ミュージカル『Beautiful-ビューティフル-』2020.11.15ソワレ

東京の帝国劇場で上演されたミュージカル『Beautiful-ビューティフル-』を観に行ってきました。

今回の観劇遠征で一番最初に軸を置いたのがこの作品す。3年前遠征して観たときにとても感動したので、再演もぜひ観に行きたいと熱望してチケット確保しました。

※2017年初演の感想↓

それにしても、なんで再演も東京オンリーでの上演なのかなぁ。初演は仕方ないとしても再演は地方(せめて大阪だけでも)あると思ってただけに非常に複雑な心境。より多くの人に観てもらいたい秀作なだけにホント勿体ない。
ただ、今回の場合は新型コロナ禍の影響が色濃いなかでの上演決定でしたから…そういう点でも難しかったのかもしれない。そう思うとなんか悔しいなぁ。

この日のキャロルのキャストは水樹奈々さんだったからか、男性のお客さんの数がけっこう多め。休憩時間の男子トイレに列ができていたほどで、私の席の周りも8割が男性の方でした。

帝劇でも新型コロナ感染予防の対策は『ローマの休日』の時と同様にかなりしっかりしている印象です。消毒液も多いし、休憩時間も30分取りトイレ列が密にならないよう気を配っていました。
飲料水は必要最小限のものだけ販売し、食べ物は一切販売されていません。劇場に入った後は基本的に飲食を控えるようにということになっているので、入る前に食事を済ませておくことをお勧めします(ちなみに、地下のコンビニは11月中は閉店ということになっていました)。

物販コーナーは1階席ロビー1カ所のみ。私はパンフレットだけ購入しましたが、その他グッズも販売してました(いくつかは売切れて入荷待ちだった)。また、劇場での密を避けるために日比谷シャンテ3階の日比谷コテージでもグッズ販売がありますし、ネットからも購入できるようになっています(ローマグッズもまだ販売してました)。

座席は通常通りの詰めて座るスタイルになっていましたが、真ん中から後ろエリアや2階席にけっこう空席が目立っていたのが非常に残念です。東京近郊に住んでいたらリピート観劇してたよ…。
個人的に大好きな作品なのでこの状況はとてももどかしいのですが…、だからと言って大きな声で「ぜひとも劇場に観に行ってほしい!!」と言えない状況なのが悔しくてねぇ…。私も勇気ふり絞っての遠征でしたし(苦笑)。

『ビューティフル』ほんと素晴らしい作品なんだよ~~!!もっと埋まってほしかったというのが本音。それを許さない新型コロナが本当に憎いです…。

以下、ネタバレを含んだ感想になります。

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2020.11.15ソワレ in 帝国劇場 (東京・日比谷)

主なキャスト

  • キャロル・キング:水樹奈々
  • バリー・マン:中川晃教
  • ジェリー・ゴフィン:伊礼彼方
  • シンシア・ワイル:ソニン
  • ドニー・カーシュナー:武田真治
  • ジニー・クライン:剣幸

アンサンブルキャストも逸材揃いでした。山田元くんは今回も大活躍。甘い美声を響かせてくれていました。ライチャス・ブラザーズでのクールな歌いっぷりも素敵でしたが、キャロルをさりげなく口説こうとする長髪のニックも爽やかで印象的でした。

また、「ザ・ドリフターズ」(日本の有名なドリフではなく、主に50~70年代に活躍したアメリカで活躍したコーラスグループ)や女性ボーカルグループ「シュレルズ」を演じた4人も最高のパフォーマンスを見せてくれました!
特に、神田恭兵くんは新型コロナ禍の影響で役者ができない間に苦労している様子がSNSから垣間見えていたので、舞台上で生き生きと歌い踊っている姿を見たらなんだかものすごく泣けてきちゃって…。

神田君のほかにも舞台に立てない間苦労して食いつないでたアンサンブルさんたちたくさんいたと思います。そんな彼らが生き生きと舞台の上で最高のパフォーマンスをしているのを目の当たりにして思わず胸が熱くなり涙があふれてしまいました。

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あらすじと概要

この作品はアメリカの超有名シンガーソングライターであるキャロル・キングの半生を綴ったジュークボックスミュージカルで、2013年に初演され翌年にはブロードウェイにも進出しました。

2015年~16年の全米ツアー公演の後、2017年に日本公演が実現し当時大きな反響を呼びました。あれから3年、今回の2020年版も同じ主要キャストで上演されることに。年月が経っても同じメンバーがそのまま集まる作品はそう多くはないので、すごいことだなぁと思います。

簡単なあらすじは以下の通り。

ニューヨークに住む16歳のキャロル・キング(水樹奈々/平原綾香)は、教師になるように勧める母親のジニー・クライン(剣 幸)を振り切って、名プロデューサーのドニー・カーシュナー(武田真治)に曲を売り込み、作曲家への一歩を踏み出す。

やがて同じカレッジに通うジェリー・ゴフィン(伊礼彼方)と出会い、恋に落ちた二人はパートナーを組み、キャロルが作曲、ジェリーが作詞を担当するようになる。ほどなくしてキャロルは妊娠、結婚した二人は必死で仕事と子育てに奮闘する。同じ頃二人は、ドニーがプロデュースする新進作曲家と作詞家のコンビ、バリー・マン(中川晃教)とシンシア・ワイル(ソニン)と良き友人となり、互いにしのぎを削り、ヒットチャートの首位を争うようになる。

数々のヒットを放ち、全てが順調に進んでいるかのように思われたが、そこには新たな困難が待ち受けていた――。

<公式HPより引用>

劇中では主に、キャロル・キングジェリー・ゴフィンのコンビとバリー・マンシンシア・ワイルのコンビが競い合いながら作詞作曲した楽曲が惜しみなくふんだんに出てきます。色とりどりの心躍る楽曲がてんこ盛りなのも『ビューティフル』の魅力。キャロル・キングをよく知らなくても、聞いたことがある曲が必ず1‐2曲は出てくるんじゃないかな。それだけでも十分楽しめる作品だと思います。

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全体感想

3年ぶり2回目の『ビューティフル』でしたが、1回目の時よりも物語が体の中に浸透しやすくなっていてより充実した観劇となりました。

この作品はジュークボックスミュージカルと呼ばれていますが、『マンマ・ミーア』のように歌詞を物語の中に投影していくスタイルではなく、キャロル・キングの辿った半生を描くなかで次々と誕生していく音楽をそのまま取り入れるスタイルになっているのが面白いところじゃないかなと。
キャロルとジェリー、ライバル関係のバリーとシンシアの物語が展開していくなかに自然と音楽が組み込まれているので、登場人物の心情を綴るスタイルではないミュージカルでも全く違和感なく観ることができます。

そんななか1幕ラストに歌われる♪One Fine Day♪はちょっと趣向を変えた演出になっています。
キャロルの夫で作詞家のパートナーでもあるジェリーが精神的不安定となり、♪One Fine~♪を提供したジャネールとの関係に逃げてしまう。そのことを目の当たりにしたキャロルが絶望で呆然とするなかで、ステージ上で♪One Fine~♪を歌うジャネールの後を継いで別次元で最後の一節を歌うんですよね。
その歌詞が見事にキャロルのその瞬間の気持ちとリンクしていてグッときます。役の気持ちと楽曲がリンクした”ミュージカル”になる唯一のシーンでもありとても印象深かったです。

60年~70年代にかけてのアメリカの音楽時代は作詞作曲と歌い手の役割分担があったということで、基本的にキャロルやバリーたちは曲作りをしている最中に試しに歌う程度。がっつり歌うのは提供された側というスタンスです。

その歌い手を演じているのがアンサンブルさんたちなのですが、皆さん本当に歌唱力も表現力も完璧!!一般のミュージカルよりもさらに高いレベルを求められる難しい役回りだったと思うのですが、メインキャストに負けないほどの存在感と歌唱力を発揮されていて大きく胸揺さぶられました。
「ザ・ドリフターズ」「シュレルズ」「シフォンズ」「モンキース」などなど・・・多種多様なグループを見事に演じ分けつつ他の脇役(照明係とか)もこなしてましたから、みなさん本当に大変だと思います。でもやりがいも大きいのではないでしょうか。とても生き生き楽しそうに舞台の上で生きていた姿がとても印象的でした。ここまで”アンサンブル”の皆さんがキラキラ輝く作品というのもあまりないと思います。

個人的に一番盛り上がったのは、ザ・ドリフターズが歌う♪オン・ブロードウェイ♪。この曲は大好きな楽曲なのでめちゃめちゃテンション上がります!!全身の細胞が喜んでる感覚すらしました(笑)。とにかくザ・ドリフターズのパフォーマンスが最高でした!!
♪オン・ブロードウェイ♪はキャロルとジェリーの音楽を数多く歌ってきた彼らに、バリーとシンシアが「自分たちの楽曲も歌ってもらおう」と対抗して提供したナンバーだったらしい。そんな成り立ちであの名曲が誕生したとは知らなかったのでとても興味深かったです。

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さて、キャロル・キングの物語について。3年前に見たときは「多少の苦労はあるものの全体的には順風満帆な半生だったんじゃないかな」という感想を持ったのですがw、今回見たらキャロルの心境がものすごくストレートに伝わってきて「けっこう苦労の多い半生だったんだな」と逆の感想を抱いてしまいました。

17歳という若さで母の反対を押し切り若手プロデューサーのドニーに自分の曲を売り込み成功してしまったり、同じ大学の憧れの先輩だったジェリーと出会いあっという間に恋に落ちてしまったりと・・・前半部分はものかなり幸運続きなのですが、予期せぬ妊娠をしてしまったことで運命が変わっていきます。
妊娠といえばとてもおめでたいことだしハッピーな出来事なのですが、キャロルとジェリーにとってはそれが必ずしも手放しで喜べる状況ではなかったんですよね。作詞・作曲コンビとして二人でどんどん大きな仕事をしていこうとテンションが上がった矢先の出来事ゆえに、予定外の妊娠は戸惑いとなってしまった。

キャロルはそれでも母になる喜びを感じ前向きに進んでいこうとしますが、ジェリーはキャロルとの結婚を”義務”的に捉えている一面もあり中途半端な気持ちのまま過ごしていくことになる。それゆえ、一見二人の結婚生活や仕事はとても順調に見えてもどこか危うく脆い印象がぬぐえません。時間が経つにつれて二人の微妙な関係のズレが大きくなってしまうのを見るのはとても切なかった。
結局ジェリーはキャロルとの結婚生活に対する違和感を拭うことができず、仕事のプレッシャーも重なり精神的に崩壊していってしまうんですよね…。そんなダンナを間近に感じながらも必死に前を向いて子育てと仕事を両立し、ヒット曲を量産していった彼女は本当にすごい人だなと思います。キャロルはポップなヒット音楽を次々と生み出していきますが、実は性格は地味ですごく真面目だっただけに夫との関係がうまくいかない時期はとても辛かったんじゃないかな…。

そんなちょっと重くなりがちなキャロルとジェリーの関係を中和させる存在だったのが、バリーとシンシアでした。バリーたちはキャロルたちに激しいライバル心を燃やし「ヒット曲」を生み出そうとエネルギッシュに活動していくのですが、二人の会話のテンポがライトでキュートでとにかく面白い!!なんとかキャロル・ジェリーコンビを追い抜こうと必死になってるんだけど、その時の試行錯誤してる時のやり取りが可愛らしくて思わずクスっと笑ってしまうことも多かったです。

キャロルとジェリー、バリーとシンシアはライバルであると同時にかけがえのない親友同士でもありました。それゆえ、お互いにバリバリライバル心を燃やしていてもギスギスした感じにならず、むしろとても爽やかで清々しい関係に見えるのがすごく良かった。
キャロルとジェリーの関係がこじれたり、ジェリーが精神崩壊して入院してしまった時には親身になって相談に乗ってくれる存在だったバリーとシンシア。競争社会の中でお互いを思いやる気持ちも忘れなかった彼らの関係性は本当に羨ましい。だからこそ、数多くの名曲を次々と生み出していけたんだろうなと思いました。

キャロルとジェリーは結局関係を修復しきれないまま終わりを迎えてしまいますが、それと同じタイミングでバリーとシンシアは紆余曲折の末に結ばれる展開になるのも印象深かったです。
バリーはシンシアに長いことアタックかけ続けていましたから、ようやく結ばれたときには思わず「よかったねー!」って心の中で叫んだよ(笑)。ただ、そんな二人を祝福するキャロルはジェリーと別れたばかりで心の傷が癒えないわけで…手放しでは喜べない展開。しかし、そんな彼女に”シンガー・ソングライター”の道へ導くべく背中を押したのがバリーとシンシアでした。初めは戸惑っていたキャロルでしたが、自ら歌うことへの喜びを見出し再び前を向くのです。辛い経験もしたけど、ちゃんと支えてくれる素敵な友達に恵まれたことは彼女の実直な人柄のおかげでもあったんだろうなと心が温かくなりました。

その後、一人でレコーディングに臨んだ時に歌う♪ナチュラル・ウーマン♪のシーンもとても印象深かった。最初は「この曲はジェリーと作った曲だから歌うのが辛い」と躊躇うキャロルでしたが、プロデューサーの熱意により歌う決意をするんですよね。
で、実際に歌ってみたら自分の中のわだかまりみたいなものが氷解していくかのように生き生きした表情へと変わっていく。あの瞬間、彼女はジェリーとの辛い思い出を乗り越えられたんじゃないかなと思えて胸が熱くなりました。

キャロルは”シンガー・ソングライター”として再出発するにあたり、長い間暮らしたニューヨークを離れロサンゼルスへ拠点を移す決意をします。
ずっと近くでライバル・親友として苦楽を共にしてきたバリーとシンシア、そして自分を見出してくれたプロデューサーのドニーに、最後ありったけの感謝の気持ちを込めて♪You’ve Got a Friend♪を歌うキャロルのシーンはとても感動的で自然と涙があふれてきました(泣)。特に4人でサビの部分を一緒に歌うシーンはこれまでの彼らとの充実した日々が浮かんできてボロ泣き…!再出発の成功を祈るバリーたちの気持ちも温かくて…すごく良いシーンだと思います。

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そしてクライマックス、冒頭のカーネギーホールでのコンサートの場面に戻る演出もニクイ!これまでの彼女を巡る物語はキャロル・キングの音楽そのものだったんじゃないかなと。
本番前に久しぶりにジェリーがキャロルに会いに来たシーンも印象深い。ジェリーは一人で歩き始め成功を収めた彼女を目の当たりにして初めて自分の非を詫びる。今更遅いよ!とも思っちゃいますが、それでもなぜかもう水に流せる気持ちで観れてしまう。そしてステージに向かおうとするキャロルにいつも合言葉のように口にしていた言葉を贈るんですよね。

「なんか予感がするんだ、君はどこまでも行ける」

これって最高のはなむけの言葉だよ…!あのタイミングでこのセリフが出た瞬間また感極まってしまった。キャロルもジェリーもこれでお互い前を向いて進めるようになったんじゃないかなって思いました。

そしてカーネギーホールの舞台に登場したキャロルは輝く笑顔でピアノに向かうのです。最初に奏でた曲は、タイトルにもなっている♪Beautiful♪。コンサートの1曲目が舞台の一番のクライマックス曲になってる演出が素敵!!

「毎朝目が覚めたら笑顔見せて。世界にありったけの愛を」

「You are Beautiful」

もう、この曲が始まった瞬間から知らず知らず涙があふれて仕方ない(泣)。3年前の時も号泣しながら聴いたけど、今回も止めどなく涙があふれて出しマスクが大変なことになってしまいました(汗)。
様々な苦境を乗り越え弾けるような笑顔で生き生きと歌う彼女の姿と紡ぎ出されていく音楽を目の当たりにすると、言いようのない温かな感情が湧き上がってきて大いに心が震えてしまうのです。改めて『ビューティフル』の世界観が好きだなぁって実感させられました。

キャスト感想は次のページにて。