ミュージカル『ピピン -PIPPIN-』大阪公演 2019.07.12ソワレ

ミュージカル『ピピン』を観に大阪遠征してきました。

5月にオリックス劇場に来たときは3階席でしたがw、今回は1階席…しかも中央付近ほぼど真中というかなりベストポジションで非常に有意義な観劇となりました。

2015年にブロードウェイカンパニーが来日公演を行った時に渋谷のシアターオーブまで観に行ったことがあって。その時なぜ観に行こうかと思ったかというと、PR動画のなかのオープニング曲♪Magic to Do♪を聴いたときにすごいテンションが上がったからなんですよね。これを生で聴きたい!という一心で遠征したのを思い出しますw(当時は大阪に住んでましたが)。

その来日公演を観た時に思ったのが…これは日本版では実現できないだろうなということ。まるでサーカスのような超レベルの高いアクロバットをしながらミュージカルとして成立させてる作品で、ただただ本場モノの凄さに圧倒されてしまったんです。

※その当時の素直な私の感想w↓

なので、最初に日本版のピピンが上演されると聞いたときには正直ビックリしました。あれをそのままできる人材が揃うのか!?とそれが一番気になった。
来日版を見た時には英語ができないために字幕を追うの精一杯になることもあって100%堪能できなかった部分もあったので(汗)、日本語版で上演されるということに期待感もすごく高まったのですが…それと同時に本当にあのレベルを日本人キャストでできるのかということにもちょっと不安を抱いていました。

で…蓋を開けてみたら…

素晴らしいっっ!!いや~~~、ビックリしました、本当にあの時見た本場のレベルに負けないほどのクオリティの舞台だったもので。ただただ感動しました。これは観に行って大正解です!!


劇場入り口には色鮮やかな楽屋花がたくさん。大阪初日公演ということもあってとても華やかでした。

以下大いなるネタバレを含んだ感想です。

 

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2019.07.12ソワレ 大阪初日公演 in オリックス劇場(大阪)

主なキャスト

  • ピピン:城田優
  • リーディングプレイヤー:Crystal Kay(クリスタル・ケイ)
  • チャールズ:今井清隆
  • ファストラーダ:霧矢大夢
  • ルウィス:岡田亮輔
  • キャサリン:宮澤エマ
  • バーサ:前田美波里
  • テオ:日暮誠志朗


バーサとテオはWキャストになっていて、私が観劇した日は前田美波里さん日暮誠志朗くんでした。

日暮君が演じるテオは最初ちょっと生意気な小坊主なんだけどw、次第にピピンに心を開いていく役どころ。等身大の少年らしい雰囲気がとても良かったし、歌声がすごく綺麗でした。最近の子役の歌のレベルは本当に高くておどろされます。
そういえば、元広島カープで現在は野球解説者の新井貴浩さんから日暮くんにお花が来てました。関係があったりするのかな?

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あらすじと概要

ミュージカル『ピピン』がブロードウェイで初演されたのは1972年。演出と振り付けを担当したのは『シカゴ』や『キャバレー』などを手掛けたことでも有名なボブ・フォッシーでした。約5年間ロングランを果たし、トニー賞5部門を受賞しています。


Pippin (2013 Broadway Cast) 

作詞・作曲は『ゴッドスペル』や『ウィキッド』を手掛けているスティーヴン・シュワルツです。

日本で最初に上演されたのは1976年の帝劇公演。その後2007年にも銀河劇場で上演されました。

2013年、女性演出家のダイアン・パウルスが大胆で斬新な演出を手掛けて再演されブロードウェイで高い評価を受け、トニー賞もミュージカル再演賞やミュージカル演出賞など4部門を受賞。2015年には全米ツアーを終えたカンパニーが日本に来日して公演を行いました。私がオーブで観たのはその時の公演になります。
ちなみに、リーディングプレーヤーが女性キャストになったのは再演版からです。

そして、満を持して2019年…ついに日本語版が登場。演出は13年版とほぼ同じということで、かなりハードルの高い作品だったとは思いますが、ほんと、よくぞ上演してくれましたっ!という感謝の気持ちでいっぱいです。

簡単なあらすじは以下の通り。

旅芸人一座のショーが、今まさに始まろうとしている―。
カリスマ的なリーディングプレーヤーが登場し、観客を大いに魅了する。
人生という壮大な旅物語、ミステリアスな陰謀、心温まる笑いとロマンス、そして奇想天外なイリュージョン!永遠に忘れられないドラマが幕を開ける。

一座が披露するのは、若き王子ピピンの物語。

大学で学問を修めたピピンは、人生の大いなる目的を模索していた。
広い空のどこかに自分の居場所はあるのかと自問し、輝かしい未来を夢見ていた。
父・チャールズ王が統治する故郷に戻ったピピンだが、義母ファストラーダや貴族、廷臣ら取り巻きに邪魔され、父親となかなか触れあえない。
戦を控えたチャールズは、ファストラーダとの間に生まれたルイスら、兵士たちの戦意を奮い立たせていた。父に認めてもらいたいピピンは、戦への同行を志願する。

しかし、ピピンは戦の空虚さに気付き、もっと別の<特別な何か>(=Extraordinary)を求めて旅に出る。

公式HPより引用(一部)

紀元8世紀後半に実在したカール大帝とその息子ピピン王子の物語がベースになっていますが、この作品はその歴史的な人生を辿るストーリーはほとんど展開されません。極論を言えば、名前だけを借りたという印象。戦争や反乱といった展開は重なるところがあるものの、この作品の中では特に重要視されていません。
なので、ピピン王子の歴史の物語を期待して行くと肩透かしをくらうことになると思いますw。

基本的にこの物語は”劇中劇”で進んでいくというのが大きな特徴。旅芸人一座の中からそれぞれ登場人物を演じる役者がショー仕立てで物語を進行させていきます。なので衣装も簡易的なものが多いし、身軽に動けるようにレオタードちっくなものを着ている人が殆ど。
観ているこちらは”役者”が演じているキャラクターを追ってるのですが、後半のある場面で劇中劇から現実世界に引き戻される展開へと移行していきます。虚構から現実へと場面が変化した時にハッとさせられるのです。

2013年リメイク版から導入されたというラストシーンも非常に印象的で惹きつけられるものがあります。

度肝を抜くような圧倒的パフォーマンスの連続にテンションが上がった先に待ち受けているシビアな展開。この落差が見ていて衝撃的で不思議と心が熱くなる作品だと思います。

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全体感想

個人的には物語性のある作品が好きで、どちらかというとショー仕立てがメインのものはこれまでちょっと苦手意識がありましたし、いまも積極的に行こうとは思いません。おそらく、前回来日版を観ていなければ今回の日本語版もチョイスしていなかった可能性があります。

そういう意味では、来日版を観に行っておいてよかったなと思いました。ショー仕立てミュージカルが苦手な私ですが、この『ピピン』という作品にはそれまで抱いていたものとは全く違う熱い感情が湧き起ってきたからです。
とにかくパフォーマンスがホンマモンすぎる!というか…これまで感じたことのない圧倒的な感動の連続なのですよ。そして何よりすごいと思うのが、それが独立したショーではなく不思議なことに見事に”ミュージカル作品”の一部に馴染んでいたこと。これが私を惹きつけた大きな要因だと思います。

ただ、来日版は字幕を追うのが精いっぱいになることもあったりして…基本的にはパフォーマンスの凄さと音楽の素晴らしさに圧倒されて終わってしまった感が否めなかったw。ただただ本場の迫力に押されたっていう印象だったんですよね。
それゆえ、物語をほとんど忘れておりまして(笑)。逆にすごく新鮮な気持ちで観ることができたのでとても楽しく充実した観劇となりました。

幕が上がる数分前から幕の後ろからキャスト陣の気合の入った声が漏れ聞こえてくるのも新鮮。けっこう命がけのパフォーマンスの連続ですから、開演直前にテンションを上げていたんだと思います。なかなかこういう光景は味わうことがないのでなんだか自然と胸が熱くなりましたね。
さらに、オケのチューニング合わせの延長線上からバン!!って最初の音が始まるのもいい!こういう雰囲気すごく好きです。

「ピピン」が開幕する直前、城田優君がSNSで「一緒に盛り上がる作品です」とお願いの投稿をしていたのですが・・・まさに、この通りの雰囲気となってました。っていうか、お願いされなくてもそういう(それ以上かも)雰囲気になってたと思います、少なくとも大阪初日では。

リーディングプレーヤーが幕の内側から舞台に向かって歩いてくる時、影がどんどん大きくなってくる魅せ方も上手いです。演じるクリスタル・ケイさんが影の状態からパっと幕の外に出て登場した時のオリックス劇場客席から起こった万雷の拍手が凄かった。あれはテンション上がる!!
そしてオープニングナンバーの♪Magic to Do♪へと繋がるんですが、このナンバーが本当にリズム感もあるしドラマチックだし、何より聴いててゾクゾクするものがあるんですよね。

来日版のときもこれを生で聴きたいという気持ちから遠征したくらい、本当に大好きな曲です。振付のところどころにザ・”ボブ・フォッシー”的な動きが盛り込まれているのも見どころのひとつ。

しばらくは幕が開かず、リーディングプレーヤーの手引きによってこれから登場する人物を演じる役者たちがパッパっと顔を出してくる。チラ見せみたいな魅せ方なんですが、これもすごくシンプルなんだけど面白くて期待感が煽られる。主要人物が姿を見せるたびに大阪のお客さんから大きな拍手が沸き起こっていたのがとても印象的だった。

そして満を持してナンバーのクライマックスのところで幕が開いてパフォーマーが登場!!その華やかさといったら…!!ほんとこの一連の流れの見せ方が上手いなぁと感動しますよ。しかも、パフォーマーたちのアクションがこれまたのっけから本格的すぎて凄い。あれは一気に釘づけ状態になるっ!来日版で圧倒されたのとほぼ同じレベルの光景がそこに広がっていて胸が熱くなったよ…!

さらに、主人公のピピンの登場の仕方が最高です。
リーディングプレーヤーが紹介すると、舞台の中央に「PIPIN」と表現するパフォーマーが並びます。その文字列が見事。そして一番左で薄い膜が貼られたフラフープを掲げてる人がいるのですが、舞台奥からピピン役の城田優くんが勢いよく走ってきてその輪っかの中を突き破って登場するのです!!あの大柄な城田くんがよくあんな小さな輪っかをくぐり飛びできたなと、それだけでも本当に感動もの!!相当練習重ねたと思います。
それにしても、主人公の登場をここまで派手に印象的に演出したダイアンさんはホントすごいなと感心しちゃいますよね。

紹介されたときは「ピピン」って呼ばれていたけど、厳密に言うと登場したばかりの時はまだ彼は「ピピン」役ではない感じ。これからの物語を演じていける?という雰囲気になるのですが、ピピン役としての台詞を語り出すうちに自然と役に入っていく。
これから先の自分の人生の居場所はどこなんだろう、と歌う♪Corner of the Sky♪は名曲です!!

ピピン役を演じる青年と、”ピピン”との想いが交錯するようなそんな雰囲気すら感じさせられました。これがクライマックスで大きな意味を持ってきます。

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王子ピピンは暴君でもある父のチャールズ(カール大帝)に認められるため戦に参戦しますが、シーン的にはほぼコメディ仕立てになっていて客席からは大きな笑い声も漏れるほど。
一番面白いのは、腹違いの弟のルイスとのやりとり。ルイスは次の王位を内心では狙っていて腹黒いキャラではあるのですが、ピピンとのシーンではギスギスしたものが全くと言っていいほどない。傍から見るとじゃれ合ってる仲良し兄弟みたいで可愛いし動きがとにかく面白い。

そんな二人のワチャワチャした雰囲気を父のチャールズが歌の途中でツッコミ入れてきて笑いが起こる。こういう雰囲気は笑いの町とされる大阪では受け入れやすい展開なんじゃないかなって思ったw。
戦争シーンになっても、どこかコミカルでほとんど緊張感はありません。戦ってる戦士たちもどちらかというとダンスをしているかのような雰囲気だし、パフォーマンスも見ていて楽しめる。兵士の首が飛んじゃうっていうシーンはまるでマジックショーのよう。首のない兵士が動く場面なんかはどういう仕掛けになってるんだろうか??とそっちばかりが気になってしまったww。

そう、この舞台は大胆なパフォーマンスと同時に、いろんなところに挟まれてくるマジックも見どころの一つになってるんですよね。まさにエンターテイメントの宝庫みたいなシーンが盛りだくさんで視覚的に常に楽しませてくれる。
しかも、それが上手い具合にストーリーに馴染んで見えるから違和感がほとんどないのです。ショーを観てるんだけど、そこには話の流れもあって…みたいな。非常に不思議な感覚がします。まぁ、ストーリー重視の作品とはだいぶ毛色が違うから成り立つんだと思うんですけどね。

戦争を経験して自分の居場所を見つけようとしたピピンでしたが、結局それには満足できずに様々な体験をしていくことになります。
この自分探しに出るピピンの展開が1幕中盤に出てくるのですが…ここはなんといってもパフォーマーの圧倒的なアクロバットが一番の見どころ。特にバランスボールを使ったパフォーマンスや、高く掲げたフラフープを飛び越えるパフォーマンスは圧巻の一言です。来日版で観た時に衝撃を受けたことがまざまざと蘇ってきましたよ。それと同じレベルのものを日本版でも見れるとは思ってなかったので、本当に感激しました。

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色んな体験を重ねながらも満足を得られないピピンは祖母のバーサを尋ねてその胸の内を相談します。この、ピピンとおばあちゃんとのシーンが1幕の大きな見せ場の一つでもあります。

来日版を観た時に「日本では無理だろうな」と思った一つがこのシーン。
けっこう年を重ねたバーサ役の女優さんが空中ブランコに吊られて様々なアクションを起こしていて、これがもう本当に凄かったんですよ。あれをできる日本の年齢重ねた女優さんはなかなか見つからないだろうって思ったんですよね。

それが…日本にも実在したことにホント驚いた!演じたのは前田美波里さんと中尾ミエさん。私が見た回は前田さんでしたが、お二人とももう70代なんですよね(驚)。
見た目的には来日版の時の女優さんの方が「おばあちゃん」って感じで衝撃度が高かったんですが、年齢的にはお二人とも適齢期だったりしたわけです。外見ではホント若々しいので実年齢知ってビックリでしたよ。

ピピンとバーサのシーンは客席も一緒に歌ってください、みたいな場面もあるのでかなり盛り上がりました。♪No Time at All ♪は何げに歌詞が4番まであるので(バーサがこれ言っちゃうんですよww)初めてでもサビの部分は何となく覚えちゃって歌えるっていうところがミソ(笑)。

「さあ、楽しもうよ。残りの時間を大事に。季節は変わってゆく、あっという間に」

という一緒に歌う部分の歌詞が深い。瞬く間に時は過ぎていくから、今の時間を大切にと歌うバーサの歌の言葉は心に響くものがあります。

1幕クライマックスでは王位継承をめぐっての陰謀シーンが訪れるのですが、ここも終始コミカルな空気が流れています。登場人物たちがマジックボックスの中から次々に出てくる演出も非常に面白い。

悪役サイドであるはずのファストラーダとルイス親子もどこかちょっと抜けてる雰囲気があって憎めない。悪どい計画立ててるはずなのに緊張感がほとんどなくてコメディみたいなので、どちらかというとクスっとさせられてしまう。
こういう雰囲気が苦手な人にはちょっと合わないかもしれないけど、私もそういう派だったはずなんですがなぜかこの作品は受け入れられたんだよなぁ。不思議w。

そして、唆されたピピンは見事にそれに乗せられて暴君の父を消すことになるんですが…シリアスなようでここもコメディ的要素が強い。特に「このナイフを使え」と父に促されたときに「もう持ってきました」とマイナイフを見せるシーンとかは思わず笑っちゃうしねw。
でもさすがに事をなし終えた後はシリアスムードとなって…これからどうなる!?ってときにリーディングプレーヤーが出てきて「集中力が途切れてきたので休憩に入ります」ってお知らせする(笑)。休憩の入り方もしっかり演出されているのがツボ。

2幕が始まる5分前くらいにはキャストが客席に突然登場!手拍子を促したりとさらに次のシーンへ向けての盛り上がりを演出。私は通路がすぐ後ろの席だったので間近にキャストさん(宮澤さんや岡田くん)が通りかかったりしてテンション上がりました。
ちなみに、3階席には城田優くんも登場してめちゃめちゃ盛り上がってました(笑)。大阪の客席に一体感が生まれ、そのまま2幕へ。いい流れだった。

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2幕では父に代わって王位についたピピンが登場。結局ルイスたちの目論みは外れたってことになってるのかな(笑)。
ピピンは王になっても衣装はラフなままだし、作り物と分かる王冠を被っているだけ。あくまでも劇中劇だということを思わせるシンプルな演出になっています。

父の二の舞は踏まないと寛大な政治を志すピピンでしたが、それぞれに良い顔をした結果、結局は父と同じ暴君の道を辿る結果に繋がってしまう。
文字だけで書くとけっこうシリアスなシーンなのかと思われるかもしれませんが、ここもあくまでもコミカル路線で進んでてテンポもチャッチャと進んでいく感じ。城田優くんのお坊ちゃま感あふれる恍けた芝居も面白くて笑いどころが多かったです。

結局王になっても自分の満足を得られなかったピピンは王位を捨てて旅に出ます。
旅の途中で色んなことにチャレンジするピピンなのですが、やってることはけっこう現代的(笑)。特にドラムに挑戦してCD出したっていうくだりは面白かった。全然売れなかったっていうオチがあって、その時に「握手券付けるの忘れた―!」って嘆くんですよねww。これは日本ならではの城田くんのアドリブだったのではないかと(笑)。これは笑いましたww。

何も上手くいかず行き倒れになったピピン。そこに登場するのが未亡人で子持ちのキャサリンなのですが、このシーンは劇中劇から現実に引き戻されるような演出になっているのが非常に印象的です。
これまでは劇中劇としてストーリーが展開されてきましたが、リーディングプレーヤーが登場を華々しく演出したにもかかわらずキャサリン役の女優はなかなかそこに出てこない。ようやく出てきたと思っても全く違うところから登場してしまい、苛立ったリーディングプレーヤーに本気のダメ出しを食らうんですよね。

このちょっとしたトラブルの場面が登場することで、観ているこちらは「そういえばこれは劇中劇だったんだ」と現実に引き戻されます。
特に印象的なのは、弱ったピピンがキャサリンの手を思わず握るシーン。本来はそういう段取りになっていなかったようでキャサリン役の女優は驚いて狼狽えてしまう。するとリーディングプレーヤーが脇から現れて「ここはそういうリアクションじゃないでしょ!」と強烈なダメ出しをするのです。
あえてそういう裏側を見せることの意味はクライマックスに繋がるので、ここはけっこう重要だったりします。

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最初は自分を匿ってくれたキャサリンとの生活に乗り気ではなかったピピンでしたが、息子のテオとの交流やキャサリンの優しさに触れて居心地の良さを感じていきます。でも、ここの過程は結構あっさり描かれてたなという印象かな。二人の恋愛ドラマはこの作品の中ではあまり重要なところでもないことを感じさせられました。
ピピンはようやく本来の自分の居場所を見つけたのかなって思えるのですが、結局はそれを振り切るように「他にもっと自分の居場所はあるはず」とキャサリンの元を飛び出してしまう。

この場面、劇中劇なようでそうではないような雰囲気になるのが非常に印象的です。
キャサリンはピピンを必死に引き留めようとするんですが、その止め方は劇中劇の範疇を越えていて現実世界のように見えてしまう。キャサリン役の女優は、役を越えたところでピピン役の役者に恋をしたのではないかということが伝わってくるんです。去っていくピピンの表情も役者とは違うものも滲んでいて…。なんだか見ていてすごく不思議な感覚だった。

そして物語はフィナーレへと突入するわけですが、ここでチョコチョコと登場していた火を持つパフォーマーさんの意味が明らかになる。これまでは顔を出すたびに「まだ早い!!」ってリーディングプレーヤーに注意されてたんですが、ようやくここで出番となる。あぁ、このために彼は準備していたのかと納得。
リーディングプレーヤーは舞台の冒頭♪Magic to Do♪「観たら一生忘れられないクライマックス」とは、巨大なたらいに炎を炊いてその中にピピンを飛び込ませること。そうとは知らず「次は何?」と暢気に構えていたピピンは燃え盛る炎を目の当たりにしてようやく事の深刻さを把握するのです。

物語の最初に「観たら一生忘れられないクライマックス」という言葉を聞いたときには派手で華やかなお祭りみたいなラストを想像してしまうのですが、実はやろうとしていたことは「死」を経験させるという恐ろしい結末だったんですよね。これは見ている方も予想がつかないので非常にショッキングな場面でもあります。
ガンガンに実際の火を焚いて強引にピピンを空中ブランコに乗せて飛びこませようと煽るシーンを観たとき、来日版で受けた衝撃がまざまざと蘇ってきました。

ピピン役の役者は、演じながら同じように「自分の居場所」を求めて旅をしていたってことですよね。でも、最後に待ち受けていたのは恐ろしい現実だった。
あれも違う、これも違う、と自分の居場所を次々に変えてさらに上を目指していくと、行きつく先は「死」しかなくなるよと…。一座に火に飛び込むように煽られて恐ろしさのあまり泣いてしまうピピンが切ない。ここはもう役者個人に戻ってる気がしますね。

結局飛び込むことを拒絶して泣き崩れたピピンを受け止めたのは、キャサリン役を演じていた女優でした。ピピンを演じた役者はこの時初めて、自分の居場所は素朴な現実の中にあったことに気づかされるのです。劇中で素の自分が出てキャサリンの手を握った時にその答えは出てたんだろうなと思いました。

ここで「めでたし」的な雰囲気で終わらないのがこの作品の憎いところ。
ほぼ8割が笑いに満ちた楽しい舞台だっただけに、全く雰囲気が変わるラストシーンは非常に見ていて刺さります。恐怖すら突きつけられた気持にさせられる。なかなかああいった最後の場面は作れないと思うので、すごく斬新で凄いものを観たなぁと。来日版を観た時にもビックリしたことを思い出しましたよw。

最後の最後、テオ役の少年が♪Corner of the Sky♪を歌い、リーディングプレーヤーたちが再び集まってくるところで幕となりますが、これもなかなかに深い。ピピンを引き継ぐ意味が込められてるように感じました。こうして物語は巡り巡っていくという意味なのかな。

次のページではキャストについての感想を少しだけ。

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