ミュージカル『GOLD~カミーユとロダン~』11.12.19マチネ

シアタークリエで上演中のミュージカル『GOLD~カミーユとロダン~』を観に行ってきました。


チケット発売当初は行くかどうか悩んで購入していなかったのですが、やっぱり石丸さんの作品は観ておきたいと思い行くことに。

芸術家を題材にした演劇はこれまでもいくつか見てきましたが、けっこう重い作品が多いんですよね。芸術家本人が錯乱してしまうか、相手の女性が翻弄されて壊れていくか・・・みたいな。それだけの紆余曲折の人生を送ったからこそ、後世に残るようなすごい作品を産み出せているわけではありますが・・・あまりお近づきにはなりたくないなというタイプの人物が多い(苦笑)。

『GOLD』はあの有名な“地獄の門”“考える人”を創り出したオーギュスト・ロダンとその愛人であったカミーユ・クローデルの関係を描いた作品。

特異な芸術家との出会いによって人生を狂わされていく女性・カミーユの激しすぎる人生が展開されています。

演出は白井晃さん。舞台のセットはアトリエそのものといった感じでけっこうリアルでした。なんだかクリエが広く感じられたし。


ミュージカルと銘打っていますが、どちらかというと音楽劇という要素のほうが強いかもしれない。もっと言えばストレートプレイに近い。歌で物語が紡がれていくのではなく芝居で物語が進行していくという印象です。カミーユとロダンの濃い~人間ドラマがグイグイ前面に押し出されていて圧倒される。

ワイルドホーンの音楽も素晴らしいんだけど、二人の人間関係ドラマがけっこう強烈だったのであまり記憶に残るナンバーがなかったような…(苦笑)。好きなんだけどな、ワイルドホーンの音楽。

見終わった後は観客のほうもドッと疲れを感じさせるような作品なので、軽い気持ちで観に行く作品ではないなと思うのですが(汗)・・・お芝居としてはとても見応えがあるのでやっぱり観に行ったことは良かったと思います。


主なキャスト

カミーユ・クローデル:新妻聖子、オーギュスト・ロダン:石丸幹二、ポール・クローデル:伊礼彼方、クローデル夫人:根岸季衣、クローデル氏:西岡徳馬

以下、ネタバレを含んだ感想です。



ヴィルヌーブの田舎町に暮らしていたクローデル一家。娘のカミーユは幼い時から彫刻に天賦の才能をみせ父親を驚かせる。やがてその才能に目をつけた人物からパリ行きを誘われる。母親の大反対を押し切ってパリへやってきたカミーユはアトリエの臨時指導員としてやってきたオーギュスト・ロダンと出会う。

出会ったばかりの頃は意見を対立していたものの、カミーユの才能に目をつけたロダンは彼女を自らのアトリエにパートナーとして招き入れることに。やがて二人は激しい恋に落ち、制作も順調に進んでいく。

ところが、次第にカミーユは自らの才能を世の中にアピールしたい気持ちに駆られロダンへの不信感を募らせた果てに彼の元を去っていく。
他の地で個展を開いたカミーユはそこで成功を収めるものの、ロダンへの気持ちにケリが付いていない自分にも気づくことに。ロダン本人もカミーユなしには創作意欲が沸かないことへの苛立ちを募らせており、やがて二人はもう一度やり直そうと決める。

しかし、その生活も長くは続かず…


オーギュスト・ロダンという彫刻家は有名なので知っていますが(特に”考える人”のインパクトが強いですから)、彼の愛人だったというカミーユ・クローデルのことは今回の舞台で初めて知りました。
ロダンと出会ったことでその人生の歯車が狂わされていったカミーユ…。

ロダンには彼の苦難の時代からずっと支えてきてくれた女性ローズの存在が常にあるわけで、カミーユは結局彼の1番にはなれなかったんですよね。ローズは恩人でもあるから離れがたい存在で、カミーユはロダンの欲望を満たす存在。

さらに不幸だったのは、この当時のフランスが女性の彫刻家を認めていなかったという現実です。

どんなに素晴らしいものを創作しても“女だから”という理由だけで弾かれてしまう。自己顕示欲が強かった彼女にとってはまさに屈辱の連続。それを繰り返すうちに、ロダンが自らの作品を盗作しているという被害妄想に襲われついには精神崩壊し病院送りになってしまうとは…。もう少し後の時代に産まれていたら彼女の人生は違ったものになっていただろうなと思ってしまいました。


ロダンとカミーユが初めてお互いを強く意識し結ばれるシーンは実に官能的でした。かなり大胆な演出。そこに至るまでそれぞれの心の奥にじわじわと溜め込まれていた感情が一気に開放される、みたいな感じでけっこうドキドキしながら見入ってしまった。

でも激しいのはラブシーンだけではなくて…むしろ二人の言い争いのほうがすごい!お互いに愛情は深いんだけど、その前に二人は芸術家でもある。これが二人の恋を遮ってしまう皮肉。

カミーユは自らの作品が認められないことへの苛立ちから、ついにはロダンが自らの作風を盗作しているという激しい思い込みに囚われていく。

『自分は天才彫刻家だ』という絶対的自負が、ロダンと一緒にいることで彼女を追い詰めてしまうわけで…崩壊していく彼女を見るのはなんだかとても痛々しかった。
ロダンはカミーユを自己の欲望を満たしてくれる女性として愛したわけですが、彼もまた、実は、彼女の才能に激しい嫉妬心を抱いていたのではないかなと思ってしまった。


自分の作品を世に出そうと積極的に動く彼女に「君はまだ若い、早すぎる」と何度も忠告するロダン。彼は成功を収めるまでに相当の時間を費やしているわけで…カミーユが自分よりも速いペースで魅力的な作品を産み出していく現実に嫉妬した部分も大きかったのではないかなと。

お互いに愛していると同時に嫉妬に縛られる。そんな二人が穏やかにうまくいくわけがない。カミーユとロダンの愛憎に満ちたぶつかり合いは見ているものを圧倒する激しさがありました。


うーん、とにかく、ものすごいエネルギー放出する舞台だったなぁと。演じている役者さんたちは大変だと思った(汗)。

主要なキャストはクローデル一家とロダン、そのほかの人物はアンサンブルさんたちが入れ替わり立ち代り何役も演じられてます。

最初に出てくるモデル役の高山光乗くんは素晴らしい肉体美だったなぁ!私の周りの席から感嘆の声が漏れてたし(笑)。

クローデル一家は奔放な娘のカミーユとさまざまな形でかかわってきます。


西岡さんが演じた父親はカミーユの才能をいち早く見抜きそれを認めてくれた存在。歌はイマイチですが(汗)いつも優しく温かく見守っている姿が印象的でした。この役、最初は古谷一行さんが演じるはずだったんですよね。早く体調が回復しますようお祈りします。
根岸さんが演じた母親は父親とは正反対でカミーユの彫刻家への道を最後まで認めない存在。現状維持が一番と考える保守的な母親をストイックに演じられていました。ソロナンバーがけっこうあるのでちょっと歌が…(汗)でしたが、お芝居は素晴らしかったです。


カミーユの弟ポールを演じた伊礼くん

カミーユに翻弄されっぱなしだった気弱な弟から母親の期待通りの道を進み外交官へ成長する過程がなかなか上手く演じられていたと思います。本当は自分の好きな戯曲の道へ行きたかったポールですが、結局は母親の期待から逃れられなかったわけで…そんな心のジレンマから敬虔なクリスチャンへ。姉にクリスチャンへの道を勧めるシーンは印象的でした。


ロダンを演じた石丸さん、以前も芸術家の役を演じてましたが(ジョルジュ・スーラ)今回も苦悩を重ねる芸術家ロダンを熱演!カミーユへの愛を自覚したときの戸惑いの仕草にグッと来るものがありました。あそこは繊細な芝居でとても良かったです。

その後、カミーユへの愛と芸術家としての行き詰まりから感情を激しく揺さぶられることが多いのですが、ああいった悩める芸術家というのが石丸さんにはけっこうハマるなぁと思ってしまいました。
以前コンサートで「ロダンはけっこうヒドイ男なのでどう演じようか悩んでる」みたいなことを言っていた石丸さんw。たしかにロダンは優しくて穏やかな石丸さんとは対極の男性だと思うので役作り大変だったんじゃないかなぁ、みたいな。
四季退団後の石丸さんはいろんな人物に体当たりして色々と模索しているように思います。


そして何よりも強烈な光を放っていたのが主人公のカミーユを演じた新妻さんです。

彼女はいつの間にこんなすごいミュージカル女優…というか、舞台女優になったのでしょうか。歌は抜群の安定感だしお芝居にもまったくブレがない。どのシーンも一切抜いたところがなく、全力疾走…全身全霊で激しいカミーユの人生を生き抜いていてまったく持って脱帽です!!2幕クライマックスで歌われる『黄金』のナンバーでは、私気づいたらボロ泣きしてましたからね…。あれはまさに魂を揺さぶられる歌声だった。

天真爛漫な少女時代から、ロダンと出会い恋に落ち大人の女性に変わる芝居もすごく自然だった。そして芸術家としての挫折の連続から精神崩壊していくまでの狂気に満ちた芝居…!!まさにカミーユそのものが憑依したみたいだった。

もうとにかく、新妻聖子さんの放つ光がものすごい強烈で圧倒されっぱなしの舞台だった。それ故、実は…石丸さんがちょっと霞んで見える瞬間も何度かあったんですよね(苦笑)。石丸さんもかなり全力でぶつかっていると思うのですが、新妻さんのエネルギーのほうが明らかに強く激しいんですよ。だからロダンがいつもやり込められているように見えてしまう(汗)。あの彼女のすごいエネルギーに対抗するには、もう一段階石丸さんには殻を破ってほしかったような気がします。

そういった意味では、ちょっと全体のバランスが悪いかなと思える一面も…。新妻さんにはクリエは小さいのかもしれない。

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