどうしようか迷っているうちに終了してしまうことを繰り返してまして(爆)。朗読劇というものにも慣れていなかったということもあったし…今ひとつ思い切れなかったというのが正直なところ。
そんな私が今回思い切ったのは、『つばさ』以来大注目役者さんとなった宅間孝行さんが出演するから。セレソンでの芝居でも大いに泣かせてくれた宅間さんがどんな朗読を披露してくれるのかとても気になって…けっこう発売日前に気合入れてチケット取りました(笑)。ちなみに…『つばさ』関連からのお花もたくさん届いてましたが、高畑淳子さんからのお花が一番存在感あったかも。
宅間さんのお相手は大和田美帆さん。舞台を中心に活躍されてる女優さんで大和田獏さんと岡江久美子さんの娘さんです。
大和田美帆さんと宅間さんは深夜に放送していた『映画の達人』という番組で一緒に出演していたんですよね。まだ宅間さんのファンになる前に何度か見たことありますが(大沢さん×田辺さんみたいな美味しいゲストもきてたし)なかなか面白い番組でした。役者同士としての共演は初めてということで二人の掛け合いがどんな感じになるのかも観劇前からの楽しみでした。
この朗読劇の脚本はずっと同じですが、読み手の組合わせはその日限りです。一度限りの組合せということもあってか、劇場内には一般のお客さんのほかにも出演者の関係者と思われるちょっと違うオーラを出している人がたくさん観に来ていました。終演後のロビーは業界人っぽい人たちでごった返してて…ちょっとビックリ。
その中には美帆ちゃんのご両親の姿もありましたし、『つばさ』の後藤CPの姿もありましたね。後藤さんは先週つばさイベントでお会いしましたが…PARCO劇場ロビーでもお見かけするとは…なんとも不思議な感覚でございました(笑)。
そういえば宅間さんたちの数日前には多部未華子ちゃんもキャスティングされてたんですよね。すごく興味があったのですが用事があったので行かれず残念。でも、同じシーズンに2人の『つばさ』役者がこの舞台に関わっていたなんて…なんだかちょっと嬉しい偶然かも。
以下、感じたことを少々。ネタバレも含んでます。
2009.12.13 マチネ in パルコ劇場(東京・渋谷)
出演者
アンディ:宅間孝行
メリッサ:大和田美帆
朗読劇はこれで2度目の観劇になりますが、長く上演を繰り返している『ラヴ・レターズ』を観るのは初めてです。
この芝居は二人で合わせる稽古は1度きりであとは自主練というのだからビックリ。本番の二人のやり取りは打ち合わせしたものというよりもその場の雰囲気に任せて勧めていくというスタイルなので読み手も聞き手もいろんな意味でドキドキワクワクするというわけ。なるほど、この朗読劇が長い間上演しているのは本番一発勝負みたいな緊張感を会場全体が体験できるからなんですね。
舞台上には特別なセットは何もありません。ふたつの椅子と、一つのテーブル。テーブルの上には読み手のための水とタオルかハンカチが置かれているのみ。本当にシンプルです。
会場が静寂に包まれたときに読み手の宅間さんと大和田さんが登場。二人ともニコニコしててなんだかとてもいい雰囲気でした。特に宅間さんは緊張を隠すかのような笑顔がなんだか観てて微笑ましかった(笑)。
ストーリー説明はこの朗読劇にはありません。すべて、アンディとメリッサによる往復書簡のみで勧められていきます。この"ラブレター"の交換は5歳の少年少女期から50代の壮年期までずっと延々と続いていくんですが、文面のなかではお互いに起こった出来事やその瞬間の感情の動きなどが事細かに綴られています。
2幕制なので途中で休憩も入るのですが、1幕と2幕で二人の衣装が変わるというのもなかなか素敵な演出でした。1幕ではちょっとラフで若々しい雰囲気、2幕はフォーマルな雰囲気で大人になった二人を感じさせます。
以下、簡単なあらすじ。
アンディとメリッサの関係は時代が進むごとにどんどんズレを生じてきます。
幼いころはどちらかというとアンディのほうがメリッサに夢中ですっかり恋人気分になってる。メリッサはそんな彼を手の中で転がして楽しんでいながらもアンディのことが気になってる様子。
思春期から大学へ進んだ頃から住む環境が変わってきて互いの恋愛感情にも変化が現れるようになっていく。一番聞いていて考えさせられたのが『手紙』にするか『電話』にするかの意見の対立の場面。アンディは手紙でしか本当の気持ちは伝わらないと考えているのに対し、メリッサは電話で直接生の声を聞いて気持ちの交流を図りたいとしている。この考え方の違いが、もしかしたらその後の人生の悲劇への序章だったのかもしれないと思うとなんだか切なくなります。
そして学生を終えて大人になると二人は別々の道に進み、すれ違いを繰り返し、違う相手と結ばれる。アンディは安定した生活のなか出世を繰り返し議員まで登りつめますが、メリッサは不幸な結婚生活のために徐々に精神が壊れていってしまう。そんな彼女の手紙を読み過去のメリッサへの感情が蘇るアンディ…。二人は何かにすがるように密会を続けますがやがてそれも破綻。そして哀しいラストを迎えます。
"もしもあの時…"。アンディとメリッサの関係にはそんな瞬間が多数訪れている。あんなに感情の溢れた往復書簡を繰り返しながらも結ばれなかった二人の関係が切なくてラストは涙が溢れました(最後の書簡の二人のやり取りは特に泣けます…)。
この舞台は二人の手紙のやりとりを聞き入りながら情景を浮かべていくので、本当に想像力がものすごく刺激されました。ただ、読み手の表現力が乏しかったり性に合わなかったりすると退屈してしまう危険もはらんでいます。
しかし、宅間さんと大和田さんの朗読は情緒豊かでいて声も聞き取りやすく…、アンディとメリッサの世界観にすぐに惹き込まれました。やはり二人とも舞台役者だけあってよく通る声だったしその場その場の感情表現も臨場感があって素晴らしかった!
大和田さんはハキハキとしていて感情豊か。メリッサの手紙の文面からその表情がすぐに浮かんできます。可愛くてチャーミングだけど神経質な部分もありやがて精神を壊してしまう彼女の切なさが上手く表現できていたと思います。ただ、ラストのほうは50歳過ぎの人物だということが分からないくらい最後まで若々しい雰囲気だったのが少し残念かなぁ。年を重ねた人の哀愁みたいな部分も出せたらもっとよかったかもしれません。
でも、あのラストのアンディの手紙に対するメリッサの短い言葉一つ一つはかなりグッときました。特に最後の台詞は胸にジーンと染みて涙が溢れました…。
宅間さんは幼少期から壮年期までとても繊細に読み分けていて、聞いていてアンディの成長していく姿というのが手に取るように感じることができました。幼少期のヤンチャでちょっとアホな感じは本当に可愛かったし、学生時代に色んな経験をして大人の階段を登った姿も生き生きとしててよかった。一番グッときたのはやはりクライマックス部分。アンディのメリッサに対する気持ちの戸惑いと現実との間で苦しむ場面が聞いていてものすごく切なかった。大人ならではの渋みもあったし哀愁も感じられます。
そしてあのラスト…。押さえ込んできた感情が一気に噴出したかのようなあの涙…。手紙もまともに読むことができないくらいのあの姿に、気がついたら私もボロ泣き(涙)。宅間さんの涙にはそこに真実があると感じさせられる。だから観ているこちらも気がつくと同調して泣いちゃってるんだよなぁ…。あのシーンはちょっと、言葉では言い尽くせないくらい泣けて仕方なかった。この人のファンになってよかったと感じさせられた瞬間でもありました。その涙をぬぐいながらのカーテンコール、可愛かったです(笑)。
初観劇の『ラヴ・レターズ』でしたが観に行けて本当によかったです。最初が宅間さんと大和田さんでよかった。つくづくいい役者だなぁと思いましたし。
おそらくこれから先も上演を繰り返していく作品だと思います。脚本は同じでも読み手によって全く色が変わってくると思うので、また来年も興味のある人が出演していたら観に行きたいです(今回のパンフレットも発売されるらしいしね 笑)。
※2010年の片岡愛之助さん×朝海ひかるさんの『ラヴ・レターズ』感想もよかったら↓