ミュージカル『メンフィス』 17.12.15マチネ

東京の新国立劇場で行われたミュージカル『メンフィス』を観てきました。これが2017年最後の観劇になります。

ちょうどその時期に関東の実家に帰省していたので、母親と一緒に観劇することができました。千穐楽を間近に控えていたので、上手く予定を合わせて観に行くことができてよかったです😅。


久々に訪れた新国立劇場。ここの中劇場は横に長い構造になっているのですが、比較的見やすいと思っているので、個人的にはけっこうお気に入りだったりします。
クリスマスも近いという事で、入り口にも飾り付けが。


劇場入ってすぐのところにあるクリスマスツリーも可愛かったです😊。
ちなみに、横のオペラシティホール入り口にはもっと巨大なクリスマスツリーがあるんですよね。今回は遠目からちょこっと見ただけでしたがwさすがの迫力でした。

以下、ネタバレを含んだ感想になります。

 

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2017.12.15マチネ公演 in 新国立劇場 中劇場(東京)

主なキャスト

  • ヒューイ・カルフーン:山本耕史
  • フェリシア・ファレル:濱田めぐみ
  • デルレイ:ジェロ
  • ゲーター:米倉利紀
  • ボビー:伊礼彼方
  • シモンズ:栗原英雄
  • グラディス:根岸季衣

全体感想

最初の日本版初演は2015年だったそうなのですが…私は全くのノーマークでそのことを知りませんでした😅。分かっていたら、観に行ったのに!!!なぜノーマークだったんだろう(苦笑)と後悔したほど・・・予想以上に素晴らしい作品でした😂😂。
見るのを楽しみにはしていたのですが、正直なところ、あまり期待を膨らませるみたいな感じではなかったんですよね。耕史くんに、濱メグさん、栗さんが出てるなら見応えがあるだろうなと・・・そんな程度。内容もほぼ何も予習しないまま観劇に臨みました。

そしたらどっこい・・・!!!いやぁ~~~、これほど魂が震えるような作品だとは思っていなかったので、本当にびっくりしました。こんな素晴らしいミュージカルがあったんだなと。今年観た作品の中では間違いなく3本の指に入ります👍。それくらい感動的な素敵な作品でした。

物語の舞台は1950年代のテネシー州のメンフィス。この州では白人と黒人の差別化が特に激しかった。ある日、地下にある黒人が集うクラブにふらりと若い白人男性ヒューイ(ヤマコーくん)がやってくる。オーナーのデルレイ(ジェロ)をはじめほとんどの黒人たちは彼の存在を疎ましく思い追い出そうとしますが、ヒューイはそれにもめげず歌を披露。デルレイの妹のフェリシア(濱メグさん)たちはその歌声に魅了され、次第に受入れモードに変わっていく。
デパートのレコード売場で黒人音楽をかけたことでクビになってしまったヒューイは白人向けラジオ局に自分を売り込みに回る。多くの場所で断られる中、WHDZのシモンズ(栗さん)は興味を示し、スッタモンダの末にそこでDJとして雇われることに。黒人音楽を流し、軽妙な語り口調で聴衆たちを魅了したヒューイは人気者に。白人たちも黒人音楽に興味を示すようになり、少しずつ差別の壁がなくなっていく。
ヒューイの魅力に心惹かれるようになったフェリシアは自らの楽曲を彼のラジオ局で披露。彼女の人気は上がっていき、ヒューイとフェリシアの恋仲も上手くいきかける。ところが、町を二人で歩いていた時にフェリシアが白人の暴漢に襲われてしまう。警官に抑えこまれてしまい助けることができなかったことを涙ながらに悔むヒューイ。
その後も二人は人目に付かないように愛情を深め、やがてヒューイはメンフィスのテレビ局の司会者としてもさらに人気を高めていく。そんなある日、二人にニューヨーク進出のチャンスが巡ってくる。しかしヒューイは黒人蔑視の傾向が強いニューヨーカーに嫌悪感を抱き乗り気ではない。対するフェリシアは自分の歌を広めたいという気持ちが強く、二人の関係は徐々に崩れていく…。

この作品の大きな核になっているのが、アメリカでの人種差別問題です。ミュージカルの題材になることも多い社会問題ですが、日本ではあまり馴染のない出来事なのでなかなかその複雑さを伝えるのは難しいところがあります。
しかし、この『メンフィス』は正面から白人と黒人の差別を描きながらも「音楽」の力でその理不尽さを打ち破っていくといった爽快感がありました。テーマは重いんだけど、黒人ミュージックを通してみんな一緒に楽しもうよ!といったシンプルなメッセージがストレートに胸に迫ってくるんですよね。たとえ肌の色が違っても、「良いもの」の感じ方はみんな一緒なんだと。

ヒューイは白人ですが、誰よりも黒人音楽を愛している。他の白人にもその素晴らしさをもっと知ってもらいたい…!彼はただその一心でラジオ局から革命を起こしていく。その心が次第に多くの人の心を掴み、白人と黒人が一緒に踊る場面が出てきた時にはなんだか心が震えました😭。表立っては黒人ミュージックを「良い」と言えなかった白人の若者たちは、ヒューイの熱意に動かされる形でそれに魅了されていく。

それでも差別が特に厳しい州ではあるので、様々な弊害も出てくる。その一番悲しい事件だったのが…ヒューイと歩いていたフェリシアが白人の暴漢に襲われてしまった場面でした。みんなラジオでフェリシアの歌声に魅了されて受け入れられそうな雰囲気もあっただけに…未だに黒人排除感情が根強いメンフィスの現状を目の当たりにして私も大きなショックを受けました。自分が暴行を受ければよかったんだと涙ながらに責めるヒューイの姿を見るのがとても辛かったです😭。
そんな重いシーンのとき、辛い過去のトラウマで言葉を発することができなかった米倉さん演じるゲーターが「Say A Prayer」を歌う。その美しく切ない歌声に涙が止まりませんでした😭😭。あまりにもやるせない事件だっただけに、彼の神聖な歌声が深く深く心に沁みわたり泣けて仕方なかったです。あぁ、音楽の力って本当にすごいんだなと実感した瞬間でもありました。

2幕では1幕ラストの重いシーンが嘘のように明るく華やかな世界が展開されます。ヒューイはラジオでの功績が認められてテレビのMCに昇格。パート勤めでいつも疲れた表情をしていた根岸さん演じる母親のグラディスが急に成金ママみたいになって出てきたのには笑いましたww。
変化といえば、伊礼くん演じるボビーが掃除夫からメインメンバーに華々しく転身してノリノリになっていたのも面白かったなぁ。フェリシアもニューヨークから声がかかるほど歌手として充実した日を過ごします。

しかし、順風満帆化と思われたときに少しずつ崩壊の足音が近づいてくる。これ、色んなドラマのあるあるだったりしますがww『メンフィス』もそのタイプ。
だけど、ヒューイとフェリシアは確実に愛を育んでいただけに・・・切なかったなぁ・・・あのすれ違いは😢。自由に黒人中心の番組をやれることに喜びを感じ満足していたヒューイに対し、もっと大きな世界で自分の歌を認めてほしいという気持ちが強まるフェリシア。彼女は差別の厳しいメンフィスよりも少しそれがゆるいと言われていたNYでヒューイと陽のあたる場所を歩きたいって想いもあったんだよね・・・。でも、ヒューイは黒人ダンサーを蔑視されたことも影響してNYに進出することには否定的。メンフィスの土地への愛着が強かったこともすれ違いの一つだったのかなぁ。

ヒューイがフェリシアに「君よりも僕の方が黒人らしいの心を持っているんじゃないか」って言ってしまった場面がものすごく見ていて刺さりました。傍から見ればそう感じる部分もあるけど、フェリシアはこれまで酷い差別を受け続けていたわけで…そこから何とか抜け出したいという想いは誰よりも強いんですよね。
だから、彼にだけはそんな言葉を言ってほしくなかったと思うと…すごく哀しく切ない気持ちになりました。

あと衝撃的だったのが、テレビ放送中に出演中だったフェリシアに想い余ってヒューイがキスをしてしまう場面。差別意識が強い時代の中で、白人が堂々と黒人にキスをすることがどんなに危険な行為だったか。
ヒューイは離れていきそうなフェリシアの気持ちを何とか繋ぎとめたかっただけなんですよね…。だけど世界進出を視野に入れていたフェリシアにとってはヒューイの行動は迷惑でしかなく…「こんなことしてほしくなかった」と悲しく告げる。めちゃめちゃ切なくて泣けました😭😭。この事件がきっかけになってヒューイはクビにされてしまいます…。

そしてクライマックス。年月が過ぎたある日、落ちぶれたラジオDJを細々と続けていたヒューイを成功したフェリシアが訪ねてくる。すべてがあの時と変わってしまった二人の関係。それでもフェリシアは自分の出演する番組を見に来てほしいとヒューイに告げます。気まずい想いからそれを拒絶した彼が最後の最後に起こした行動。もう、あの演出もずるい!!心が震えて号泣してしまいました😭😭😭。
あぁ~~、このミュージカルに出会ってよかったって心から思えるクライマックスでした。

観劇前にSNSで公式さんやキャストさんたちが盛んに「ハッカドゥーー!!」と言いまくっていたのがすごく気になっていたのですが(笑)ようやくその意味が分かりました。もう見終った後には何度も言ってしまいたくなる!!親愛を込めて・・・

ハッカドゥーーー!!!

https://twitter.com/megumihamada/status/942216415314001920

カンパニーの皆さん、ありがとう!

 

主なキャスト感想

山本耕史くん(ヒューイ)

今回は演出も担当したという耕史くん、いやはやもう、素晴らしいという言葉しか出てこなかったですよ😆!!演じるだけでも大変だというのに、セリや盆を上手く活用してなおかつ躍動感あふれる舞台に仕上げた手腕・・・脱帽です。
今回一番感じたのは、彼がこの舞台を誰よりもものすごく愛しているんだなという事。演出を担当したこともそうですが、それ以上にヒューイというキャラクターに耕史くんの魂が宿っているような気がして…何度も心が震えました。彼の出演する舞台はこれまで何度も観てきましたが、こんなに感動させられたのは初めてだったかもしれない。歌の力がとにかく本当に素晴らしかったんですよ!!最初の「ザ・ミュージック・オブ・マイ・ソウル」のナンバーから思わず涙がこみ上げたほどだったので。歌も芝居も最高級のものを見せてもらいました!!
あ、一カ所だけセリフが上手く言えなくて「もう一度やらせてくれ」って出直したのは笑ったww。それが許されるシーンだっただけにwこういうことができるのもさすが耕史くんだなぁと思いました😊。

濱田めぐみさん(フェリシア)

今回はこれまでと違って黒人系ミュージックを歌うシーンが多かったメグさん。この方の歌声は劇団四季にいた時からもう圧倒的に素晴らしいというのは分かっていたんですけど…ものすごい深い歌声で圧巻の歌唱力😆😆!!!むしろ、本当のゴスペルシンガーではないかと錯覚してしまうほどリアリティのある迫力ボイスに心を大いに震わさせられました
ソフトなポップス系から力強いガンガン前に出ていくロック調のものまで、完璧に歌いこなしていて魅了されっぱなしでしたよ。やはり濱メグさんの歌声は国宝級だと思う✨。あれは本場の人にも絶対負けてないよ。
歌だけではなく、繊細なフェリシアの心情を巧みに表現する芝居力も健在。ヒューイのことを愛しているのにその想いが上手く伝わらないもどかしさの場面とか…めちゃめちゃ切なかったです😢。歌も芝居も完璧だったメグさん、本当に素晴らしかった!!

ジェロくん(デルレイ)

最初、「あの演歌歌ってたジェロくんがミュージカル!?」ってビックリしたんだけど…歌唱力はさすがでしたね!特にオープニングの「Underground」のナンバーの迫力は最高でした。
ただ、セリフのお芝居になるとやはり慣れていないのかちょっと棒読みみたいになってしまっていたのが残念。彼の役は妹のフェリシアをものすごく大切にしているあまり、ヒューイのことを受け入れられないみたいなちょっと難しいキャラだったんですが…そこの部分があまり上手く伝わらなかったのが惜しかったかなぁ。
見た目はものすごくリアルなんだけどね。再演を重ねて行けばもっとスムーズなセリフ回しができるようになるかも。頑張ってほしいです。

米倉利紀さん(ゲーター)

舞台後半まで米倉さんがどこに出演しているのか全く分からなかったww。そのくらいメイクがリアル黒人で・・・1幕クライマックスで初めて歌を披露した時に「これが米倉さんだったのか!!」とビックリしました(笑)。あれ、気づかない人も多かったんじゃないかな😅。
久しぶりにミュージカルで米倉さんを見ましたが、やっぱりあの深く温かい声色は最高に心に響きますね~。1幕クライマックスは思わず涙が出ましたよ。あまり動きが多いキャラではなかったんですが、ちょこちょこ面白い行動を見せていて何度かクスっとさせられました。

伊礼彼方くん(ボビー)

伊礼くんの役は地下の黒人クラブの場面から登場してきたんだけど、セリフもないし脇で歌を聞いてニコニコしてたりすることが多かったので最初はあまり目立ってないんですよね。何度か見直して「あれ?伊礼くん??いや、アンサンブルさんか??」と疑問に思ったこともあったくらい(笑)存在感消してたのがさすが😁。ヒューイがラジオ局でDJとして雇われる最初の時も脇でモップ持って掃除してるだけだったので気づかれにくい感じでしたがww、セリフが出てきてやっと確信(笑)。あの、存在感が薄いとこからどんどん濃くなっていく過程がすごく面白かったです。
変わると言えば2幕でしょう!!あの豹変っぷりはビックリしたww。キラキラ衣装にまで出世、ノリノリのロックまで歌っちゃう。伊礼くんには大いに楽しませてもらいました。

栗原英雄さん(シモンズ)

シモンズはヒューイを面白そうだとしてラジオDJに雇う人物なんですが、最初から最後まで彼に翻弄されっぱなしで気の毒やら面白いやら(笑)。最初も勝手にラジオブースに入られちゃって、必死に扉を開けようとする姿とかめっちゃコミカルで面白かったです😁。そのあとも、ヒューイの行動にアタフタさせられっぱなしで、でもそのおかげで何だかどんどん良い想いもしていっちゃってみたいなww。ドタバタしているうちに棚ボタ的美味しいことになっちゃったのが笑えました😂。ナプキンかけてハンバーガーかじってポテト片手に舞台を横切ったりとなかなかの破天荒っぷりw。最初、栗さんはシリアスパートの役かと予想していただけに、いい意味で裏切られました(笑)。
しかし、2幕後半でヒューイにクビを宣告する場面はものすごく切なかったです。なんだかんだ言いながらもシモンズはヒューイのことを買っていたし人としても気に入っていたんだと思うんですよ。だからこそ「お前の時代はもう終わったんだ」と最後通告しなければならない役目を引き受けた。このセリフを言う時、栗さん、涙声になってて・・・見ているこちらも思わずウルっときました😢。こういう緩急つけた芝居はさすがだなぁと思いました。
一つだけ残念だと思ったのが、ソロナンバーがなかったことかな。栗さんは歌って踊れる役者さんなので😉。カテコでのターンの美しさは目を惹きました✨

根岸季衣さん(グラディス)

根岸さんをミュージカルで見たのはたぶんこれが初めてだったと思うのですが、すごく歌がお上手でビックリしました!!2幕にソロの大きなナンバーがあるんですけど、動く台に乗せられたりしながらも堂々の歌いっぷり。素晴らしかったです。
グラディスはヒューイの母親で、息子が黒人であるフェリシアと付き合うことに不安を抱き反対しているのですが、月日が経っていくうちにフェリシアへの印象が変わっていきます。最後には彼女を思いやるようなセリフも出てきて、それにはかなりグッときましたね😢。
最初は疲れ果てたような雰囲気だったのに、ヒューイが出世するとお母さんが急に派手派手な衣装に身を包んで大きな顔しちゃうっていうの…あれ、かなり笑いました(笑)。気難しいキャラだったけど憎めないお母さんを熱演。楽しませてもらいました😀。

 

後述

『メンフィス』のキャッチフレーズ「世界を動かしたのはいつも音楽だった」っていうの、本当にこの作品にピッタリだなぁと思いました。ストーリーも楽曲も本当に素晴らしくて、幕間に思わず海外版CDを購入してしまったほど(母も全く同じ行動を取ってましたww)。気持ち高ぶって海外版CD買ったのって、今年は『パレード』以来ですよ😆。

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いつかは日本版もぜひ出してほしいです。

そして疑問に思ったこと・・・なぜこの作品が関西で上演されないのか!??絶対盛り上がると思うんだよなぁ。関西の観劇ファンはとてもノリがいいので、かなりウケると見たんですが。ぜひぜひ!!再演時には関西でもお願いしますっっ😆。

終演後にはクリスマス限定イベントなるものが行われました。それもすごく楽しかったので次の記事で少し報告したいと思います。

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