2幕
♪魔法が迫る~この幸せ~♪
♪この幸せ♪ではグリンダがオズの国の”善い魔女”として民衆から慕われている場面が描かれていますが、その後ろにいる織笠マダムの表情がめっちゃ怖かったww。監視役員のようにジト~ッとグリンダを見つめてる視線の冷たいこと。背筋寒くなるレベルだったわ(←褒めてますw)。
民衆から慕われて「幸せだわ」と歌うグリンダの後ろにもう一人控えてるのが護衛隊隊長となっていたフィエロ。この時の武藤フィエロ、一生懸命笑顔を作ろうとしてるんだけどめちゃめちゃ無理してるのが伝わってきてすごく辛い。前回見た時は複雑な表情のままだったけど、今回見たら必死にグリンダの前で”違う自分”を演じようとしてるように見えて胸が痛くなっちゃったよ…。
そんな彼の気も知らずにグリンダは勝手に婚約パーティに仕立て上げちゃうし、マダムはエルファバへの敵意を剥き出しにして民衆を煽ってるし…精神的にも相当キツいよなぁ。決死の想いで笑顔になろうとしてるけど、やっぱりエルファバが心配すぎて苦しそうな表情が浮かんでしまうの繰り返し。だけど誰も彼の辛い心境理解してくれないわけで…痛々しすぎて泣きたくなってしまった。
我慢の限界に達したのが、マダムの扇動に惑わされた人々が「エルファバは水に溶けるはずだから水を用意しよう」と盛り上がった時。あの時の武藤フィエロ、本気でムキになってグリンダに「みんな頭が空っぽだからなんだって信じるんだ!!」と食って掛かってた。大切な人が理不尽に傷つけられていく現状のなかでついに自分を繕うことに耐えきれなくなっちゃったんだなということが痛いほど伝わってきてホント切ない。フィエロの苦しい胸の内がストレートに伝わってきて刺さるんですよね、武藤くんの熱いお芝居。
エルファバの悪口は自分も聴きたくないと言うグリンダに「それなら一緒に探しに行こう」と告げるフィエロでしたが、グリンダは自分を慕って愛してくれるオズの国の人たちから離れるわけにはいかないと断ってしまう。エルファバを心配する気持ちは同じだけど、その先の想いが違う…。
それでもグリンダは必死にフィエロを繋ぎとめたくて「エルファバは探してほしくないというのが分からないの!?」と迫ってしまう。その言葉を聞いた瞬間、彼女に向き直って「君の言う通りだ」と告げた時の武藤フィエロの何とも言えない哀しそうな寂しい笑顔がもうめちゃくちゃ切なすぎて泣いた(涙)。「君が幸せになれるなら僕は君と結婚するよ」という言葉は柔らかくて優しいながらも”虚しさ”や”哀しみ”が滲んでいた…。
武藤フィエロはグリンダに対して以前までのイケイケな気持ちは消えているんだけど、だからと言って彼女をないがしろに想っているわけではないんですよね。ちゃんと大事には思ってるんだけど”愛情”としては応えられない。本当はその気持ちをちゃんとグリンダに伝えればいいのにとは思うんだけど、彼の中にある優しさが押し止めてしまったのかなぁと。「あなたも幸せになれるんでしょう?」というグリンダの言葉に「僕はいつだって幸せさ」と告げるシーンは見ていてめちゃめちゃ辛かったですよ(涙)。武藤フィエロの「幸せ」の台詞にはそれとは真逆の”孤独”な感情が滲んでいて本当に切ないのです。彼の本当の幸せはグリンダではなく、自分の本質を見てくれたエルファバと一緒でなければ達成できないんだろうなというのを今回強く感じました。
この二人のやり取りのシーンで、グリンダはフィエロの気持ちが自分から離れたことを自覚してしまう。その辛さをこらえながらオズの国の人たちの前で笑顔を振りまくのですが、そんな彼女の心中を想うとこちらもまた切ないわけで…。「みんなから愛されることを望むのはいけないこと?」という疑問が再び彼女の中で暴れ出す。大勢の人から愛されるという望みは叶ったはずなのに、心の中では違和感が拭い去れない。胸に手を当てながら必死に「これ以上の幸せは他にはないわ」と力を込めて自分に言い聞かせながら歌う山本グリンダはとても哀しい…。
本当に愛する人の想いは手に入れられず、大切な友達も自分の傍にはいない。山本グリンダは本当は空しくて辛くて寂しい感情の方が強かったはずなのに、その気持ちに気づきたくなくて力づくで蓋をしたような歌い方するんですよね。きっと今が「幸せ」なんだと思い込まなければあの場所には立っていられなかったのかもしれないなぁ…なんて。山本さんの”本当の感情を押し殺した”笑顔で国民たちの前に立つ演技はとても胸を打つものがありました。
エルファバとネッサ
突然現れたエルファバに「お父様はあなたのせいで亡くなったのよ!」と突きつける守山ネッサは非常に冷酷で怖いです。憎しみのオーラがめっちゃ見えたよ。
ちなみに舞台版では二人の父親が倒れるシーンは出てこないのですが、映画版だと最後の方にそれと思わせる描写が出てくるんですよね。プライドが高かった父親からすれば、忌み嫌ったとはいえ自分の娘が”悪い魔女ウィキッド”として追われる身になったことは相当精神的負担が大きかったのではないかと容易に推測できます。
ネッサの”靴”に魔法をかけて「ようやくあなたを救えた」と歌う小林エルファバは本当に感無量の表情で、ずっと妹を気にかけていたんだなというのが伝わってきます。でも当のネッサ本人はエルファバへの思慕はもう残ってなくて愛するボックのことしか頭にない。交わらない二人の手がなんだかとても切なかった…。エルファバにとってネッサはたった一人の家族なのに、彼女はそれさえも失ってしまったのかと思うと悲しくなるよね。
ところがボックはネッサが歩けるようになったことで彼女の束縛から解放されたという喜びを爆発させている。これはネッサにしてみれば大きな計算違い。歩けるようになった代わりに愛する人の心が完全に自分にないことを思い知らされてしまうとは…。ボックもここで初めて「グリンダの元へ行くよ」と本音を明かしてしまうの、すごい残酷だなぁといつも思ってしまう。もっと早くにそれを伝えられていたらネッサの傷もここまで深くならずに済んだんじゃないかなぁと。自分自身に起こる悲劇も避けられたかもしれないし。
でも単純に、ボックはたとえここでグリンダに走ったところで手痛い撃沈をするのは誰の目にも明らかなので(彼だけがそうじゃないと信じてる 汗)、どちらにしても明るい未来はないよなぁと思ってしまう(苦笑)。
ちなみにボックの”成れの果て”の姿ですが、2階席から見ると1階席よりも”あれ”が見えちゃってw。エルファバが呪文唱える前には出来上がっているのが見えるのはチョイ苦笑い案件ではあります(角度的に難しいんだろうけどね)。
♪ワンダフル♪
婚約パーティーのシーン、山本グリンダは自分の元にフィエロが戻って来たことへの安堵感から満足そうな笑みを浮かべていますが、武藤フィエロはどこか諦めにも似たような寂しい笑みを称えて歩いていたのが印象深かった。彼はあのままエルファバを探すためにグリンダから離れることもできたはずなのに、結局それができずに彼女と婚約する道を選んでしまった。そんな自分を内心情けなく思っているのではないかなと推測できるような表情に見えた。
武藤くんのフィエロって、エルファバといる時以外はずっと影を纏ったような孤独な雰囲気を感じるんですよね。それがものすごく切なくて良いのです。
小林エルファバと勅使河原オズ陛下の対面シーン。1幕後半ではブラックな本性を出していた勅使河原陛下でしたが、2度目に対面した時にはまた穏やかで気の良いおっちゃんの顔になってました。エルファバを懐柔させるための策略であのような態度をとっているのかも…とも思えるのですが、あながちすべてが”嘘”の感情ではないようにも見えるんですよね。「もう一度やり直さないか?」と彼女に問いかけたのも彼の本当の気持ちが混じっているようで・・・憎めないんですよ。こういうのを、”人たらし”っていうのかもしれないけど(笑)。
小林エルファバは最初の方はかなり警戒心強めだったのですが(そりゃそうだよな)、徐々に表情が柔らかくなってオズ陛下と手を取り合いダンスするに至っている。知らず知らず彼のペースに巻き込まれていくといった小林さんの繊細な表情のお芝居がとても繊細で印象深かった。
ちなみに、個人的には勅使河原オズ陛下の「わんっだふぉーー!」の言い方がめっちゃツボですww。面白可愛くてついつい笑っちゃうww。
♪私じゃない~リプライズ~♪
ディラモンド先生の変わり果てた姿に怒りを爆発させたエルファバはオズ陛下と対決し続けることを決意。慌てたオズ陛下が護衛兵を呼ぶとフィエロが現れる。思いがけずエルファバと対面した武藤フィエロ、最初はやっと会えた!とテンション上がりそうになるんだけどすぐにそれをグッと堪えて”芝居”に徹するんですよね。
部下たちに命令してる時の声色はかなり鬼気迫っていて、エルファバがフィエロが心変わりしてしまったと思い込んでショックを受けるのも納得の怖さがありました。それくらい熱くなっていたのはすべてエルファバを守るためだっていう信念がそこに感じられたの、すごく良かったよ…!
グリンダが現れたことでフィエロの作戦が狂ってしまうことに。動揺するグリンダに万策尽きたフィエロはついに「彼女(エルファバ)と一緒に行く」と決別宣言。最後は自分の元へ戻ってきてくれたと思っていたフィエロが実はそうではなかったと知った山本グリンダのショックの表情がとても痛々しい。
でもそれ以上に「僕はそのつもりだった」…つまり、心の中ではずっとエルファバだけを想い続けてきたと本音を打ち明けた時の武藤フィエロの思い詰めたような、それでももう自分の気持ちに嘘はつけないといった覚悟が込められた表情にめちゃめちゃグッとくるものがありました。
エルファバが追われる身となってからずっとずっと彼女のことが頭から離れなくて、それなのにグリンダも裏切れず板挟み状態になってったのだと思います。武藤くんのあのときの表情からフィエロの人間くさい苦悩が手に取るようにひしひしと伝わってきた。エルファバと再会したことで”自分に必要なのは彼女だけだ”と確信し共に逃げる決意をする。その行動に至るまでの気持ちの変化がとても繊細でめちゃめちゃ感情移入してしまった。
エルファバとフィエロの強い心の絆を目の当たりにしてしまったグリンダはショックのあまりマダムにエルファバをおびき出す策のヒントを与えてしまう。この時の山本グリンダは呆然自失状態で、おそらく自分があの時何を口走ったのかも覚えてないんじゃないかっていうくらいだったな。
それを聞いた後の織笠マダムと勅使河原陛下のブラックなオーラがめっちゃホラー(汗)!特に織笠さんのニヤリとした顔は背筋が凍るレベルで怖かったです(←褒めてますw)。
1幕ではエルファバが「フィエロは私ではなくグリンダを選んだ」と歌っていますが、2幕のリプライズではグリンダが「フィエロは私ではなくエルファバを選んだ」と歌って打ちひしがれている。同じ旋律であるが故に切なさが増すシーンですよね。こういうストーリー構成とかも『ウィキッド』は巧いなぁと思います。
♪二人は永遠に♪
今回私がどうしてももう一度見たいと強く念じたのが、エルファバとフィエロがお互いの気持ちを確かめ合うこのシーンです。1月に見た時に、ただひたむきにエルファバに愛を伝え続ける武藤くんの芝居に大きく心打たれ、あれ以来ずっと忘れられなかった。多分もう突発遠征はできないので、脳に叩き込むつもりでオペラグラスをガン見してきましたよ(笑)。
あぁぁ…もう、本当に、感無量すぎて泣いた(涙)!!
この場面はついに両片想いだった二人がお互いの気持ちを確認し合う山場でもあるので、いつもウルウルしながら見ていたのですが…今回は号泣に近いくらいボロ泣きしちゃいましたよ。ここであんなに涙出たの初めてかもしれない(たぶん私の期待値が大きかったからだけどw)。
座席的にちょうどフィエロの表情が見える位置だったのでなおさらかもしれないんだけど、武藤くんのエルファバへの愛情表現の歌とお芝居は期待以上、遠征費のおつりがくるレベル。
武藤フィエロ、ほんっとにエルファバのことを心の拠り所として愛してるんだなぁっていうのがすごく伝わってきた。前に見た時も思ったけど、彼女を見つめている時の縋るような熱い眼差しが最高です。今にも泣いてしまいそうなくらい全身全霊でエルファバに愛を伝えてるんですよ。彼女が歌う「燃えるような眼差し」そのもの。
エルファバにとってフィエロが自分を照らす希望の光だったように、フィエロにとってもエルファバが唯一無二の自分を照らす希望の光の存在だったんだろうなと今回強く感じました。武藤フィエロが彼女に向けているのは真っ直ぐ…というよりも”がむしゃらな愛”という印象。その演じ方スタイルが私の好みに超ドンピシャなわけですよww。もう、萌えしかない(笑)。
小林エルファバが少し恥じらいながら俯いた時の武藤フィエロの「どうしたんだい?」も心臓破裂するんじゃないかってくらいドキドキさせられたよww。すごく彼女のことを大切に想っている気持ちがあの一言にこれでもかってくらい込められている。彼女の顔を少し覗き込むように見つめた時の優しく潤んだ目が刺さりまくり!!あんな顔で覗き込まれたら失神するレベル(笑)。
それから、歴代フィエロに何度も心撃ち抜かれてきた一言「なに?」のシーンw。この時の武藤フィエロは優しくというよりも”え?どうしたの?”と不安がよぎるような言い方だった。それがまた新しくて良いんですわ!エルファバ好きすぎて彼女の一挙手一投足に翻弄される感じがめっちゃ良い。
それから、「私がもっと少し綺麗だったら」と自分を卑下してしまうエルファバに「物事を違う角度から見てるってことさ」と告げるシーンでの武藤フィエロは以前よりも大人っぽく成長したなと感じさせるような声色だったのも印象深かった。彼の演じるフィエロは、本当にセリフや仕草一つ一つがとても繊細で内面が伝わってくる。
ちなみに、「物事を違う角度から見ている」というセリフはクライマックスとも見事にリンクしている言葉。こういう構成もやっぱり『ウィキッド』すごいなぁと思うわけです。
♪闇に生きる♪
ネッサの悲劇にショックを受け花を手向けている時の山本グリンダは本気で悲しんでいましたよね。彼女の中ではネッサを利用してしまった過去があるので、その罪悪感も相まってのことかもしれないなぁと思いながら見てました。
エルファバとグリンダの”子供の喧嘩”みたいな争いは何度見ても漫画チックで面白い。お互いにぶつけてる言葉はかなり鮮烈でシビアな内容なんだけど、テンポよくギャーギャーやり合ってる姿のほうが面白くて見てる方も楽しくなってしまう矛盾w。小林エルフィも山本グリンダも今回はかなりヒートアップしていて鼻息も荒くw面白い・・・というよりかは可愛らしい(笑)。
個人的には止めに入った護衛兵に抱えられたグリンダが「もう少しで勝つところだったのに!!」とジタバタもがく姿が最高にキュートで大好きです。
護衛兵に囚われてしまったエルファバがグリンダを誤解してしまうシーンは一転して切ないです…。グリンダは本当に何も知らずにあの場所にいただけなのでね…。そして「見損なったわ」とショックを受けてるエルファバの表情も辛い。どんなに大喧嘩しても”親友同士"という気持ちは途切れてなかった二人。それだけにこのシーンでのすれ違いはとても哀しいのです。
その時ターザンばりに登場してくるフィエロ。10年前まではここでけっこう客席から笑い声が漏れることが多かったのですが(初めて見た時は私もその演出に”!?”となったww)、今季は目立った笑い声は聞こえなくなったなと思います。
武藤フィエロはロープに乗ってる時から声がめちゃめちゃ野太くて熱い!!「うわぁぁぁーーーー!!!」と思い切り叫び声を上げてダンっと降りた後もその熱さを持続したまま「彼女(エルファバ)を離せ!!!」と迫ってる。その鬼気迫る叫びにめちゃめちゃ圧倒されまくった。大切な人を守り抜きたい一心でがむしゃらに動いてる武藤フィエロの熱さ、本当に大好きだよ。
解放されたエルファバに「早く行くんだ!!」と逃げるように促すフィエロ。たぶん彼の目にはエルファバのことしか見えていないんだろうなぁと。愛する人をどんな手段を使ってでも守り抜きたいというヒリヒリするような切なる想いがこれでもかと伝わってきて本当に泣ける。
自分に銃口を撃向けてまでエルファバを守り抜こうとしたフィエロを目の当たりにしたグリンダは、もう二人の間に自分が入る隙はないと思い知ったかもしれない。最初はそれが強い嫉妬心として表れたけど、この時の彼女は二人の愛を認めて受け入れたんじゃないかなと…。
エルファバが後ろ髪惹かれる想いで立ち去ったのを見届けたフィエロは、そこで我に返り持っていた銃を手放す。このシーンの時の武藤くんの芝居も本当に繊細…。グリンダに銃を向けてしまった自分が恐ろしくなったかのような表情をして怯えながら銃を前に投げ捨ててたんですよね…。顔を歪ませて震えながら崩れ落ちる姿見たら…見てるこちらの胸が苦しくなって思わず落涙(泣)。護衛兵に取り押さえられた時なんかもう今にも泣きそうな表情してたし…あんなん、耐えられないよ(涙)。
そんな彼を見た山本グリンダの「彼は私を決して傷つけようとしなかった。ただ、彼女を愛してるだけなのよ」というセリフもグッときます。あの瞬間、彼女は本当の”愛”を知ったんだなぁというのが伝わってくるほど力強く優しかった。
そしてグリンダの言葉を受けた武藤フィエロ、目に涙溜めながら「許してくれ」と苦しそうに顔を歪めて哀しい表情見せててねぇ…。結局グリンダとは心から愛し合うことは一度もなかったフィエロ。エルファバに心惹かれてしまったあともズルズルと彼女と関係を続けてしまったことへの罪悪感も相当あったと思います。自分に勇気がなかったが故にグリンダを傷つけることになってしまった、そのことへの申し訳なさみたいな気持ちがあの「許してくれ」に込められていたような気がする。
フィエロが命の危機にあることを知ったエルファバは必死に呪文を唱え彼を救うべく全力を尽くす。小林エルファバの歌いっぷり、過去一じゃないかと思うほど鬼気迫りまくっていて思わず息をするのも忘れてしまいそうになるくらいの圧がありました。フィエロが全てをかけてエルファバを守ろうとしたのに対し、エルファバも全身全霊でフィエロを守り抜こうと一心不乱に呪文を唱え続ける。二人の強いお互いを想う気持ちがこのナンバーから伝わってきて胸が詰まる想いで聴き入ってしまった。
そして、ただ一人の人を守り抜きたいという強い願いはやがて彼女を「邪悪な魔女ウィキッドと呼ばれ生きる道しかない」という思想へと導いていく。純粋だった彼女が度重なる不幸な困難に直面し闇落ちしてしまうことの哀しさよ…。小林エルファバの、生きづらい世の中に対する激しい怒りのような爆発力のある歌いっぷりが圧巻すぎて泣きました(涙)。
♪魔女を殺せ♪
魔女狩りシーンで一番恐ろしいのがマダム・モリブル。ここでは完全に”悪”の顔になってて、”お前が一番悪い魔女ウィキッドと呼ばれるのにふさわしいぞ”とツッコミ入れたくなるシーンでもありますw。織笠マダムのグリンダに対するセリフや表情の冷酷さったらなかったわ(怖)。
特に「お嬢ちゃん、あんたはいい子ちゃんごっこを続けてたらいいのよ!それしか才能ないんだから」と脅しをかける時が最高にホラーすぎたw。山本グリンダもあの圧に少したじろいでたように見えたんだけど、その気持ちめっちゃ分かるわ~と思いながら見ちゃいました。
♪あなたを忘れない♪
最初は心配でやって来たグリンダを追い返そうと彼女を避ける態度をとるエルファバでしたが、”ある知らせ”を受け取った後覚悟を決めたようにグリンダと正面から向き合います。この時彼女が語る「あなたには皆に愛されたままでいてほしいの」という言葉が泣ける…。エルファバは自分には決してできなかったことを親友であるグリンダに託したんですよね。お互いを信じあう強い心がなければあの言葉は言えないと思う。
エルファバの一言一言を噛みしめるように山本グリンダが何度も頷きながら自分の中に落とし込もうとしてる姿も泣けます。この時山本さん、必死に涙が零れないように我慢してるんですよ。きっとこれが最後の対面になると悟っているからか、親友のことをずっと忘れないように自分の中に刻み付けるかのように笑みを浮かべて見つめてる。一瞬でも気を赦したら泣き崩れてしまいそうな表情が切なすぎて、見てるこちらの涙腺が持たないよ(泣)。
いつも顔を合わせたら言い争うことが多かったエルファバとグリンダ。でも、あのダンスパーティで一緒に踊った日から二人の信頼関係はずっと続いていた。たとえ嫉妬や羨望の感情に飲み込まれそうになっても、二人は固い絆で結ばれてるんですよね。
エルファバはグリンダに「私の友達はあなただけ」と伝え、グリンダはエルファバに「私には友達がたくさんいたけど、大切なのはあなただけ」と伝える。このセリフは涙無くしては観れません。初めて受け入れてくれた人、初めて本気で向き合えた人、二人の友情は形は変わっても決して消えないものだよなぁと感じます。
エルファバが消えた後、彼女が遺したとんがり帽子と緑の瓶を抱きしめるグリンダも切ない。そんな彼女にチステリーが拙いながらもちゃんと言葉で「ぐりんだ」と名前を呼ぶシーンも毎回グッときます。彼はエルファバの「動物たちの尊厳を取り戻したい」という強い信念をちゃんと受け止めたんだなと思えるのでね…。本当は彼女の前で言葉を話してほしかったというのはあるけど。
♪フィナーレ♪
クライマックスは、オズ陛下の顛末がグリンダによって明らかにされます。10年前まではここのシーンはどちらかというと少し軽い気持ちで見るものなのかなって感じだったのですが、勅使河原さんは本気で自らを悔いて嘆いているお芝居をするのでものすごく切ない気持ちで見入ってしまいます。
織笠マダムはあれだけホラーな恐怖をまき散らしたお芝居をしてきていましたが、退場する時は意外とあっさりだったなとww。
そして物語は冒頭へ。山本グリンダがエルファバから託されたグリムリーの本をギュッと抱きしめ、彼女から託された想いを自分の中に消化させようとしている表情がとても印象深い。グリンダは最後まで”真実”を知らないままという設定ですが、山本さんのお芝居を見ると何かを悟っているようにも思えてくるんですよね。様々な経験を経て精神的にも成長したグリンダの強い決意が感じられる最後の表情からは、最初の頃とは違う思慮深い一人の女性の姿が見えたような気がした。
そしてもう一つの結末。武藤くんの”アレ”、めっちゃ動きがリアル!!以前のように動けなくてもエルファバに向ける愛は変わらず力強いし頼もしい。その先の未来も苦難続きかもしれないけれど、あの二人ならば乗り越えていけると信じられるようなラストでした。
後述
今回は本当に奇跡的に入手できたチケットで突発遠征できましたが、大阪はもうこれきりになると思います。ずっともう一度会いたかったと心残りだった武藤くんのフィエロに再会できて本当に嬉しかった。彼の演じるフィエロは”こういうキャラで見てみたい"と思っていた夢を全て叶えてくれました。まだ語り足りないほど、おつりがきてもいいくらい満たされましたよ。
私が理想像として描いていたフィエロをそれ以上の存在として見せてくれた武藤洸次くん、本当にありがとうございました。
劇団四季の役者さんに沼落ちすると色々大変なことが多いというのは痛いほど学んでいますがww、今後色々な演目で武藤くんの名前が出たら劇場に足を運びたいと思えるくらいにファンになりました。フィエロ役でももっと見てみたいし、それ以外の役も注目したい。四季の舞台へ行く楽しみが増えたのは大きな収穫です。
今回は突発遠征だったので何も買わないと心に決めていたのですが…、終わった後テンションが上がってしまい4商品に手が出てしまいましたww。新作のポーチがとても可愛い(ランダムで選ぶやつ)。奇跡的にフィエロのデザイン引き当て勝手に心の中で盛り上がってた私ですww。
次のウィキッド上演地はまだ決まっていないようですが、どうなるでしょうか。映画も第二弾が来年公開予定ですし、まだ舞台も続けてほしいところです。