ミュージカル『アナスタシア』を観に東京遠征してきました。私事にはなりますが、山口県から東京に遠征観劇するのは今回が最後になります。約1年の山口生活でしたが、飛行機旅はなかなか乙なものでした。ただやっぱり、遠かった(汗)。
2017年に初めてブロードウェイで「アナスタシア」がミュージカルとして上演された当時のこと。新キャラ(グレブ役)にラミン・カリムルーさんが出演すると知ったときから、日本版が上演されたら絶対に観に行こうと心に決めていて。そしてついに念願叶い2020年公演が決まったというニュースが飛び込んできて、キャストも好みの役者さんが多く配役されてることもあり気合い入れて東京×2回、大阪×2回と早い時期からチケットを入手しめちゃめちゃ楽しみに待っていました(当時はまだ香川県住まい)。
ところが、ちょうどその時期に新型コロナ禍が直撃。特に3月は演劇界がその影響をモロに受けて揺れに揺れていて…次々と上演中止に追い込まれる作品が増えてきていましたが、『アナスタシア』は逆風の中でも公演を続けてて。東京2公演分確保してた私はなんとしても行きたいという気持ちが強くギリギリまで遠征するつもりだったのですが、諸々の事情を考慮し最後は涙の遠征断念となりました。結局公演も私が断念した直後くらいに公演中止が決まり…日本版アナスタシアを見に行くという希望が見事に打ち砕かれました(涙)。
※当時、行けなかった悔しさをぶつけた記事(苦笑)は、こちら↓。
あれから約3年半・・・、ついに、ついに、『アナスタシア』日本公演再演のニュースが飛び込んできた!!!あの日の悔しすぎる思い出が強すぎたので、今回こそはと気合いを入れ5公演(東京2回、大阪3回)を確保(←初演の時より1回増えてるw)。
もう本当に、”今度こそは見させてください”と遠征当日まで祈るような気持ちで待ちました。
そして今回、とうとう、ついに、リベンジ達成!!!!
初演のとき涙を呑んで観劇断念した作品ということもあってか、もう、感無量の一言でございます…。改めて舞台作品を見に行けることの幸せを噛みしめました。
シアターオーブでの観劇は昨年5月の来日「RENT」以来だったのでけっこう久しぶり。前回は座席でちょっと苦い思いをしたので(前列の人が座高が高すぎて半分も見えなかった悲劇 汗)客席座るまではハラハラしたのですが、今回は適度な距離感で視界も良好、非常に快適で良かったです。
物販の種類は少なめ。パンフレット、クリアファイル、衣装チャーム。チャーム単体は売り切れとのことで、欲しい人はクリアファイルとハンドクリーム(劇中に出てくる香り付き)とセットになってるほうを購入してくださいということになっていました。もともと種類が少ないので列は殆どできていませんでしたね。
私もセットに魅力を感じはしたのですが、経済的諸事情により(苦笑)パンフとクリアファイルだけお買い上げ。
行列ができていたのが”特典"エリア。今回メインキャストのアーニャとディミトリは複数キャストが配役されているのですが、全6組のうち3パターンを見るとなにか素敵な特典がもらえるというイベントがありました。
私は今回東京は2回しか見れないので無理だなと諦め24日の時点ではその列に並ばなかったのですが…、なんと大阪もカウントされるということを終演後に知りまして!!25日慌てて行列に加わった次第ですww。チェックしてよかった(汗)。
ちなみに、25日マチネだけは奮発して「ロイヤルシート」を購入。
非売品のオリジナル特典をいただくことができました!
今公演は自分の席からの開演前、休憩中、終演後の幕の撮影が許可されていました(オケピの撮影は厳禁。何人か撮影しようとして注意されていましたのでお気をつけください)。あとから撮影したものを見たら物語と密かにリンクしていたことに気がついて”なるほど!”と納得。
以下かなりのネタバレを含んだ感想になります。
2023年9月24日ソワレ・25日マチネ公演 in東急シアターオーブ(東京・渋谷)
概要とあらすじ
詳細な作品紹介は公式さんがnoteで紹介してくれているのでそちらを参考にしてみてください。
原案となったのは1997年に公開されたアニメ映画『アナスタシア』です。この映画は1956年に上映された映画『追憶』のリメイクとして制作され、20世紀フォックス(旧・20世紀フォックス映画)初のアニメ映画として注目されました。
ロシア革命(二月革命)により皇帝一家が無惨にも殺害される事件が起こりましたが、第4皇女は実は生き延びているのではないかという説が広がっていたそうです(後に生存説は存在しない事が判明)。アニメ映画はそこに着想してストーリーを創作したと言われています。
映画公開当時はちょうど私がミュージカル観劇にハマり出していた時期で。日本語吹き替え版に舞台を見て「この役者さんはすごい!」と注目していた石川禅さんの名前を見つけ狂喜乱舞し、複数回映画館に通ったほどのめり込んだんですよねw。もう、ディミトリの吹き替えをしてた禅さんが最高すぎて(歌と芝居両方担当してた)DVDも借りまくったしアニメ映画の本まで買ってしまったほどだったw。ちなみに日本語吹き替えはセリフと歌パートを違う役者さんで分けるパターンが多く、アーニャ役の鈴木ほのかさんは歌の部分のみを担当されていました(台詞は白木美貴子さん)。
「アナスタシア」ミュージカル版の作詞はリン・アレンズ、作曲はスティーブン・フラーティ、脚本はテレンス・マクナリー。2012年の読み合わせを経て2015年にワークショップという形で上演。
その後、2016年の初演を経て2017年にブロードウェイ進出します。この時期にグレブ役としてラミン・カリムルーさんが出演していたようです。その後も北米やヨーロッパ各地で上演が行われてきたとのことですが、2020年に入ってからのコロナ禍直撃により中止となる公演も多かったとのこと。
日本初演は2020年3月。東京は初日を後ろにずらしての上演ということになりましたが、ウィルス流行の波には逆らえず27日をもって残りの予定(4月の大阪も含め)が全て中止という判断をくださざるを得なくなりました。ということで、初演は全14公演のみだったとのこと…。
それから約2年後、再び「アナスタシア」プロジェクトが各国で再始動。日本も2023年9月〜10月(大阪含め)の再演が正式に発表される運びとなりました。
なお、宝塚版『アナスタシア ザ・ミュージカル』は2020年11月〜2021年2月にかけて上演されました。
簡単なあらすじは以下の通り。
舞台は20 世紀初頭、帝政末期のロシア、サンクトペテルブルク。ロシア帝国皇帝ニコライ2 世の末娘として生まれたアナスタシアは、パリへ移り住み離ればなれになってしまった祖母マリア皇太后から貰ったオルゴールを宝物に、家族と幸せに暮らしていたが、突如ボリシェビキ(後のソ連共産党)の攻撃を受け、一家は滅びてしまう。しかし、街中ではアナスタシアの生存を噂する声がまことしやかに広がっていた。パリに住むマリア皇太后は、アナスタシアを探すため多額の賞金を懸ける。それを聞いた二人の詐欺師ディミトリとヴラドは、アナスタシアによく似た少女アーニャを利用し、賞金をだまし取ろうと企て、アーニャと三人でマリア皇太后の住むパリへと旅立つ。
<公式HPより抜粋>
上演時間は約2時間40分(休憩時間含む)。
内訳は、1幕70分(1時間10分)、休憩25分、2幕65分(1時間05分)となります。
終演時間は日によって多少前後するかと思います(25日は終わったのが予定よりも10分くらい遅くなっていたので)。
キャスト
- アーニャ: 木下晴香
- ディミトリ:相葉裕樹(24日ソワレ)/海宝直人(25日マチネ)
- グレブ:海宝直人(24日ソワレ)/ 田代万里生(25日マチネ)
- ヴラド:石川禅 (24日ソワレ)/大澄賢也(25日マチネ)
- リリー:マルシア(24日ソワレ)/堀内敬子(25日マチネ)
- マリア皇太后:麻実れい
- リトルアナスタシア:戸張柚(24日ソワレ)/鈴木蒼奈(25日マチネ)
<アンサンブル>
五十嵐耕司・伊坂文月・井上花菜・工藤 彩・熊澤沙穂・小島亜莉沙・酒井 大・杉浦奎介・渡久地真理子・西岡憲吾・武藤 寛・村井成仁・山中美奈・山本晴美
<スウィング>
草場有輝・篠崎未伶雅
今回は公演前に公式さんがアンサンブルさんについての紹介記事をSNSに挙げてくれていたので、あの役者さんがこんな役をやってるんだなというのが把握できてとても有意義な観劇になったと思います。メインキャストの紹介はよくあるのですが、アンサンブルさんを細かく紹介するっていう試みはこれまで殆ど見かけなかったので、今後もこういった痒いところにも手が届く的な情報をたくさん流してほしいなと思いました。
#アナスタシア通信 昨日の前編に次ぐ後編は、女性アンサンブル&心強いスウィングのご紹介です🌸🩰👏
男性アンサンブルの紹介は、引用からご覧ください⬇️#ミュージカル #アナスタシア https://t.co/atGockSfoi pic.twitter.com/xkMQkNNx11
— ミュージカル アナスタシア 日本公演 (@AnastasiaJapan) August 23, 2023
メインでなくてもキラリと光る個性のある役者さんに注目するのってすごく楽しいし応援したくなるものなのですよ。他のカンパニーも同じように毎回全キャスト紹介してほしいなぁ。
私が観劇したのは東京公演に入ってちょうど折り返しの時期でしたが、体調不良で休演される役者さんがチラホラいらっしゃって心配になってしまった。
24日ソワレは主人公のアーニャ役の葵わかなちゃんが、25日マチネはリトルアナスタシア役の内夢華ちゃんが休演ということになっていました(数日後に元気に回復したとのお知らせあり)。私が観劇した日以降も体調不良で止む無く休演という方が散見されとても気がかりです。
まだあの流行病は落ち着いたわけではないし、季節の変わり目による不調も出てきやすい時期。長丁場のなかで体調管理をするのはかなり大変だと思います(子役さんは特に辛かったのでは…)。まだ公演は続いていくので、皆様どうぞ健康にと祈るしかありません。
全体感想
最初の方でもちょこっと触れましたが、今回開演前、休憩中、終演後の撮影が許可となっていました。開演前は”ANASASIA”のロゴが映し出されていてその背景に深々と降り続ける雪の映像がかぶさっています。
遠景だとちょっと分かりづらいですが…、近景で見るとこんな感じ(アップにしてみました)↓。
白い細かい粒のように見えるのが”雪”。実はこれ、開演前だけに見られる光景になってて、休憩中と終演後はよく見ると違う見せ方になってるんですよね。それに気が付いた時、始まる前から終わった後まで幕も物語の一部として存在していたんだなぁと感動しました。
ミュージカル版の『アナスタシア』はアニメ映画を基にしてはいますが、物語の雰囲気はかなりそれとは違ったものになっていました。アウトラインは重なる部分が多かったものの、楽しくワクワクしながら見るというよりかは、より濃厚な大人の人間ドラマを堪能するといった雰囲気が強かったです。
アニメ版との一番大きな違いは、皇帝の信頼を得ていたと云われる怪僧・ラスプーチンを物語の中に登場させなかったことですね。アニメ版では邪悪な魔法使いとして地獄の底から復活し(ラスプーチンはロシア革命前に命を落としてるので)アナスタシアたちの前に大きく立ち塞がる極悪キャラとして暗躍。『アラジン』に出てくるジャファーをさらに悪くしたような感じw。ところが、ミュージカル版では名前すら出てこないw。あんなに強烈な人物をきれいさっぱりカットしたのは思い切ったなぁと。
その代わりに新キャラクターとして”グレブ“というメインキャラクターが登場します。彼は時代に翻弄されたが故にアナスタシアと敵対的な関係になってしまうという哀しみを秘めた人物で、アニメ版ラスプーチンのような極悪色はゼロ。このように設定することで、アーニャを巡る人間関係がよりドラマチックになっていたように感じました。
また、ラスプーチンの右腕的存在だった(最後は裏切る形になるけど)こうもりのバルトーク(声は中尾隆聖さんが担当)も登場しないし、アナスタシアやディミトリたちに可愛がられていた犬のプーカも存在していない。いわゆるディズニーアニメ的な子供さんが喜びそうな相棒キャラはこの作品には一切出てこない。それゆえ、ミュージカル版は大人向けの人間ドラマ色がより濃くなった印象が強かったです。
楽曲はアニメ映画で使われたナンバーがほぼ全部登場してたのが嬉しかったですね(当然ながらラスプーチンのソロはカットされてるけど)。アニメ版は本当に大好きでCDを繰り返し聴いていたくらいなので、特に好きだった曲が出てきたときはテンション上がりました。
今回はアニメ版とミュージカル版との違いについてを中心に触れたいと思います(シーンごとの感想は大阪公演を観た時に書く予定w)。
♪Once Upon a December(遠い12月)♪で少女アーニャがマリア皇太后からオルゴールを手渡される場面はほとんど同じ。ミュージカル版のほうがちょっとアーニャが幼い感じかなってくらい。そこからニコライ二世たちが登場して華やかな雰囲気になるのもだいたい変わりないのですが、そこから急転直下、彼らが地獄に落とされる展開になるきっかけの物語が違いますね。
アニメではラスプーチンがニコライたちに呪いをかけて死に追いやるといったような描かれ方をしていましたが、ミュージカルではラスプーチンが全く出てこないので革命の兵士たちに襲撃されるといった描かれ方になっていました。ファンタジー的設定だったアニメに比べると、かなりリアリティのある緊迫した表現になっていたのがとても印象深かったです。
それから、後にキーアイテムとなるオルゴールの行方や扱いもアニメと舞台とではだいぶ違います。個人的には、アーニャを密かに逃がしたディミトリが拾ったという設定のアニメ版のほうが好きだったかな(ミュージカル版ではディミトリが偶然出会った商人からオルゴールを買い取るという設定だったので)。
♪A Rumor in St. Petersburg(ペテルブルクの噂)♪はアニメ映画でも大好きなシーンのひとつだったので、これをミュージカルの実写として見れたのはとても嬉しかったですね。
このシーンで主要なキャラクターが色々交わりながら登場してくるわけですが、ミュージカル版の描かれ方がとてもポップでテンポもよく面白かった。
アーニャは過去の記憶を失いようやくありついた道路掃除の仕事をしながらなんとか食いつないでいる状況。アニメ版ではアーニャがひどい扱いを受けていた孤児院からやっと出られたみたいな描写がありましたが、ミュージカル版では孤児院での描写はない感じでしたね。
このナンバーの中でディミトリがヴラドと結託してアナスタシアをダシに大金を儲けようと画策する場面が出てきます。ミュージカル版のほうが彼らの革命後の切迫した厳しい生活感が強く出ていたので、一獲千金を狙って今の生活から脱出したいと渇望してしまうことへの説得力があったなと思いました。
必死に掃除の仕事をこなしてたアーニャがグレブとぶつかり二人が初対面するシーンは個人的にとても印象に残りました。冷徹で厳しい表情しか見せていなかったグレブがアーニャと目が合った瞬間に”普通の青年”の表情となりこれまで感じたことのない感情を抱くっていう展開がたまらなく好き!
”アナスタシア”を仕立てるためのオーディションをディミトリとヴラドがやってるところにアーニャがやってくる展開はほぼ同じ。ただ、アーニャがディミトリに会いに来た理由がちょっと違うかな。アニメ版では孤児院を出たアーニャが新たな地を求めて旅立とうとするために出国ビザが欲しくてディミトリを頼りに来たといった感じだったけど、ミュージカル版では一刻も早く厳しい生活を強いられるこの国から逃げ出したいといった切迫感が強かったように思います。リアルな世界でも有り得そうな展開になってるのが印象深い。
名前を聞かれたことをきっかけにアーニャがより「自分とは何者なのか」という想いを強くしていく♪In My Dreams(夢の中で)♪は新曲です。これから始まる物語の序章のようなドラマチックな楽曲でした。
一方のグレブは偽”アナスタシア”オーディションの密告を受け、ディミトリたちを監視していくことになります。この時の彼はひたすら冷酷でゾクっとするような怖さが前面に出た雰囲気。革命を正義と信じて疑わない青年像がそこにはありました。
一方、なんやかんやありながらもアーニャが”アナスタシア”に面影が似ていると感じたディミトリとヴラドは彼女の教育を始める。その時に歌われる♪Learn to Do It(やればできるさ)♪はアニメ版でも大好きだったナンバーのひとつ。なんといっても3人の絶妙な会話のやり取りが最高です。ここのアーニャのセリフ量がとてもすごいので、覚えるの大変だっただろうなぁとも(汗)。
教育していく中でヴラドがひっくり返した黒板がディミトリの顎に直撃しちゃうシーンは可愛くて面白かった(ここは稽古でもかなりタイミング取るの大変だったらしい)。これ、アニメ版でディミトリが電車の中でアーニャのカバンにガチンとやられ痛がる場面を重ねたんだろうなと思いながら見てました。
アーニャとディミトリは最初の方は口を開けばケンカばかりといった関係が続いていましたが、ダンスのレッスンをヴラドが二人に促したところから少し流れが変わっていきます。アニメ版ではパリに向かう途中の船の上でのシーンになっていましたが、ミュージカル版ではまだ向かう前のレッスン中の出来事として描かれていたので展開早いなとちょっと驚いてしまったw。
ミュージカル版ではアーニャがディミトリの足を思い切り蹴飛ばすお転婆っぷりを発揮ww。それを見てすかさずツッコミを入れたヴラドも可愛いし、痛がりながらも本気で怒らないディミトリの可愛さも好きでしたね。彼の心が徐々にアーニャへ傾いているのが感じられたのも良かった。
そんなとき、アーニャは突然ボリシェビキから呼び出しを食らってしまう。ここはミュージカル版オリジナル。最初は威圧的な態度で接していたグレブでしたが、アーニャの顔を見たとたんにコロッと態度が変わってしまうのがなんだかとても親しみやすくて可愛くて感情移入してしまった。
海宝グレブは「僕は怖くないよ、明るい男だよ」アピールが凄くてww、万里生グレブはドギマギしながらの熱血プロポーズ的なアプローチみたいになってたなww。どちらもそれまでに見せていた冷徹な雰囲気とは違うもう一人の”グレブ”を可愛く演じていてとても印象に残りました。このシーンがあったことによって、見る側の彼に対する興味が俄然深まったような気がします。グレブはアーニャにディミトリたちとは距離を置くよう忠告しますが、その想いは彼女には届かない。むしろ反発されてしまった感じになるのが切ない。
アーニャが去った後にグレブが自らの辿ってきた人生を歌う新曲♪The Neva Flows(ネヴァ河の流れ)♪は心を震わせるようなすごいソロナンバー。いかにして今の彼が形成されていったかのドラマがこれでもかというほど詰まっていて…。もしもグレブの父親が革命の兵士でなかったら、ニコライ二世の悲劇に直接かかわっていなかったら…ということをすごく考えて胸が苦しくなってしまった(涙)。
道端でアーニャが酔っ払いに絡まれたのをディミトリが助けに入る展開はミュージカルオリジナルですが、ここはおそらくアニメ版のクライマックスでアーニャがラスプーチンと対決する場面をオマージュしてるのかなと思いました。アニメ版のネタバレになりますが、めっちゃ強いんですよね、アーニャ(笑)。助けに入ったディミトリがけっこうボコられてダウンしちゃうなか、彼女は窮地の中で謎の復活をしラスプーチンに復讐するっていうのが斬新でww当時「強すぎるヒロイン」としてちょっとした話題になっていたくらいですw。
酔っ払いに絡まれてる時のアーニャもめっちゃ強くてむしろディミトリよりも活躍しているように見えたので、ちょっとアニメのクライマックスと重なって見えて面白かったw。
乱闘騒ぎが終わった後にディミトリが歌う♪My Petersburg(俺のペテルブルク)♪は新曲です。ここで彼の生い立ちが語られることになるのですが、アニメとは大きく設定が違っていました。アニメでは少年の頃に宮殿に出入りしていた時アナスタシア救出に大きな役割を果たしたということになっていましたが、ミュージカル版でのディミトリは宮殿とは何ら関係もないことになってます。母亡き後アナーキスト(無政府主義者)だった父親は牢獄の中で亡くなったという暗い過去が語られててビックリしました。「ディマ」と呼んで可愛がってくれたお父さんのことを今でもずっと愛し尊敬してるっていうのが泣けるんですよね。
それでもディミトリは沈むことなく明るく吹き飛ばすように生き生きと歌い上げる。それがすごく感動的でしたね。どんな苦しい状況でもめげずに必死に前を向いて突き進んでいく人物像にとても大きな魅力を感じました。あと、映画版ではとても少なかったディミトリのソロをミュージカル版ではたっぷり聞けたことも嬉しかったなぁ。
このナンバーの後、ディミトリは買い取った”オルゴール”を頑張った褒美としてアーニャにプレゼントします。アニメ版ではパリに到着した後にディミトリがある重要な場面で手渡すのですが、その相手はアーニャじゃなかったんですよね。なので、「今このタイミングでオルゴールが出てくるのか!」と驚いてしまいました(汗)。
オルゴールを渡されたアーニャの脳裏に微かにロマノフ王朝の幸せだったころの記憶が浮かんでくる場面はとてもドラマチックに描かれていて印象的でした(♪Once Upon a December♪)。
その後、今の時期を逃したら出国のチャンスはないと悟ったディミトリたちは急いでロシアを出発する手はずを整える。アニメ版ではアーニャの訓練に目途がついたタイミングで出国といった描かれ方だったのですが(♪やればできるさ♪のナンバーの最後には船に乗り込んでた)、ミュージカル版では命の危機が迫るとても切迫した雰囲気のなかでの出国という描かれ方をしていたのがとても印象深かったですね。
また、出発する際にアーニャたちが出会うイポリトフ伯爵の存在が物悲しくてウルっときました。ヴラドの話によれば、彼に残された命は限られているという。どこに逃げても囚われ抹殺される運命にある彼が歌うナンバー♪Stay, I Pray You(惜別の祈り)♪が切なくて胸に沁みましたね(涙)。今現在もこのような生と死が背中合わせの運命の人が世界中のどこかにいるんだろうなと思うとなおさら哀しくなってしまった。おとぎ話ではない現実を突きつけられたような気がして…。
そしてこの後ついにパリに向けて脱出する列車旅が始まるわけですが、アニメ版にあった船旅はカットされてました。
このシーンの何が一番印象深かったかと言えば、映像の美しさと列車のセットとの見事な融合です。全編にわたって背景に映るED映像が本当に綺麗で驚いたのですが、中でも特にこの列車旅のシーンは息を飲むような美しさだった。それから、セットは鉄骨を組んだ感じの簡素なものだったのですが盆を回すことによってまるで本当に列車が駆け抜けていくように見えたのも驚きでした。ここまで映像とセットが自然に溶け合ってる光景はあまりないんじゃないかなと。
途中までは列車内で3人ワチャワチャしてたのが(ヴラドの新曲ソロ♪We’ll Go from There-新たなる旅立ち-♪が軽快で楽しい)、国境警備隊が乱入してきたことによって一気に緊迫感が増していきます。アーニャたちが絶体絶命のピンチに陥る場面はアニメでも登場しますが、あの時はラスプーチンの呪いによって列車が破壊されるって描写になってたんですよね。
それに比べるとミュージカル版はすごくリアルな世界観で見ていて心が大きくざわついてしまった。特に後ろの方で鳴り響く銃声が非常にショッキングで…。あれって駅でアーニャたちが出会ったイポリトフ伯爵が見つかってしまい悲劇を迎えたってことだろうなと(涙)。
アーニャたち3人が一斉に列車から飛び降りる場面はアニメにも出てきます。あの時は雪の上にボサッと落ちた感じだったけど、ミュージカル版は春の景色が映し出されていたのでどうやって無事に着地できたのかが気になってしまった(←そこは考えないことにしないとダメなやつかもw)。
やがてグレブにアナスタシアを排除するべくパリへ向かうよう上官命令が下る。頭では冷徹に父のように任務をこなせばいいだけだと分かっていながらも、彼女に惹かれる想いを捨てきれず激しく葛藤し苦しむ彼の姿はとても痛々しかった。ここで歌われる壮大なソロナンバー♪Still(それでもまだ)♪は本当に圧巻の一言。ここのシーンでますますグレブに感情移入してしまったかもしれない。
なんとか追手の目をかいくぐりながらパリ目前のところまでやって来たアーニャたち。丘の上から見えるパリの町を見て無邪気に喜びを爆発させるディミトリとヴラドが可愛い。アニメ版ではパリ入りのシーンはこんな感動的に描かれてなかった気がするw。
そして、ついにここで私が一番大好きな『アナスタシア』のナンバー♪Journey to the Past(過去への旅)♪が登場します。アニメ版では孤児院から出たばかりのアーニャが新たな土地を求めて一歩踏み出すシーンで歌われるのですが(出会った子犬のプーカに導かれるんですよね)、ミュージカル版ではこれを思い切って1幕ラストに持ってきたんですよね。事前にその情報は掴んでいたので安心してこの時を待てましたがw、知らなかったら「もしかしてカットされたのでは!?」とハラハラしてしまったかもしれない(笑)。
パリを目前に新たな自分との出会いの予感に胸膨らませながら♪Journey~♪を歌うアーニャのシーンは本当にとても感動的です。壮大でドラマチックなナンバーが胸に迫る。ここはアニメ版よりもミュージカル版のほうが心が震えたかもしれない。
なんだかんだで長くなってきたので2幕からの続きなどは次のページにて。