ロブ・マーシャル監督のミュージカル映画『NINE-ナイン-』を観に行ってきました。
この作品は日本でも舞台があって、確か昨年にはソフィアの松岡さん主演で上演されていましたが…私は5年くらい前の別所哲也さん主演のものを観に行っています。1回だけの観劇ではありましたが、音楽の素晴らしさにものすごく感動して…玄人系なミュージカルだと思いながらも妙な爽快感があったのを覚えています。
考えてみれば、私はその頃からモーリー・イェストンの音楽に魅せられていたのかもしれません。 そう、これは私が熱狂したミュージカル『タイタニック』『ファントム』の作曲者・モーリー・イェストンの作品なんです!5年前の懐かしさもあったし、やはりこれは観に行かなきゃ!な映画だったわけです(笑)。
映画を見て感じたのはミュージカル部分と芝居部分が分離してたなということだったかな。『マンマ・ミーア』や『オペラ座の怪人』のようにストーリーの中に歌が入り込んでくるというよりも、ストーリーの途中でショー的な感じでミュージカル部分が紛れ込んでくる感じ。
主に、主人公のグイードの妄想部分でミュージカルシーンが出てくることが多かったです。それはそれでなかなか面白い見せ方だなと思いました。
ただ舞台を観に行ったときも感じたのですが…、誰にでも分かりやすいストーリーではないかもというのはやはり思いました。
天才と言われる映画監督グイードが大スランプに陥って精神的に混乱をきたしているなかで、彼が関わった数々の女性が登場して愛を囁いてくる…と、大雑把に言えばこんな流れなんですが(笑)時折時代が逆行して子供時代のグイードが出てきたりと全体的にはグイードの混乱する精神世界を一緒にさまよう感覚になるって映画かな。
ちなみにタイトルの「NINE」の意味ですが、これはグイード・コンティーニの精神年齢が9歳の頃の自分で立ち止まっているというところからきています。神学校の厳しい生活環境の中で、9歳のグイードはある出来事に遭遇する。そのときの強烈な経験が彼の中でトラウマのように年を経てもずっと生き続けているんですよね。
9歳の心が残る自分とどう向き合って受け止めていくのか、そのことにグイードがどのように辿りついいていくのかみたいな部分がこの作品の鍵になってると思うのですが、私はどちらかというと映画よりも舞台のほうがそのドラマ性に感動できた気がします。
映画ではとにかく女優さんたちの迫力に圧倒!すごい人たちがワンサカ出てます(笑)。 ペネロペ・クルスの猫みたいなカルラは色気があるのになんだか可愛くて憎めない感じ。「コール・フロム・ザ・バチカン」でのアクションは女性の私でも目を奪われました(笑)。
舞台でも印象的だったあのロープアクションもあって懐かしいなぁと思ったり(舞台はもっと印象的な演出だったけど)。ジュディ・ディンチのあの圧倒的な存在感も素晴らしかったし、ファーギー演じるサラギーナとアンサンブルによる砂を使ったシーンは一見の価値ありでした。
個人的に最もノったのはCMでも流れていたモーリー・イェストンによる書き下ろし新曲「シネマ・イタリアーノ」を歌うケイト・ハドソンのシーンだったかな。あれは素晴らしい楽曲でした。
対する男性主人公のグイードを演じたダニエル・デイルイスですが、精神的に参ってくたびれた感じが非常によく出ておりました。仕事や女性のことで苦悩しまくるシーンではなんだか色気もあったし。
でも、ちょっと女性が惹かれてやまない男性には見えなかったかなぁ…(苦笑)。くたびれた印象はあるんだけど女性に愛されまくる男性っていう雰囲気はあまり感じなかったかも。
見終わって感じたのは、やはり自分はモーリー・イェストンの音楽が本当に好きなんだということ。登場人物の内面を見事に表現したあの音楽は本当に素晴らしいし私の心にビリビリと響いてくる。ストーリーに迷ってもイェストンの音楽に浸って溺れるだけで幸せみたいな(笑)そんな映画でした。
ちなみに、アントニオ・バンデラスがグイードを演じていたBW版CDが発売されています。
バンデラスの歌声がなかなかいいですよ。彼のグイードも見てみたかった!