ミュージカル『ピピン -PIPPIN-』大阪公演 2022.09.27 大千穐楽

ミュージカル『ピピン』を観に大阪遠征してきました。

チケットを確保した時には都合のいい日程が取れたという認識だったのですが、後日になってその日が大千穐楽だと知ってビックリw。思いがけずとても貴重な公演を観ることができてラッキーでした。

ちょうどこの時期は自身の引っ越し間近でバタバタしていましたが、3年前に”再演されたら絶対観に行く”と思えたくらい大好きな作品なので足を運ばない選択肢は私の中ではなかった。
ただ、観劇日が某大型行事と偶然重なってしまったため、それが決まった時には上演されるのかハラハラさせられたものでした。まさかコロナのこと以外で上演の有無に気を揉むことになろうとは…(汗)。無事に大千穐楽が上演されて本当に良かったです。

コロナといえば、残念ながら東京の後半半分が上演できなくなってしまったという悲劇に見舞われた今公演…。日本の最高峰レベルの舞台がこうして中止に追い込まれてしまうというのは実に悲しいことで(涙)。少し収まりを見せてきたようには思えてもまだまだ油断ができない。だけど、この舞台だけは全公演完走してほしかったです…。本当にすごい作品なので。
大阪公演もどうなるのか不透明な情勢でしたが、数日間とはいえ全ての大阪日程を上演することができて本当に良かった。再再演が決まったときには、今度こそ、全公演完走することができますように(祈)。できるだけ多くの人にこの作品の凄さを体感してほしいので。

大阪のお客さんは本当に熱くて、特にサーカスのシーンになると必ず手拍子が鳴り響きパフォーマーの皆さんの背中を押しているようでした。また、ちょっとでもノリの良いナンバーが始まると自然発生的に手拍子が起こってたり。リーディングプレーヤーのちょっとしたツッコミ系のセリフには笑いもあったりでとにかく反応がとても素直。カテコの最後まで本当に盛り上がっていました。

大千穐楽カテコについては最後の追記でちょこっとレポします。

以下大いなるネタバレを含んだ感想になります。ご注意ください。

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2022.09.27マチネ 大阪公演-大千穐楽- in オリックス劇場(大阪)

主なキャスト

  • ピピン:森崎ウィン
  • リーディングプレイヤー:Crystal Kay(クリスタル・ケイ)
  • チャールズ:今井清隆
  • ファストラーダ:霧矢大夢
  • ルイス:岡田亮輔
  • キャサリン:愛加あゆ
  • バーサ:中尾ミエ
  • テオ:高畑 遼大

高畑くんが演じたテオはキャサリンの連れ子で最初はピピンに反抗的な態度を取ってるんだけど、ある出来事をきっかけに心を開いていくという繊細な役柄。ちょっとコミカルに多感で難しそうな少年をうまく表現していたと思います。それから、ラストにアカペラのソロがあるんですが…このときの歌声がめちゃめちゃ綺麗でビックリ!!聴いていて心が洗われるようだった。男の子は声変わりがあるのであの声が聞ける期間は限られてくると思うのでとても貴重な瞬間に立ち会えてよかったです。もし今ラブネバやってたらグスタフ役でも見てみたかったかも。

アンサンブルには今回も海外からのキャストさんが4人参加されていました。本当は5人体制だったそうですが、残念ながらお一人は稽古中の怪我で出演を断念されてしまったのだとか…。一歩間違えれば大怪我するパフォーマンスの連続ですから、よほどのことだったのではないかと思うと胸が痛みます…。どうか一日も早く元気に回復されますように。

それにしても、あの超絶パフォーマンスを4人でこなしていくというのは本当に只者ではありませんっ!!来日版を含めて3回目の「ピピン」観劇なのでサーカスパフォーマンスは頭に入っているはずなのですが、それでも本当に手に汗を握るシーンの連続!!人間のできることの可能性ってどこまで広がっていくのだろうかと驚愕させられっぱなしでした。

特にオライオン・グリフィスさんが凄すぎた!!何パックにも割れた美しく強靭な筋肉、力強い迫力のパフォーマンス、どこをとっても圧巻で最高!!特に2幕頭の♪アントラクト♪のときの”彼にしかできない”大技はまさに驚愕の一言です。一体どんな体幹してるんだ!??
でも、最初ちょっとぐらついたときにみんなが「頑張って!!」みたいに鼓舞するシーンがあるんですが、その声援を受けたオライオンさんが「大阪、おおきにーーー!!」と大阪弁で叫んでいたのがめっちゃ可愛くてその時だけはちょっと萌えました(笑)。

日本人のパフォーマーのみなさんも全く負けてなかった!!それが本当にすごくて鳥肌に次ぐ鳥肌。しかも、あのしなやかで人間離れした技を繰り出しながら歌も完璧に歌ってますからね。どれだけすごい稽古を重ねてきたのかがよぉぉーーく伝わってきました。それだけに、全公演完走させてあげたかった。

概要とあらすじについては3年前のレポート参照

上演時間は1幕75分、2幕60分、休憩20分の合計約2時間35分。休憩時間が短いのでトイレ行列が結構えげつないことになってました(汗)。オリックス劇場は観劇前は飲み物控えたほうがいいかも。

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全体感想

体感時間、あっという間!!圧倒圧倒の連続で気がついたらフィナーレに。そのくらい魅力に溢れた日本版『ピピン』再演、本当に最高だった!

この作品の凄さは、サーカスとミュージカルが一体化して最高のエンターテイメントに仕上がっていることだと思います。一見すると別物に思える2つのエンタメではありますが、「ピピン」は一つの作品として見事にまとまっている。手に汗握るサーカスの場面がストーリーの邪魔をすることなく、それどころかさらなる彩りを与えていることが本当にすごいと改めて思いました。

サーカスパフォーマンスは圧巻の一言です。あれを日本で見られるなんてほんとすごいこと。全カンパニーの絶対的な信頼と絆がなければできないと思います。少しでも呼吸が乱れたら最悪命の危機とすら思える場面の連続で、あのドキドキハラハラ感を味わえるミュージカルはおそらく『ピピン』くらいしか無いんじゃなかろうか。そういった意味でも、固い絆で結ばれた皆さんのパフォーマンスを目の当たりにできたことはとても貴重な体験だったし感動的でした。

また、全編通してのボブ・フォッシー振り付けダンスが見ていて本当に楽しいしめっちゃかっこいい。ミュージカル『シカゴ』を思い起こさせるようなダンスシーンもあったりして、知っている人が見れば「おぉっ」と思う所も多いかもしれません。あのダンスはかなりの難易度だと思うんだけど、みなさん自然に難なくこなしていて本当に圧巻のショーだった。

さらに作中に出てくる楽曲がまたどれも本当に素晴らしい!!一度聴いたら頭の中に残るようなドラマチックで心躍るナンバーが目白押し。そのいくつかを少し挙げながらストーリーについて振り返りたいと思います(少し長いw)。

オープニングでリーディングプレイヤー(LP)がサーカス一座を従えながら歌う♪Magic to Do♪が本当に素晴らしすぎ…!!「Journey, 旅に出ようよ、Journey, 見たこともない」のフレーズを聞いた瞬間なんか気がついたら涙があふれるほど心が震えてたよ(涙)。これ、来日公演で初めた見たときもすごく感動してずっと頭に残り続けてるナンバーなんですよね。客席の心をのっけからグッと掴んでいく旋律とフレーズが本当に素晴らしくて最高です。このナンバーは他のシーンでも形を変えてちょいちょい出てくるのですごく耳に残りやすいと思います。

一座の紹介が一通り終わったあと、めちゃめちゃ印象的な演出で今回の物語の主人公である”ピピン”が登場します。ここは動画紹介でも明かしていないくらいでしたからね。最初に見た時は私も「おぉっ!!」とビビったものでした(笑)。
実はこの”ピピン”と名付けられた青年はサーカス一座のなかの新人俳優で、今回の役柄を演じるのが初めてという設定。そんな彼が望むのは、ドラマチックなやりがいのある人生を送ること。現状を飛び越えてなにか違う大きな世界へ飛び出したいと歌うのが♪Corner of the Sky♪です。これがまた超名曲!!清々しくて透き通るような旋律の中に、まだ見ぬ新しい未来の輝きが感じられるような…非情にドラマチックで爽やかなナンバーだと思います。

このナンバーを機に青年はLPがお膳立てしていく世界観へ没入しいくわけで。その劇中劇のもとになっているのが神聖ローマ帝国の後継者ピピンの物語。学問優秀で品行方正だった一人の青年がまだ見ぬ世界観を求めて様々な体験をしていく。戦争、奔放な性、そして父の代わりに王位につくこと。でも、何を体験しても彼の心は満たされない。

戦争の場面はけっこうパフォーマンス的要素が多くて、エグっと思えるようなシーンでもどこかクスリとしちゃうような演出になっているのが印象的です。特に「首」が生前を語る場面とかは見た目は「こわっ」ってなるんだけど、”彼”自身がアッケラカンとしてるのでなんだか面白く思えちゃうのが不思議面白い。

性の場面もけっこう濃厚な表現もあるんだけど、サーカス団のパフォーマンスの一貫としてのショー的要素が非情に強いので厭らしさは感じられない。むしろ「すごっ」の連続。こういう風に見えるのもこの作品の凄さの一つだと思います。

そして、空虚な心が埋められないままピピンが祖母のバーサに会いに行く場面へ。ここはもう、1幕のクライマックスと言っても過言ではない超見ごたえ満点のシーンばかり!!なんと言っても、70歳超えのおばあちゃんが筋肉隆々のたくましいパフォーマーのお兄さんと一緒に空中ブランコに乗りながらいろんなポージングをして歌うわけですから、もう鳥肌まみれですよ(中尾ミエさんの完走のところでこれはもう少し述べます)。一つ一つのパフォーマンスに拍手喝采の嵐でめちゃめちゃ盛り上がりました!
この場面、とにかく見た目の凄さに圧倒されまくって驚愕だらけなんですけど…今回はもう一つ個人的に心に刺さったところがありまして。人生に迷うピピンに対して「この歌4番まであるんだからじっくり聞いて」とバーサが茶目っ気たっぷりに歌い出す。その中で歌われる歌詞がめちゃめちゃ素敵なんですよね。

「さぁ、楽しもうよ。残りの時間を大事に。季節は去っていく、あっという間に」

この歌詞が4回繰り返されて、途中から歌詞が書かれた幕が下りてくるわけで。これ、コロナ禍前は客席も一緒に歌いましょうって演出だったんですよね、たしか。今回は心のなかで一緒に歌って!って感じになっちゃったのが少し寂しかったんだけど、それよりこのフレーズが個人的にすごく沁みてねぇ…。
私も40代後半を迎え、ここ最近はふと”残りの人生の時間がもう半分以下になってしまったのか”と漠然と思うことが多くなった。今は特に大きい病を持っているわけではないけれど、年齢的に残り時間に思いを馳せることが多くなってセンチになることが増えました。そんな時期に元気いっぱいのバーサのこのナンバーを聞いて、すごく勇気をもらえたような気がして・・・気がついたら涙がぼろぼろ溢れ号泣してしまっていました(涙)。一度きりの人生、もっと大事に楽しく過ごしたいって改めて思えたな。ありがとう、バーサおばあちゃん!

大好きなおばあちゃんの愛情のこもった歌を聞いたピピンではありましたが、結局それだけでは自分の心は満たされない。そんなときに父であるチャールズ王が暴政を行っている話が耳に入ってきて憤慨し、自らが王になる決意をします。

そう仕向けるようにもっていったのが義理の母ファストラーダで、実の息子であるルイスに王位を継がせるためにピピンに夫であるチャールズを始末させるよう画策。これをアッケラカンと華麗なダンスとともにマジック披露しながら歌うわけですから、不穏な場面なのになぜか魅了されてしまう不思議。
このミュージカルって、メインの登場人物全員にしっかりとした見せ場があるのがすごくいいんだよねぇ。

ファストラーダの策に乗せられたピピンは父を教会で刺してしまうわけですが、ここのやり取りもシリアスなようでコミカルさも滲ませていて実に面白い。グサッとなるシーンは結構前ぶりなく突然なのでちょっとびっくりします(汗)。
そしてついにピピンが王位に就くことが決まるわけで、これが1幕ラストの♪Morning Glow(朝日)♪!!超名曲!!!キャスト全員でピピンをもり立てながら歌い上げていく旋律が最高に盛り上がります!!これも気がついたら涙しながら聴いてしまってたよ…。素晴らしかった!!

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2幕は再びサーカス一座の圧巻パフォーマンスから始まるのですが、1幕からさらにパワーアップしてるのでのっけからドキドキハラハラの連続です。そこからのピピンの王様としての仕事ぶりが始まるわけですが、どちらにも良い顔しているうちに政治が成り立たなくなって挫折。ここで彼は初めて父親が暴政を引いた理由を悟り王位を簡単に放棄することに。
この場面のときにピピンが父親を復活させる場面が出てくるわけで。刺された状態のチャールズが再び登場したかと思うとピピンがエイヤとそれを引き抜いた途端に復活ww。この呆気なさが良いんですよね。

そしてピピンは新しいやりがいを求めて再び旅に出るんだけど、結局何も見いだせなくて行き倒れ状態にw。そんな彼を拾う女性が登場。このときにLPが「キャサリン、登場!」とお膳立てするわけですが、キャサリンを演じる女優は準備に手間取ってなかなか出てこない。ここで客席側は”そういえばこれは劇中劇だった”と気付かされる。このあたりのドラマの持って行き方が面白いです。

不器用でちょっとトロい”キャサリン”にLPは苛立ちを隠せない。ここの関係性は劇中劇ではなくて現実世界での出来事のドラマなわけで、舞台の上に2つの世界が見えてくる。ちなみにキャサリン役の女優は1幕では小さな自転車に乗りながらシーンの紹介パネルを出してきたりと雑用係をこなしてるっていうのが興味深いんですよね。特に紹介されていないんだけど、ちゃんと1幕から姿を見せていて彼女の立場みたいなものをチラ見せしてる。

行き倒れたピピンを介抱しながらキャサリンが歌う♪And There He Was♪は明るさと単純さが入り混じった彼女の性格が感じられて楽しいナンバー。ピピンとのちぐはぐなやり取りも面白いです。ここでキャサリンはピピンに接していくうちにテンションが上って最後とんでもないロングトーンを披露するんですよね。これがめっちゃ圧巻で大阪も拍手喝采でした。

しばらくキャサリンのもとで地道な生活を始めるピピンでしたが、畑仕事にもすぐに飽きちゃって放り出す始末。ここでアンサンブルサンたちが家畜の役も演じたりしてるんですが、豚さんたちがテンション上がりまくって派手に”やらかし”てるのがなんともww。
そんなある日、キャサリンの連れ子で生意気な少年・テオがピピンに「アヒルの具合が悪いんだ」と助けを求めてくる。そういえば、最初にアヒルを見せられ名前が何かを聞かれたときにウィンくんピピンが「ジェイミー?」って答えてたのは面白かったな(彼が出演したミュージカルの名前に掛けてたんじゃないかとw)。

テオの頼みを何度か断りその場を去ろうとしたピピンでしたが、結局捨て置くことができずにアヒルの看病を手伝うことに。でも結局アヒルは助からなくて…テオはふさぎ込んでこもってしまう。すると不思議とピピンは彼を励ますために全力を上げ始める。ここの家庭は結構サラリと描かれているので、今ひとつその心変わりについて理解が追いつかないところはあったのですが(汗)、一生懸命気を引こうと頑張る姿は何だかかわいい。
そしていつしかピピンはキャサリンにも思いを寄せるようになるわけですが、ここである”予想外の出来事”が起こるわけで。それに動揺したキャサリンがいつもどおりの芝居ができなくなりまたまたLPを怒らせる結果に。ここは、現実世界と劇中劇の世界が一緒に存在しているような場面になっているのが印象深いです。

そして、徐々に現実とピピンのための世界観とが融合していくように二人の距離が近づいていく。ベッドでのスッタモンダはアメリカ的だなぁと思いましたがw、ここもサーカスパフォーマンスで表現してしまうところがすごいです(笑)。

ところが、めっちゃいい雰囲気になったときにピピンは「自分の求めてるやりがいはここにはない」と言ってキャサリンとテオとの生活を捨てて出ていってしまう(二人で歌った♪Love Song(ラブ・ソング)♪は最高に素敵な甘いナンバーだったのに!)。必死に止めようとしても叶わなかったキャサリンは悲しげな瞳で♪I Guess I'll Miss the Man(恋しくなるわ)♪を歌うシーンはとても印象深い。
なぜなら、キャサリンが歌い始めたときにLPが怖い顔をして近づいてきて「あなたの歌う場面じゃないでしょ」と一喝するからです。つまりこのナンバーは、キャサリンを演じている女優自身の心情を歌ったものであることがわかります。ピピンとの恋愛シーンを演じているうちに、彼女は虚構の世界を超えて本気で彼自身に恋心を抱いてしまったんですよね…。これがめちゃめちゃ切なくて泣けました(涙)。

その後、「まだ僕には大きなやりがいのある人生が待っていると思うのだ」とさらなる刺激的な人生を求めるピピンがLPのもとを訪ねたところでとんでもない展開が起こります。冒頭から「もう出ても良い?」と顔を出しては「まだ早い」とダメ出し食らっていたパフォーマーの出番がついに訪れるという演出が面白い。このために彼はチョイ出しされていたのか!とびっくりしますw。
そしてLPがピピンのために用意した「一度見たら忘れられないとんでもないクライマックス」がついに登場。それを目の当たりにしたときにピピンは初めて自分が本当に望んでいたものが何だったのかを悟るんですよね。ここの演出がまたハラハラドキドキもので手に汗握りまくり!!初演に見たときもギョッとさせられたけど、再演の今回もやはり見ていて背筋がちょっと寒くなりました(汗)。

それにしても、こういう突拍子もない無茶振りがなければ本当の幸せの存在に気付けなかったピピンというのは…何だか他人には思えなかったなぁ。人は欲深い生き物だけれど、ないものねだりを続けた先に待っているのは「ドラマチックな死」しかないんだということを突きつけられているようで。
LPはピピンの最終決断に怒り心頭で最後は全てを撤退させてしまう。彼のドラマチックな人生を演出してここまできたのにすべてを無にされたわけですから、激怒してしまう気持ちも分からなくはないかなと今回思ってしまったかも。

2幕の「一度見たら忘れられないクライマックス」演出まではものすごく派手な印象が強かったこの作品ですが、最後の最後は意外なシーンで締めくくられる。誰も居なくなった舞台に佇んでいる着飾っていたものを剥ぎ取られた3人の寄り添う姿がとても胸に迫ってきます。だけどピピンと名付けられた青年は本当の幸せを見出すことができたのだから、結果的にはハッピーエンドかなと。
ところが、本当のラストシーンはその後に訪れる。これはリバイバル版から付け加えられたそうですが、めちゃめちゃ印象深いです。歴史は繰り返されていくという予感を感じさせるラストがすごくよかった。

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主なキャスト感想

森崎ウィンくん(ピピン役)

ウィンくんのミュージカル作品を観るのは今回が初めて。歌はミュージカル映画「CATS」の吹き替えを見たときに聞いて上手いなと思っていたので不安はありませんでした。

初演の城田くんに比べると、ウィンくんのピピンはすごく初々しくて無垢な印象が強く何色でも染まっていきそうな雰囲気があったのがとても良かったです。天真爛漫で純粋に「僕にはもっとやりがいと充実感溢れる人生が待っているはずだ」と信じて突き進んでいく。LPが用意した世界に飛び込んでいき全身でその体験を浴びながら自分探しに没頭していく芝居がとても清々しくて見ていて応援したくなる感じだったな。
それから、劇中でびっくりするような凄いパフォーマンスをする場面もあるのですが実に楽しそうにこなしていて見ていてドキドキしながらもワクワクさせられました。上半身の筋肉の付き方もすごい!!めっちゃ頑張ったんだろうなと思うと何だか胸が熱くなってしまった。

ただ、歌にパワーがもう一段階欲しかったかも。強く歌うところはちゃんと声が前に通っていたんだけど、あまり強く歌わないシーンになると何だか声が少しくぐもった感じになってしまい聞こえづらいなと思う事がちょいちょいありました。それだけが惜しい!!ピピンの雰囲気にはすごく合っていると感じたので、もう少し歌の力強さを出した上でもう一度チャレンジしてほしいなと思います。

Crystal Kayさん(リーディングプレイヤー役)

日本初演版で初めてみたときに「この役はケイさんにしかできない」と確信したのですが、今回はまたさらにその上をいっていたと思います!!とにかく劇場全体を支配していくようなあのパワーが半端ない。彼女の存在感が中心に合ってこその『ピピン』だなとすら思えたほど。それから眼力が半端なかったですね。特にキャサリンを睨みつけるときの視線がとにかく強烈!!まるで女豹のよう。

フォッシー振り付けのダンスも実に魅力的に踊りこなしていて、両手を広げながら腰をくねらせて進む動きもスムーズに妖しくカッコよく、見ていて一緒に踊りたくなるような衝動すら起こったほどだった(私はダンスはからっきしダメですがw)。それプラス、圧倒的でちょっとセクシーなハスキーボイスの歌声が加わるわけですから、もう言うことありません。ぜひ再再演があったらまた演じてほしいです。

愛加あゆさん(キャサリン役)

愛加さんは今回の再演から新しく仲間入りされた一人。以前、朗読劇『ラブレターズ』で拝見していましたが、その時の読みっぷりがとても素敵だったので今回もとても楽しみにしていました。

初演の宮澤エマさんに比べるとけっこう明るくてテンションが高いキャラクター作りされてるなと思ったかも。特にピピンを介抱するシーンのときのぶりっ子芝居はコケティッシュでちょっとデフォルメした感じなのが面白くて客席の笑いを大いに誘っておりました。
そんな彼女がピピンのふとした仕草に心揺らいでしまい思わず素の自分を出してしまうシーンは印象深かったです。ただ、最初のキャラがけっこうハイテンションでぶっ飛び娘っぽい感じだったのでちょっとそのあたりの変化が突然に見えちゃったかなというのはあったかも。もう少し抑えたテンションから入ったほうがラストシーンに向けての流れが自然だったかなぁ・・・なんて。

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中尾ミエ(バーサ役)

日本初演の時は前田美波里さんで見ていたので、中尾ミエさんバーサで観るのは今回が初めて。美波里さんよりもさらに年上とのことですが…ホンマでっか!???と聞き返したくなるほどの若々しいお姿にただただ驚愕いたしました。とても御年76には見えませぬ。

バーサは1幕で空中ブランコに乗りながらパフォーマンスする場面が出てくるのですが、その技の数々がもう圧巻の連続で。途中で筋肉が美しいオライオンさんに寄り添いながら「あら〜、素敵な男ねぇ」とアドリブを入れまくる余裕っぷりも披露。彼に寄り添う姿も実に色っぽくて…それでいて素晴らしい筋肉!!一体どんなトレーニングをしたらあれだけの体力を維持できるのでしょうか!

さらに空中ブランコに逆さまにぶら下がりながら歌うという常人にも真似できないパフォーマンスまで笑顔でやってのけますからね!まさに脅威としか言いようがありません。それに御本人が本当に楽しそうに演じているわけですよ。命がけのパフォーマンスをしながらもあれだけの笑顔でやりきるというのが本当にすごすぎて、もう何度拍手してもし足りないほどでした。

今井清隆さん(チャールズ役)はすごい暴君の役なのですが、台詞回しがものすごく軽妙で現代っ子みたいな感じで何故か可愛く見えてしまう。突然「うそぴょ〜〜ん!」なんて言葉も飛び出したりしてww。チャーミングでいながらきちんと威厳ある雰囲気も醸し出したお芝居は流石だなと思いました。

霧矢大夢さん(ファストラーダ役)はとにかくカッコいいママ!!強欲で実の息子を王位につけることしか考えてないような母親なのに、どこかコケティッシュで憎めないところがあるのが魅力的。それから、抜群のプロポーションから繰り出される超絶かっこいいソロダンスは見どころ満載!素晴らしかったです。

岡田亮輔くん(ルイス役)は最初から最後まで超ハイテンションキャラを大熱演!力は強いんだけどおバカっていうキャラを全力で演じきっていて最高でした!あれだけのパワーを持続させるのってけっこう大変だったと思うよ。力持ちのおバカキャラだけど憎めないって雰囲気が可愛かったな。

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後述(大千穐楽カテコ)

カテコでは、キャストの皆さんが感無量の表情で大盛り上がりしながらオールスタンディングとなった客席に応えていた姿がとても印象深かったです。っていうか、あのパフォーマンスを見せられたらもう立たずには居られないでしょう!!それくらい圧巻・鳥肌の連続だったので。

今回は大千穐楽ということだったので、メインキャストの皆さんから一言ずつ挨拶がありました。

ルイスを演じた岡田くんはまだまだテンションが抜けきらないといった様子で客席をさらに盛り上げようとハイテンションで拍手を求めまくってましたねww。「僕もピピンが大好きです!!また会いましょう!!!」といった感じのコメントをシャウトして興奮冷めやらぬな挨拶となっていました(拍手の盛り上がりがすごすぎてよく聞こえなかったw)。

キャサリンを演じた愛加さんは語る前からもうウルウルしまくってて、見ているこちらも思わずもらい泣きしそうになっちゃったよ…。「本当に色々なことがたくさんあったけど、スタッフやキャストそしてお客さんのおかげでここまでこれて!!」と涙ながらに感謝の気持を叫んでいた姿がとても印象的でした。東京で中止になってしまったこととかも頭よぎってたんだろうなと思うとこちらも涙…!!

霧矢さんはしっかりとした口調で明るくご挨拶されていましたが、そのなかで「みんなで支え合いながらここまできて…、この一座に参加できたことを心から誇りに思うしピピンに出演できたことは舞台人としての勲章です」と語られた言葉がとても心に響きました。キャストのみなさんも「勲章」という言葉を聞いて数人感極まりそうになっている方がいらっしゃったほど。

中尾さんは終わった後も余裕の表情で、とてもあんな凄いパフォーマンスをした後とは思えないくらいの清々しい雰囲気だったのが印象的です。いやもうホント脅威の76歳でしょう!!お若い!!「できなかった公演の分までみんなすごいエネルギーをこの舞台で放出してたと思います」と語られていて拍手喝采浴びていらっしゃいました。さらには「いくつになっても体を鍛えていれば何でもできますよ!特に高齢者の皆さん、一緒に頑張りましょう!!」とエールを送られていてキャストもお客さんも大盛り上がりとなっていました。いやほんと、中尾ミエさんからはすごい勇気もらいますよね。

今井さん「言おうと思っていたことをみんなが言ってくれちゃったんだけど」と少し照れくさそうに語られていた姿がとても可愛らしい。相変わらずちょっとおちゃめなところが今井さん素敵ですよね。だけど「この作品に出られたことは本当に僕の誇りです」と胸を張って仰っていた言葉がとても心に響いたな。

クリスタルケイさんはもう挨拶で一歩前に出たときから涙をこらえきれないような状況で…それを見て思わずもらい泣きしてしまった(涙)。「この作品に出られたことは私にとって勲章だし、一人ひとりが大切な仲間」と実感を込めたコメントにグッときたなぁ…。「まだ実感がわかないし、もう終わっちゃったんだね…」とキャストのみんなの顔を見ながら泣いてるケイさんの姿がまた涙を誘いましたよ(泣)。「もううまく喋れない」とちょっとグダグダになってしまうところもありましたが、それだけ感情が昂っていたということでしょう。これまでの辛くて大変だったことやコロナ中止のことも過ぎっていたと思います。最後は客席に向かって「いま世界中が大変な中でこんなにたくさんの方に足を運んでいただいて、本当にありがとうございました!」と感謝の言葉を叫んで〆られていました。

最後はウィンくん「僕達はキャストとして皆さんから沢山拍手を頂いたので、今度はここには見えないスタッフや本国へ帰国したスタッフ、そしてオーケストラの皆さんに盛大な拍手を!!」と支えてくれた全ての人への感謝の気持を伝えていた姿がとても好印象でした。こんな素直で思いやりのある彼だからこそ、あのピピンが演じられたんだろうなと改めて思いましたよ。

このあと2回くらい幕が開いて大盛りあがりのカーテンコール!!最高のラストを大阪で迎えることとなりました。
その後は規制退場となったのですが、今回私はけっこうな良席だったので順番が来るまでちょっと時間があって。すると閉じた幕の向こう側からカンパニーの皆さんたちが改めて盛り上がり検討を称え合う声が漏れ聞こえてきてまた胸が熱くなってしまった。他の客席に残って待っている人たちの耳にも聴こえてきたようで、自然発生的に閉じた幕の向こう側に向かって拍手が沸き起こっていたのもとても感動的な光景でしたね。私も思わず手を叩いていました。

久しぶりに大千穐楽の舞台を見たけれど、すべてを出し切ったキャストの皆さんの充実した表情が見れるのは本当に嬉しいものですね。これはやはり生ならではの感動。同じ思いを共有できたんだという気持ちが湧いてきて胸が一杯になりました。今回は一回のみの観劇だったけど、素晴らしい「旅」を体験することができて本当に嬉しかったです。またぜひぜひ再再演お願いしますっ!!!

あと、そろそろ日本語版のCDもほしいところ。映像化は難しいとしてもせめて音源…。日本の素晴らしいキャストの皆さんの歌声で聞き返したいなぁ。いつか実現しますように。

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