劇団四季『恋におちたシェイクスピア』 東京公演 18.07.12マチネ

劇団四季のストレートプレイ『恋におちたシェイクスピア』自由劇場公演を観に行ってきました。
ちょうどこの時期に東京遠征が入っていたのでタイミング的に自由劇場公演が観れることになりました。京都公演も決まったので、行くかどうかはこれを見て決めようかなと。

 

ちなみに、前日に入ってた観劇レポはこちら↓

来日ミュージカル『エビータ-EVITA-』 18.07.11ソワレ
来日ミュージカル『エビータ-EVITA-』東京公演を観てきた感想。2018年7月11日ソワレ公演を観劇。東急シアターオーブにて上演。主演はエマ・キングストン、ラミン・カリムルー。ハロルド・プリンスオリジナル演出版公演。ラミンは日本限定出演。

 

前回自由劇場を訪れた時よりもかなり工事が進んでいて、表のポスターがあった場所も撤去されて現在は「自由劇場」の文字だけが貼りつけてある状態となっていました💦。こうなるとなんだか少しさみしいものがありますね(汗)。

重機の数も増えて着々と工事は進んでいるようでした。そんななかでもいつもの場所にあり続ける自由劇場。小さい劇場だけど、なんだかちょっと逞しくも見えました。

 

以下、ネタバレを含んだ感想なります。

 

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2018.07.12マチネ公演 in 自由劇場(浜松町)

主なキャスト

  • ウィリアム・シェイクスピア(ウィル):上川一哉
  • ヴァイオラ・ド・レセップス:山本紗衣
  • クリストファー・マーロウ(キット):田邊真也
  • バーベッジ:阿久津陽一郎
  • ウェセックス:飯村和也
  • ヘンズロウ:神保幸由
  • フェニマン:志村要
  • エリザベス女王:中野今日子
  • ティルニー:星野元信
  • 乳母:増山美保
  • ネッド・アレン:神永東吾
  • ウェブスター:平田了祐

キャスト表を見て驚いたのが女性キャストの少なさです。8割以上が男性キャストなんですよね!人数の多い男性アンサンブルに対して女性アンサンブルがたったの2人というのも驚きでした。

 

あらすじ・概要

原作は1998年に公開された映画『恋におちたシェイクスピア』で、アカデミー作品賞など数々の賞を受賞したことでも知られる名作です。

しかし、私は映画を見たことがなくて・・・この四季のストプレが最初になるかなぁと思っていました。

ところが、1幕進んだところで”どこかで見たことがある…”といった既視感が

それもそのはず、2017年1月に観た上川隆也さん主演の『シェイクスピア物語』がまさにこれと同じ物語だったからでしたw。その当時のレポはこちら↓。

なので、ある程度内容が記憶されていたこともあって、まっさらな状態から見るよりも入り込みやすかったというのはあります。

 

大まかなあらすじは以下の通り。

あらすじ

エリザベス朝の時代。
上流階級の貴族たちが演劇を観る芝居文化が花開いていた。

当時ロンドン北部にあった「カーテン座」劇場は、ナンバーワンの人気役者バーベッジが出演し、大盛況。一方、ヘンズロウがテムズ河対岸に建てた「ローズ座」は、資金難で苦境に立たされていた。

ヘンズロウは、作家ウィル(シェイクスピア)の次の新作を収入のあてにしていた。しかし、肝心のウィルはスランプの真っ只中で、まだ台本も完成していないのに出演者オーディションが始まってしまう。

そこにトマス・ケントと名乗る青年がやってくる。
実はケントは、資産家レセップス卿の娘、ヴァイオラの男装した姿。女性が舞台に立つことは公序良俗違反にあたるとされていた時代だった。
演劇を心から愛するヴァイオラは、モノローグを完璧に演じて見せ、ウィルはその才能に惚れ込む。
ケントを追ってレセップス卿の館まで来たウィル。ヴァイオラは本来の女性の姿に戻っていた。そうとは知らないウィルは、一目で恋におち、館のバルコニーの下から愛の言葉を投げかける。

ケントがヴァイオラの仮の姿だとは気付かぬまま、ウィルは新作の稽古を開始。主役ロミオを演じるのは、ケント。ヴァイオラと出会ってから、筆が進み、稽古にも熱が入った。

しかしヴァイオラはまもなく、親が決めた相手であるウェセックス卿と結婚しなくてはならなかった。別れの手紙を受け取ったウィルは、ふとしたきっかけからケントがヴァイオラであることを知る。
燃え上がる二人。その後も人目を忍んで愛を育み、やがて二人の恋のかたちが『ロミオとジュリエット』のストーリーを創り上げていった。

しかし、稽古が終盤シーンまで来たある日、ケントが女性であることが発覚してしまう……。

公式HPより引用

物語はシェイクスピアが『ロミオとジュリエット』『十二夜』を生み出していくまでの展開が軸になっています。いわば、バックステージものですね。
ストーリーそのものは創作とのことですが、シェイクスピアをはじめ実在した人物が多数登場しているというのが興味深いです。

 

劇団四季としては12年ぶりの新作ストプレとのこと。昨今ではすっかりミュージカル主体としての方が有名になりましたが、もともとはストレートプレイから始まった劇団ですからね。原点に立ち戻るという意味では良いチャレンジだったのではと思います。

これまでも四季は浅利慶太さんが代表していた時代にはちょいちょいストレートプレイを上演してきていたのですが…ある時期を境に私はそれらを避けるようになりました。

四季を見始めてからもうかれこれ20数年になりますが、観劇にハマりだして四季以外のストプレを見る機会が増えてきたあたりの時から、四季独特の発声法が気になって仕方なくなってしまったんですよね(汗)。言葉をはっきり伝えるという趣旨は分かるのですが、ハッキリを意識しすぎてセリフが機械的にしか聞こえなくなり(スムーズに言える人が少なかった)物語そのものが入ってこなかったのがストレスとなってしまいました。
ミュージカルは歌が主体なのでそこそこ機械的なセリフ回しをされても「まぁ仕方ないか」くらいに流せるんですが、セリフ主体のストプレだとそれができず(苦笑)…もうだいぶ長いこと四季のストプレは敬遠してきてしまったという経緯があります。

なので正直なところ、今回のチケット確保は個人的にかなりの冒険でした

なぜそれなのに行こうと思ったのかというと・・・青木豪さんが演出されると聞いたからです。外部から演出を呼んだのはなんと50年ぶりらしいですね
青木さん演出の舞台はこれまでも数本観たことがあるのですが、どの作品もすごくテンポが良くて生き生きして好印象がありました。青木さんならこれまで描いていた私の四季のストプレ苦手意識を変えてくれるかもしれない…と、期待を込めての今回の観劇となったわけです。

 

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雑感

不安半分、期待半分で観劇しましたが・・・とても面白かったです!四季の会先行予約で購入したこともあってか、席がめちゃめちゃ良席でかぶりつき状態だったことも大きいw。役者さんたちの息遣いや汗を間近に感じることもできて、非常に楽しめました。

何よりも良かったのが、出演してる役者の皆さんのセリフ回しや動きが非常に自然でスムーズだったことです。私は以前ここの部分で敬遠してしまった経緯があったので、外部のストプレ舞台を見ているかのようなリアルな言葉のやり取りにまず感動してしまった
言葉をきっちりと伝えたいという意図は分かるけど、やはりこれくらいの自然なセリフ回しで他のストプレもお願いしたい。

それから、以前見た時は何となく動きに硬さみたいなものを感じた時期もあったんですけど…それも感じさせることがなく、皆さんものすごく生き生きと舞台の上で自由に表現しているなと思えたことも大きい。フランクな雰囲気っていうのかな…。誰でも気軽に迎え入れてくれるような柔らかい雰囲気が舞台上にあったのも、かつて見た四季のストプレにはなかったことでした。
うーん、やっぱり外部の風を入れるとこういうことは大切なことなのかもしれないなと思いましたね。青木さんの演出手腕が素晴らしかったというのがすごく大きいです。

 

この物語は、作品そのものはちょっと抒情的過ぎて難解なイメージを持たれがちなシェイクスピア本人が主人公です。1幕中盤くらいまでは多少そんな雰囲気(特にウィルが長い御託を述べがちになるみたいなw)を醸し出してはいましたが、基本的にはコメディ色がけっこう前面に出ていて笑えるシーンも多いです。

エリザベス女王の前でウィルが書いた戯曲『ヴェローナの二紳士』を上演する場面があるんですけど、ここの描写がけっこうコミカル。
役者は熱演してるんだけど、女王は飽きちゃって途中で寝てしまう。ところが、犬が登場してくると急にシャキーンと目を覚まして大喜びww。このワンちゃんは実際には人形で役者さんが操ってるんですけど、実に表情豊かな動きを見せてくれて、女王様じゃなくても見ているこちらですら思わず笑ってしまった。出番はちょっとしかないけど、このワンちゃんの使い方が非常に可愛くて面白いのでここ注目ポイントだと思います。

それから、特に面白いのが第2幕の『ロミオとジュリエット』を上演する場面
当時は舞台に女性が上がれない時代だったために全て男性が演じなくてはならなかった。男性の振りをして稽古に参加していたヴァイオラは女性であることがバレてしまったので、おとなしく意にそぐわない婚約者と外国へ行く手筈になっていました。ところが、本番直前に主役のジュリエットを演じるはずだった男優が緊張しすぎて声が出なくなってしまい(ここのやり取りもかなり笑えますww)ピンチヒッターとしてヴァイオラがジュリエット役として出ることに。
ここもかなり大きなメインとなる場面なんですけど、バックステージでみんながドタバタしまくっている様がもう本当に面白すぎた!!特に、ヴァイオラが押し出される形で舞台上に現れた時の他の出演役者のビビりっぷりは最高でした。四季のストプレでこんなに柔軟な場面が見られるようになるとは!とちょっと感激。

 

ウィルとヴァイオラの恋愛物語はこの舞台の大きな軸となっていて、ウィルが男装していた俳優がヴァイオラだと気付いた後からの恋愛モードは猪突猛進系(笑)。まさに恋は盲目状態。今まで脚本書けなくてウンウン苦しんでた姿からは予想できないようなラブパワーを出しまくるので、見ていてちょっとビックリします
ヴァイオラもウィルにあれよあれよという間にのめりこんでいって、尊敬する作家から「男性」として意識するまでの時間が早かったww。

この時の二人の恋の囁きwがけっこう抒情的で、シェイクスピア作品的な雰囲気が出るんですが、その言葉の波を楽しむのもこの作品の魅力かもしれません。

ちなみに、1幕ラストで二人は結ばれるわけですが・・・けっこう大胆な演出があってちょっとビックリww。時代劇のお代官様と姫が「あーーーれーーー」ってなるようなやつwww。どうやら映画でも同じシーンがあるらしくそれを再現したようですね。ここは何気に大きな見どころの一つかもです。

この二人の恋愛場面も魅力的だったんですけど…実は私は、ウェセックス卿にけっこう肩入れして見ちゃいました。ストーリー的には完全に敵役的立場なんですけど、彼は彼なりにヴァイオラをちゃんと愛したんじゃないかって思える場面がちょいちょいありました。
きちんと恋愛したことがなくて、政略結婚当たり前みたいな環境にいたがためにヴァイオラが他の男に気持ちを奪われてしまったことへの対処が上手くできない。葛藤していくうちに、ヴァイオラへの気持ちを募らせていったんじゃないかなぁって思えるとなんか切なくてね。

 

そのほかにも、コメディあり…恋愛ドラマあり、が詰まった魅力的な作品だったと思います。四季のストプレでこんなに楽しかったと思える日が来るとは…!そのことが嬉しかったです。

ちなみに、ストプレなんですけど冒頭とラストにちょこっと歌が入ります。基本的に皆さんミュージカル経験者ばかりなのでw、歌声はとても綺麗で聴き応えがありました。

 

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主なキャスト別感想

上川一哉くん(シェイクスピア-ウィル-役)

以前『リトルマーメイド』で上川くんを観た時に、上手い若手の役者さんが出てきた!って思ったんですけど、その想いは間違っていなかったなと。ストレートプレイでこれだけ良いお芝居を披露できるとは…本当に素晴らしかったです。
セリフ回しも自然で違和感を感じなかったし、何よりも感情表現がとても豊かでどこにいても目が離せませんでした。特に苦悩する場面の表情がとても良かったです。苦痛に満ちた表情から見る見るうちに大きな瞳に涙が溜まって…あの顔見てるだけでこちらももらい泣きしそうになりましたよ。
歌も芝居もできるオールマイティな役者としてこれからも頑張ってほしいと思いました。

 

山本紗衣さん(ヴァイオラ役)

山本さんといえば、綺麗で可愛い顔立ちと美しい歌声でミュージカルのヒロインを多く演じられていますが、ストレートプレイでもしっかりとしてお芝居をされていてとても良かったです!
お芝居に強い憧れを持っているが故に男装までして稽古オーディションに参加して受かってしまうヴァイオラの場面があるんですけど、この男装姿がまためっちゃ可愛いのです!あれはウィルが目を奪われてもおかしくないなという説得力があった。
ウィルにはひたすら純粋な愛情表現をしながら、意にそぐわない婚約者のウェセックス卿には上辺だけの良い顔を見せる。二人の男性に対しての表現のメリハリも効いてて、思わずウェセックス卿に同情してしまったほどでしたww。
ジュリエット役としての熱演も見事。見どころが多かったです。

 

田邊真也さん(マーロウ役)

マーロウはウィルの親友で悪友、そしてお兄さん的な存在です。田邊さんはその雰囲気にピッタリ合ってました。
特に面白かったのが、ウィルが女性としてのヴァイオラに初めて出会った時に愛の言葉をなかなか紡ぎだせなかったのをマーロウが手助けする場面。シーン的にはまるで「シラノ・ド・ヴェルジュラック」みたいな感じなんですがw、マーロウはウィルのためにトコトン協力してやるんですよね。その影からの伝えっぷりがコミカルで可愛いんだけどなんだかいじらしくもあって。あ~、いいコンビだなって思えました。
それだけに、クライマックスで悲しいことに巻き込まれてしまうのが切なかった。最後ウィルの前に現れた時の笑顔がすごく泣けました。

 

阿久津洋一郎さん(バーベッジ役)

久しぶりに阿久津さんを舞台で観ましたが・・・いや~~~弾けまくっていらっしゃいました(笑)。バーベッジはウィルにとってライバル劇団の売れっ子役者なんですけど、超意識高い系なオラオラな感じwww。とにかく阿久津さん自身が演じていてすごく気持ちよさそうだったのが印象的でしたね。なんか解放された!みたいな雰囲気があったw。ちょっと勘違い野郎的な雰囲気のある役なんだけど、憎めなくてちょっと可愛らしくもあり。
後半はウィルたちの味方的立ち位置となってあれやこれやで大活躍!出番的にたくさんあるわけではありませんが、登場したら目が離せない的な存在感でした。

 

飯村和也くん(ウェセックス卿)

久しぶりに飯村くんを舞台で観ましたが、ストレートプレイでこれだけ良いお芝居ができる役者さんだとは!!とかなり感動しました。
ウェセックス卿はヴァイオラの政略結婚相手で、物語の中では完全に敵役的立ち位置になるのですが・・・、嫌味な雰囲気を連発しながらも、後半に行くにしたがってヴァイオラを自分のものにしたい焦りからか必死さが浮き彫りになっていく過程がものすごく良かったです。ウィルとヴァイオラを巡って対決する場面では、私思わず・・・ウェセックス卿を心の中で応援してしまったくらいだったので(笑)。
特に良かったのが、乳母に行く手を阻まれながら「ヴァイオラ様を大切にしてくれますか」と詰問されたときの場面。ここでウェセックス卿は「ああ、大事にする」と答えるんですけど、そこには社交辞令的なものはなくて…ホントに彼女を妻として迎える気持ちがあるんじゃないかって思えたんですよね。不器用でそれが上手く表に出せないタイプ、みたいな。こういうキャラに私弱いんですよーーーwww。
今回の登場人物の中で一番好きだったのが飯村君の演じたウェセックス卿だったりしました。

 

神永東吾くん(ネッド・アレン)

ネッドはウィルの劇団の看板役者的な立ち位置でリーダー格。神永くんといえば最近ではミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』のジーザス役が印象深いのですが、正直なところ、あまり表情を表に出してこない”無”なイメージの役作りがあまり好きではなかったんですよね(すみません、好みの問題です 汗)
ところが、ネッド役の神永くんはめちゃめちゃ熱い!!オラオラ系な阿久津さんの演じるバーベッジとやり合っても負けないくらい勢いある青年を超熱演!!いや~~、こんな神永くんが見てみたかったんだよ~~~!端正な顔立ちがさらに舞台映えしていたし、ちょっとドタバタコメディ的なシーンになった時の翻弄されっぷりも色男なだけに滑稽で面白かった(笑)。
それから、日本人の役者さんではないにもかかわらずセリフ回しが実に自然。これもすごく良かったです!彼の新たな一面が見れて嬉しかった。

 

そのほかの役者さんたちも熱演されていてとても好印象だったのですが、その中でも特に目を惹いたのが、中野今日子さんが演じられたエリザベス女王です。いや~~~、めっちゃ半端ないオーラ出てましたわ😃😃!!まさに、女王の雰囲気そのまま。威厳だけでなくコミカルな一面も出されていてとても魅力的でした。

 

後述

観る前まではこれまでの四季のストプレへの苦手意識が強くてちょっと不安もあったのですが、今回のは本当にすごく面白かったし素直に楽しめました。四季独特のあのカクカクしたセリフ回しもほとんど感じられなかったし、外部の演出が入ったことでなんだか舞台全体に新しい風が吹いたような雰囲気もありました。

私のように苦手意識があった人にもぜひお勧めしたい作品です。カッコいい男性もたくさん出てくるしw、見応えありな舞台ですよ。

このあと、東京凱旋も含めて・・・京都、福岡でも上演が決まっているようです。私も機会があればもう一度観に行きたいと思ってます。ぜひ。

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